カンピオーネ!魔王と魔王外伝 海の精は艦隊に嗤う 作:NAIADs
どうも。
気長に待ってとか言っておきながら、もう二話投稿です。
駄文かもしれませんが、どうぞお楽しみください。
10時間後。
東京都湾上に400m級の艦船が五隻、単縦陣で航行していた。
これがN.A.I.A.D機動艦隊である。隊員数は約7000名、戦艦二隻、航空戦艦二隻、航空母艦の計五隻、航空機の数はヘリを含め300機以上に及ぶ。
さらに陸戦隊をも保有しており、様々な問題に対処可能である。
その先頭を航行するのは旗艦の戦艦、常陸。
その甲板の上で一人の男が煙草を吹かしていた。
その男の名は大條透。
とある事情で日本に帰ることになったこの艦隊の司令である。
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東京湾沖、インヴィンシブル基地。
東京湾沖合いにある約33平方キロメートルの新造基地である。
乾ドックなどの工廠設備や大型旅客機が楽々着陸できる滑走路など、
新造基地らしく結構いい装備が揃っていた。
元々は本部所属の開発部の基地だったが、今はナイアッド機動艦隊と共有している。
まぁ、開発部の部長が大條の元部下だったからかもしれない。
そんな基地内の司令室。
「で、本部は何と?」
「本部に出頭しろとよ、で、艦隊は?」
「戦艦常陸、航空戦艦近江、戦艦対馬、航空戦艦相模、航空母艦瑞竜、全館入港してドック入り、整備を開始しました」
「航空隊、陸戦隊は?」
「全部隊が上陸し、整備と休息を開始しました。しかし、F/AV-2叢雨やAH-64等の八割が整備要で、航空部隊は動けません。幸い私のFV-1プロト叢雨と司令のFV-3ドラグーンは一部パーツの交換だけでいいそうです。陸戦隊も機材の損耗が激しく、再稼動までにはほぼ一週間を要するとのことです」
F/AV-2叢雨はミラージュ2000Dをモデルとしたナイアッドの主力艦上V/STOL戦闘攻撃機である。
プロト機をデチューンした量産型だが、性能自体はF/A-18を超えるといわれている。
FV-4ドラグーンはF-14トムキャットをベースとした艦上V/STOL戦闘機で大條の愛機で、元々叢雨の後継機として製作された。
しかし速過ぎて旋回時にGがかかりすぎる等の操縦性に問題があり、開発当初からテストパイロットで搭乗した大條しかまともに扱えなかったという代物であったため、専用機と相成った次第だ。
「まぁここの所忙しかったし、機材の損耗は仕方ないな。隊員は休ませてやれ」
「了解しました。それでは本部に行きますかね」
「そうだな、社用車と俺の愛車、どっちで行く?」
「じゃあ司令の愛車で」
「ハハッ、了解」
二人は司令室を出て駐車場へ歩き出した。
本部付建物と駐車場は意外と近い。
割と広めの駐車場に、いろいろな種類の装甲車が犇めき合っている。
大條のもう一台の愛車はハンヴィーだ。
エンジン周りを強化し、250kmもの装甲車らしからぬスピードを出せる。
RPGにも耐える強固な装甲と、20mmガトリング砲などの強力な武装を備えている。
開発部の部長が趣味で製作した装甲車である。
愛車に乗りこみ、エンジンを掛けた。
「シートベルト締めろよ、日本に来て早々に交通違反で切符は御免だ」
「分かってますよ」
正門を抜け、海底トンネルを行けば30分程で東京都に着くことができる。
二人は一路東京へ向かった。
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一時間後。東京、丸の内。
ここに日本平和維持軍の本部ビル。
その最上階の総司令室の外で、ノイマンは待機していた。
大條は部屋の中で直属上司の総司令官と会談している。
部屋は防音なので、内容は聞こえない。
「では、失礼致します」
大條が深く一礼して出てきた。
「で、総司令は何と?」
「エレベータ乗ってから説明する。ついて来い」
二人はエレベータに乗った。
「で?おやっさんは何と?」
「何、俺達全員の二階級特進とインヴィンシブル基地を拠点にしての活動だよ、最初は日本常駐だったが、何とかここまで持ってきた」
