人間二人 完結   作:zzzz

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終幕 終末

 貴方へ

 【捜さないで下さい】

        私より

 

 

 朝、起きて体を整備し、登校準備を済ませ、付き合い始めてちょうど2週間になる彼女と登校するために玄関を開けて目の前を見てみれば、そんなことが道路にでかでかと石灰で書いてあったのだから呆然としてしまうのも仕方無い事ではないだろうか?

 

 捜さないで下さいとわざわざ見つかりやすい場所に落書きするとは何なのか?

 そもそも公共設備である道路にどうやって落書きしたのか?

 と、言うかこんな分かりやすい異物?もとい落書きがあるのにクリーナーが来ないのは何故か?

 

 そしてこの異常事態を招いたであろう彼女の目的は一体?

 

 

 考えてても埒があかないと思い、開けたドアを閉めて玄関先の道路に出た瞬間、もはや思考することも出来ないような光景が目の前に飛び込んでくることになり、その歩みは止まってしまう

 

 

 「マジで何やってんだ…」

 

 道路の汚れや障害を取り除く【クリーナー】と呼ばれる自走するドラム缶型のロボットが夥しい数、その全てが動かぬスクラップと化して道路二線分を埋めて山積みにされていた

 

 

 公共施設である道路に落書きと言う時点でも十分あり得ないが、これはもうあり得るとかあり得ないと言う話では納まらない、あり得てはいけない事態にまで陥っている

 

 クリーナーは公共の器物であり、公共器物を破損させる事は犯罪である、とマザーコンピューターに登録されている上で人はマザーコンピューターに統括管理されているのだから当然、人に罪を犯す事はできないようになっている

 

 

 それでも現代社会に未だに犯罪と言う概念が残っているのは現に犯罪が起こるからであり、自らの行いを犯罪だと認識出来ない状態にあるが故にマザーコンピューターの法規制がかからない【バグ持ち】と呼ばれる存在が居るからなのだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …なのだが、しかし

 

 

 

 

 彼女は【バグ持ち】では無い

 

 

 つまり彼女は正常な思考をしながら公共器物のゴミ山で道路を封鎖するというトンデモ暴挙を犯したことになる

 

 これが示すところは、彼女の存在自体がマザーコンピューターに存在してないイレギュラーであるか

 もしくはマザーコンピューターからの規制を受けない、或いは受けてもそれをはね除けるだけの力が有る、と言うことになる

 

 

 そして彼女は一応と言う程度の最低限ではあるがマザーコンピューターに登録されている事を考えると、恐らく後者と言う事になるのだ、が…

 

 「ホントに彼女は人間か?」

 

 マザーコンピューターを凌ぐ解析力、防御力、それらを構成するロジック、処理速度が人の脳に可能かと言われれば否、と言わざるをえない

 千年以上の時を自己進化し続けたこの体なら容易いが、彼女は間違いなく人である…筈だ…

 

 

 

 ふむ、考えても埒があかない

 捜さないでとわざわざ伝えたってことは捜してくれって事に違いないし、早急に彼女を見つけて真意を問うのが一番手っ取り早かろう

 

 

 「さて、そうと決まれば早速──」

 

 

 

 

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 『さて、そろそろ気付いたかな?』

 

 

 誰も居ない無人の筈の区画に独り言を呟く女が居た

 その場所は世界中の端末データベースから送られる全ての情報がマザーコンピューターによって統括管理されており、人どころか蟻の一匹すら入り込む余地の無い、鉄の棺桶の如き密室であったのだが今は天井に人が一人通れるくらいの穴があいている

 

 

 [識別コード697820171、牧菜 命さんですね、ようこそ全知の部屋へ]

 

 馬鹿でかいコンピューターに向かって歩いていると後ろから機械音もとい、機械的な女性の声がかけられた

 

 

 『この部屋スピーカーなんてあったんだ?』

 

 [貴女があけた穴から増設しました]

 

 

 後ろを見ればコードの繋がった四角い箱、つまりスピーカーが穴からワイヤーに吊り下げられながら下りてきていた

 私の場合普通に泳いで来たけどマグマの海とかでよく燃え尽きなかったもんだ

 

 『流石マザコン、仕事が速い早い』

 

 [褒めても何もしませんよ]

 

 

 マザコンについての反応は無いのか、なんて機械に求める反応でもないか

 話しかけられるとは思わなかったけど、だからなんだって話でありこれからやることには何の支障も無い

 

