カンピオーネ!魔王と魔王外伝 海の精は艦隊に嗤う   作:NAIADs

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2日遅れて申し訳ありませんでした。
では本編をどうぞ。


Case.4「ノイマンの秘密」

スカパフロー基地より400kmの北海。

一隻の救命ボートが漂流していた。

そこに乗っているのはアメリカ系ドイツ人の青年、ノイマン・ジュペー。

N.A.I.A.D艦隊の副司令である。

「さて、発見されるのが早いか、僕の体力が尽きるのが早いか…」

ノイマンはサバイバルキットを見ながら、そう呟いた。

 

時を遡る事4時間前。

基地に帰投していたノイマンは、エンジントラブルで墜落してしまったのだ。

原因はいわゆるバードストライク。

戦闘機のエアインテークは旅客機のそれより小さいとは言え、吸気口が開いているのだ。

多分、小型の海鳥を吸い込んでしまったのだろう。

脱出には成功したが、GPS装置が水没してしまった。

 

…そして現在に至る。

今持っているのは、サバイバルキットと小型無線機AN/PRC-148 MBITR。

VHF受信機なので航空機等に連絡はできるが、効果は数百mほどしかない。

全面積で57万㎢もある北海を漂流している今の状況では、ニアミスする可能性は極端に低いだろう。

「はぁ…これなら大條さんとロッテ(2機編隊)組めばよかったな」

そうすればこんな漂流せずに済んだのにな、と今更後悔した。

「ん…?」

頭を下げたときに、ちらっと何かが見えた気がした。

目を凝らしてみると、船だ。

バーク型の船体は黒だが船首が赤く、3本のマストがボロボロのって…

「ま、まさか…。例のゆ…幽霊船?!」

幽霊船は自分の乗っているボートの横で停止し、梯子を下してきた。

「まさか乗れ…というのか?」

最初は躊躇したが、このままボートで漂流するよりマシだろうと思い、ノイマンは乗船する事にした。

 

乗ってみると、船内に誰も居なかった。

不思議なことに、誰も居ないにも関わらず船は動いていた。

無風のはずなのに、帆がボロボロのはずなのに船が動き、転輪が不気味に回る。

「気味が悪い…本当に幽霊船だ…」

幸いだったのは、艦尾にある艦長室に海図とコンパスがあった事だ。

海図は正確でコンパスも正常に作動するが、現在の位置が解らない以上意味がない。

「とりあえず南に進路を向けてみてみるかなぁ」

ボソッと呟いた瞬間だった。

「…の…え…よ…」

「…ん?」

何か聞こえた気がした。

「…の…え…よ…」

何の言語か聞き取れない上に小さかった。

「何なんだろう…wunder…」

ノイマンは気にしないことにした。

 

木造の艦内を探索してみると、武器庫のような場所から剣と盾と槍を見つけた。

刀身を見てみると一切の錆もなくきれいな代物だった。

「うーん…僕も使えればいいんだけどなぁ…」

ノイマンは残念そうにつぶやいた。

射撃や狙撃なら得意で全米大会で優勝した事もあるが、格闘はあまり得意ではない。

よって剣や槍を持ってもほぼ無意味に近い。

「ま、持ってるだけマシだよね…」

ノイマンは剣を鞘に入れ、盾と槍を持つことにした。

『…イマン…か!』

その瞬間、また声が聞こえる。…これは聞いたことのある声だ。

『…イマン!ノイマン!聞こえるか!?返事しろ!』

「大條さん!」

ノイマンは歓喜に沸きつつも、冷静にPTTスイッチを押した。

ノイマンの持つ無線機は電話の様に送受信ができないので、PTTスイッチを押す押さないで切り替えなければならない。

「大條さん!こちらバルチャー2!聞こえますか?」

『ノイマン!今どこにいる?』

「例の幽霊船の中です!漂流してたところで出会いまして」

『ハァ!?まぁともかく甲板に出ろ!こちらで見つける』

「了解!」

ノイマンが幽霊船の甲板に出ると、機動強襲揚陸艦「ガルーダ」が右舷後方に現れ、幽霊船の隣に着けると接舷した。

 

機動強襲揚陸艦「ガルーダ」の甲板上。

「ノイマン、無事だったか!」

「はい!」

ノイマンと大條はお互いにハグをした。

「すまなかったな、エレメントで行動すると言わなかった。これは俺の判断ミスだ」

「こっちこそ、ロッテで行動するという案が浮かんでませんでした」

「てか、お前の持ってるそれなんだ?」

「例の幽霊船を探索しているときに見つけたんです」

「…お前格闘武装一切使えないだろ?」

「でも妙にフィットするんですよね」

「ふーん…」

大條は首を傾げた。

『…それは貴様がイアソンの末裔だからだ』

「…ん?」

何か男の声がドイツ語で話し掛けてきた気がする。

「なんか言ったか?」

「…え?何も言ってませんよ、大條さん」

目の前のドイツ人の部下は首を横に振った。

「そおかぁ…」

大條は変な声に対して耳を澄ます。

『こちらだ、イアソンの末裔よ』

二人が視線を向けると、艦首についている女神像が口をパクパクさせている。

『久方ぶりだな、イアソン』

「「ぎゃぁぁぁっ!!ふ…、船が…。しゃ…喋ったぁぁぁぁぁっ!!??」」

艦隊司令と副司令の二人の悲鳴が重なった…。

 