長らく活躍してきた大條とノイマンは社内での地位も高く、本当は将官クラスになってもおかしくはないのだが、二人とも昇進を断り続けたのだ。
前者はデスクワークを嫌って、後者はそんな大條に配慮してのことであった。
「ま、これからよろしくな。ノイマン・ジュぺー少佐」
「はい、よろしくお願いしますね。大條准将」
二人はエレベータを降り、本部を後にした。
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「で、どうします?これから」
「草薙家に顔を出すか、10年ぶりだしな」
「私もついていっても?」
「ああ、大丈夫だろ多分。さてと・・・」
大條は携帯電話を取り出し電話をかける。・・・5コールで相手が出た。
「お久しぶりです、一朗伯父様」
相手は草薙一朗である。
『大條君か、声を聞くのは久しぶりだなぁ、・・・さて、用件は何かな?』
「仕事が速く終わったので、そっちに寄ろうかな、と思いまして」
『歓迎するよ、・・・今は護堂いないけど』
「急でいつもすみません」
『いやいや、いいんだよ。あとどのくらいで着くかな?』
「30分ほどです」
『わかったよ、じゃあ後で』
「では、失礼」
電話を切る。
大條達はシートベルトをし、車をスタートさせようとする。
しかし、窓をコンコンと叩く者がいた。
仕方なくサイドブレーキをかけ、ウインドーを下げた。
「誰だ?」
「甘粕です。お久しぶりですねェ、大條司令」
「ああお前か」
窓を叩いたのは正史編纂委員会所属のエージェント、甘粕冬馬であった。
正史編纂委員会はN.A.I.A.Dのクライアントの一つで、付き合いを始めて早三年。
今ではしょっちゅう依頼をしてくる常連である。
大條とノイマンがある事件に関わって以降、魔術組織の連中から依頼が舞い込むようになった。
その中には、エリカ・ブランデッリの所属する「赤銅黒十字」やリリアナ・クラニチャールの所属する「青銅黒十字」を含む七姉妹や、賢人議会も含まれる。
N.A.I.A.Dが多忙になったのは概ねこいつらのせいと言えなくもない。
「で、何の用だ?艦隊はしばらく使えんぞ」
大條は多少不機嫌になった。
「いえいえ、依頼ではなくあなた方に少しお話がありまして…」
「話ィ?」
「ええ…実は…」
甘粕が二人に話をし出す。
それを聞いていた大條とノイマンは一瞬で顔色を変え、車を急発進させた。
「…やれやれ、危ないですねェ」
残されたさぼりを生業とする正史編纂委員会のエージェントはサb…いや、仕事へ戻った。
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二十数分後、草薙家周辺の路地裏近く。
草薙家へ向かう大條達二人は、途中で変なグループ二組を見かけた。
路地裏の奥で手前のグループが奥のグループを塞ぐように立っている。
大條は思わず愛車を止めた。
手前の二人は紺色のジャケットを着用し、サングラスとマスクで顔を隠している。
そして手にはナイフらしきものと警棒が握られていた。
奥の二人は城南高校の制服を着た男子高校生二人で、一人は草薙護堂だ。
「強盗犯のようだな、新聞に載っていた奴だろう」
「で、どうします?助けますか?」
「家族なんだぞ?当たり前だ。…例え魔王といえな」
二人は素早く車を降りると、路地裏に向かっていった。
「おいおい?お前ら高校生相手にえらそうに何やってやがる?」
大條が喋りながら強盗犯達の背後へ近づいていく。
「なんだてめぇ?お前も痛い目を見たいのか?」
男に犯人の片割れが振り向き、食って掛る。だが、ノイマンの反応は冷ややかだった。
「・・・まったく、痛い目を見るのはあなた方でしょうに」
「ああ?生意気だな、やっちまえ!」
「応!英雄気取りでのこのこ出てきやがった馬鹿を絞めてやろうぜ!」
ついに激昂して犯人たちは大條達に襲いかかる。
しかし大條の反応は素早かった。
犯人たちの攻撃をかわし、片割れの頬に見事な肘打ちを決める。
それを食らった男は口から鮮血を吐きノックダウン。
