待ってて下さった方々には感謝を。ありがとうございます!
少し内容薄め?で申し訳ないです。文字数的には過去最高なのにどうしてこうなった…。
ポケモンリーグ本部、とある一室。
グリーンは頼まれていたとある調査の結果をワタルに報告していた。
「報告通りだったぜ。ただでさえややこしいってのに、まーた面倒なことになってきたなこりゃ」
「……そうか、やはり」
ひらひらと手を振るグリーンと、ため息をこぼすワタル。
ワタルは自分に問いかける。何故今になるまで気づかなかったのか。自分たちは二度とこういう事態にならないように警戒していたはずではなかったか?
―――気を抜いたつもりなど毛頭ない。各地に信用の置けるリーグのトレーナーや調査員を派遣し、情報収集はずっと続けていた。事前に防ぐための組織、部隊も一から築き、信用のおける者たちも集めた。ワタル自身”各地との連携や交流”と称し、何度か独自で調査を行ってもいた。
だが、それだけやっても気づけなかった。気づくのが遅れた。……認めたくないが認めざるを得ないだろう。相手側の隠蔽の方が一枚上手だったようだ。
グリーンの方も同じ思いだったのだろう、暗い顔でため息をついて、右手に持っていた報告書を突き出した。
「こいつらの方はまだいい。前から情報は掴んでたし、組織の残党ったって所詮下っ端の構成員が10人から20人程度集まっただけ。トキワのもりで迷ってたバカども全部とっ捕まえて、アジトの場所まで吐かせた。残り全員がお縄につくのは時間の問題だぜ」
「去年レッドが壊滅させた連合組織の残党だね。目撃者の情報だと、彼らを森に誘導したのもレッドの可能性が高い。『ピカチュウを連れ歩いてる帽子被ったアクロバティックな少年』が何人いるかは知らないけど」
自転車から放り出された瞬間の瞬発力やジャンプ、着地の華麗さ、そして同時に跳んだピカチュウとのシンクロ度はどこかで公演でもすればスタンディングオベーションは確実だった、と目撃者は語った。
ワタルもグリーンも、そんな人物は一人しか心当たりがない。
自転車から放り出されて拍手喝采ってどう考えてもおかしいだろと普通なら突っ込むところだが、それが件の赤い少年だとするなら何の違和感も感じない辺り二人も相当毒されているようだ。
「ま、どう考えてもレッドしかいねーよそんな奴。時期的に1番道路の草原が一部焼失してたってのも、組織つぶした仇に襲い掛かってきたやつらと戦ったからって考えると辻褄も合う。考えなしにあんなことする奴じゃないからな!」
レッドがこの場にいれば頭を抱えただろう。心の中で『そんな崇高なこと考えてないよ、ピカチュウの格付けのための大虐殺だったよ』などと叫びもしただろう。しかし悲しいかな、件の少年は目下逃走中である。……尤も、この場にいようといまいと誤解されるのには変わらないのだが。
何も知らないグリーンは話を続ける。
「―――まあ、後は残った連中を一網打尽にするだけだ。……けど、本当に問題なのはそっちの方だ。間違いなく本命だぜ、俺達にとっても――」
レッドにとっても、と続くはずの言葉はグリーンが口に出さないでもワタルに伝わった。
二人が険しい目線を送るのはグリーンの手の中にある報告書ではなく、二人の間にある机に置かれたもう一枚の報告書。それ自体は何の変哲もない、どこの企業でも使っているであろうA4サイズのレポート用紙でしかなかった。グリーンの手の中にある物と何も変わりがない。
ならば問題なのはその内容であるのは明らか。…内容を要約し、一文で説明するとこうなる。
”ロケット団残党と思しき者たちがジョウト地方にて集結、活動中”。
それはできれば事実であって欲しくない、凶悪な報告だった。たった一枚の紙に纏められただけの物にかかわらず、カントー最強クラスの力を持つ二人から最大の警戒を引き出すほどに。
この二人だけではない。あの組織と一度でも敵対した者がこの事態を知れば、皆間違いなく同じ反応をするだろう。
