麗はれいなを自宅に案内する道すがら、れいなの話を聞いていた。
自分達がまだ駆け出しであること。自分があまり裕福ではない家族の長女で家のためにアイドルになろうと思ったこと。残る二人のメンバーのこと…
ひとしきり話すとれいなはふと思い直したかのように笑う。
「あ、ごめんね!なんか自分の事ばかり話しちゃって。私って初対面だといつもなんだー。」
だが、麗は気にしてないかのように言う。
「あぁ。なんか俺もれいなが楽しそうに話すからなんか止めるのが勿体なくてな…っと、ここだ。両親は海外に赴任中でな。まぁとりあえず玄関先にでも座っててくれ。」
麗はそう言うと買い物袋を玄関先に置き、パンク修理セットを取りに行くために自室へ入った。
「えーっとたしかこの辺に…あったあった。あとは木槌と紙ヤスリと…」
呟きながら準備を持ち、れいなの待つ玄関先へ戻った。
「悪い悪い。待たせたな…ってそれ…」
麗が戻ると、れいなは買い物袋から落ちたのであろう求人雑誌を開いていた。
「あっ、ごめんね。置いたときに中から見えちゃってつい…」
「あぁ、構わないよ。」
言いつつ麗は玄関先へ出てパンクの修理を開始する。
修理をしつつ、麗はぽつぽつと語り始めた。
「その雑誌見てる時点でわかったと思うけど…まぁなんつーか進路迷子っつーのかな?今日また職場に馴染めなくて辞めてきたとこなんだよな…」
言いつつも作業を続ける。
「まぁ言い訳にしかなんねえかもだけどやりたいことがなくってなぁ…っとなんでだろな。あまり人にするような話ではないのにな…よし、これでオーケーだ。」
麗が作業を終わらせ、片付けにかかると、不意にれいなが質問をしてくる。
「ねぇ、麗って麻雀ってできるの?」
唐突な質問に頭に?を浮かべながらも、
「へ?あ、あぁ。一応学生の頃は連れとよくやってたな。それがどうしたんだ?」
麗が反対に聞き返すとれいなは少し考えたあと持っていたバッグからメモ帳を取りだしなにかを書き込んだ。
「ねっ、もしやりたいことが見つからない…って言うのなら一度ここに来てみてよ!このお礼って訳でもないけどさ!」
れいなは変わらない明るい表情でメモを麗に渡した。
麗が呆気に取られていると、れいなは自転車にまたがった。
「あぁ。もう遅いからなんなら送ろうか?一応車にも自転車は乗るけど…」
麗はそう言いかけるが、れいなは首を横に振った。
「ありがとう!でもそこまでしてもらうのも悪いし、これからまたレッスンなんだっ!」
駆け出しっていってもアイドルってのも大変なんだな…と思いつつも麗は笑う。
「そっか。まぁ気を付けてな。」
「うん。ほんとにありがとね!」
れいなはそう言うとペダルに力を込めて走り去っていった。
その姿を見送り、麗は渡されたメモを見る。
「これ…アイドル事務所の名前…か?なんでまた…」
と、れいなが言った言葉を思い出す。
『ーーーもしやりたいことが見つからないって言うのなら…』
「…騙されたと思って行ってみるか。」
そう呟くと麗は玄関から家の中へ入った。