麗がれいなの向かった先に続くと、部屋には【社長室】と書かれていた。
社長が自分に何の用事なのかと少し身を硬くする麗だったが、それを気にした様子もなくれいなは扉を開けた。
「失礼しまーす!社長、昨晩話した人連れてきましたよー!」
社長室と言っても、窓際に社長用であろう机と、手前に応接用であろう机とソファーが向かい合わせでおいてあるだけだった。
と、奥の机で新聞を読んでいた社長であろう人物が新聞を畳み向き直る。
「おー。ごくろうさん、れいな。君が麗君かい?」
唐突に聞かれて一瞬言葉にならなかったが、麗は自己紹介をする。
「あ、はい。今川麗って言います。 」
麗が自己紹介すると、社長と呼ばれた男性も自己紹介をかえした。
「私は天方と言うんだ。まぁみんなからは社長。としか呼ばれてるから君もそう呼んでくれたらいい。まぁ立ち話もなんだし良かったらどうぞ。」
社長にソファーに促されたので、麗はそこに腰掛ける。
と、社長自らがお茶を淹れ始めた。
その様子を少々驚いて見ていると、それに気付いたのか社長は苦笑する。
「こんなのは秘書とかそんな立場の人がいるとかおもったかい?」
思ったままを口にされ、麗もまた苦笑する。
「ええ、まぁ…俺の勝手な思い込みですけど。」
そう言うと、社長は2人分淹れたお茶を机に置いて話し始める。
「まぁ実際今日来てもらったのもそこなんだよ。うちの事務所はなにぶん設立してまだ日が浅い。なので人員が不足してるんだよ。」
そこまで話すとお茶を一口飲み続ける。
「あの子らもまだ若いからな。どこかに行くのには誰かしら着いていかねばいかんのだが私もそう毎回着いて行ける立場ではなくてね。そこで近々色々と手伝ってくれる人を募集しようかと思っていたんだよ。」
「そこでれいなから俺の話を聞いた…と?」
社長は頷く。
「あぁ。あの子の人を見る目は確かでね。れいなが言うのならば安心して任せられる。」
と、そこまで話を聞いていた麗は聞き返す。
「でも手伝うって言ったってアイドルとかそんなの一切分からないですよ…?」
が、社長はそれは承知の上だと話す。
「その辺はこれから彼女らと一緒に順を追って覚えていけばいい。いま必要なのは彼女らを裏で支える人材が必要なんだよ。私が行ける時でないと外での活動も出来ないのでね。心配せずとも賃金もしっかりださせてもらう…どうかな?少し試し程度にも一ヶ月ほどやってみてくれないか?」
麗は少々考えるが、やがて首を縦に振った。
「確かにまだやりたいことが見つからないし…どこまでできるかわかりませんが、とりあえず一度やってみてもいいでしょうか?」
麗が答えると社長は顔を明るくする。
「ありがとう。彼女たちも喜ぶよ。」
と、麗はふと疑問を口にする。
「あの、そういえばれいなから麻雀がどうとかって話を聞いたのですがアイドルと麻雀となにか関係があるのですか?」
そう聞かれた社長は一瞬きょとんとするがすぐに苦笑する。
「なんだ。れいなから聞いたものだとは思っていたが聞いてなかったのか。」
言いながら社長は自身の机から一枚の紙をとりだし、麗に手渡した。
「雀ドル決定戦…なんですかこの雀ドルって?」
麗が聞くと社長が話し始める。
「ここ最近注目され始めた特殊なライブ方法でね。ライブの前に二組のアイドルが麻雀で勝負をして勝った方のみがライブを行えるといった催しなんだよ。」
…知らなかった。と、呟きながら麗は紙を眺める。
「まぁそれに書いてあるのはかなり大きなライブだからあの子達にはまだ早いが、小さなライブもちょくちょく行われているんだ。」
「それで麻雀が出来るかどうかって…ってことは彼女達のサポートの内容には…」
麗がふと気付いたかのように社長を見る。
三人組。麻雀は基本的に四人でするものだ。と、言うことは…
「まぁ考えてる通り、だ。あいにくわたしはあまりできなくてね。その辺も含めて上手く付き合ってくれると助かる。」
「わかりました。俺にどれだけできるかわかりませんがやってみます。」
麗が言うと社長は満足そうに笑った。