かつてこのカントー地方で猛威を振るい多くの人々を恐怖に陥れ、一度はこのポケモンリーグ本部すらも掌握した。それはつまり、ほんの一瞬だったとは言え一つの地方の征服に成功したといっても過言ではない。
類を見ない大事件を引き起こした巨悪、ロケット団。警戒などいくらしてもし足りないのだ。
勿論先の事件はサカキというカリスマ溢れる
頭を失った彼らが手当たり次第に人を襲う事も考えられる。今彼らを纏め上げている人物が残虐かつ非道な者であれば、前以上の被害が出てしまう可能性だってある。
考えられる最悪のケースとしては、そこに更にサカキが復帰する事でロケット団が完全復活すること。もしそんな事になってしまえばどれだけの被害が出るか、想定すらできない。
「どう転んでも荒れるぜ、間違いなく」
「ジョウトだけじゃなくカントーも、下手をすれば世界に被害は広がるだろう。……でも、こう言うと不謹慎かもしれないが…。お陰で繋がった―――レッドの行方と、いなくなった理由が」
十中八九、ロケット団の復活を知ったから。
「そりゃ無断で飛び出てまであんな搾りカスみたいな連中を相手にしに行ったわけじゃないってのは分かってたけどな。悪い方に予想外だぜ全く」
「何かが起こるっていう意味では予想通りだったけど」
「よりにもよって
一体何処で知ったのか?それはいつの話?自分で気づいたのか、或いは誰かから?何故周りに何の相談もしなかったのか?それは三年前サカキと対峙した事と何か関係があるのか?―――依然としてそれは何一つ分からない。
だがこの事を知った、もしくは知っていた。これだけは間違いないだろう。
故に分かるのは、レッドは三年前から……彼の旅立ちからずっと続いている因縁に決着をつける心算だということ。そしてその行方が恐らくジョウト地方であるだろうということ。
彼らのやることは決まった。…否、行動は元々決まっていた。だがその行先が決まった。
「よし、ジョウトまで追いかけようか」
「OK。……とは言えオレはカントーのジムリーダーでワタルはチャンピオン代理。下手に動くとロケット団に気づかれる。警戒度を引き上げちまうのはどう考えても悪手だろ。どうする?」
相手の大本である幹部連中やまとめ役を叩けなければ意味がない。下っ端をいくら捕らえても、頭をつぶさない事には奴らの行動は止まらないのだから。
ロケット団の方もリーグ側の最大戦力ともいえる二人が動けば必ず気付く。警戒しているのは当然こちら側だけでない。一度とはいえ、壊滅させられた相手―――正しくはリーグによってではなくレッドによってだが―――に対し、より慎重になることは間違いない。
当然そうなれば事前に逃げるなり罠を仕掛けて待ち構えるなりするだろう。無論二人ともその程度でやられる程弱くないが、できれば一網打尽にして完全に復活は阻止したい。
慎重に動くに越した事はない。繰り返すが、警戒などいくらしてもし足りないのだから。
「相手の居場所、出来るならアジトの場所が分かるまでは
「オレ達とレッドの中継役か?あいつなら簡単に振り切りそうなもんだ」
グリーンはレッドが音速の壁を越えて追跡者から逃走する図を想像した。
流石にそこまでではない……と思いたいが絶対にないと言い切れないのが恐ろしいところだ。
だがその想像の意味する物は間違っていないだろう。レッドは誰にも言わずにリーグを出て行った。それはつまり、昨年の事件のように自分達を”部外者”として扱うつもりだという事。彼の心を読み取る事は至難の業だが、行動を特定できずとも予測する事だけはできる。彼に使者を送ったところで突っ返されるのがオチだ。
「かもね。向こうが拒絶するなら隠れながらでも追ってもらうさ。これについてはレッドの位置さえつかめてれば問題ないんだ。いざという時に俺たちが駆けつけるためだから…。
で、次。俺達は俺達で情報操作だ。敵を騙すには味方から…リーグ関係者の情報をマスコミの方になるべく自然になるように流す。当然、ガセネタをね」
「お前顔真っ黒になってるぜ」
「元からだよ」