「てかそもそも…ああ!ジェイソンか!?ギリシャ語じゃわからんよ」

「って…イアソン!?ギリシア神話の!?」

イアソンを英語に直すとジェイソンとなる。

某映画の殺人鬼の名前と同一だが、アメリカでは人気の名前となっている。

『そうだ、貴様はかの英雄の末裔なのだ』

「いやいやちょっと待ってよ。僕の家系はドイツ系で、ギリシア系の人間は居ない筈だ」

「いや、父親で考えるよりも母親で考えてみたらどうだ?」

「私の母親は生まれてすぐ死にましたよ」

「じゃあお前のフルネームで考えてみるか…」

「インメルマン・アドルフ・ザイン・オットー・ノイマン・ジュペーですか?確かに、ミドルネームの順番を考えたのは母さんらしいですが」

大学時代にミドルネームが長すぎて大條や友達が覚えられず、「ノイマン・ジュペー」と名乗ることにしたのである。

「Immelmann・Adolf・Sayn・Otto・Neumannか…って、頭文字つなげたらIASONになるじゃねぇか!」

「あっ、そうか!…ということは、アルゴー号!?」

『そうだぞ。やっと気が付いたか』

アルゴー号の船首像はぶぜんとした表情になったが、現代においてアルゴー号と一発で気付く事が出来るのはその手の人間だけだろうと、大條が思ったのは言うまでもない。

「でも…、どうします?まつろわぬ神ですから…。賢人議会に」

「さぁね、連絡の必要はないだろう。さて、どうするかな…?」

大條は腕を組んで考え始めた。

 

5日後、スカパフロー基地。

『まぁ、お前らが無事でよかったよ』

「ああ、ノイマンは危機一髪だったがな」

大條はN.A.I.A.D航空隊隊長のマイク・フランクスと会話していた。

彼は元バルチャー3で、大條とノイマンとは同期である。

「で、イーグルネストの連中は?」

『大條の旦那、予定通りナポリで合流予定と連絡が来ましたぜ』

『百舌鳥、割り込んでくるなよ』

『無事発見されたとはいえ心配だったんでさぁ』

「お前らにも心配かけちまったな」

マイクの横から百舌鳥隼人がひょっこり出てきた。

こちらは元自衛隊のレンジャー隊所属で、N.A.I.A.Dの陸戦隊隊長である。

大條とノイマン、マイクと百舌鳥はJPFの訓練生時代に同じ班だった。

 

スカパフロー基地に四日も留まる羽目になったのは、アルゴー号を外洋航行に耐えられるように改修していたからである。

船体を木金混合構造にし、帆を新しくして塗装も塗り直し、外観は一新された。

機関も今までは風任せ(若しくは神的パワー)だったが、最新のガスタービンエンジンを搭載しGPS等の最新機器を多数搭載することになった。

結局論で言えば、アルゴー号はイアソンの末裔であるノイマンを探して彷徨っていたらしい。

今まで出没していた海域は、時期こそ違うがN.A.I.A.Dが出撃した海域であった。

 

「大條さん、そろそろ出ないと」

ノイマンが呼びに来た。

最初こそかなり驚いてはいたが、英雄の末裔という自分を受け入れたようだ。

しかし、態度は今までと変わらず謙虚な奴だ。

「そうだな。じゃあな、マイク、百舌鳥。インヴィンシブル基地で会おう」

『ああ』

『待ってますぜ!』

大條は通信を切り、機動艦の元へ向かった。

 

数時間後、ナポリの病院。

「はぁ…、一週間と経たずに再開するとはな…」

「本当ですね…」

大條とノイマンは目の前の光景に驚いていた。

目の前にいるのは、腹部に包帯を巻かれベッドに寝かされた草薙護堂と、それの看病をする青銅黒十字のリリアナ・クラニチャールである。

イーグルネストが到着するまでナポリを散策していたら、偶然病室に居る護堂を目撃し駆け込んだらこの有様だった。

リリアナの説明によれば、この二日ギリシア神話の英雄ペルセウスと戦闘を行っていたらしい。

東京に現れたまつろわぬアテナなんかも巻き込んで大騒動になったらしい。

…そしてその原因も。

「ま、あのバカに頼んだのが運の尽きって奴だな」

「あの城にプレシビート広場ですか…IPF(イタリア支部)の悲鳴が聞こえてきそうですよ」

大條は事態を達観し、ノイマンはこれからの事態を憂慮するように言った。

「まぁ無事でよかったよ。晴れて新妻も出来たみたいだしな」

「えっ!?」

「ににに新妻などと!べべべ別にそういう訳ではっ…」

大條の一言に護堂はキョトンとし、リリアナはかなり取り乱していた。

「そういや、空港であった万里谷君はどうした?」

「えーっと、まぁいろいろあって…」

「ふーん?まぁいいけどさ、気を付けなよ。女関係をちゃんとしないと、いつか死ぬぞ」

「………………………」

病室の空気が気まずくなったので、大條とノイマンは病室を後にした。

 

病院の外に出ると、万里谷裕理とエリカ・ブランデッリと会った。

裕理の方は極寒のブリザードのような冷徹な目つきで、エリカの方は悪事を考えている悪魔といった印象だった。

「裕理君にエリカ嬢、久しぶりだな」

「ええ、久しぶり。で、護堂はどの病室に泊まってるの?」

「…………」

「え?ああ…、4階の角っこの部屋だ」

一瞬言うかどうか迷ったが、裕理の気迫に押されて喋った。

「…そうですか。ありがとうございます」

二人は別れの挨拶もせずそのままユラリと病院に入っていった。

 

「ほーら言わんこっちゃない」

「ですね。で、どうします?」

「決まってんだろ。そのままインヴィンシブル基地へ帰るぞ」

「了解しました!」

二人はそのままナポリの町へ消えていった。

 

 




「M.O.S隊員育成事情」の更新を優先しますので、しばらくこっちは更新しません。
MOSが第4話まで行きましたらこちらもCase5を投稿させていただきます。
それまでしばらくお待ちください。
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