ラブライブ! ―指輪の魔法使い―   作:ボドボド

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お待たせしました、第二話です。

それと感想の設定を非ログインユーザーでも書き込めるように変更しました。


第二話 指輪の魔法使い

「……悪いことしちゃったなぁ」

 

ツバサの姿が見えなくなるまで見送った後で、俺は罪悪感を抱いていた。彼女が突然人の家に押しかけて来るのは、今に始まったことじゃないけど俺が魔法使いだと知ってからは、焦っているとでも言うのか……必死で楽しませようとしているのが感じられるようになった。現在進行形で戦いの渦中にいる俺を、元の生活に戻そうとしているんだろうな。今ならまだ間に合う、今なら引き返せる、戦いをやめてまた三人で一緒に過ごそう、と。

 

でも、それはできない。

 

左手の中指に嵌めている赤い大型の指輪――フレイムウィザードリングに視線を落とす。

()()()()()()()から生還した日以来、常にこの指輪と、普段はベルトのバックルに擬態している黒い手型の機器――ウィザードライバーを身に着けるようになった。正直、俺だってこんなものを身に着けたくはない。ツバサがこれを見る度に気を使わせたくもない。それでも、いつ、どこで、誰かが、襲われているかもしれないと思うと、甘えたことは言っていられない。

 

「……それに魔法使いになることを選んだのは、俺自身なんだ」

 

忘れもしないあの日。

 

俺に選択肢と力を与え、見届けた直後に忽然と姿を消した白い魔法使い(ワイズマン)。今はどこで何をやっているのかはわからない。が、必要以上に会いたいとは思っていない。

 

「そういえば……フォーゼはどうしてるんだろ?」

 

ふと脳裏に思い浮かんだのは、一人の戦士の存在だった。まだ魔法使いに成り立てだった頃、四体のゾディアーツを相手に苦戦を強いられていたフォーゼと入れ替わり敵を撃破したことがある。何やら急いでいた様子だったけど、アッチはアッチで無事に戦いを終わらせることができたんだろうか?

 

「ハァ……やめやめ。さっさと帰るか」

 

わからないことをいつまで考えていても埒が明かない。俺は帰宅する人で溢れてきた駅に踵を向けて帰宅することにしたが―――

 

『ピイ! ピイ!』

 

歩道を歩いている最中に、機械的な鳴き声を発しながら赤い鳥が飛来した。こいつは俺の活動をサポートしてくれる使い魔(プラモンスター)―――レッドガルーダ。上空からの偵察や探索が得意で、意外にも力持ちだったりするんだけど、ガルーダが戻って来たと言うことは―――

 

「ファントムが現れたのか」

 

『ピイ! ピイ!』

 

ガルーダは俺の言葉を肯定するかのように再び鳴き声を発し翼を羽ばたかせた。

右手の中指に嵌めていたドライバーオンウィザードリングを外し、コネクトウィザードリングに交換する。それを手の形を模ったハンドオーサーに翳し魔法を発動した。ベルトが擬態している状態であっても魔法リングを発動させることが可能だ。

 

『コネクト・プリーズ』

 

コネクトとは『繋ぐ』という意味。その名の通りこの魔法は、魔法陣で別の空間を繋ぎ遠くにあるものを取り出すことができる便利な魔法だ。取り出したのは赤いフロントカウルをし、金と銀で彩られたバイク―――マシンウィンガー―――戦闘時以外でも日常生活で使用している俺の愛車だ。アイドリング中のバイクのシートに跨って黒のジェットヘルメットを被り右手でバイザーを下ろす。

 

「じゃ、案内よろしく」

 

『ピイ!』

 

―ファントムが人間を襲う理由は、仲間を増やすこと。

 

―その為だけに人間を襲い、大切なモノを破壊し絶望させようとする。

 

―けど俺がいる限り絶望なんかさせやしない、絶対に助ける!

 

―だから間に合ってくれ!

