人間二人 完結   作:zzzz

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中略 カノモノ

 僕はこの世界が嫌いだった

 

 なんて言えば周りからは中二病か?なんて言われて笑われるだろう

 彼女辺りに言えばニコニコしながらそりゃ良かった、とでも言われるだろうか

 まぁ、何を言ったところで世界が僕の好きな様に改変される訳もなし

 

 

 一度手に入れたモノを人類は手放せない

 

 それが良いものだとか悪いものだとかは関係なしに定着したものをなくす事が出来ない

 

 故に人類は発展し続けた

 

 より便利に

 より楽に

 より面白く

 より簡単に

 より細かく

 より強く

 もっともっともっともっと、と際限無く発展し続けて人類が肉体を捨てたのは一体どれ程昔の事だったろうか…

 

 100や200どころではない、一番古いメモリから記憶として掘り返してみれば1000年以上も経っている事に我ながら驚きを禁じ得ない

 

 

 いや、本当に我ながら長生きしてるもんだ

 

 

 

 

 人類発展の最盛期にして黎明期

 

 エネルギー問題やら環境問題やらをその科学力をもって克服し、自然災害すらもコントロール下に置いた人類は次の発展目標を【恒久的生命の維持】、つまり不老不死へと定めた

 

 まぁ不変である事を求めるのを発展と呼ぶのかは疑問であるが、二転三転ありながらも人類の研究に於いて夢物語の1つとされていたソレは割と呆気なく達成してしまったようだ

 

 

 ま、んなこたぁどうでもいい

 

 人の生命倫理に関する論争だとか、200年ぐらい掛けた臨床試験だとかのすったもんだとは無縁の機械工学の分野が僕の産まれになる

 

 何を隠そう、僕は人間では無い

 

 

 【限り無く人間的な機械】、【人間を越えた人間】、【技術の集大成】etc...なんて具合に色々なコンセプトを盛り込まれながら名も無き、しかし世界最高の研究所にてひっそりと造られた自分は産み出された当初、脳以外の全てのパーツがその当時の人間の物と同一規格で造られており

 AIも赤ちゃんを再現したのか思考もままならない状態であり、当然知識もインプットされておらず、本当の人間の様に育てられた

 

 お陰で小学校にあがる前、突然訳の解らない施設に連れてかれ、「君は人間じゃなくてロボットなんだよ」なんて言われながら自分の頭の中を見せられた時にはソレはもう大いに動揺し、多大な絶望を味わったのだけれどソレについては割愛させて頂こう

 

 まぁ、この世に絶望したり、そこから今は亡き友人に救われたり、時に喧嘩したり、時に恋をしたり、我ながら実に人間らしく生きていたが二十歳になった時、例の施設にまた連れていかれ生身の体に別れを告げる事になる

 

 与えられた体は、特に違和感も無く動かせた

 むしろ有り余るほどのエネルギーは快感すら覚えたけれど、脳が無くなり、物言わぬ肉塊となった今までの体を別の体から眺めた時はなんだか少し哀しかった様な気がする

 

 残された生身の体はそのまま【僕】と言う人間の死を証明するために使われ、そして残った人間の様な機械は【僕】として人間社会を転々とする形で過ごし、その最中で生前の友人と再会してしまってすったもんだ有ったりしたが、それも割愛させて頂こうか

 

 

 全部を語るには尺が余りにも足りなく、また時間も足りないので大胆に間をカットして今の話をさせてもらおう

 

 

 産み出されてから1783年と163日

 その間に8回のオーバーホールと2回の自爆を経験し、人類は機械化の一途を辿り

 

 僕が人間を人間だと思えなくなってしまったとある事件が起こってから、人間に人間が人間で在るという事への価値を、その可能性を求めてさまよっていたある日…

 

 

 僕は1000年以上の時を経て再び彼女(にんげん)と出会った

 

 

 

 出会いは全くの偶然だった

 

 偶々公園のベンチで居合わせた女性に、「良いお天気ですね」なんて大昔から使われている伝統的会話の切り出しで話し掛けてみれば返ってきた言葉は『あんた誰?』と来たもんだ!!

 

 補足しておくと、この世界では全ての人間がマザーコンピューターによってデータベースに登録されており、初見の相手はそのデータベースから脳へと情報が送られてくる

 つまり誰?と聞くまでもなく相手が誰なのか解るものなのである

 因みに僕のデータも一応人間として登録されている

 

 興奮しながらもつらつらと話しかけつつ、マザーコンピューターにハックを仕掛け彼女について調べていくが、名前、生年月日程度の情報しか得られなかった事も驚きであった

 

 大して情報も得られないまま、繋ぎとしての会話のネタも無くなってしまい、彼女と関わり続ける為にいきなり愛の告白をかますと言う暴挙をしでかしたが何故かOKが貰えたのでまぁ良しとしよう

 

 と、言うか何故告白したんだ僕は?

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

 彼女をシンプルに形容するなら

 頭の良いバカと天才の中間

 

 ん?シンプルでも無いか?

 

 知識や常識なんかは目を見張る物があるが、どういった思考回路をしてるのか、気付けば突拍子も無い事を考えてる事が多い

 この前はどういう訳か僕が変態だと思われていたし、告白して連絡先を交換し、別れてから連絡をとってみれば開口一番に『アンタ人間じゃ無いでしょ』と言われた時は不覚にも笑ってしまった

 いや、人間じゃ無いけどもさ

 

 しかし、文字通り笑って誤魔化してしまえる辺りはチョロいと思う

 

 10日前に彼女を尾行してたら見つかり、「ペットの超究滅殺天空華炎流星破天月光復讐の竜穿太陽丸がこっちに逃げだしたみたいでね」って言い訳に納得するのはどうかと思うんだ…

 

 

 1週間まえはご飯を作ってくれたっけ

 唐突に『恋人なんだから彼女っぽいことをしてやろう』と告げられ、大衆共用キッチンへと拉致られ得体の知れない物質を食わされた時は死ぬかと思った

 味覚センサーが完膚無きまでに破壊しつくされたのは初めての経験であり、今後2度と有り得てはいけない悲劇である

 

 

 3日前は星が見たいと言うからわざわざ宇宙まで登った

 「こーゆーのは過程が大事だ」とか言って軌道エネルギーケーブルをえっちらおっちら登る事になるとは思わなかったけど

 でもまぁ、登りきって星々を見渡してみれば過程が大事って言う彼女の持論はなんとなく理解出来た気がする

 

 

 今だに出会ってから2週間しか経ってないが、なんだか1年以上一緒に居たような、そんな感覚に囚われるのは果たして1000年振りに人間と出会ったせいだろうか…

 

 

 

 

 

 

 

 それとも彼女がこの救い様の無い人類を滅ぼしたからだろうか?

 

 これは僕の最後の希望が人類を終わらせた話




 間に合わなかったよ…
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