ゼノモフでございます。
早いとこ地上脱出させたいです。
「姫様?」
「ええ、そうよ、私が教育を担当することになったんだけど…丁度引き取りに行く日に会議が入っちゃって…代わりに行ってくれないかしら?」
依姫の師匠になって10年以上がたったある日。
永琳の家の庭で大剣を素振りしていた時に頼まれた。
「ああ、構わない、と言ってもいつどこでだ?修行が入っているかもしれないんだが…」
「3日後の午前10時に月夜見様のいたビル16階の部屋、地図と、部屋の場所は後々メモを渡すわ。」
「3日後だな、わかった。」
「頼んだわ。」
「任せろ。」
〜3日後〜
珍しく鎧以外に着替えて出かけた。
「あー、永琳のメモでは…『16階エレベーターから見て右の3番目の部屋。』か。ここだよな?」
ーコンコンー
「失礼。姫様を引き取りに来た。永琳は今日会議が入っていたから、代わりに私が来た。」
「うむ、ご苦労…ってアルトリウス君じゃないか。」
「え…?ってあなたは。」
驚いた、目の前にいたのは依姫、豊姫のお父様だった。
「そうか、永琳さんの代わりに君が来たか。」
「ええ、お久しぶりで。」
彼と会ったのは今までで3回ほどだった。
彼は多忙で私が依姫の指導に行く時間に家にいるのは珍しい。
「娘は頑張っているか?」
「はい、やはり依姫は筋がいい、フェイントが上手くなってきましたよ。」
この10年で依姫はメキメキと成長していた。もう道場の中では負けなしだ。
「あ、姫様はこちらで?」
私達の横では少女が眠っていた。
「ああ、名前は輝夜だそうだ。お偉いさんの子なんだが、そのお偉いさんが病死してしまったらしい。これまでは施設にいたんだが、よりよい教育のため、永琳さんに引き取ってもらうことになった。」
「なるほど、では、私はこれで。」
「ああ、今後とも娘をよろしく頼むよ。」
「はい、お任せください。」
輝夜を引き取って家へ帰った。
歳は5歳ほどだろうか?すやすやと眠っている。
姫様を布団へ寝かせ、依姫の修行メニューを考える。
5分ほど考えていると、服の裾を後ろから引っ張られた。
何かと思い後ろを見ると、輝夜が、裾を掴んでこちらを見ていた。
「お兄さん、だれ?」
「私はアルトリウスだ、君を引き取った。」
「そう…アルトリウス!遊んで!」
「しょうがないな、いいぞ。」
「なにやる?」
「そうだな…背文字はどうだ?」
「なにそれ?」
「背中に指で字を書いて、何と書かれたか当てるゲームだ。」
「面白そう!」
「まずは私がかこう。」
「よし来い!」
私は輝夜の背に『あ』とかいた。
「うーん、なんだろう…わかった!『お』!」
「惜しいな、『あ』だ。」
「あーそっちかぁ、惜しいなぁ。…次は私が書く番!」
これは…『く』だな。
「『く』だな。」
「あたり!すごい!アルトリウス!」
「ただいま。」
「あぁ、永琳帰ったか。」
それにしても永琳も多忙だ…
「あー、その子が輝夜?」
「ああ、そうだ。」
「こんにちは!」
「ふふ、時間的には今晩はだけどね…こんばんは。…アルトリウス、今日のご飯の当番どっちだったかしら?」
「私だ…って言ってももうつくってあるのだがな。」
「じゃあ早速頂きましょうか。」
「ああ。」
〜翌日〜
「ねーアルトリウス、ここわかんない、教えて。」
「ん?あーそこはだな。」
この10年間、修行だけをしていた訳では無い。
永琳を助手として手伝うために、薬剤師の資格も取っている。
「アルトリウスの説明わかりやすいね。」
「そうか?まあ、ありがとう。」
現在は輝夜に数学を教えている。算数では無い、数学なのだ。
驚いたことに輝夜はこの歳で、算数の内容をすべて終わらせているらしい。数学では今、方程式をやっているところだ。
「あ、すまない稽古の時間だ。昼飯までには帰れると思うが、帰れなかったら、冷蔵庫の中の冷凍食品適当に食べといてくれ。」
「わかった!いってらっしゃい。」
「ああ、行ってくる…知らない人が来てもドアを開るなよ?最近物騒だからな。」
依姫のところで修行をする時は大剣は置いていく。
竹刀を扱うので正直邪魔だ。
〜綿月家〜
私が稽古の時間に綿月家の門へ行くと、決まって依姫が待っていてくれている。
「師匠、今日は何やります?」
「ああ、今日は道場の奴ら3人と同時に戦った後、私と試合だ。
待つ間私はランニングでもしている。全力で走ってたら疲労は同じぐらいだろう。」