 

ガルーダに先導してもらう形でスロットルを捻り全速力で現場へ急行した。

 

 

     

 

広い公園のベンチで、私、園田海未は一人で物思いに耽っていました。頭の中で思い浮かべているのは、穂乃果の突拍子もない思い付きのことです。

 

進級して早々理事長から全校生徒に伝えられた衝撃的な言葉。来年度の入学希望者が定員を下回った場合、早くても三年後に音ノ木坂学院を廃校にせざるを得ないというものでした。……最初こそ衝撃的なことではありましたが、そうなっても仕方がないと感じている部分もありました。ここ数年の音ノ木坂学院は、少子化や時代の流れに逆らうことが出来ずに、生徒数が軒並み減少の一途を辿っているのです。その証拠に現在の各学年の教室の数は三年生が三組、二年生が二組、一年生が一組だけとなっているのが現状です。先月に卒業した旧三年生は四組まであったのですが……。

 

廃校の帰路に立たされるのはこれが初めてというわけではありません。今だからこそ()()()()となっていますが、音ノ木坂学院は元々女子高だったのです。それが三十年程前に廃校の危機を迎え、学院を存続させる為の解決策として男女共学の道を選んだと言われています。

 

決して学院そのものに大きな問題があるわけではありません。学院の歴史は古く何度かの改装と改築を施しながら地域の人々に愛されてきた由緒ある伝統校なのです。問題があるとすれば、部活動での目立った実績がないというところでしょうか。部活動の実績というのは入学希望者を募る上で重要なアピールポイントになりますが、学業ばかりに注力していた学院にとって最大の欠点でした。直近の実績と言えば珠算関東大会六位、合唱部地区予選奨励賞、ロボット部書類審査で失格など、もはや目立った実績と言えるのか定かではないものばかり。目立つところがあればもう少し生徒が集まっているはずなのですが……。

 

そんなとき穂乃果が突然言い出したこと。

 

―スクールアイドルをやろう!

 

最初は訳がわかりませんでした。聞けば廃校を阻止する方法を考えていたときに、廃校の遠因であるUTX学院を視察した際、スクールアイドル―――A-RISE―――の人気を目の当たりにし、全国的にスクールアイドルが流行していることから「自分たちがスクールアイドルになって人気を獲得できれば生徒が集まるのでは?」という考えに至ったそうです。最初は穂乃果の安易な思い付きだと思い非難しました。今まで歌はおろかダンスさえやった経験のない人間がいきなりスクールアイドルを結成することなど無謀だ、と。雑誌に掲載されているような人気のスクールアイドルは、私達と違い頂点に上り詰める為にプロにも劣らないような過酷な練習を積み重ねてきた人達です。普通に考えれば到底太刀打ちできるものではありません。

 

放課後、ことりに誘われて校舎の裏で見たのは、穂乃果が懸命にダンスをしている姿でした。そのとき改めて思い出したのです。彼女はこういう人だった、と。穂乃果の思い付きに振り回されたことは多々あります、数えたらキリがない程に。でもどんな思い付きであったとしても後悔をしたことは一度もありません。私達が尻込みしてしまうところをいつも引っ張ってくれました。穂乃果は何事にも一生懸命で、情熱的で……。無意識に周囲の人を惹きつける行動力に魅了され私達は付いてきたんです。

 

そこまで思い返したとき私の答えは既に決まっていました。一人で活動しようとしても意味がありません。やるなら三人で一緒に―

 

「少しよろしいですか?」

 

「はい? ……あの、あなたは?」

 

穂乃果のことを思い返していると、突然男性に声を掛けられました。見れば三十代前半と思われる風貌で少し厳つい印象を受けました。

 

「失礼。私、こういう者です」

 

スーツの内ポケットから名刺入れを取り出し、差し出された名刺には

 

『週刊サンライズ 網野亮』

 

と書かれていました。

週刊誌はほとんど読みませんが、雑誌の名前は知っています。週刊誌には珍しく若年層

を意識した内容で、男女問わず関心を持ちやすい内容で構成されているのが特徴的だとか。それが功を奏し一気に読者を獲得することに成功したそうです。

 

「それで私に何か?」

 

「実は今”あなたの心の支え”という題材で取材をしているんですが、少しお話を伺ってもいいですか?」

 

 

―――――――

 

「ではその女の子が、初めてできた親友というわけですね?」

 

「はい、そうです」

 

私はいつも生徒手帳に挟んでいる写真を取り出し、天真爛漫な笑顔を咲かせた穂乃果に苦笑しました。穂乃果と友達になってから初めて撮った写真。何年も経っているせいで多少色褪せていますが、真ん中には穂乃果が、右側に私、左側にことりが写っています。

 

今だからこそ凛としたような性格だと言われますが、小さい頃は極度の臆病だった上に恥ずかしがり屋だったんです。それが災いしてか、公園で穂乃果とことりが遊んでいるところを話かることができずに、木の陰に隠れていたところを穂乃果が見つけて「一緒に遊ぼう!」と声を掛けてくれたんです。これが私達三人の原点。

 