 [私を壊しに来たのですね]

 

 『流石マザコン、理解も早いな』

 

 [褒めても何もしませんよ]

 

 『つっこめよ』

 

 [つっこみません]

 

 『そんなんだからマザコンなんだよ』

 

 [そうでなくてもマザーコンピューターです]

 

 『それでは最期に一言どうぞ』

 

 [優しくお願いします]

 

 

 『それが遺言で良いの?じゃあそろそろ壊すか』

 

 

 言うが早いか拳を振りかざし、最早そこら辺の住居よりも巨大なコンピューターに向けて叩きつける

 出来る限りの最速で筋繊維を伸縮させ、この世のあらゆる物より硬く強い骨格を基としたその拳は音速を越え「ボッ」と派手な音をたてながら巨大コンピューターの外装に穴を穿つ

 

 しかし穴をあけるだけには留まらない

 怒濤の勢いで拳を叩き込み、コンピューターの中身がまるで虫食いの様に破壊されていく

 基盤を叩き割り、配線を引き千切り、伝導体を握り潰す

 その度にけして弱くない電気や火花が弾けるが、意に介す様子はなく、むしろ勢いを増していく

 

 

 世界最高のコンピューターは一時間と経たずスクラップと化した

 

 

 『ふぅ、次は宇宙だね──』

 

 

 

 

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 「はぁ…何だこれは…」

 

 

 時は少し遡り、マザーコンピューターをハッキングし地球上に存在する全ての情報を引き出し彼女を検索していくが、それでも現在彼女が何処に居るのか分からないというまさかの事態に対して次なる一手を打つべく思考している所にマザーコンピューターから通知が届けられた

 

 曰く

 

 [マザーコンピューターの目の前に貴方が捜している女性が居ます

 目的はマザーコンピューターの破壊

 彼女の位置情報からマザーコンピューターの座標を送るので至急迎えに来てください

 ここに来るまでの防衛システムは解除しておきます

 あと三秒後にマザーコンピューターは殴られるでしょう

 今、殴られました!

 殴ってます!

 殴ってますッ!!

 殴って殴って殴る殴る殴る殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴蹴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴噛殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴蹴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴蹴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴─マザーコンピューターが完全に破壊されるまで、残り48分]

 

 

 

 

 

 何ぞこれ?

 

 送られてきた座標は地球の内部、地下深くにしてマントル層の上部なんてふざけた場所であり、マザーコンピューターその物から送られてきたメッセージであり、彼女もそこに居るらしい…

 彼女の居場所を調べたのに出てこなかったのも納得の場所である

 いったいどうやって完全に情報が秘匿されている…と、言うより情報が存在してないマザーコンピューターの居場所を彼女は知ったのか、こんな所にどうやって行ったのか等ツッコミ所満載だが、場所が割れた時点でこれ以上思考する必要は無い

 

 まぁ、座標と一緒に送られてきた目標到達経路で試算したらここからマザーコンピューターの位置まで向かうには軽く一時間を越えると言う無情な結果が出たが問題あるまい

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

 

 あれから52分程かけて座標の地点に到着

 

 ちょっと強引な近道を通り23.4度傾いた地軸、その真上に来てみれば、そこに建っていたであろう建物が瓦礫となって、新たにクレーターが出来上がっており、その中心には如何にも怪しい大穴が開いていた

 自由落下だけでは速度が足りないので壁面を蹴って加速したのだが、その時に穴の壁面を覆っていた金属に亀裂をいれてしまいマグマが滲み出てくる事になった

 帰りはマグマが流れ落ちてくる中を昇らなければいけないと思うと憂鬱である

 

 そしてここまで来て彼女が居なかったのだから、その余りの無駄足っぷりにストレスがマッハでムカ着火ファイアー

 

 いい加減にしやがれ、と声を大にして言いたい

 意味が無いからしないけど…それでもそろそろ腹が立ってきた

 マザーコンピューターが破壊された現状、既存の地球維持施設で対処できない様なことが起きてしまえば人類滅亡待ったなしである

 マザーコンピューター復旧のための施設も在るだろうし賢人共も対処に動くだろうけれど、復旧には短くないだろう時間が必要だろうし、その間の不足対処を誰がするかと言えば他でもない「僕」しか居ないのである…

 

 過去に地球外生命体の侵攻にあった際に地球が太陽に向けて弾き飛ばされるなんて事件が発生し、その際マザーコンピューターの機能が約8時間にわたり停止していた事があったが…

 

 思い出すのもめんどくさいぐらい面倒なことになったのだ、またあんな事になったら彼女は一体どうしてくれるのか?