こういうのって楽しいよね、と語るワタルに引くグリーン。世論にどっぷり浸からされた大人の闇は深いんだな、と何となく察した。
「まあ、後はジョウトのジムリーダーに逐次近況報告してもらうとして。……さて、レッドの元に送る人物か。誰か当てはないかい?残念な事に、すぐ思いつくような人物がいなくてね」
ワタルとて職業柄エリートトレーナー達は数多く知ってるし、旧四天王や現四天王、ジムリーダーの伝手をたどれば実力者はいくらでも揃えられる。中には信頼できる者だって多い。
―――が、先に言ったとおり彼らを送ってもレッドは煙たがるだろう。
何せ彼が信頼しているであろう人物の誰にも相談せずに姿を眩ましたのだ。彼の知らない、信用していいかも分からない人間が後をつけて来たら間違いなくまた行方を隠すに違いない。
故に第一の条件として、彼が邪険に扱えない人物を送る必要がある。その上でジムリーダーに匹敵する実力や判断力を持ち、できるだけ口が固い人物で、更にできることなら化け物じみた彼の身体能力に追随できるなら尚良し(万が一逃走した時のため)。 現地で彼を見つけるため、あるいはロケット団を探るための情報収集能力だって必要だろう。
求め過ぎと思われるかもしれないが、これ位ないと話にならないのも事実だ。伊達にレッドはリーグ本部から脱走していない。足手纏いは求めていないだろう。
今にして思えば、そもそもレッドの思考など自分たちに読めたためしがない。無口&無表情の鉄壁コンボでその内心を推し量ることはまず不可能。色々と事件を解決したり事前に潰したりする様から何かしら抱えているのは確実だろうが、その欠片すら悟らせはしない。
そんなレッドの思考をすべて読んだ上で動いていると思われるピカチュウも加われば正に鬼に金棒。
このピカチュウがまた曲者だ。
普通のトレーナーなら一体のポケモンにつき平均4つ程度(多少上下するが)の技を可能な限り鍛え上げ練度を磨き、次々と状況の変化する戦いの中一瞬の判断で信頼のおける技や戦法の中から最適解を導き出し、勝利を狙う。
そんなポケモントレーナーのバトルにおける常識を、レッドとピカチュウは軽々と打ち破った。
数多の――軽く10は超えるであろう技を完璧に使いこなし、トレーナーとの絆故かその常識外れた技の数々を指示も受けずに繰り出し相手を圧倒する。レッドが指示するのはいざという時、危険に陥った時だけ。
『あの二人は互いの心が分かるに違いない』とは誰が言い出したものか知らないが、あながち間違いでもないだろう。あの二人の信頼関係はグリーンやワタルもよく知るところだ。
その鍛え上げられた技の数々がバトル以外の事で使われるといかに厄介なものであるか―――今回の脱走事件を見れば火を見るよりも明らかな事だろう。何せ大衆の、それも多くの腕利きたちの目を欺くのに一役も二役も買っているのだから。
リーグから何度かの脱走経験があるワタルをして「理解不能」、エスパーのナツメをして「
グリーンはレッドとの付き合いも長くある程度は行動を予測できるため何とか候補に入るのだが、彼も彼でレッドが旅立つときに一度出し抜かれている。
リーグから脱走した日、居留守を使い意地でも家からどころか部屋からも出てこなかったレッド。グリーンはレッドが玄関からは絶対に出てこないだろうと睨み、カーテンを閉め切ったその部屋を窓の外から監視していた。
カーテンにはしっかりとレッドの影が映り、彼がまだ旅立っていないことを証明していた―――はずだったのだが、それは何と椅子に座らせたレッドの”等身大身代わり人形”の影だった。本物のレッドは知らぬうちに出発して姿を眩ましてしまい、以来音沙汰なし。
『何故あんな物を作らせているんだ…』と唖然としてしまった彼を責められる者はいまい。何処の世界に自分の等身大人形を変わり身に使うトレーナーがいるのか。マサラにはいたが。
そもそも、先述の通りグリーンはまだ動けない。レッドを追うことはできないのだ。
ならば誰を送るか。誰ならレッドを見つけられる?
