蒼い惑星、地下大墳墓に転移する   作:天休観測

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ブルー・プラネス

※※※

 

 

「うっわすげえな、なんだこの黒さ。なんで青い気泡が沸いてるんだ」

「良い見た目だろう? 邪竜メイリストの涙とブルーエールを合わせてみたらこうなった。名付けて『災厄の超新星(カタストロフ・ノヴァ)』だ」

「伝説級素材と下位素材と中二ネームの驚異のミスマッチだな。よくこんな最悪の組み合わせを思いつくもんだ」

「こういうお遊びにも妥協はしない。一流の悪には一流の酒がつきものだしな」

「酒としては最悪なんですが……酩酊どころか朦朧までイってるぞ」

「はいはーい!次は俺ね!」

「おいるし★ふぁー連れてきたやつ誰だよ、ロクなことにならねえって言ったのに」

「まあまあ見てろよ見てろよ! じゃーん!」

「ほお、普通に綺麗じゃないか。この緑は……グリーンスライムの肝だな?」

「ご名答!そして氷でゴーレムを作ってグラスにいれてみますた!」

「流動する液体の中でゴーレムがもがいてるのはなかなか愉快だな」

「想像よりふつうで逆に困惑するやつだ」

「というかこれ、効果に酩酊が入ってないから酒じゃないんですが」

「てめぇルール読んでから持ち込めアホ!」

「あるぇー??」

「……何してるの君ら」

「あ、ブルプラさんちーっす」

「半月に一度の名酒品評会だ。ま、飲んでも味やら臭いはわからんから、鑑定できる奴に効果を見てもらって総評してる」

「せっかくバーなんて作ったからな、棚に置く酒は俺たちで選別したいだろ」

「それはまぁ、わからなくはないけども」

「よし! 次は俺の『建御雷三号』だ!」

「建やんはもう少し捻ろうや……毎回電気ブランだし」

「いやいやいや! 今回はわざわざサンダーバードの電気を入れてきてるからな、全然違うぞ!」

「効果、前回からそんなに変わってないですよ」

「何ィ!?」

「けっこう楽しいから、次からブルプラさんも参加してみなよ。製作スキル持ってるでしょ?」

「ああー……うまく思いついたらね」

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 私室前で待機させていたオーレオールと合流し、第九階層を歩き出す。

 先程モモンガに声をかけたとおり、この後はシャルティアに声をかけた後、第一~第三階層を散策する予定だった。あそこを担当したのはギミック担当、及び階層守護者であるシャルティアを作ったペロロンチーノだったはずだが、ブルー・プラネットにとってはそれほど交流の深かったメンツというわけではない。もっともアインズ・ウール・ゴウン内では、という話で、決して仲が悪かったわけではないのだが。

 要はそんなに詳しくないのだ。散策する価値はある。黒棺は行きたいし。

 

「そういえばシャルティアだけど、今は第一階層にいるのかな?」

「いえ、彼女は……そうですね、とある一件から謹慎処分を受けていると聞いております。現在はこの第九階層にいらっしゃるようですね」

「謹慎?」

 

 そういえば、モモンガが話していた。『シャルティアと戦った』と。

 世界級アイテムにより洗脳を受けた彼女を救うために殺してしまったと。

 話を聞く限りそれは正しい行動だったと思うし、きっとブルー・プラネットが同じ状況になったとして、他に選択肢がなかったのだからそうしただろう。何より、仲間の造った娘とも呼ぶべき存在を洗脳されたとあっては冷静でいられる自信がない。

 おそらくその件で謹慎を受けたのだろう、と推測する。彼女たち守護者およびシモベ達の忠誠と、モモンガの人柄から考えれば納得の処分である。……前者だけであれば復活も許されなかっただろうが。

 

「なるほどね。九階層のどこ? 雑貨店? ブティックかな?」

「いいえ。バー、ですね」

「あぁ……」

 