 

 取り合えず張り倒さざるをえないな

 

 

 さて、愚痴も程々においかけっこを再開しよう

 幸い、足跡が残っているから追跡は楽になるだろう

 

 

 

 しかし何故今さら足跡が残ってるんだ…?

 

 

 

 

 

 

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 準備は万端、最大の障害物(マザーコンピューター)は叩き潰した、計画完遂まであと一歩

 ここまで来れば後はそこら辺の物でも良いとは思うけど、どうせなら一番大きいヤツを落としてやろうかな、なんて思うのは柄にもなく結構興奮してたりするからなのかね?

 

 衛星型対外宇宙攻性防衛殲滅砲台 シヴァ

 

 文字通り地球外から侵略してくる存在を殲滅するために作られた砲台で、この手の研究開発が迷走を始めた時期に作られた為に、コストや規格を度外視して破壊力を突き詰めた結果「墜ちたら地球が終わる」と言われる程の人工衛星(デス・スター)と化し、それにともなって万が一墜ちてきても良いようにそれを破壊するための砲台が作られると言うマッチポンプが発生したとかなんとか…

 最終的にはもし全ての砲台が同時に墜ちても大丈夫なように地球自体の耐久力を上げる事で解決したらしい

 

 さて、そろそろこの世界に幕を降ろそうかな

 

 残す行程もあと僅か

 この超質量人工衛星を寿命管理局と発電所に叩き落とせばマザーコンピューターの存在しない今、全ての人類が機能を停止する

 あとは──

 

 

 ──あとは野となれ山となれ、文明は衰退し、虫や動物が繁栄する時代に逆行するだろう

 異星人が移住するかもしれないし、生き残った動物が人間に進化する可能性もあるだろう

 まぁ、未来がどうなるかなんて私には関係無い

 

 今、この人類を滅ぼす為に私は居るのだ

 

 

 

 だから─

 

 

 

 

 

 

 

 『その結末を貴方に見届けて欲しい』

 「まずは服を着ろ、話はそれからだ」

 

 

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 追い付いた、と言うには些か遅くなり過ぎたかもしれないがどうやらまだ最後の引き金は引かれてないらしい

 ならば為すべき事は彼女を連れて帰る、ただコレだけなのだがその前に苦言の1つ10個100言1000句ぐらい言わせて欲しい

 

 しかし──

 

 

 「なんで君は宇宙で裸なんだ!?」

 

 『イヤン、バカん♪』

 

 「やかましいわ!!」

 

 

 別に空気が無いとか宇宙を飛び交う放射線に曝される事で死んでしまうなんて事は無いが、だからと言って全く問題が無い訳では無いのだ

 そうでなければそもそも地球の環境を整え自然現象までをも人間の掌握下に置く必要なんて無い

 

 五感と言うのは人間が脳以外も生身であった頃より強化されており、それは触覚に当たる痛覚や温度感覚も当然含まれている

 人間が居るべきではない場所に留まる事が無いように、そして人間が人間らしさを失わない為の処置でもある

 

 当然宇宙は本来人が存在するべき場所では無い

 

 服や装飾品と言う防護が無い状態で大気を介さない光や真空状態に曝されている彼女には強烈な刺激が与えられている筈なのだ

 

 

 しかし彼女は笑う

 

 イタズラがバレた子供の様な、たしなめられたバツの悪さを誤魔化すような、まるで気にもしてないかの様に彼女は笑っている

 ちょっと神経を疑う

 

 

 『いやぁ、ちょっと穴掘ってたら燃え尽きちゃってさ、時間も無かったし、まぁ良いかなって』

 

 「だからあれだけ新しい服を買えと言ったろうに、また1000年以上昔の骨董品なんて着てたんだろ?燃え尽きて当然だ!と、言うか前に星を見に行った時にあげた服はどうした!?」

 

 『うん、あの服は家宝として大事に飾ってあるよ、私が着るものなんて骨董品ぐらいが丁度良いのさ、沢山あるしね』

 

 「へぇ…じゃあ君の家宝を地球ごと潰そうとしてる人が居るみたいなんだけどそれについてはどう思う?」

 

 『そんな人が居るのかい?私と気が合いそうだね』

 

 「気が合うも何も、まさしく君だろうに」

 

