緋弾のアリア ~契約の不死者~   作:赤須

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更新が遅くなってしまい、申し訳ございません!

理由はほら、あれです。
FGOの新宿……あそこが魔境過ぎたんや。だから僕は悪くない。


Ⅴ弾 『峰・理子・リュパン四世の逆襲』

 

 

 

 ―――暗い。

 

 

 

 ……漆黒、常闇の空間は上を見ても、下を見ても、左右を見回しても、やはり暗かった。ある物と言えば、燭台に刺さった蝋燭が一本と……目の前の鉄格子が張り巡らされた檻だけ。蝋燭の火はとうの昔に消えてしまい、石床や室温は人体にはとても悪い環境ともいえる冷たさが非常に強く訴えてくる。

 

 

 

 ―――寒い。

 

 

 

 腐りかけの肉を両手に、孤独で小さな金髪の少女は静かにその思いを抱く。

 誰も居ない、食べ物も碌に無く、衣服もボロ付いた一枚の喪服だけ。そしてこの暗闇の部屋と一人だけという絶望感に、あまりにも悲痛で弱い感情はすでに、心が折れかけていた。

 

 大好きだったお母様も、尊敬していたお父様も、今はもう世に存在していない。親戚だと口にしていた人物がいたが、それは偽物で、財産狙いの者かと思えばまさかの〝吸血鬼〟だったという事実。

 

 ―――吸血鬼。人類において、天敵ともいえる生と死を超越した欧州の怪物。その存在は怪力無双、変幻自在、神出鬼没を意味し、かつては人々を恐怖に陥らせた〝絶望の塊〟である。

 

 故に、そんなヤツに〝飼われた〟以上、最早人生の終わりだとか、死んだも同然だとか、そんなありきたりな言葉で表そうなどとは言語道断、甚だしいにも程があった。

 

 ならば、これをどう言葉に表せと言うのか、と尋ねられたら少女は言うだろう。

 

 

 

 ―――悔しい、と……

 

 

 

 それは弱すぎるから、自分に力が足りないから、こんな事態に陥ってしまった自分が恨めしい。

 お母様やお父様なら、この程度の檻など容易く切り抜けられるだろう。

 なのに自分は、非力なばかりに後れを取ってしまった。

 あの吸血鬼曰く、自分には優秀な遺伝子を二人から受け継いでいないから、だから少女は初代やお父様、お母様のようにいかず、逆に騙され、逃げられず、捕まってしまうのだと。

 嘗て少女の先祖である偉大な初代とその仲間であった双子の聖女が、吸血鬼と死闘を繰り広げて引き分けたそうだが、それが今を見れば歴然と分かってくる。

 何も出来ない、ヤツと相対する事すら許されず、鉄で出来た檻に打ち込まれた一人のか弱い女の子に過ぎない。そんな落ちぶれてしまった自分が、本当に憎かった。

 

 

 

 ―――力が、欲しい。

 

 

 

 ここには、一人しかいない。お母様も、お父様もいない……助けてくれる人なんて、一声上げれば飛んで来てくれる正義の味方なんてこの世界にはいない。そんなのはアニメや漫画だけの空想上のものでしかないのだから。夢の中だけなのだから。だからいない。

 

 

 

 ―――だから、自分で何とかするしかないのだ。

 

 

 

 折れ欠けていてもそれだけは曲がらずに、少女……〝峰・理子・リュパン四世〟はその信念を強く抱かせる。

 力が無いのなら、力を身に付ければいい。

 弱いのなら、それを補える強さを纏えばいい。

 知恵が足りないなら、教えを乞えばいい。

 ただ、それだけの事だ。

 

 

 

 ―――故に、

 

 

 

 誰が力の無い理子だと決めつけた? 

 

 誰が好きでこんな吸血鬼に飼われるような人生を送りたいと願った?