 仕事に失敗した女性がどこに行くかを想像しながら候補を挙げたが、正解は無慈悲にも『いちばんやっちゃダメなやつ』だった。

 深酒になってないと良いんだがと祈りながら、つま先の向きをバーのあるほうへと変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、やってるね」

「いらっしゃいま――ブルー・プラネット様!?」

 

 顔を出した途端、店内の静寂を引き裂くように驚愕の声を上げた副料理長に『しー』と指を一本立てて示す。

 カウンターにいる先客を起こさないように、という配慮からだ。もっとも、彼女は飲んだくれてはいるが意識は手放していなかったが。

 

「副料理長、驚かせて申し訳ないね。今日はお客は――彼女だけかな?」

「ええ。――よろしいのですか?」

「構わないさ、ここはそういうところだろ?」

 

 副料理長は歓喜していた。デミウルゴス様とコキュートス様以来、久々のこの場にふさわしい御方――しかも女性連れ!

 その中でも、静かに淑やかに呑むことを好まれそうなブルー・プラネット様。そして後ろの女性は、カウンターで突っ伏して御方をロクに見もしないめんどくさい女(シャルティア)と違い、楚々とした雰囲気。

 こういうのを待ってたんだ――副料理長は心の中で叫んだ。

 

「ええ、ええ。そうです、そうなんです。ここはそういうお店――御方に給仕できる幸せ、感謝いたします」

「え、うん、そう。まぁ、君が喜んでくれるなら構わないんだけど――シャルティアの隣でいいかな?」

「よろしいのですか? 正直、あまり見せられた状況ではないと思いますが」

「彼女に用事があってね」

「かしこまりました。ところでブルー・プラネット様、そちらの淑女(レディ)は」

「ああ、彼女は」

「桜花聖域守護者、オーレオールと申します」

 

 オーレオールが自己紹介の後、副料理長と談笑する中、ブルー・プラネットはシャルティアの肩を叩く。女性の起こし方としては多少不正解だが、彼にはそれ以上の方法が思いつかなかった。

 

「シャルティア、シャルティア」

「んん……ああ、今はこの地を去った御方の声……夢を見ているようだわ……」

「シャルティア、起きて」

「……ブルー・プラネット様?」

「おはよう、シャルティア」

「……~~~~~~~!?」

 

 悲鳴を上げようとした口を強引に手でふさぐ。TPOを考えると、ここにそんな音は似合わないと思ったがゆえの反射的行動だ。副料理長は心の中でサムズアップする。

 

「……っはぁ、はぁ……失礼、見苦しい姿をお見せしんした……」

「落ち着いたかな? 俺がナザリックに戻ったって話は聞いてない?」

「い、いえ……アルベドから聞いております。ただ、まさかこうして直接お会いする機会がありんすとは思ってありんせんしたから……」

 

 声はだんだんとしぼんでいく。例の一件の責任感から、ブルー・プラネットに会う資格もないと思っているのだろうか。

 これは多少元気づけてやらねば男がすたる。本当は守護階層を散策する旨を伝えるだけのつもりだったが、幸いにもここはバー。酒は心に刺さった棘を抜きやすいよう、心を柔らかくしてくれる。

 

「シャルティア、モモンガさんから事情は聞いているよ。辛かったね」

「ブルー・プラネット様――! いいんでありんす、こなシモベとしての存在意義が危ぶまれるような大失態を犯した愚かな女を、どうか許さないでおくんなんし」

「君を許す、許さないを決める立場にいる人は、ナザリックではモモンガさんだけだ。けれど、彼は君を殺して放置することはなく、すぐさまナザリックの財産を使って蘇生させた。何故だかわかるかい?」

「……なぜで、ありんしょうか」

「わざわざ罰するために蘇生するなんてことをする人じゃない。彼はね、期待してるんだよ。ペロロンチーノさんに造られた君が、この一件を払拭するような、すばらしい働きを見せてくれると」

 

 シャルティアの沈んだ顔が上がった。散々泣いた後なのだろう、目は赤く腫れていた。

 

