紅の系譜   作:テッソルムリア

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4.レミリア・スカーレットは当主である

―――紅魔館 謁見の間―――

 

普段は来客の際、訪問者が当主にお目通りするときに使われる広間である。

他の部屋より大きく豪奢な扉を開くとまず、奥まで続く紅い絨毯が目に入る。

更に目線を先にやると、まるでどこかの王族が座るような絢爛豪華な椅子に辿り着く。

少し高めの段差の上にあるその椅子は、訪問者が自然と見上げる形になる―――支配者のための椅子だ。

昼はカーテンが閉め切られ閉塞感を醸し出し、夜は月明かりがまるで後光のように差すその空間は、訪問者に威圧感を与えるだろう。

 

が、それはそれ。これはこれである。

今はそんな空気は微塵もなく、吸血鬼の姉妹が和気あいあいとした雰囲気を出しているだけである。

少し前までは考えられない光景だったが、今では紅魔館の日常になりつつある。

―――そのことに感慨を覚えつつ、レミリア・スカーレットは本題を切り出すことにした。

 

「それで私に何か用があったの?」

穏やかな微笑をたたえつつ、フランドールにたずねるレミリア。

それに対しフランドールは、パッと花が咲くように顔を綻ばせ、姉に話し始めた。

 

「実はね……」

 

 

 

 

 

 

「なるほど。それで私の所に巡り巡ってきたわけね」

一通りフランドールの話を聞きおえたレミリアは、納得したといった感じでそう言った。

 

「つまりもっと詳しく両親について聞きたいということでいいかしら?」

半ば確信しつつ、レミリアはそう尋ねた。

が、しかし

 

「あ、うん。そう思ってたんだけどね……?」

対するフランドールの返答は要領を得ないものであった。

 

「……?どうしたの。何かあったの?」

そんなフランドールの態度に不安気に心配するレミリア。

姉の雰囲気が急変したことに慌て、フランドールは取り直した。

 

「何かあったとかそういう訳じゃないの!だから大丈夫だよ!」

「そう?それならどうして……」

姉に再度尋ねられたフランドールは一瞬黙りこくり、ゆっくりと話し始めた。

 

「……最初はね?確かに両親について知ろうとしてたの。でも美鈴やパチュリーの話を聞いているうちにこう思ったの。―――他の住人はどうだったのかな って」

レミリアは黙ってその話を聞き、続きを促すとように視線を送る。

 

「例えば美鈴やパチュリーは当時―――まだお父様が当主の頃にも紅魔館にいたんでしょ?私は今の彼女たちしか知らない。……言い方は悪いかもしれないけど、お父様やお母様はもういない。だからこそ知りたいって思いは確かにあるけど、それよりも今私といてくれる人たちについて知りたいなって思ったの……」

そう言い、少し顔を俯かせるフランドール。

聞き役に徹していたレミリアは、一つ頷くと口を開いた。

 

「……そう。そうだったのね。ならば私はそれに応えるわ」

そこで一息入れ、フランドールの顔をしっかり捉える。

 

「パチェは……大図書館に籠もりっきりの本の虫だったわね」

「……?」

レミリアの話に不思議そうな顔をするフランドール。それは今も同じではないのか。

フランドールの表情から言いたいことを察したレミリアは苦笑し続ける。

 

「今よりも酷かったのよ。今は食事の時などは出てくるけど、それすらなかったのだもの。そもそも食事を取っていたのかすら怪しいわ。大図書館も今ほど気軽に入れる場所じゃなかったし―――魔女の工房みたいな雰囲気でね―――直接顔を合わせたのも数えるほどよ。一応当主の娘なのにね。それに表情も今ほど豊かじゃなかったわ。無表情というか仏頂面というか……近寄りがたい感じだったわ。今じゃ驚くほど明るくなったわね。とても良いことだと思うわ」

「じゃあお姉様とパチュリーはいつから仲良くなったの?」

「……それは私たちの両親がいなくなった後のことね。私もいきなり当主になったものだから何をしたら良いか分からなくて……苦手な印象はあったけど、以前から両親と親交もあった大図書館の魔女の所に助言を求めに行ったのよ」

「……それから?」

「全くもって拍子抜けするような結果だったわ。こっちは散々構えて行ったのに、以前の近寄りがたさなんて無かったかのように親しげな雰囲気なんだもの。まぁ多少不思議には思ったけど、仲良くしてくれるならそれに越したことはないし―――相手の策略なら押し潰すまでだし―――ね。その時から今までパチェはそんな感じで仲がいいわね」

「じゃあ美鈴は?」

「美鈴は……」

そこでレミリアは一旦口を閉じると、昔を思い出すかのように目を細め―――

 

「あんまり印象に残ってないわね」

「えぇー……」

呆れたような声を出すフランドール。

その声を受け、レミリアは弁解のようなことを始めた。

 

「だってその頃は門番でもなかったし……館内はメイドやらなんやらがうじゃうじゃいたのよ?自分専属の従者でもない限り覚えてられないわ」

「……じゃあお姉様は美鈴については知らないんだ」

「直接会ったことはないわ。でも紅魔館にいたのは確かよ」

「……もう、私が知りたいのはもっと詳しいことなのに、それじゃ意味ないじゃない」

溜息をつきそう言うフランドール。どうやらレミリアからこれ以上の話は出てこないようだ。

 

「美鈴のことは本人に直接聞いた方が早いかな。お話聞かせてくれてありがとうお姉様!またあとでね!」

そう言うとフランドールは謁見の間から立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

本来の厳かな雰囲気を取り戻した謁見の間。

フランドールとの会話は終わったが、レミリアはその場にとどまっていた。

と―――

 

「ここにいたのねレミィ」

「……パチェか」

 

突如現れたパチュリーにまるでその出現が分かっていたかのようなレミリア。

謁見の間はその空気をガラリと変え、なお昔語りは続いていく……

 

 

 

 

 

 

 

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