 

 理子は理子を貶めたあの元凶―――ブラドを恨む。

 

 だからこれは、攻撃でも宣戦布告でもなく、理子を貶めたお前への―――

 

 

 

 ―――逆襲だ。

 

 

 

 いつか、やがていつかはと、あの憎き吸血鬼のブラドに逆襲して、絶対的な自由という名の解放を手に入れてやると……理子は密かに思っていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 ―――ボストーク号から出航してから時間はどれだけ経ったのだろうか。

 少なくとも一日は過ぎたと見て間違いはないだろうが、その時間が何故か、遅く流れているように俺は感じ取れていた。

 狭い空間に男一人というこの状況下の中で、自分の出来る事となるとやはり限られてくる。持ち込んできた物資も急な依頼と余りにも無さ過ぎる期限の日数のせいか、暇を持て囃すには準備も時間も足りないうえ、持ち込んで貯蔵してあるのが食料や刀、拳銃、小銃などの戦闘に必要最低限のモノだけなので、快楽に餓えた一人の少年はその退屈さが身に染みて、己を萎えさせてくる。

 

(―――……暇である事は平和である、平和であるからして暇が生まれ、暇は平和へと通ずる。暇は平和、平和は暇、これ即ち真理。故に……)

 

 ……いったい、俺は何の哲学を語っているんだろうね、ワトソン君。

 いや、ここにワトソンはいないけどさ。

 と、教授(プロフェシオン)からの依頼により、原子力潜水艦から射出されたオルクスの中で俺は、重い瞼をパチりと開いてふと思い浮かべてしまった。

 目的地はルーマニア、ブラドの屋敷に捕まっている少女を救い出し、イ・ウーへ招待する事。期限は一週間で、しかも任務を熟そうが失敗しようが、あのブラドと敵対しなければならないという始末となれば、どうしようもなく面倒なのが目に見えてくる。

 それなら教授に命令されました、なんて他人に罪を着せてスケープゴートしようとしてもたぶん無理だろうな。

 ブラドも教授が〝この程度〟で動かない事も、知っているのだから。

 いや実際にやっていたとしても、ブラドは何やら教授に手出しできない警戒心を抱いているようだから、矛先がやはり俺に向かってくるんだろう。解せぬ。

 

「で、ぶっちゃけ何が言いたいのかというと、教授ェの悪巧みのせいで、俺がブラドの相手をしなくちゃいけないのに強いられているんだッ!!」

 

『……いや、お前の頭がおかしいのを強いられているんじゃないのか?』

 

「違うわ、戯け。……ただ、面倒事をあまりに押し付けがましい、というか、俺がしなくていいような運命を、アイツに無理やり組み込まされているような気がして、何か釈然としないんだよ」

 

 そしてハッキリと言わせてもらうが、ブラドの件……マジで面倒臭い事この上ない。

 今は平和で暇なのは良い事なのかもしれないが、この任務における後々の事を考えると、やはり辛いんだ。

 そう思いながら項垂れる俺は、ノートパソコンの液状画面に映っているジャンヌに愚痴を吐きながら、画面へと目をやった。

 

「……だいたい、アイツは俺と同類の体質なうえ、その格で言えばヤツの方が遥かに上の存在だ。吸血鬼だけに人間よりもスペックは高いだろうし、そんな相手とどう戦えって言うんだか」

 

『ふむ、ブラドは我が祖先もかなり苦労したようだからな、お前の言う事も一理ある。……アレは、正真正銘のバケモノだ』

 

 ジャンヌは同情染みた口調で俺の肩を持つように言うが、彼女の先祖、というよりも三世代前の双子のジャンヌ・ダルクと世界的に名を馳せた大怪盗アルセーヌ・リュパンの3人でそのブラドと戦っていたらしい。

 だが二振りの聖剣を突き刺しても、純銀の弾丸を撃ち込んでもブラドは倒れず、寧ろ平然としていそうだ。しかも聖剣を受けた傷も、弾丸で受けた弾痕も再生した上で……

 

「ああ、でも確か、バチカンの聖騎士(パラディン)はその再生能力を封じる何かしらの秘術をヤツに掛けたらしいな」

 

『む、少し違うぞ、舩坂。それは封じるというより、印すと言った方が正しい。一生落ちない〝目〟の紋様を4ヵ所にブラドは付けられたと祖母から聞いた。それはヤツの弱点を補うために必要な―――〝補填〟を破壊するための部位だと』

 

 と、俺の言った言葉をジャンヌは的確に指摘する。

 何でもその補填とやらの恩恵は、高い抗体と再生能力を生み出し、吸血鬼で定番な弱点とも言える太陽や十字架、ニンニクを効かなくさせるらしい。

 本人曰く、遺伝子によって弱点を対策……および克服しているとか何とか。

 

