ラブライブ! ―指輪の魔法使い―   作:ボドボド

1 / 4
新作始めました


プロローグ

伝説のスクールアイドル・μ’sが解散してから数年後。

 

――静岡県は沼津市。海辺の町、内浦にある浦の星女学院。

 

二年一組の教室には、春の柔らかい日差しが降り注ぎ、教壇では先生が現代文の授業を行っています。

 

お兄ちゃんの仕事の都合で、東京の秋葉原から引っ越してきて二週間が経ちました。最初は引っ越すってことになって、少し凹んでいたんです。だって、今まで住んでいた東京を離れるのは初めての経験だったし、高校二年生からの転校も凄く不安で……。転校が決まったとき周りの皆はショックを受けていたけど、伊豆は気候も良いし、温泉もあるし、食べ物だって美味しいし、自然に囲まれてとってもいい所だよって凄く励ましてくれたんです。

 

私も、確かに伊豆って有名な観光地だし、近くの沼津のガイドブックとか見ても凄く賑やかな港町みたいだしって、気を取り直してみたんだけど……。

やってきたこの町で、最初は物凄くビックリしました。だって、やっぱり住んでいたところと違っていたから。人は少ないし、お店もあんまりないし……。お兄ちゃんとお義姉(ねえ)ちゃんには、むしろ東京は物が溢れすぎているって言われたんです。

 

学校は岬の突端にある櫁柑山のてっぺん。長い長い坂を上って通う事だけは、前まで通っていた音ノ木坂学院と似てるかな。でも、一番違っていたのは生徒数の数。一時期廃校寸前にまで生徒数が落ち込んでいた音ノ木坂学院は、μ’sの影響もあって今では大勢の生徒が通う程人気の学校になりました。全校生徒数が百人以下の浦の星女学院は、みんなが地元育ちの幼馴染みばっかりらしくて、まるで家族みたいな雰囲気でした。だから私、この輪の中に入っていけるのかなって本当にドキドキして不安だったんです。そんなとき、お兄ちゃんが、余所者だからと言って殻に閉じこもる必要はないんだ。ここに住む人達は、友達になって下さいって言えば快く輪の中に入れてくれる人達ばかりだよ、って背中を押してくれたんです。

 

そしてもう一人。

 

「私と一緒にスクールアイドルやろうよ!!」

 

転校初日に声を掛けてきた千歌ちゃん。都会から転校してきた私がよっぽど珍しかったのか大はしゃぎでそう言ってきたんです。最初は、スクールアイドルなんて地味な私には無理です! って断ったんだけど、そんなことお構いなしとばかりに誘われて。お兄ちゃんとお義姉ちゃんに相談したら二人ともきょとんとした表情で、どこが地味なの? って言われたんです。お兄ちゃんには、可愛い上にピアノとヴィオラが弾けて絵を描くことができる女の子を地味とは言わないとも真顔で言われてしまいました。私、可愛くなんかないのに……。それを言ったらお義姉ちゃんの方が可愛いし、美人だし……。

 

本音を言うと実は密かに興味もあったし、憧れてもいたんです。お義姉ちゃんは元スクールアイドルのメンバーで、お兄ちゃんはその指導者。だから関心を持つきっかけは直ぐ近くにあったんです。

でも、そこに飛び込んでいく勇気がなかったんです。

 

ううん。本当は。

 

本当の、本当は――

 

ただできない理由を並べて、やろうとしなかっただけなんです。

 

そこをお兄ちゃんに見抜かれて、できる、できないで判断することも大切だけど、理由を探して並べるよりやるかやらないかで考えようって言われたんです。アイドルになれるチャンスなんて、この先何回あるか。もしかしたらこれが最後かもしれない。そう考えると、自然とやってみようって気持ちになったんです。

それに私を頼ってくれるみんなの為に、少しでも力になりたいと思ったから――。

 

 

     

 

授業が進んで昼放課になりました。

私、千歌ちゃん、曜ちゃん、果南ちゃんの四人で、中庭でご飯を食べることになりました。

みんなそれぞれ家から持ってきたお弁当を食べています。

 

「ねえねえ。梨子ちゃんのお兄さんってどんな人なの?」

 

「えっ? お兄ちゃんのこと?」

 

「ほら、前にお兄ちゃんがいるって言ってたでしょ? だからどんな人のか気になったんだ」

 

千歌ちゃんの唐突な質問に思わず聞き返してしまいました。だって、何の脈絡もなく聞いてくるから……。

私の知ってるお兄ちゃんのイメージを思い浮かべてみる。

 