「今は、君に何ができるのか考える時間だ。そのための謹慎だ。ただ酒を飲んで、忘れようとするだけじゃダメだよ。モモンガさんの愛に応えられるようにね」

「ああ――ブルー・プラネット様――! 慈悲深き我が君――なんて、なんてお優しいんでしょう――」

 

 ペロロンチーノの設定した語尾も忘れて、シャルティアは再び落涙した。尊い至高の御方は、自分を愛してくれているという。あんな失態を犯し、造物主に刃を向けた愚か者を、なおも愛してくれるという。

 それはどんな慰めよりも優しく、熱かった。

 

「さあ、ここはバーだ。お喋りだけでなく、酒を楽しむ場所だよ、シャルティア。もうだいぶ飲んだ後のようだけど、何か頼むと良い。副料理長は最高のものを出してくれるはずだ――ああ、オーレオールも何か頼むかい? ここに来るのは初めてだろう」

「ええと――申し訳ありません、ブルー・プラネット様。こういった場所の経験がなく、何を頼めばいいやら」

「おや、そちらの和服美人はどちらさんでありんすか?」

「桜花聖域の守護者で、オーレオール・オメガという。同じ100レベルだ、仲良くしてあげてくれ。しかし、そうか。確かにこういう場所は初めてだと悩むよな――よし、副料理長。アレはできるかな」

 

副料理長は思考を巡らせる。勿論その答えは決まっている。御方が望む以上、できないと言うわけにはいかない。

 

「アレ――ブルー・プラネット様の『アレ』ですね? 私程度の腕で御方の味を再現できるかは不安ですが、全身全霊を込めて作らせていただきますとも」

 

 少しカッコつけて“アレ”で注文してしまったが、どうやら伝わったらしいことにブルー・プラネットは安堵した。

 実際にこうして注文できるようになってからここに来るのはブルー・プラネットも初めてだったが、副料理長にはここで作られたすべての飲み物と料理が把握されているはずだ。

 

「じゃあ、それを2つ――シャルティア、君はどうする?」

「ぜひ! 御方と同じ飲み物を口にすることをお許しくだされば!」

「じゃあ3つだ」

「かしこまりました」

 

 副料理長はシェイカーとガラスでできたポットを準備する。なるほど、アレは実際に作るとシェイクも入るのか。自分で酒を作ったときは『作成』ボタン一つではい完成、あとは色彩配置を外部からいじって調整するのが普通だったが、現実としてみると中々新鮮だ。

 ポットには乾燥した深い藍色の花弁が入れられる。湯を注ぎ、出来上がるまでの目隠しとでもいうようにカバーがかけられた。

 

「あの花はなんでありんしょう? 好みの色をしてるでありんすが」

「ブルーマロウだよ。もともとはピンク色をした花なんだけど、乾燥するとあんなふうに濃い藍色を示す。香りはあんまり強くないんだが、色が実に綺麗なんだ。元々は欧州の――いけないいけない、余計な話になるところだった……実は、最初の一輪はペロロンチーノさんにも探すのを手伝ってもらってね」

「ペロロンチーノ様に?」

 

 創造主の名前が出たことで一層元気を増した様子のシャルティアに、ブルー・プラネットは満足げに頷く。

 

「そう。その花はユグドラシルでは生息エリアが限られて、そのくせ広いエリアにぽつぽつと点在してるんだよね。自分だけじゃどうしても見つけられなくて、ペロロンチーノさんに空からの探索をお願いしたんだ。超高度から遠視を使ってくれてね、すぐに見つかったよ」

「ああ――流石は至高の造物主――そのようなお話が聞けるなんて、わたし、こんなに幸せでいいんでしょうか――」

 

 まさに神話を聞かされたかのように、いつもの口調も忘れてシャルティアは恍惚の表情を見せる。

 一方、副料理長はシェイカーを取る。いくつかの氷を入れ、合わせたのは黄色と赤い液体だった。

 

「あれは、なんですか?」

「黄色いのは果物、『フィオの木の実』のジュースだね。赤いのは『マロニスの葡萄酒』。見てるとおもしろいことが起きるよ」

 