もう片方の男の手から警棒を叩き落とし、鳩尾に拳骨一発を入れた。
多分肋骨に罅が入ったかもしれない。
こうして大條は強盗犯を一瞬で無力化させた。
一人は頬から血を流し泡を吹いて気絶し、一人は涎をだらしなく垂らし悶絶している。
「職業軍人に喧嘩売るとは馬鹿な奴らめ。そんあの百年早えってーの」
大條は犯人を縛りつつ、一応心配だったので護堂達へ顔を向けた。
一人は安堵した表情を浮かべ、護堂は何故か首を傾げている。
どうやら二人は何とも無いようだ。大條は安堵した。
「もしもし、連続強盗犯を捕まえたので警官派遣してくれますか?あと一応救急車も。私はJPFのノイマン・ジュペーと言います。はい、大條さん…大條透准将も一緒です」
一方ノイマンは携帯電話を取り出して警察へ電話を掛けている。
日本平和維持軍…JPFの隊員は逮捕権を持っているが、基本的には警察に身柄を引き渡し移送してもらうのが普通の対応である。
「もしかして、貴方は大條透さんですか?俺、草薙護堂と言います」
「ん?やっと気付いたか。久しぶりだな、従兄弟よ」
やっと話し掛けてきた護堂に対し、大條は少しため息をつきながら返事をした。
「へぇ、貴方が大條さんの親族ですか・・・。私この人の部下で、ノイマン・ジュぺーと申します」
ノイマンが大條の親友になったのは大学時代の話であり、この時護堂はまだ三歳ぐらいだった。
よってノイマンと護堂には面識はない。
「え!?まさかこの人が?あ、俺は天地竜也です、よろしくお願いします」
これが護堂と竜也、大條とノイマンの初めての出会いだった。
数分後、大條は車に護堂と竜也を乗せ、草薙家へ向かっていた。
二人は後部座席に座っている。
「さっきは助けて頂いて、本当にありがとうございました」
「危うくt…」
竜也が何かを言おうとして、途中で止まった。
「いやいや、いいってものよ。まぁ、君らなら何とか出来るとは思ったんだが、介入して正解だったな」
「ですねぇ、対人戦は割りと不得手のようでしたしね」
「え?それ、どういう意味ですか?」
護堂は疑問を抱いているようだ。
「もちろん、天下の“カンピオーネ”殿には簡単なことだと思ったのさ」
大條はやや皮肉めいた口調になった。
これは怒りからではなく、からかいの気持ちからである。
「「!?」」
護堂と竜也は目に見えて狼狽していた。
魔王であることが親族、それも従兄弟にばれてしまうとは、護堂たちはまったく予想だにしていなかった様だ。まぁ当たり前だろう。
「ななななんで大條さんは俺たちのことを知っているんですか!?」
「お前ら甘粕当馬を知っているよな?そいつから聞いたのさ」
「私たちは“あなた方の同族”には過去何回か任務で会ったことがありますしね」
「「え!?」」
二人は驚愕していた。
話は三十分前に遡る。
本部で甘粕に呼び止められた時。
『話というのはですねぇ…、日本にも魔王が誕生したのは知ってますよね?』
『そういえば最近二人出てきたらしいな。それがどうした?』
『それがですねぇ、その魔王様はあなたの従兄弟の草薙護堂さんとその友人なんですよ』
『はぁ!?』
『嘘でしょう!?』
『それが事実なんですよねぇ…』
『ハッ!そこまで言うならこの目で確かめてやる!』
大條はアクセルを踏み車を急発進させた。
正直信じがたい話ではあったが、甘粕が言うのならば事実なのだろう。
賢人議会などの魔術組織がN.A.I.A.Dへ依頼してくる内容には、当然ながら魔王に関係する案件も含まれる。
魔王が直接連絡せず、魔術組織を通して依頼してくる場合もある。
大條とノイマンは何度か魔王に会ったことがあるのだ。
まぁ大体の依頼はほぼ茶番に近いものが多いが…。
実際に護堂と竜也に会ったことで、大條とノイマンの疑念は確信へ変わった。
「例えばな…ほら、イタリアのとんでもない阿呆の火薬庫」
「それはドニのことを言っているんですか?」
「ああ、サルバトーレ・ドニとか言ってたなあの人」
「何でそんなうろ覚えなんですか、司令」
正直言って大條はあの魔王に対してよい思い出を持っていない。
大体依頼内容がロクでもなかったし、本人がトラブルをよく起こした。
出来れば忘れたいレベルの顔である。