果たしてグリーンは即答した。
「いるぜ、その条件全部にぴったり当てはまるやつが。ちょっと待ってろ」
不適に笑い、ポケギアの番号をプッシュする。
『――――?――――!!』
ワタルには相手の話し声は聞こえなかったが、辛うじてそれが女性の高い声だという事だけは分かった。同時にグリーンの通信相手を理解した。”嗚呼、そういえばもう一人いたな”と。
実力は申し分なく、口の重さにも信を置ける。レッドとしても邪険には扱えず、身体能力も彼には及ばないといえどかなりの物。信頼関係はグリーンと同レベル…というかほぼ同じ関係で構築済みで、しかも情報収集は得意分野(らしい)。
成る程、これ以上の適任はいまい。
グリーンは笑っていた。それはもうイイ笑顔で。
「よう!久しぶりだなー!!積もる話は色々あるがまた後でな。早速本題に入るぞ。喜べよ、特ダネだぜ?」
―――何たって、あのバカ捕まえて全部吐かせるんだからな―――
後に当事者だった…”追手側”の彼らは語った。本当の逃走劇はこの日から始まった、と。
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□リザード月ひっかく日
祝!キキョウシティ到着!!
いやあ、カビゴン(の胃袋)は強敵でしたね。わかってたことだけどさ…。でも街についたからまた買い込めば大丈夫。なのに寒気が止まらないのは何でだろうな…!
まあ、街に着いたのは喜ばしいけど残念なことに喜んでばかりいられない。問題発生、それもとんでもない難問題且つ大問題の出現だ。
いや正確には昨日から発生してたのを考えないようにしてただけなんだけども。それが今日追い打ちをかけてきたと言うか何というか……現実逃避してたところを無理やり引き戻されただけともいう。
実際どれくらいの難易度か例えるなら『人はなぜ生まれてくるの?』レベルの―――流石に冗談だ。そこまで広大な話じゃない。
精々が昔グリーンとやった『食うなら”カレー味のう〇こ”か”う〇こ味のカレー”どっちがいい?』レベルの問題だ。傍目から見たら非常にくだらない話かもしれない。
しかしたかが小学生レベルなどと侮るなかれ。実際に直面しようものならそれが如何に難問だったかその身を以て知るだろう。当人からすればただの地獄に違いない―――俺は直面した事ないし願い下げだけどな!!