 シェイカーのトップを抑え、洗練された動きでシェイクが始まった。きのこ頭とはいえ、格好はれっきとしたテンダーである。様にならないはずがない。

 副料理長も、一級の相手に最高の品を出すため、最高のパフォーマンスを見せていた。シャルティア(めんどくさい女)も普通にしていれば蠱惑的な美少女である。さらに偉大にして至高の御方たるブルー・プラネット、淑女然とした表情の和服美女オーレオール・オメガ。副料理長はかつてない喜びに気を失いそうになりながらも、15回のシェイクを終わらせた。

 

「さ、注がれるぞ」

 

 用意された3つのグラス、外されたトップからトクトクと注がれたのは――真蒼。深い深い、蒼い液体だった。

 

「えっ――」

「これは――」

 

 左右の華は驚きを隠せないようだった。唯一タネを知っている副料理長と目を合わせ、微笑むのはブルー・プラネット。

 

「マロニスの葡萄酒の性質でね、温度が一定より低くなると色が真っ青に変わるんだ。もう一つのフィオの木の実は、ほら」

 

 蔦の指す先、真蒼の中に、ちらり、ちらりと黄色が浮かんでいるのが見える。

 

「こちらは氷の破片に浸透して、強い黄色を示す」

「そして、最後にこちらを注げば」

 

 ポットからカバーが取り払われ、目に入ったのは透き通った蒼。先に見せられたそれよりも遥かに明るく、向かい側を見通すことができるほど澄んだ蒼に、二人の女性は目を奪われた。

 副料理長の魔法により温度を下げられたブルーマロウが真蒼に注がれれば――

 

「完成……というわけです。お待たせいたしました、『ブルー・プラネス』です」

 

 自分の名前をもじってつけられたその名は、品評会で優勝した際にもらったものだった。ネーミングしたのは誰だったか、言い出してからは伝搬が早くて止められなかったのを思い出す。コンセプトは『美しい地球』だったとはいえ、自分の名前に近いものがつけられるとか普通に恥ずかしい!

 

「さ、いただこうじゃないか」

「……失礼いたします」

「いただきます」

 

 カクテルを飲むのには若干間違った言葉が飛び出す中、グラスは傾けられた。

 副料理長は緊張の面持ちでブルー・プラネットを見る。半分ほど中身が減ったところで、至高の御方は一呼吸置き――

 

「――うまい」

「美味しい――」

「これは――素晴らしいでありんすね」

 

 三者三様、しかし、どれも高評価なのは間違いない。

 

「やるじゃないか、料理長。俺はこれよりうまい酒を飲んだことがないよ」

「光栄にございます」

「私も、第八階層ではお酒を嗜む機会がなかったのですが――ああ、これはいいものですね。ふんわりと、温かい気持ちになります」

「ペロロンチーノ様とブルー・プラネット様の力の一端をありありと見せつけられたようでありんす……」

 

 マロニスの葡萄酒は弱い酒の部類に入っていた、と記憶している。酩酊の持続時間は最低だったはずだ。

 初めての飲酒にしては上々の経験をさせてあげられたのではないか。オーレオールが恥ずかしげに微笑みながらグラスを傾けるのを、じっと見つめながらそう思った。

 

──補足するならば。

女性には慣れていない、と言う割に酒の席でここまで口と気が回るのは、生来の彼の才能と言わざるを得ない。

 星々に魅了され、自然を愛する浪漫愛好家(ロマンチスト)は、無骨な見た目からは想像もつかないほど、自然に女を口説いていた──それも無意識なのがタチが悪い──と、リアルの同僚達の間では密かに有名であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、ブルー・プラネット様はわたしにどんな御用があったんでありんしょうか」

 

 バーを出て、シャルティアが思い出したようにつぶやく。

 当のブルー・プラネットも主目的をすっかり忘れていた。

 

「ああ、第一から第三階層までの散策がしたいんだ。ここに帰還してからまだ一度も見ていないからね、気になっていて」

「帰還――そうでありんした。ブルー・プラネット様、遅れましたが申し上げたく存じんす」

 