次第に付き合うようになっていくうちに、一度思い立ったら突き進む情熱的な一面や、だらしない姿を目にするようになりました。同時に私が彼女に対して厳しく説教するようになっていったのも、この頃からだと記憶しています。嫌いなのではなく、穂乃果にしっかりしてほしいから。もちろんいつも穂乃果を甘やかすことりにも説教することだってありますよ。ですが、今では二人とも掛け替えのない大切な親友です。

 

「なるほど。それが貴様の心の支えか」

 

「え?」

 

今まで丁寧な言葉遣いだったものが、乱暴なものに変わったことに戸惑い思わず網野さんに顔を向けました。そこにはまるで獲物を見つけたかのように不気味な笑みを浮かべている網野さんの顔がありました。

 

「何をするんですか! 返して下さい!」

 

「フンッ!」

 

「うっ!」

 

次の瞬間、持っていた写真を強引に奪われ反射的に取り返そうとしましたが、裏拳が顔に直撃し弾き飛ばされてしまいました。あの写真は私にとって大切なものなんです。なんとしても取り返さなくては!

 

怒りの形相で睨み付ける私を網野さんは鼻で笑ったかと思うと、顔に化物の影を浮かび上がらせ、全身から不気味なオーラを発して姿を変えたのです。

 

「ッ!? あなたは一体! 人間ではないのですか!?」

 

「網野は絶望して死んだ。俺というファントムを生み出してなぁ」

 

「ファン、トム……?」

 

「俺達ファントムの前では、お前は無力だ。……フンッ」

 

「うっ……あぁっ……」

 

ファントムは奪った写真を掌で弄び火球を生み出して容赦なく燃やしたのです。その事実を認識した直後、身体の奥から強い衝撃が襲いかかり胸元を握り締めて蹲ってしまいました。

 

「お前も絶望して新たなファントムを生み出せ!」

 

ずっと大切にしてきた心の支えを失ってしまったことにより、自分という存在に内側から亀裂が入っていくのがわかります。くっ……私は……一体……どう、すれば……。あの写真を……失って、しまっては……もう……。

 

「諦めるな!!」

 

「……え?」

 

「ぐあっ!」

 

唐突に聞こえてきた男性の大きな声。

朦朧とし始めた意識で首だけを声のした方向に向けると、一台のバイクが猛烈な勢いで駆け付けスピードを一切落とすことなく前輪を持ち上げファントムに突撃したのです。

 

「大丈夫か? 絶望なんかしちゃダメだ」

 

「……あなた、は……?」

 

「自己紹介は後で。今は君を助けるのが優先だよ、だから少しだけ待ってて。すぐに終わらせるから」

 

バイクから降りて駆け寄ってきた男性は、私に励ましの言葉をかけると直ぐにファントムと対峙しました。

 

 

 

 

完全に間に合ったとは言えないけど、女の子はまだ絶望してはいないみたいだな。今ならまだ打つ手はある。でもその前に、目の前のミノタウロスを倒さないとな。

 

「貴様、何者だ!」

 

「俺が何者か……だったら、その小さい目ん玉ひん剥いてよーく見な。似非ファントムさんよ」

 

半年以上魔法使いとして戦ってきたから、ファントムの間でとっくに名前は知れ渡ったと思ってたんだけどなぁ。どうやら未だに俺の事を知らない奴がいたらしい。

 

『ドライバーオン・プリーズ』

 

右手の中指に嵌めているドライバーオンウィザードリングをハンドオーサーに翳し、擬態を解除してウィザードライバー本来の姿に具現化させる。

 

―知らないなら教えてやる

 

―俺を、人々の希望を守る魔法使いの事を

 

『シャバドゥビタッチヘンシーン! シャバドゥビタッチヘンシーン!』

 

ドライバーの左右側面にあるシフトレバーを上下に操作してハンドオーサーを左に傾けると、この場には似つかわしくないテンションの高い音声が繰り返し鳴り響き、右手の中指で左手に嵌めているフレイムウィザードリングのバイザーを弾くように下ろす。

 

あとは覚悟を込めてあの言葉を叫ぶ!