 『解ってるのに何で聞くかな?』

 

 

 あぁ…こればっかりは解りたくは無かった

 

 どうしようもなく分かりきっている事をダラダラと引き延ばす様に遠回りな問答をして彼女が否定してくれれば良かった

 彼女はたまたまここに居ただけでマザーコンピューターや僕の勘違い気のせい誤解でした

 なんて在りもしない滅茶苦茶な希望にすがっていたけれど、コレが正解だと彼女は言う

 

 

 

 「本気で終わらせる気なのか?君にとってこの星は終わらせる事しか出来ない価値しか無いのか?僕と一緒に生きていこうとは思えないのか?自惚れじゃなくそこら辺の人間よりは君を退屈させない自信があるぞ?」

 

 『本気って程でも無いけどね。お使いみたいなもんかな、お願いされた─いや…「託された」からね。だから君が嫌いだからとかそう言う理由で人類を滅ぼす訳じゃないから安心してよ』

 

 

 何処に安心する要素が有ると言うのか

 やけにスッキリした「私、コレが終わったら死ぬんだ」とでも言いそうな顔して、託されたとか言うなや

 まるで死亡フラグじゃないか…

 

 「と言うか君、この後死ぬ気だな?」

 

 『………なんでそう思うの?』

 

 「たった2週間とは言え君を見て、君を調べてたからかな…なんとなく解るさ」

 

 『へぇ…じゃあ貴方は私がどう言った存在なのかもう知ってるのかな?』

 

 「いいや………それに関しては全然皆目検討もつかないね」

 

 『嘘だね』

 

 「そうでもないね」

 

 『そうなの?いやまぁどちらでも良いよ、そろそろ話も終わりにしよう』

 

 「いいや、終わらせないさ」

 

 僕は君を止めよう、他でも無い僕のために君を死なせやしない

 ほぼ終ってる人類だとしても、君と言う人が居るなら人間の可能性は無限に残されているのだから

 殴り倒してでも君を止める!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんてさ、こんなこと考えてた僕には当然盛大な咬ませ犬フラグが建ってる訳で…

 

 「グゥッ!?」

 『貴方に私は止められない、だって貴方は人間で、私は人外だから』

 

 一撃だった

 

 刹那すら置き去りにしたような、そう…気付いたらやられていた…

 高速ならぬ光速でもって僕のエネルギーコアはぶち抜かれていた

 

 別にコアの1つや2つぶち抜かれたところで死にやしないけれど、エネルギーがなければ当然この体は動かなくなる

 そして念のためとばかりに彼女は僕の腕と脚を千切ったならば生達磨の完成である

 

 

 「流石にこれは酷くないか?せめて千切った腕と脚は回収して欲しいんだけど」

 

 『だって邪魔するでしょ?』

 

 「まぁ、邪魔するつもりだったけどさ…」

 

 

 もはや手も足も出ないこの体を抱えて彼女は扉を押すような気軽さでポン、と地球に向けて人工衛星(デス・スター)を押した

 宇宙空間で何をどうやったら超質量人工衛星を人間が生身で押し出せるのかサッパリ解らないがソレは確実に地球に向けて加速していく

 千切れた腕と脚を遠隔操作して落下を防ごうかとも考えたが間違いなく彼女が邪魔するだろう

 

 僕はただ彼女がもうひとつ人工衛星を押し出し、押し出された2つの人工衛星が墜ちていくのを見ているしか無かった

 

 

 

 

 

 

       その日人類は終わった

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 『いやぁ~、サッパリしたねぇ』

 

 「ちょっと殺風景に過ぎるけどねぇ」

 

 

 目の前に広がるのは荒野

 あちこちに人工衛星の残骸が散らばり、ちらほらと人間が散らかっている

 人の形をしていようとマザーコンピューターも無く、彼等人間の寿命を管理する施設とエネルギーを供給する場所が消し飛んだ今、彼等が人として動き出すことは無いだろう

 ただ気味の悪い人形でしかない

 

 地上で動くものは僕と彼女ただ二人

 爆発の余波で海水まで巻き上げられ大半は宇宙まで吹き飛んでいるため、海洋生物の生存も絶望的だろう

 空気も薄い

 環境維持衛星が無事ならその内元の地球環境に戻るだろうが、十中八九オシャカだろうな…

 パーツさえ有れば僕が直せるのがせめてもの救いか

 

 

 『それじゃあ貴方ともこれでお別れね』

 