「う~ん、とね……強くて、優しくて、カッコいいんだ」

 

「ほぉほぉ、ベタ褒めだねぇ。梨子ちゃんって実はブラコン?」

 

「ふぅえっ!? よ、曜ちゃん何言ってるの?!」

 

曜ちゃんにブラコンって言われた瞬間、一気に顔が赤くなりました。きっとトマトみたいになってると思います。

 

「顔が真っ赤っか。いやぁ、好きじゃなきゃあそこまで言わないと思って。でも、そこまで取り乱すとは思わなかったよ」

 

「ち、違います!」

 

寝てるお兄ちゃんの頬っぺたにキ、キスしたことはあるけどブラコンじゃないです!

 

「まぁまぁ、落ち着いて。兄妹の仲が良いのは良い事だし、家族なら好きで当然だよ」

 

このときは果南ちゃんが天使のように見えた気がしました。

 

「梨子ちゃんは、前まで音ノ木坂学院に通ってたんだよね? お兄さんは?」

 

果南ちゃんが少し話題を逸らすように別の話しをふってきました。果南ちゃんのさり気ない優しさが嬉しいです。

 

「お兄ちゃんも音ノ木坂だったんです」

 

「そっか。兄妹揃って同じ高校だったんだね」

 

 

「じゃあ梨子ちゃんのお兄さんってμ’sの誰かと同級生だったりするの!?」

 

「μ’sが活動してた時はもう卒業して大学生だったから、誰とも同級生じゃなかったんです」

 

「そうなんだぁ……」

 

興味津々だった千歌ちゃんの表情が、ショックを受けてがっかりしたものに変わりました。何とも言えない罪悪感に襲われて、あの事を言うべきなのか迷ってしまいます。

 

「千歌、同級生だったらどうしてたの?」

 

「曜ちゃんは気にならない? だってあのμ’sと同じ学校に通ってたんだよ!? もしかしたらμ’sの事だってたくさん知ってるかもしれないでしょ?」

 

千歌ちゃんがスクールアイドルをやろうとする限り、お兄ちゃんとお義姉ちゃんに出会うことになるのは時間の問題かもしれません。

 

「千歌ちゃん」

 

「どうしたの?」

 

「お兄ちゃんはμ’sの誰とも同級生じゃなかったけど、実はμ’sにダンスの指導をしてたのはお兄ちゃんなんです」

 

「え、えええええ~~~~!!!」

 

―――――

 

想像してた通り千歌ちゃんに質問攻めにされました。

出会った経緯とか、お兄ちゃんの特技とか、指導内容とか、解散後のこととか、たくさん。

でも一番圧倒されたのは、お兄ちゃんの写真を見せたときでした。千歌ちゃんに、お兄さんの写真見せて!って言われてスマートフォンの待ち受け画面を見せたのがいけなかったんです。

 

 

そこに写っていたのは、三人が写っている写真。前に住んでいた家を背景に、お兄ちゃんが真ん中に立ってお義姉ちゃんが左側に、私が右側に立っています。

それを見た千歌ちゃんは……

 

「り、梨子ちゃん。もしかして……ここに写ってる女の人って……」

 

「その人がお兄ちゃんの恋人で、私のお義姉ちゃんになる人です」

 

「ええええええええええ~~~~~~~っ!!」

 

さっきよりも大きな声で叫びました。やっぱり驚きますよね。あのグループの元メンバーが、お兄ちゃんと婚約してるなんて。

 

その後は大変でした。千歌ちゃんだけじゃなくて、曜ちゃんと果南ちゃんにも質問攻めにされました。恋愛話に興味を持つのは仕方がない事なのかなぁ。

どっちが告白したのとか、どんな人なのとか、他にもたくさん聞かれました。

千歌ちゃんは、いいな~、超羨ましい!!って言ってたけど、最初から順風満帆だったわけじゃないんです。

 

現在に至るまでには、想像もできないような絶望がお兄ちゃん達を待ち構えていたんです。

お兄ちゃんは当時を振り返ってこう言います。今までの人生の中で一番大変な時期だった、って。私もそう思います。だって、私自身にとっても大変な時期でした。

 

 

これは私が世界で一番大好きなお兄ちゃん――

 

桜内晴樹と

 

限られた時間の中で誰よりも輝いた伝説のスクールアイドル――

 

μ’sの物語

 

 

 

 

さあ、ショータイムです!

 




いかがでしたか?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。