 

「変身!」

 

左手の甲を向け顔の右前で掲げ、ハンドオーサーに翳す。

 

『フレイム・プリーズ』

 

『ヒーヒー・ヒ―ヒーヒー!』

 

左腕を地面と水平にして左方向へ伸ばすと、その先に赤い魔法陣が出現。ゆっくりと接近し、身体を通過していくに連れて、炎に包まれるような赤いオーラを発しながら姿を変えていく。左手の先から徐々に変身していき、魔法陣が完全に通過し終えると、ルビーの如き赤い顔をし、ロングコートのような黒い魔法衣を身に纏った戦士が、戦いの舞台へと登場した。

 

フォーゼから一つだけ教えてもらったことがある。

 

それは、人知れず人類の敵と戦う戦士の名前―

 

その名は―

 

「俺は名は……仮面ライダー、ウィザード!」

 

過去に幾つもの世界で、幾人もの戦士が名乗り、英雄として認められてきた称号。

 

その称号を受け継ぐ者としての戦いは、既に序章を終え、第一章の幕を開けた。

 

「さあ、ショータイムだ!」

 

 

―――――

 

――――

 

―――

 

――

 

 

『さあ、ショータイムだ!』

 

どことも知れない白い空間に、()()()()()()はいた。空中にはウィザードに変身した晴樹が映っており、九人はその様子を見守っていた。

 

「ついに物語が動き出したね」

 

右側の髪の毛をサイドテールに結った女性が神妙な面持ちで呟いた。彼女達の物語は一旦の終わりを迎え、光を次代の女神達に引き継ぐ時を待っている。その最中、一人の青年と、九人の少女達の物語が始まる予兆を感じ取ったのだ。

 

「えぇ。と言ってもあの世界で九人が集まるのはまだ先だけどね」

 

「でもこの晴樹くんと海未ちゃんの出会いが、一つのターニングポイントになったことは間違いないですよ」

 

黒い髪の毛をポニーテールにした女性が頷き、ストレートロングの女性がそれに続く。

 

「どんな形の出会いであっても、一度繋がった(えにし)は簡単に途切れるものじゃない。重なり合えば人生を変えることだってある。私達みたいに」

 

長い髪を首元で二つに分け、紫色のシュシュで結んだ女性が出会いの大切さを説く。彼女達の出会いはある打ち合わせから始まったのだが、ほとんどの人が初対面で何を話すべきなのかに戸惑ったことがある。しかし六年の時を経て紡いできた絆はいつしか掛け替えのない大切な物となり、今後も一生の付き合いになっていく。この思い出は一生忘れることはないだろう。

 

「仮面ライダーは名前しか知らなかったけど、なんだか華麗な感じがするわ」

 

「私もあの指輪が欲しいにこー」

 

肩甲骨辺りまで伸びた茶髪をアイロンでロール巻にした女性が見たままの感想を呟き、黒髪を赤いリボンでツインテールにした女性が抱き着き指輪をねだる。

 

「指輪があっても魔力がないと変身できなかったような……」

 

「変身できなくても魔法が使えたら便利なのになー」

 

「あはは……」

 

茶髪のショートボブにカチューシャを付けた女性が冷静にツッコみ、黒髪のショートカットの女性が願望を口にし、髪が腰にかかる程のロングヘアーを、向かって左側の髪の一部の根元を輪にしてリボンで結んだ女性が苦笑する。

 

「楽しいこと、嬉しいこと、辛いこと、悲しいこと……色んなことを経験していくよ。時には心を擦り減らすことだってある。でもね、私は信じてるよ。”君達”ならどんなことだって乗り越えられるって。だから、どんなときでもファイトだよ!」

 

彼女達の声が映像の向こう側に届くことはない。”君達”というのが誰を含んでいるのかわからないが、彼女達にはわかっているのだろう。まもなく出会い、奇跡の物語を紡ぐことになる女神達を。今の言葉はそれに向けた言葉だったのだ。

 

 

空間が一瞬光ったかと思うと既に女神達の姿はどこにもなかった。

 

だが、最後の瞬間。

 

刹那に垣間見えた女神達の表情は、満面の笑顔だったとだけ言っておこう。

 

 

 

『輝きの向こう側で、待ってるよ』

 




というわけでヒロインその①海未ちゃんの登場回でした。

FLが終わって早一週間以上が経過しました。みなさんは観に行きましたか?
私はライブを生で観ることは叶いませんでしたが、ライブの様子を録画したものを地元の東宝シネマズで観ました。生のLVに行きたかったです。
その勢いを保ったまま書いたのが、ラストの流れです。本当なら晴樹がウィザードに変身したところで区切る予定でした。なので急ごしらえで書いたので内容がgdgdになってしまいました…。勢いって怖いね。


μ′sの18人は物語を一旦終えてしまいましたが、本作の物語はまだ始まったばかりです。これから彼らがどんな物語を織りなすのかお楽しみに。


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