「3人ですか…やれますかね?」
「いけるさ、10年間私が稽古をつけたんだからな。」
そして道場へ歩く間に練習のメニューについて話す。これもいつも通りだ。
「じゃあ依姫、私は走っているよ。…何分ぐらいで終わらせられる?」
「そうですね、もう準備体操は終わっているので10…いえ、7分あれば十分です。」
「わかった、じゃあ7分後に道場に帰ってくる。」
「はい。まあ、出来るだけ早く終わらせますよ。」
〜7分後〜
「依姫、終わったか?」
そう言って道場の戸を開けると…うわぁ、3人の男が依姫の前で伸びている。
少し力量を見間違えたな、そういえばあいつの試合相手の基準、ここ10年間私だった。
「師匠…なんか面に入れたら伸びたんですが。」
「ああ、だってお前10年間試合相手の基準私だぞ?完全に忘れていたが…」
「あ、そうでした。っていうか只者じゃ無いのはわかるんですが…師匠って何者なんですか?」
「ああ、以前騎士団の長をしていた。と言っても仲間3人でまとめていたがな。」
「強い訳です。」
じゃあ、そろそろ。
「どれ、そろそろ試合をするか?」
「はい、今日こそは一本取りますよ!?」
「ああ、頑張れよ!」
お互いに一礼してから、竹刀を構える。
試合開始だ。
試合開始と同時に、依姫は飛び込んで攻めてきた。
10年前の単調な攻撃とは違う。1発1発が重く、早く、フェイントも織り交ぜられている。
すべての攻撃を竹刀で弾きながら、隙を探す。
すごいな、隙が見当たらない。
…だが、まだ私を超えるには足りない。迫り来る竹刀の間に滑り込み、竹刀の柄で、腕をつき、竹刀が下がったところで面を打つ。
「なかなかに成長したな、依姫。」
「はい…ですが師匠に勝てる気がしません。」
「いやいや、いい線いってたぞ?だがけん筋を変えることだけに集中していて、竹刀の振りが遅いんだ。だから簡単に入り込まれてしまう。もうお前は意識しないでも、けん筋を変えられるはずだ。考えるな、感じろ。けん筋なんて意識するな、こっちの竹刀を叩き折る気で来い!」
「考えるな、感じろ…ですか。」
「ん、もうこんな時間か…じゃあ私は帰るよ。」
「ええ、お疲れ様でした。」
さてと、急いで帰るか、輝夜の飯を用意しなければ。
〜永琳宅〜
「輝夜ー、帰ったぞ。って鍵が開いてる?」
家の中は荒らされていた。強盗にでも入られたか…よし、●そう。
押入れを開けて、鎧と大剣を取り出して鎧をまとい、大剣を背中に背負う。
幸運なことに輝夜には穢れ対策として少しだけ深淵を纏わせている。そして私は深淵を感知することが出来る。
…輝夜を誘拐した奴らがどんな奴らかは知らないが…すでにチェックメイトだ。
都市の中にある深淵をすべて感知する。
…あった。15キロほど先だな。
全力で走れば1分いらない。屋根の上に飛び乗り、深淵を感じる方向に走る。
…あそこだ。
どうやら輝夜はここの倉庫に閉じ込められているようだ。
大剣に深淵を纏わせ、倉庫の扉をぶち破る。
「な、なんでここが!?」
10人程敵がいた。
「おい、お前ら。自首するか5分の4殺しか選べ。10秒以内だ。」
「怯むなお前ら!1人だけだ!やっちまえ!」
「お前ら…五体満足で帰れると思うなよ?」
その言葉と同時に一気に間合いを詰める。久しぶりの本気だ。
一番前にいた男を逆袈裟斬りで斬りつける。主要機関は外した。死にはしないはずだ。
次に後ろから飛びかかってきた男の剣を大剣で弾き、右腕を切り落とす。
全力で敵の後ろに回り込んで膝から下を叩き斬る。
後7人。
もっとギアを上げる。前から右腕、左足、右手、左足、右足と切り落としていく。
後2人。
かかってきた男の顎に蹴りを食らわし、倉庫の壁に叩きつける。あの感覚、間違いなく顎を砕いた。
後1人。
腰を抜かしたんだろうか?座り込んで命乞いをしている。
四肢の先をすべて切り落とした。
「輝夜は…あの扉か。」
扉を蹴り破って輝夜のいる部屋に入る。
「大丈夫か?」
「うぅっ、アルトリウスぅ。」
「泣くな泣くな。ほら、帰るぞ。」
「うぅっ、ありがとう。」
輝夜を片手で持ち上げて帰路につく。
「アルトリウス…」
「ん?なんだ?」
「晩御飯何?」
「はあ、さっきまで泣いてたのにもうそれか…ハンバーグだよ。」
「やった!」
「やれやれ。」
この後は何事もなく家に着いた。
引き取られて翌日誘拐だなんて、輝夜もついてないな。
あと1.2話でもう月へ行っちゃおうと思います。