事務所での仕事①
「さーって。とりあえず初日だし早めに行くか。」
翌日。早速三人のレッスン所への送迎を頼まれた麗は少し早めに事務所へと向かう。
とりあえず車を停め事務所に入ると、そこには既に先客があった。
れいなが歌を口ずさみながらに掃除をしていたのである。
その歌の聞き心地がよく、気付かれないようにそっとドアの脇に立つ。
そして、掃除が一段落ついた辺りで声をかけた。
「やっぱアイドルやってるだけあって歌は上手いんだな。」
と、全く気付いてなかったのか、れいなは驚いてドアの方を向く。
「ふぇ!?麗!?いつからいたの!?」
「んー…5分くらい前かなぁ…」
麗が言うと、れいなは若干顔を紅くする。
「ってことはもしかしてずっと聞いてたの…?」
それが歌のことだとわかった麗は、
「ん、まぁな。気持ち良さそうに歌ってたから声かけづらくってな。」
と、答える。
「もう!趣味悪いよ!」
れいなは若干頬を膨らませつつも掃除用具を片付ける。
「悪い悪い。聞き心地良かったからつい…な。ほら。そろそろいかないと時間だぞ!」
いいつつ麗が事務所を出ると、れいなも後ろから走ってくる。
「ちょ、ちょっとまってよ!」
れいなが追いついてきたのを確認すると、麗はすこし歩みを緩めた。
「にしてもれいないつもこんな早めに着てるのか?俺も初日だと思って大分早く着たつもりなんだけど。」
「あ、うん。元々トレーニングが日課で朝ははやいからね!ついでに掃除とかもしてるんだ!」
「へぇ。掃除くらいなら手伝えそうだけど俺朝弱いんだよなぁ…」
麗がいうと、れいなはあははと笑う。
「じゃあ私のトレーニングのついでに朝起こしにいってあげるよ!その代わり事務所まで自転車かランニングだけどね!」
いわれた麗は苦笑する。
「い、いや起こしてもらえるのはありがたいけどそれはちょっと遠慮しておこうかな…」
と、そんな話をしているうちに駐車場に到着する。
駐車場ではすでにしいなが待っていた。
「あら、お二人ともおはようございます。」
「おはよっ!しいな!」
「あぁ、おはよう。」
挨拶を返すと麗は車の鍵を開ける。
「あれ?ところでみいなは?」
指定の時間ギリギリになってもこないので、麗が聞くと、他の二人が苦笑する。
「あー…みいなって結構朝弱いんだよね…」
「ですわねー。多分そろそろ…って噂をすれば…ですわ。」
二人の話を聞いてるうちにみいなが走ってくるのが見えた。
かなりあせっているようで、走り方もあぶなっかしい。
「み、みいな!そんなあせるとまた…」
と、れいながいったそばからみいなはつまづいて転倒する。
「あちゃー…」
れいなが頭を抱える隣で、麗がみいなの傍に寄り助け起こす。
「おいおい…大丈夫かみいな?」
みいなを立たせて服の汚れをはらうと傷などないか確認する。
が、いらぬ心配だったようで、みいなは笑う。
「あはは。ごめんね。私結構おっちょこちょいでよく転んじゃうんだー。コレくらい大丈夫だよ!」
みいなのいう通り、傷などにはなっておらず、どこかぶつけた形跡もなかった。
「転び慣れてるってのもどうかと思うけどな…まぁ怪我なくてよかったよ。さ、いくぞ。」
麗がみいなの頭をぽんとたたくと、みいなはうんっ!といって車に乗り込んだ。
他の二人も苦笑しながら乗り込む。
「さ、んじゃあいくか。」
「「「おー!」」」
三人の掛け声が一致し、麗は車を発進させ、トレーニング場へと向かった。