 ニンニクをモリモリ食べ、十字架ですら何とも思わない吸血鬼……

 

 いやまぁ、弱点に対策するのは当然として理解しやすいが、それは吸血鬼のアイデンティティーとしてどうなのかね、ブラドさん。

 

「まあ要は、その4ヵ所に何かしらの施しさえすれば、ブラドの再生能力やその弱点に影響があるんだろうが……」

 

 とりあえず、ブラドに関する結論を述べてみる。

 だがそれをジャンヌは左右横に首を振った。

 

『……いや、それは私にも分からない。双子のジャンヌ・ダルクも、初代アルセーヌ・リュパンもその紋章の内3つを斬って撃ち込んだのだが、それでもヤツは倒れなかったそうだからな』

 

「何だそれは、弱点突いても倒れないって最早チートじゃねえか」

 

『夾竹桃の毒を盛られても平気で生きているお前のセリフじゃないぞ』

 

「いや、平気じゃねえよ、一度死んで甦っているだけだ」

 

『………………寧ろ凄いな、舩坂』

 

 先ほどの言葉が効いたのか、呆然と(フリーズ)してしまったジャンヌは瞬間ハッと我に返り、そして褒めているのか、貶しているのかそんな言葉を掛けてくる。

 

『ま、まあ、それは兎も角として、お前がブラドと戦うと言うのならば研鑽派(ダイオ)としてもこの上無い好機だぞ。ナンバースリーを獲れるからな』

 

「……だろうな」

 

 やはり、研鑽派としての考えはジャンヌも同じだったか。主戦派(イグナイティス)であるパトラをイ・ウーの玉座に座らせまいと、研鑽派はどんな手段においても止めようとするだろう。

 それは世界侵略などバカげた事を仕出かさないように、無法の在り方を壊さぬために、だ。

 とはいえ、ブラドに対する策を講じなければ、ルーマニアに囚われている少女を救出するための行為は、無策で挑むのと同じ道理になり、そしてそれは愚の骨頂と成り得るわけで……

 

(弱点は効かない、銃で撃とうが剣で斬ろうが、ブラドは即座に再生してしまう。俺の場合は軽傷ならば即座に回復できるが、聞けばヤツの再生能力は問答無用……)

 

 だからおそらく、首チョンパしてもヤツはピッコロの如く再生するのだろう。

 それも、どこを吹っ飛ばしても、撃っても、斬っても、破壊しても、潰しても、捻っても、折っても、削っても、打っても、叩いても、ブラドは無限に再生できるのだ。

 加えてブラドはナンバースリーに格付けされるだけあって、それに見合った圧倒的な強さを、ヤツは持っている。

 戦えばきっと、俺は一、二回程度の死ではまず済まされないだろう。

 そして負ければ無事で終われるはずもなく、ブラドか研鑽派に殺されて、俗に言う後始末という名目で俺は、存在すら消されるはずだ。

 

 

 

 だから、負けるわけにも、退くわけにもいかない。

 

 

 

 俺自身が楽に生きるために。

 

 

 

 ならばヤツを、ブラドをどうするか……

 

 

 

 けど、それはそれとして―――

 

 

 

(ああ―――〝面白そう〟だな。これは、良い〝戦争(いくさ)〟の暇潰しになる)

 

 

 

 ―――ドクンッ―――

 

 

 

 何かが、俺の感情に昂りを……〝与えた〟。

 

 

 

「ジャンヌ」

 

 思わずニヤりと笑いそうな〝俺〟はそれを抑えつつ、ジャンヌに話しかけた。彼女は『む?』と不思議そうに首を傾げながら反応する。

 

『どうした、舩坂。まだ何かに強いられているのか?』

 

「違うわ、戯け。というか、その話からいったん離れてくれませんかね? 今思うと恥ずかしいから」

 

『ふっ、分かって言ったのだ。お前はこういう茶化しに乗せられやすいからな』

 

「……なるほど。以後、気を付けるとしよう」

 

『ああ、気を付けろ。特に……ブラドはそういうところを突いてくる』

 

 クスり、と妖艶に微笑んだジャンヌ・ダルクは、皮肉気に呟く俺を真剣な眼差しで見据えた。

 

『―――それでお前は、私にどんな要件を言うつもりなんだ?』

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 ジャンヌとの通信を終え、オルクス内に居座る俺は一人寂しく海流の音を聞いていると……ガコンッ―――と、何かに衝突したような音が潜水艇を響かせた。

 

(む……?)

