どうぞ~
「これから、闇の書の主として皆の衣食住の面倒を見なあかんっちゅうことやな!」
(あぁ、やっぱりこうなったか・・・。)
八神はやてのその第一声に光輝は予想通りだと嘆息した。はやての性格から考えてこうなるのは目に見えていたからだ。もっとも、守護騎士達にとっては予想GUYもいいところらしく、口を思いっきり開けて唖然としている。さっきまで警戒していた対象であり、どこかお堅いイメージを抱いていた4人のその人間臭い反応に、思わず苦笑してしまう。確かに、そのリアクションも仕方ないと思えたから。
はやてが守護騎士の面倒を見る、という決断を下した経緯について、至極簡単に纏めると
・はやて起きる
↓
・闇の書についての説明
↓
・主として面倒みるという結論を下す←今ここ
という感じだ。
その肝心の闇の書―はやてが持ってたあの鎖が巻かれていた表紙に金色の剣十字が施されている本の名前だそうだ―とは、魔導師の魔力、正確にはそれを発生させる器官であるリンカーコア、を666ページ蒐集すると、大いなる力とやらが手に入る魔導書だそうだ。
光輝からすればはっきり言ってうさんくさい物だな、という感想を抱かざるを得ない。だって。ねぇ?「大いなる力」って全然具体的じゃない。ていうか「闇の書」って名前からしてなんかoutだと思う。
(ていうかザフィーラ現れた時「夜天の主に集いし雲」って言ってなかったか?闇の主とかじゃないの?)
そこも疑問点だったがとりあえず。
「あ、主、本当に蒐集しなくてよろしいのですか?大いなる力を手にすればその足も治るかもしれないのですよ?」
「ようわからんけど、蒐集って人に迷惑かけんねんやろ?やったらあかんわ。人に迷惑かけたらあかん。」
その言葉を聞いて光輝は感嘆する。やはり強いな、と。光輝は前もあるから精神年齢おっさんで、人に迷惑かけたらいけない、というのもわかってるし、我儘もあまり言わない。だが、はやては正真正銘9歳の少女なのだ。我儘を言いたいだろう。足だって直して自由に歩き回りたいはずだ。しかし、はやてはそれらと人に迷惑をかけることを天秤にかけ、自らの足は治らなくても、人に迷惑をかけない方を選んだのだ。
それが果たして9歳の少女としては正しいのか、歪んでるのかはさて置いて、並大抵の精神力ではその決断は出来ないだろうな、と光輝は思った。少なくとも同じ立場に立ったとして、その決断を出来る自信は光輝にはない。
ともかく、はやては蒐集をしないことに決め、守護騎士の衣食住を面倒を見ることに決めたのだった。当の守護騎士はそんなはやてに対して、どんな態度を取ればいいのか戸惑っているらしい。
それもそうだろう。と光輝は考える。魔法については良くわからないが、それでも話を一通り聞いたところによると、守護騎士は「ヒト」ではないらしい。それに蒐集とやらをすれば大いなる力が手に入る魔道書だ。今までどのような扱いを守護騎士が受けてきたか、想像するのは容易い。
そんなこんなで、今までにない主の方針に戸惑い、主にそれで本当にいいのか、と確認を取る騎士と、あかんもんはあかん、とキッパリと断る主の様子を眺めていた光輝は、
(ま、とりあえず。)
もういい時間なので寝るように促そうか、とそういう結論に至った。
◇◇◇◇◇◇◇
昔の人は偉大だな~、と目の前の光景を見てそんなことを考える。女3人寄れば姦しい。正にその通りだ。漢字として表しても、現実としても、この表現は正鵠を射てると光輝は益体もないことを考える。
ここは海鳴市にあるショッピングモール。現在光輝がここに来てる理由は簡単だ。はやてに付き合ってる、それだけである。
昨日(時間的には今日だが、光輝的には寝て起きるまでが1日なのだ)はやては、守護騎士の衣食住の面倒を見るという条例を議決したわけだが、このうち住は問題無かった。もともとはやて1人が住むにしては大きすぎる家だったし、むしろ人数的にはちょうどイイと言って差し支えない。食も、はやてが料理上手なので、食材さえ買えば全然いける。