まあそんな変な例え話は置いといてだ。どんな問題か先に書いてしまおう。
簡単に書くならズバリ、『俺のポケモン強すぎる』。自慢じゃないよ、自慢のポケモンではあるけども。それでも流石にちょっとばかし殺り過ぎ感が否めないというかなんというか。
”チャンピオンがポケモンバトルを挑んできた新米トレーナーのポケモンを再起不能寸前まで叩き込む”。今日もやっちまった……。
昨日も思ったけどいくら何でもチャンピオンのする事じゃないなコレ。普通に相手に申し訳ないし、リーグどころか警察からも追いかけられる羽目になるなんて状況真っ平御免被る。”げんきのかたまり”は犠牲になったのだ…。
相手の子にやたら鋭い目で睨まれたけどあれが普通の反応だね。最後には笑って許してくれたゴロウ君は聖人だったのさ!いやホント申し訳ない。
あの子は結局謝ったりアドバイスする暇も無くどこかへ消えちゃったし、ポケモンセンターにもいないし。そういえば名前も聞いてないな――俺も偽名だし他人の事言えないか。
とりあえず忘れないように特徴だけ書き記しとこう。赤毛で目つき怖い…なんて言うかすごいキャラの立った子。年は多分ヒビキ君と同年代?くらい。いつかどこかで会ったら謝ろうと思う。
で。そんな事も起こってしまったわけだし、今はまだいいけど(全くよくないけども)このままいくと俺は第二第三のゴロウ君……否、第二第三の前歯の増えてしまったコラッタ()を増産してしまいかねない。
別にコラッタの前歯が増えるって決まったわけじゃないし、そもそも相手がコラッタって決まってるわけでもないけど。まあそんな事態は金輪際御免被りたい、というわけで。
これからも逃走生かt…ゲフンゲフン、ジョウトで旅をしていく以上このまま見て見ぬ振りをするわけにもいかない問題ならば考えないわけにはいかないよね。
まだ大人と戦う分にはいい。子供でも強いやつはいる、あり得ない事なんてあり得ない。どんな一方的な展開も、予想外の逆転劇もあり得る。
それこそがポケモンバトル――それをわかってる大人ならだけど。そういう人とは大概良い勝負ができる。
じゃあバトルの基礎も分かってない、ポケモンも全然育ってない新米トレーナーと全力で戦えばどうなるか?こうなる。
”辺りがピカッと光ったと思ったらものすごい音がしてコラッタが地面の染みになってました”
”コラッタがカチコチに凍らされてピクリとも動かなくなりました”
”460kgもの体重に潰されてコラッタがザクロみたいになりました。閲覧注意”
”コラッタがとんでもない勢いの水に飲まれて消滅しました。”
”ツルのムチでうちのコラッタが自主規制”
”燃え尽きたぜ……真っ白にな……。灰すら残ってない”
以上、手持ちが全力出した時起こるであろう惨劇ダイジェスト。まあ流石にちょっと誇張してるのもあるけど全力ならそこまで大差は出ないはず。
―――うわぁい、これもうただのトラウマ製造機以外の何物でもねーわ。
というかこうなると流石に相手が大人でも駄目だ。もし仮に向こうが俺の事をチャンピオンだって知ってたとしてもアウトだよ。誰がどう見ても逃れられない犯罪だよコレ。噂のロケット団も真っ青だねきっと…。
いや、自分で書いててアレだけどホントに碌なもん何一つないな!さっきの『食うなら”カレー味のう〇こ”か”う〇こ味のカレー”どっちがいい?』って例えもある意味間違いじゃない例えだったのかもしれない。
”どう足掻いても社会的に死ぬ”っていう意味で。ホント笑えない。
あ、喩えでコラッタが散々な目に遭いまくってるけど別にコラッタに恨みがあるわけじゃない。昨日の事件がそれだけインパクト強かっただけの話だ。…嫌な、事件だったね…。
勿論そんな新人潰しするような下種な趣味は俺にはありません。更にこのままだと色々と災難が降りかかるのは確定的に明らか。
『新人潰しのマサラ人!』やら『怪奇!げんきのかたまり男!!』なんて噂がどこからか出てみろ、ワタルが四天王やらジムリーダーやらでリアル魔王軍を結成して押しかけてくるわ。色々洒落になってない幼馴染たちも襲撃してくるわ。ていうか既に襲撃してきそうな気がビンビンしてるわ。
そうなると偽名のサトシだってまるで意味がない。そもそもマサラタウンに”サトシ”なんて子がいないのはやつらなら知ってるわけで……。これからはマサラ出身って名乗らない方がいいな!
