「こ、これはさすがにどうするかな…」
ひと通り終わったところで麗は苦笑した。
最初の頃に言っていたとおり、三人ともルールを覚えてすぐから少し上達した程度。
攻めはなかなかいいのだが守りがほとんどできないのだ。
三人が休憩している間にも麗はどうしたものかと考えていると、不意に扉が開いた。
「おー。オフなのにご苦労さんだな。」
「あ、社長。こんにちは。」
そう、社長が事務所に来ていたのである。
三人が隣の部屋で談笑している間に麗が社長に小声で聞く。
「社長…さすがにこの状態で大会に参加するのはちょっと厳しいんじゃ…」
麗が先ほどまで考えていたことを社長に話すと、社長は若干笑みを浮かべる。
「まぁ確かにな。でも攻めはなかなかのものだろう?」
「そうですね…でも守れないとなかなか厳しい感じが…」
すると社長は笑みを崩さずに答える。
「まぁそれもそうだけどな。でも初心者たちの攻め方は中級者から上級者にはなかなかわからないものだぞ?なぁ、上級者さん。」
と、社長が笑みを崩さず麗に言ってきたので、麗は少し慌てる。
「そんな、俺なんか連れ同士と少しやっていた程度の中級者で…」
と、言いかけるが、社長が言葉をかぶせる。
「ま、私の目はごまかせんよ。これでも余年に一度、決定戦は見に行ってるんだ。」
そう言われ、麗は完全にバレていることに気付く。
「…知ってたんですか?俺が去年出てたの?」
「あぁ、顔見た時にもしかしてと思って昨年の動画を漁ってみたんだよ。ま、隠してるのには訳ありだろうと思ってあの子らには話してないがね。」
麗はその気遣いには感謝する。
「まぁ、しばらくは内緒の方向でお願いします。またそのうち話しますんで…」
と、麗はそこまで言ってあることに気付く。
「…そうか、初心者の打ち方にセオリーはない…それなら守りを捨てるのもありなのか…」
そのことに気付いた麗を見て社長は満足そうに笑う。
「まぁ、そういうことだ。私も、麻雀にはうるさい方でね。また何かあれば相談位はのるよ。」
社長はそう言い残し部屋から出て行った。
「ほんとに、れいなの言った通り読めない人だな社長も。」
麗が苦笑しながら呟くと、社長と入れ替わりにれいなたちが戻ってきた。
「ねっ、麗。私達どうしたら上達できるかな?」
れいなが聞くと、三人の視線が麗に集まるので、麗は先ほどのことを話す。
「そうだな。期間があれば攻守のバランスを取れるようにするのが一番なんだ。だけど今回は時間がない。そこで…だ。下手な守りを取るより積極的に攻めていくスタイルなんかどうだろうか?」
「でもでも!そんなことしたら相手に上がられちゃうでうよ?」
みいなが困った声を出すが、れいなはそれを聞いて思いつく。
「そっか。もし取られても、それ以上取り返せばいいんだよ!」
「そうね。それならたしかに負けませんわね。」
しいなの若干ずれた感想に麗はまた苦笑するが、頷く。
「まぁ正直個々の能力に頼りきった戦いになると思うけど、短期間で下手に守りを勉強するよりもはるかに確立は高いと思うんだ。」
麗が言うと三人は頷く。
それをみて、麗も笑う。
「よし、なら作戦はそれで行こう。細かいところはまた少しづつ教えていくよ。」
「うん!よろしくね、麗!」
「みい…勉強は嫌いなのです。」
「頼もしいですわね。」
例の言葉に三者三様の返答が返る。
そして、その後若干麻雀をしつつ麗による攻め方の勉強をしていたのだった。
その日の帰り道。
麗はずっと事務所にこもっていたので気分転換にといつもの公園に立ち寄った。
と、公園のベンチに見慣れた顔をみつける。
「こんなところでどうした?またパンクでもしたか?」
「あれ、麗。どうしたのこんなところで?」
そう、れいながベンチに座っていたのである。
が、なにやらいつもの表情に元気がない…ような気がした。
「まぁ事務所に一日こもってたからな。気分転換にと思ってな。れいなこそどうしたんだよ?珍しくおつかれモードか?」
麗が若干冗談めいて言うと、れいなは苦笑する。
「うん…なんて言うかこないだモールで麗があそこまで言ってはくれたけど正直自信なくって。ほら、私達まだ麻雀もアイドルも始めてそんなに経ってないでしょ?」
れいなが呟くと、麗は苦笑しながら隣に腰を下ろす。
「おいおい、普段から勝ち気なのにこんなときだけ弱気になるなよな。大丈夫だよ。みんな誰だって初めてはあるんだ。それに一度きり…ってわけでもないだろ?」
麗が言うとれいなは「それはそうだけど…」と呟く。
「始まる前からそんなんじゃ気持ちで負けるぞ?俺もできる限りのことは教えるからよ。頑張ろうぜ?」
言いながら何気なくれいなの頭に手を置いた。
「あっ…」
れいなはれいなは若干頬を染め俯くが、すぐに顔を上げる。
そして、上げた顔にはさっきまでの迷いはなかった。
「うん、そうだよね!リーダーの私がこんなんじゃだめだよね!」
その表情を見て、麗は満足気に笑う。
「あぁ、その意気だ!あのブラック1'sとやらに一泡吹かせてやろうぜ!」
麗は方を叩くと、立ち上がり、自宅へと向かおうとする。
「あ、麗!」
と、その背中かられいなが呼びかけたので立ち止まった。
「んあ?」
「その…ありがとね!」
れいなにお礼を言われ少し気恥ずかしくなった麗は視線を逸らした。
「そのお礼はまだ早いだろ?しっかりあいつらに勝ったらまたもらうとするよ!」
「うん!それじゃあね!」
れいなは最後に笑って手を振ると、自転車にまたがり走っていった。
麗はそんな後ろ姿に「頑張れよ!」と呟いたのだった。
はい、珍しく連続での投稿となりました。
私事ですが本日誕生日を迎えました(*´∀`*)
…ぶっちゃけそのためだけに誕生日記念として投稿したかっただけです(笑
ワタシ的に新たな年を迎えましたが、まだ書き溜めもありますのでちょくちょく投稿しますので、ご意見ご感想の方またよろしくお願いします(゚∀゚)/