 

 重い衝撃もなく、ただゆったりと流れていただけにそれほど大きくは無かったものの、そこからその動きが止まった事に気付き、探知機の様子を伺う。

 どうやら目的地に無事漂着が出来たようだ。

 北海道・札幌武偵高(サッコウ)車輌科(ロジ)棟付近にある地下倉庫と繋がった接岸施設へとオルクスを寄せ付け、浮上と共にハッチを開けた俺は、そこから警戒しながら顔を出して、星々が描かれる夜空を下に周囲へと見渡す。

 

「……着いたか」

 

 怖ろしくも静かな空に、ソッと岸へ飛び移った俺は再び周りの様子を伺った。

 人気も無く、誰かからの視線も殺気も感じない。

 何もないと逆の意味で不安になりそうなぐらいだが、ひとまずは安心と見て間違いないだろう。

 

 というのも、ここまで警戒するのは訳があって、この武偵高には……

 

 鯖裂き包丁一振りと小銃一丁で大地をも抉り、人々を喰らうKUMAを数多に仕留めてきたという超人や、

 

 二千の技を以て人外殺しを営む人外などが存在しているらしく、

 

 教師陣も侮れない強さを誇ったキチガイな連中が潜んでいるので、迂闊に動けないというのが難点だ。

 

 気付かれればその時が、最後。札幌の狩人たちが動き出す。

 

 札幌……もとい北海道はイ・ウーとはまた違った超人、人外の巣窟なのだから。

 

 まぁ、それは兎も角……

 

「まずは安全確保のために寝床を探さねばな。いつまでも同じ場所で呆けている訳にもいくまいし……」

 

 だがそのためにホテルだの宿舎などを使う事は出来る限り避けて通りたい。顔バレはマズいからな。

 そして、オルクスを自動操縦(オートパイロット)で海の底へと沈める。

 俺のバックに仕舞ってある伊・Uの文字が綴られた指輪を近づかせれば浮上するという仕組みだ。

 これなら海中で見つけられる事も、よほどの事態にならない限りは見つかりようもないだろう。

 

 そんな思惑を抱きながら俺は、この何もない岸辺から何事も無かったかのようにして立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――漸く、見つけたぞ。……スズオ」

 

 

 

 あまりにも静寂過ぎる空気に、冷徹な声が上がった。

 

 

 

 ゾワリ、と常軌が逸脱された剣気を放つそれは、天空を穿つかのような鋭さと、大地を真っ二つにせんという切れ味が、空気を圧迫させ、あるいは震撼させる。

 〝札幌武偵高の車輌科棟の屋上〟から一際畏れと怖れの強い漆黒の塊があり、一人の少女がその正体で、夜空との保護色による彩りのせいか目視で確認するにはし難い―――否、彼女は敢えてそうさせて、彼を……舩坂スズオを監視していた。

 

「全く、解せんな。超人育成機関であるイ・ウー、スズオのためになると思って送ったが、存外……〝落ちたか〟。これ〝如き〟に気付かないとは、些か私も侮っていたようだな」

 

 ボロ付いた軍帽を被り直す長い黒髪の少女は、その足元に居る〝教師陣〟を一目置いて、その場から立ち去ろうとする。

 その中には『熊殺し』と『二千の技を持つ男』の二人も居たが、差して気にするまでもない。

 

「……ぅ、ぐっ」

 

「ほう」

 

 が、そうでもなかったらしく……『熊殺し』の通り名を持った山本兵司(やまもと へいじ)は、苦し気な声を漏らしながらも、震えに振るわせ、脚身に力を込めながら立ち上がろうとする。

 それに関心を抱いた少女は、その様子に目を見開きながらもゆっくりと立ち上がるのを待った。

 

「…………これは意外だ、私を前に立ち上がった者はそうそうに現れて来なかったものだが。―――ああ、スズオもお前のような人物を見習うべきだろう」

 

「……っ? 何を言ってんのか分からねぇが、お前、こんな真夜中に〝呼び出して〟おいて……いきなり襲うとは何事かッ。そして何が目的だ!」

 