―――いやまず噂が出ない可能性もあるし自意識過剰かもしれないけど、ちょっとでもそういう可能性は下げたいというか。
と、いうわけで。一応解決案を幾つか考えてみた。
①皆に手加減してもらうようお願いする
一番現実的な気がするが、意外とそうでもなかったりする。ちょっと力を出せばオーバーキルしてしまう状況で、相手によって力加減を変えろってのは中々難しいんだよなあ…俺も経験あるし。やりたい事が全力でできないのもストレスが溜まるだろうし…。保留だ。
②新しいポケモンを捕まえて一から育てる
気持ち的にはあんまり取りたくない手段だ。俺の手持ちが埋まってなけりゃこれでもいけたんだけど…。今までずっと一緒だった皆のうち誰か一人だけここで転送するのは嫌だ。我儘だけどね。×。
③逃げる。誰ともバトルしない
”大変な用事があって急いでる”みたいに何かと理由をつければバトルを避けることはできるし、ちょっと道を外れて回り込めばトレーナーの少ないルートで次の街に行ける。時間は多少かかるかもしれないけど、これが今のところ一番まともな選択かも。バトルする事ができないストレスをどう解消するかだけが問題だ。
④バトルを挑まれた瞬間トレーナーに向けてでんきショック
相手は死ぬ。事案。ダメ、絶対。
⑤旅を止めて人の来ないシロガネやま山頂付近に引きこもる
―――断固拒否する!
⑥さようなら、私はリーグに帰ります
却下。
うん、普通に考えて③だな!バトル申し込まれた時には断りを入れて、諦めてもらえなければ逃げればいい。森で鍛えたおかげで気配を消すのには自信あるし、身を隠す場所のない平原なら走って逃げる。おじいさんオススメのランニングシューズも買ったから多分相手がドードーに乗っていても勝てるさ。…ギャロップだと自信ないけど。
状況によっては①を取る事もあるかもしれないけど絶対に②、④、⑤、⑥辺りはダメだ。④みたいにトレーナーにダイレクトアタックしていいのは身の危険がある時だけって決めてるし、普通は使わない。――ワタル辺りは何かやりかねない、或いはしでかした気がするあたり恐ろしいけどまあそんなわけないと思うし無視。
⑤や⑥に至っては最早語るに値せず。一体何が悲しくてまたあの拷問染みたサバイバルを体験しに行かにゃならんのか。もう雪崩の中バタフライとかクロールするのだけは勘弁な!!崩れた書類の中でバタフライも勘弁な!!!
てことで③番に決定。幸いこの町、キキョウシティにはジムがある。ジムリーダーが全力で向かってきてくれるならバトルだって存分にやれるはず。この先だってジムは数多くあるんだしきっとストレス面も問題無い!
ストレスフリーな休暇―――嗚呼、なんて素晴らしい響きなんだろう。
悩みごとも終わってスッキリしたし今日はもうこの辺りで寝ようと思う。明日はジム戦だ、張り切って行こう。
□リザード月なきごえ日
『ジムバッジ一つも持ってないんだったらせめて”マダツボミの塔”の修行をクリアしてから来い』と門前払いを食らった…。ジムに挑戦条件設けてるって結構珍しいな。そういやグリーンも最近『バッジ7つ集めないとオレには挑戦できないぜー!!』とか言ってたっけ。まあリーグに一番近いジムだし、そういう条件も悪くない…のか?
とりあえずここはお忍びだし、今は邪魔な肩書でしかない”チャンピオン”はこの際置いておくとして。カントーのバッジは家に置いてきたしなぁ……まあ心機一転ってことで0からのスタートもいいよね!今から俺はピッカピカの新人トレーナー一年生だ!!―――手持ち強すぎじゃね?ってツッコミはなしで。
で、件の条件に出てきた”マダツボミの塔”。カントーでも有名な観光地なんだけど、大体は観光じゃなくて修行に使われてるらしい。修行僧の人の説明だと三重塔の中央の柱は超絶巨大なマダツボミの胴体だとか。
いやいやいや、いくら何でも無理があるでしょ、でかすぎるだろ…。
そりゃポケモンにだって個体差はあるよ?偶に見かけるオニスズメの群れとかでも大きさに多少の差はあったよ。だけどさ、物事には限度ってもんがあるよね!!