 シャルティアは数歩下がった後、跪き、手を胸に当てて宣言する。

 

「至高なる御方、ブルー・プラネット様――御方の御帰りを心より喜び申し上げます」

「……ありがとう、シャルティア」

「こうしてお隣に座り、ごちそうになったことは一生忘れんせん。ナザリックのいっそうの繁栄のため、アインズ様のご期待に応えるためにも、全力を尽くす所存でありんす。……先ずは、ブルー・プラネット様の案内を務めさせていただきたく」

「うん、よろしく頼むよ」

 

 シャルティアは、心優しいブルー・プラネットを、アインズと同じように愛したいと思った。屍体性愛者としての性分と、最後の時までナザリックに残ってくれた慈悲深さからアインズに対する想いは強いが、それでもこうしてナザリックに戻り、隣に居て慰め、創造主の活躍を語り、今までの非を咎めずにいてくれた心優しい御方はそれに並ぶほどの存在だ。

 しかし、その優しさはきっと自分を試してもいるのだとシャルティアは思う。ブルー・プラネットの優しさに甘えていれば、いずれその程度の存在として見捨てられてしまうだろう。

 強くなろう。強くなって、きっと御方々の役に立って見せる。今までの汚名をすべて雪ぐほどの活躍を、シャルティアは『アインズ・ウール・ゴウン』の名に強く誓った。

 

 そうして九階層を歩く三人だったが、シャルティアはふと浮かんだ不安を、先頭を歩く御方に投げかける。

 

「ところで、ブルー・プラネット様は第六層の星空とジャングルを手掛けた自然を愛する御方と聞き及んでますが……わっちの守護する階層にはそれらしいものがありんせんでありんしょう? 御方にご満足いただけるか……」

「はは、俺は自然環境も大好きだけど、自然生物も大好きだからね。その点は全然大丈夫だよ」

 

 振り返ることなくそう言うブルー・プラネットの言葉は明るい。しかし、その言葉ではシャルティアの疑問は晴れなかった。

 

「生物……? はて、第一層から第三層までは主にアンデッドが締めている……あ、わたしの眷属……はわざわざ階層に行かずとも見られるし……ブルー・プラネット様は何を目的に?」

「え? 黒棺だよ」

「ぁっ」

 

 思い出したように小さく悲鳴めいた声を漏らしたのはオーレオールだ。

 その名を冠する部屋の住人、自らの部下のおぞましい姿を連鎖的に思い出し、シャルティアはその白い肌を一層蒼白させる。

 

「黒……失礼、わたし急用を思い出して」

「シャルティア様、御方を放り出してどちらに行かれるおつもりで?」

「キィイイイイ! 離しんさいど畜生! 道連れにしようとすんじゃないわよぉ!」

「死なばもろともというやつです。同じ酒を呑んだ仲ではありませんか」

「死んだ表情で聞こえの良いこと言うなやぁ!!」

「おーい二人とも、何じゃれ合ってるんだ。早くいくぞー」

 

 御方は廊下の端。どうやら騒ぎは聞こえていなかったようだ。ホッと胸をなでおろし、乙女二人は固く握手を交わす。

 

「……共同戦線ね」

「不本意ながら、どうにかあの部屋に入るのだけは許していただきましょう」

「正直に苦手と言うのは――いけないでありんしょうね、ブルー・プラネット様が楽しみにしてらっしゃるならそれは不敬だわ」

「きっと失望されますもの。そんなこと、被造物として想像したくもないのです」

 

 ふう、と溜息を吐き、シャルティアは耽美な視線を目の前の巫女へと投げつける。

 

「それもそう、ね。ぬしも苦労性でありんすね……死体じゃないのが惜しいけれど、あとで私の部屋で慰めてあげてもいいでありんすよ?」

「残念ながら、この身は隅から隅まで神々……至高の御方々に捧げると決めておりますので。お断りさせていただきます」

「それは残念」

「おーい、二人ともー?」

「「ただちに!!」」

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