じゃんぴんガールズとの出会い①
ワアアァァァ────
遠くから歓声が聞こえる。
今日はアイドルグループ『じゃんぴんガールズ』のライブが行われていた。
ライブといってもただのライブではない。
ライブの日には二つのグループが集まり、その会場で麻雀で対決を行い、それに勝利したグループのみライブを行うことができるといった過酷なライブである。
だが、過酷なだけあって大きな大会ともなるとTV中継などもあり注目度は高く、知名度も上がりやすいのである。
このライブ小さめの大会ではあるがはじゃんぴんガールズにとって最初のライブであった。
「長かったような短かったような…でもまだまだこれから…だな。」
ステージの舞台裏でライブを眺めていた今川麗はつぶやき、ステージで歌って踊る三人を眺めつつ、今までのことを思い返した。
───数ヶ月前
麗は高校こそ卒業したものの進路が決まらず、アルバイトを転々としていた。
「はぁ。また次のバイト探さないとなぁ…」
職場の空気に馴染めず、バイトを辞め、情報誌を探しつつその日の晩御飯の買い物に出た日のことである。
「…ん?」
町の中心部で駅前のそこそこ大きいショッピングモール近くを通るとなにやら歌が聞こえてきた。
どうやらショッピングモールの中央付近の広場でのイベントでミニライブをおこなっているようだ。
極稀に芸能人、有名人などがトークショーなどをしにくるのだが、その日のライブは無名の三人組だった。
「ふーん…じゃんぴんガールズ…ねぇ。」
休日だが、所詮は無名なのか、興味本位に立ち寄った買い物客や、子供連れが数十人いるだけだった。
麗は少し離れた場所からそれを見ていた。
センターに立つのは長めのポニーテール、オレンジの衣装を纏い負けん気の強そうな目をしている。その左右にはそれぞれピンクと青の衣装を纏い、ピンクの衣装の少女は他の二人と比べ、少し子供っぽくみえる。青い衣装の少女は体型こそいいのだが、おっとりしているようでダンスにもなかなかキレがない。
「ふぅん…まぁ悪くはないけどまだかけだし…かな?」
そう呟くと麗はその場を離れ、夕食の買い物を済ませモールを出た。
「やっぱ車できたらよかったかな。ちょっと休憩でもすっかな。」
呟きつつ麗は自宅近くの公園に立ち寄った。
ふと立ち寄った公園に一人の少女が座り込んでいた。
よくよくみるとその少女は自転車の前でなにやら難かしい顔をしている。
麗が上からチラッとみると、どうやらパンクしてしまっているようだった。
「まぁどうせやることもないしな…」
と、つぶやいた麗はその少女に声をかけた。
「えーっと…良かったら直すけど…」
と、声をかけつつナンパと勘違いされるのではないかと内心冷や汗をかきつつも聞くと、少女は一瞬驚いたような表情を見せつつもそんなことは一切感じなかったかのように振り向いた。
「あ、いいんですか!?助かります!さすがに押して帰るにはちょっと遠くって…」
そう振り向いた彼女の顔に麗は見覚えがあった。
服装こそ違うが、その少女は先ほどモールでミニライブを行っていた三人組のセンターに立っていた少女である。
───たしか名前は…
「じゃんぴんガールズ…だっけか。」
無意識のうちに声に出してしまい、しまったと思うが、少女は元々明るいのであろうその顔を輝かせた。
「私たちのこと知ってるんですか!?」
と、突然迫られて驚くも、麗は苦笑しながら答える。
「あ、あぁ。すまない。さっきショッピングモールでミニライブしてただろ?たまたま通りかかってさ。それで少しみさせてもらっただけだよ。」
しかし少女はそのポニーテールを揺らし立ち上がる。
「いえ、それでも名前覚えてもらっただけでもありがとう。です!あ、わたしじゃんぴんガールズのれいなっていいます!」
と、唐突な自己紹介をされ、勢いに圧されつつも麗も自己紹介をする。
「あ、あぁ。俺は麗っていうんだ。とりあえずえーっとれいな…さん?」
初対面なので、どう呼べばいいかわからずためらいがちにさん付けすると、れいなは笑う。
「あぁ、いいよれいなで。私も麗って呼ぶけどいいかな?そんなに歳も離れてなさそうだしねっ!」
第一印象はその底抜けの明るさだなぁと内心考えながら麗は言い直した。
「そっか。それなられいな。一度その自転車俺の家に持ってくるか?さすがに道具もなしにはどうにもならないからな。」
麗が言うとれいなはうなずきながら自転車のスタンドをあげた。