「「・・・・・・・・・・・・」」
護堂と竜也は絶句していた。
大條が独特の表現で「剣の王」をこき下ろしているからだろう。
「春先にパオロ卿経由で呼び出されて依頼を遂行したって訳」
「エリカの叔父さんと知り合いなんですか!」
「と言うか、『七姉妹』はビジネスパートナーだぞ?」
「ええ、全体の約一割を占めてますしね」
「え?どういう仕事やってんですか?」
「えーっと『七姉妹』の大体の依頼は邪術師関係の仕事だ。アジトの発見とか、
構成員の殲滅とか、アジト制圧の支援に爆撃や砲撃をしたりする。まぁ、要するに大っぴらに出来ない仕事が主だな」
大條は軽い口調で本当に大っぴらに出来ないことを言う。
護堂と竜也は軽く身震いしていた。
「そ、そうなんですか・・・。ドニからどんな依頼を受けたんですか?」
「確か輸送&護衛任務だったぞ、詳しいことはまた今度な」
「じゃあいつ日本に戻ってきたんです?」
「さっきだが、実は東京タワーが炎上したときには居たんだよ。というか侯爵とお前らが戦った時だな」
「え!?ぜんぜん貴方の姿を見ませんでしたよ!」
「そりゃそうだよ、要請があって偵察しに行ったらそこで戦闘は終了していたんだからな。
やったのは消火活動と負傷者の搬送の要請だけだ」
「そ・・・そうなんですか」
実は補給で舞鶴に立ち寄った時に偵察任務で東京に緊急出撃させられており、あの現場にいたのだ。
会議で配備担当官がモニターに映していた写真は大條達が撮影したものである。
「ナイアッドが日本に戻った・・・つーか日本を拠点に活動するように命令が出たのはどうせお前らが原因だろうがな、正史編纂委員会とやらが従兄弟である俺に目をつけたんだろう」
護堂と竜也は沈黙した。
大條の転属命令が明らかに自分達のせいであると知って罪悪感を覚えたようだ。
「まぁ日本に戻りたいとは思っていたし、ちょうどいいさ。そういえば、お前らに渡す物があるのを忘れていた」
大條は車を止め、護堂と竜也にあるものを渡した。
「そいつは無線機だ。ボタンを押せば、空爆支援、砲撃支援、などを選択できる。GPSが付いているからすぐに部隊を派遣できる。文書の送信も出来るぞ。まぁ俺らがいればの話だが」
「あ、ありがとうございます。」
「大條さん、ノイマンさん、もらってもいいんですか?」
「いいってことよ。さて、そろそろ護堂の家につくが、竜也君はどの辺だったかね」
「そこで降ろしてもらって大丈夫です。家近いので」
「そうかね。さぁ到着したぞ」
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大條と護堂と竜也は車を降りた。
ノイマンは緊急無線が入った時の為に待機している。
「今回は助けていただき本当にありがとうございました」
「今回はさすがにやばかったですよ」
「どういたしまして。じゃぁ竜也君気をつけて家に帰れ。また会おう」
「ではまた」
そして大條はそのまま草薙家に寄るつもりだったのだが。
「司令!大変です!」
ノイマンが操縦席側の窓から叫んできた。
「何だ!?」
「おやっさんが急に式典やるから一時間以内に来いって言ってます!」
「よし、すぐに本部に向かう!悪い、一郎伯父様にはまた今度って言っておいてくれ。じゃあな。また会おう」
「ええ、では・・」
大條はサッと車に乗り込み、ノイマンは急発進させた。
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「しっかし従兄弟がカンピオーネになるとはねぇ。これから先どんなに忙しくなるか、
先が思いやられるぜ」
「ですね、どう考えてもそうなる可能性が大かと」
大條は感嘆口調になり、ノイマンは冷静に答えた。
…これが原因で、恐らく魔王や七姉妹以外からの依頼が来て面倒なことになるな。
大條はそう思った。
その予想が的中するまで、そう時間は掛からなかった。
いかがでしたでしょうか。
多分これからは遅くなると思います。
書きたいと思っていたSSの設定も出来てきましたので…
前と同じになりますが、続きが気になる方は気長にお待ちください。