「何事か、目的か……ふん、質問が多き事は決して悪しき事柄ではない。それは人としての未知に触れたいがための欲と業なのだからな。―――だが、上級生に対しての言葉の敬意がなってないぞ。そこはスズオと似ているが……」

 

「俺の質問に答えろッ! さもなくば―――」

 

 『熊殺し』の逆鱗に撒き散らされる殺気を何とも感じない少女は、呆然とした態度で彼の叱咤に溜息を吐き、しばし沈黙を帯びながら、そして―――

 

 

 

 

 

「―――さぁな」

 

 

 

 

 

「……は?」

 

 思わず、兵司はすっとんきょうな声を漏らす。

 

「ん、違うのか? チヨダ風に言えば〝さぁな〟と知らないフリをするのが定石と白井さんから教えられたが……間違っていたら済まないな、後日ほど白井さんを半殺しにするから、それで許せ」

 

「……っ」

 

 唐突な言葉に兵司は怒りを忘れて思わず、いやいやっ、と口にせずとも脳内にはそう張り巡らされた。否、こちらの質問に答えたのは確かで明白だが、その答えがあまりにも〝雑〟な返しに兵司は戸惑ったのだ。その言葉に一切のふざけた部分がないのに、何故かそのすべてを吹き飛ばされたかのような返t―――

 

 

 

 しゃりん。

 

 

 

「――――――」

 

 

 

 と、鍔鳴りが夜空に響いた。

 

 

 

「敵前で思考に偏らせ、戦意を欠くとは……お前は〝怠惰〟か?」

 

 

 

 〝音の速さ〟から突き抜けた速度と、人では抗えぬ〝知覚外〟からの斬撃……『不可識の剣撃(ゼロ・アクティブ)』―――不意にすら気付かない山本兵司の意識を刈り取るのに十分な一撃を、少女は与えた。

 ばたりっ、と再び倒れた兵司だが、暫くは起きてこないだろう。

 

 はぁ、と息をついた少女は、いつの間にか抜いていたらしい軍刀を鞘に納めて今度こそ立ち去ろうとする。

 

「……まぁ、そうだな。お前の問いに強いて答えるなら、弟を〝見守っていた〟……とでも言うか。そら、今のソレが正にそうだろう?」

 

 そう、山本兵司が彼を逮捕するにしたって、スズオには〝まだ〟逮捕するだけの証拠から罪状がなく、出来たとしても不当逮捕で扱われるだけだ。

 

 加えて、行方不明だった彼が見つかった事により、手厚く保護されるだけに過ぎない。

 だから意味は非ず、そして……

 

「とはいえ、急がなくてはな。政府の重要な案件の1つでもある『オーディンの渡り』が動き出し、それが……スズオを狙っているというのならば、尚更だ」

 

 欧州において隻眼の戦神、戦争と死の神である、その名称を呟いてから、少女の表情が微かに険しい顔へとなっていく。

 『オーディンの渡り』。それは近代で勃発している〝裏の戦争〟で、突如として頭角を現した武装組織の名称だ。

 メンバーは十数人としかいないながらも、科学における兵装、魔術や超能力における異能、剣戟や銃における武芸の技量……あらゆる分野において、逸脱しており、それらは金の支払いに応じて武力介入をする、いわば傭兵のような役目を担っているそうだが……

 

「スズオ、待ってろよ。お姉ちゃんが必ずお前を救って見せるから……!」

 

 それが彼女―――『たった独りの軍隊(ヘタイロイ)』と呼ばれた舩坂涼香(ふなさか すずか)の信念の露わなのだから。

 そして、漸く、この場にて対を成せる者がいなくなった事により、興が覚めたのかスズカは立ち去ろうと、出口へと通ずる階段に向けて足を運ぼうとした。

 

 

 




どうも、赤須です!

今回の話は如何でしたか?
ようやくスズオ君の姉を登場させる事が出来ました。強さ的にはスズオがターミネーターなら、姉のスズカはエヴァンゲリオンです。……はい、自分でも何言っているのか分かりませんが、とりあえず、姉はそのぐらい持っているという事ですね。

それと今後の予定としては、オリキャラ(偉人の子孫)を少しだけ出します。
登場したキャラが何の子孫であるのか当てたり、ググって調べてみるのも面白いかもしれません。因みに今回の話で出てきたオリキャラもその1人です。

それでは感想・批評・誤字脱字がありましたらよろしくお願いします。

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