一般的にマダツボミの高さの平均は0.7メートル(図鑑情報)。一方、あの柱はだれがどう見ても数十メートル。 高さだけならもう8.8メートルのイワークの倍以上にデカいわけだ。
明らかに通常のポケモンのサイズじゃない。実はマダツボミに似た伝説のポケモンでしたー!とかだったらオーキド博士とかマサキとか卒倒するわ。
そこまでデカくなっても蕾のまま花開かなかったのかと思うと涙がホロリ。
なんて感傷に一瞬浸ったりしたけどよく考えたらそのサイズでウツボットになられても怖すぎるし、かえって良かったのかもしれない。
光の巨人サイズのウツボットなんていたらジョウトどころか世界中の虫ポケモンが絶滅してそうで洒落にならないよね!
まあ実在しないわけだしもうサイズのことはいいや。肝心な修行の方だ。
俺の中の”寺でする修行”のイメージは座禅とか滝行だったんだよ。少し気が散れば竹刀で叩かれたり、滝に打たれたりするよくテレビやら雑誌やら漫画やらで見かけるアレだ。精神統一系って言えばいいんだろうか。そういう感じの修行をこなすもんだとばかり思ってたわけだ。
今考えるとその時の俺は阿呆かと。いやホント馬鹿かと。
何で実力が足りないって追い返されたジムの挑戦条件が精神統一なんだ。普通に考えればわかるよ、ポケモンバトルだよ!
『なるべくポケモンバトルは回避しようぜ、逃げ足なら最強だからな(ドヤァ』とか言った矢先これだよ!いっそ殺せ……。
運よくと言うべきか、頂上へ向かう道中の修行僧さんたちは既に幾度かのバトルをした後で、対戦したのは塔の最上階での一回だけだった。
長老のコウセイさん、ポケモンは予想通りマダツボミ。
無事勝利!伊達にチャンピオンしてねーのです。例に漏れず全部ピカチュウ任せだったけどな!!
ピカチュウがうまい事加減してくれたらしく、惨事にはならなくてすごく安堵した。マダツボミのつぼみがポロリとか恐ろしい自体を想像してて……!
ま、まあこれで一応ジム戦ができるわけだ。
『ここでの修行をクリアした証です』と、ポンと手渡されたのはわざマシン”フラッシュ”。
―――いやもう俺コレ持ってるよ!わざマシンじゃなくてひでんマシンだけど!……意外とメカニズムが別物だから覚えるフラッシュも別物ですよ、みたいな感じだったり?
ないよね、秘伝でもただの技でもフラッシュはフラッシュだよ。暗いところ照らすよりバトルで太○拳見たいな使い方に定評のあるフラッシュだよ。
ピカチュウも既に使えるし、正直いら――――いやいや折角の貰い物なんだ、有効活用しなけりゃコウセイさんにエクストリーム土下座しなきゃいけない。何か、何かいい活用方法はないか―――?
閃いた。
これ見せてジムの挑戦権得て、お金に替えて、飯買って、カビゴンの胃袋へ。で、カビゴンはジム戦頑張れて、勝って得た金でまた飯買って。ほら有効活用できてる。理想のサイクルキタコレ!家計にやさしい技マシン、フラッシュ万歳!!
コウセイさんゴメンナサイ。
カビゴンの一日の食事400kgがマジだったらどうなるのか。
図鑑には400キロて書いてるんですけど、昔は400キロカロリーかなって思ってました。
……理想の朝ごはんかな!全く足りてないよね間違いなく!!
というか400kg食べた状態で戦ったりしたら”のしかかり”の威力半端ないんじゃないかな…。