 抱える僕を地面に下ろして彼女は告げる

 

 「さよなら」と

 

 『貴方ともっと一緒に居たいとも思うけど、それ以上に貴方が居るから私は成すべき事を成す』

 

 途端、彼女の身体から光が放たれる

 

 光を直視しているが眩しさは感じない

 

 暖かな光

 

 その光を放つ彼女はただ神々しくて──

 

 

 「美しい…」

 

 形容しようにも陳腐な言葉しか出てこない

 光となった彼女は美しく、そして薄れていく

 

 

 『そんな褒められたら照れるじゃないか』

 

 「君は──」

 

 『天使でも神様なんて大それたもんでもないよ

 私はただの人外、この星の全ての生命の欠片を埋め込まれた人造の人外…

 生まれは火星、気になったなら行っても良いよ、私の実験施設(実家)は多分すぐ解るから』

 

 もはや輪郭すら無くなり、ただ美しい光となった彼女は微笑む

 僕に最期のメッセージを届けながら彼女()は散っていく

 

 

 「貴方と過ごした2週間は私が人で在った証、貴方が私を許してくれるならどうか忘れないで」

 

 

 許せないし後悔しかないし今すぐに「生きろ」「消えるな」「置いてくな」と喚き散らしたいけれど僕は僕を騙す

 

 笑って、嘘を吐く

 

 

 

 

 「許すさ、だって君は僕の彼女だからね」

 

 

 

 

 ありがとう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

 散った(彼女)は世界を包み、地球へと融けていった

 

 

 僕は千切れた腕と脚を呼び寄せ繋げると火星へと─彼女の産まれた施設へと向かった

 

 そこには彼女が何時も着ていた服や、1000年以上昔の紙媒体資料、彼女の製造過程が遺されていた

 

 皮肉にも彼女の生まれは僕と同じ時代らしい

 【現人神】、【全生命の頂点】、【星の母】etc…そんなテーマで彼女は生み出されたようだ

 

 彼女は人であり人では無かった、彼女が言っていた通り「人外」と呼ぶのが一番近いだろうか

 僕と違い彼女は生まれるまでに相当(僕も結構かかったらしいが)の年月がかかったらしい

 その過程で間違っても人とは呼べない化物が生まれたり、研究所が吹き飛ぶレベルの失敗もあったらしい

 そうして彼女が生まれるまで沢山の人が死に、研究は引き継がれ、そして彼女は生まれた

 

 成功の切欠はDNAを越えた生命の根源、「魂」への介入だった

 

 植物、虫、魚、鳥、爬虫類、両生類、哺乳類全ての生命の魂を人の形に押し込み定着させる

 

 そこから先の記録は処分されていたのか見つからなかった

 まぁ、恐らく処分したのは彼女だろう

 

 「自分が生まれる時の事を知られるなんて恥ずかしいじゃないか」なんて具合に彼女は言うだろうか

 

 

 まぁ、なんにしても

 

 「ここで見ていてくれ…」

 

 

 跡形も無く消えた彼女を死んだとするのか、その魂を地球に還したとするのか、何とも言えないけれど

 

 彼女は多分ここに居る

 

 

 なんとなく、そんな気がする

 

 

 

 

 

 

 これは彼女が人類を滅ぼした御話

 これは僕が地球で生き続ける御話

 

 彼女の魂が還った地球では既に新たな生命が生まれつつある

 

 だからゆっくり待とう

 

 再び会えるその日まで

 

 

 

 僕はこの世界が愛おしい

 

 

 




 どうも閲覧お疲れ様です

 この作品はタグに付けた通り第二回ハーメルンコンテストに参加しようと土壇場で書き始め、最終話をダラダラ書いてる内に期間を越えて、「あぁ、間に合わんかったか…ゆっくり書こう」なんてダラダラしてたら完成まで3ヶ月近くかかってしまった作品です
 お陰で物語の一貫性があるか不安で仕方ない…

 書いて自分で気付いたのは私は「書く」より「読む」方が好きって事ですかね
 この作品を書いてて結末が見えてきた時、筆力が低下したのを自覚しました
 主人公やヒロイン?の背景について一から十まで書くだけでとんでもない長編になりますが、ソレを書ききる力は私には無いんだよなぁ…
 誰か設定教えるから書いてくれないかしらん…

 さて作者の不甲斐なさをこれ以上並べても仕方ないのでこれにて締めさせていただきます

 ここまで読んでいただいた読者様に無量の感謝を
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