が、衣だけが問題だったのだ。ヴィータははやてのおさがりが入るので別に問題なかったが、シグナム、シャマル、ザフィーラが問題だった。
一応はやての両親の衣類が残っていたわけだが・・・。ザフィーラは、かなりガタイがいいので、一般的な日本人であるはやて父の服は入らなかったし、シグナムとシャマルにしてもスタイル抜群なので(はやて曰くいいおっぱい)はやて母のが入らなかったのだ。特に胸部が。腰はスキマがあるのに、胸はきつかったらしい。全国の女性が羨むであろうスタイルだ。
そんなわけで、服を買いに来てるのだ。ちなみに光輝は荷物持ち件ザフィーラの方の見立て役だ。といっても、ザフィーラの分はもう買い終えている。後は女性待ちということだ。いつだって買い物は男性が女性を待ってばかりなのだ。誰だって、どこでだってそうなのだ。もっとも、ヴィータ、シグナム、シャマルがはやての着せ替え人形にされている、と言った方が正しいが。
(まったく。危機感というものが無いのかねぇ。)
そういう気持ちになっても仕方ないだろう。確かに守護騎士は敵意は感じない。が、得体のしれない存在であることには違いないというのに・・・。
(まぁ、あんな顔も出来るってことで。)
はやてに着せ替え人形にされている3人を見ていると警戒していた自分が馬鹿みたいだ。そう光輝は思ってしまう。でもまぁ、はやても楽しそうだしいいか、と思ってしまうあたりこの男はもう駄目なのかもしれない。
「宮崎、といったか。」
と、そんな時、光輝に話しかける声が。この状況では1人しかいないので、特にそっちを見る事無く会話に答える。
「何だ?」
「主はやては・・・優しいお方だな。」
「何を今更。」
そうだ。はやてが優しいことなど、光輝はずっと前から知ってる。そんなことは光輝にとっては当たり前で。でも、守護騎士にとって主が優しいというのは当たり前じゃなくて。
目の前では、歳相応にはしゃいでるはやての姿。それに振り回されてる3人は顔を赤くして恥ずかしそうで。でも、どこか楽しそうで、嬉しそうだった。
「今まで何百年と存在してきた。何代もの主の下戦ってきた。もう思い出せないこともたくさんある。忘れられないことも。・・・だが、此度の主のことはきっと、ずっと忘れられない思い出となるだろう。」
そういうザフィーラの顔はとても優しく微笑んでいて。心底そう想っているのだろうと思わされた。
「我ら4人は常にともに在った。だが、あの3人があれほど楽しそうに笑うのを見たのは初めてかもしれん。」
ずっと一緒にいた仲間。その仲間が初めて見せる顔。そんな顔を見せるほどここの空気は暖かくて、優しくて。今までからは考えられないほど平穏で。だからこそ、より強く護りたいと思えた。
「我らはずっと闘争の日々だった。主の命の下蒐集に明け暮れる毎日。・・・その時は疑問にも思わなかった。それが役目だと。こんな平穏な日々が来るなど予想だにしていなかった。・・・だが、こんな日常も、悪くはないかもしれんな。」
「・・・」
そこには血も涙もなくて。ただ笑顔だけが咲いていて。
「今までは主さえ護れればいいと思っていた。・・・だが、今はこんな日常も護りたい、と思っている自分がいるのだ。・・・だから、そのために力を貸してくれぬか?」
光輝にそう問いかけるザフィーラ。だが、そんなもの聞くまでもない。光輝の答えは決まっているのだから。
「・・・光輝でいい。」
「む?」
思わず聞き返すザフィーラ。その顔には何を言っている?という疑問が浮かんでいる。
「俺の名前だよ。これから
そう言う光輝は不敵に笑っていた。歴戦の戦士であるザフィーラでさえも頼もしいと感じさせるほどで。
「ふっ。そうだな、よろしく頼む、光輝。」
ザフィーラにも笑みが浮かんでいて。そうやって並んでいる2人には確かに仲間と思わせる絆が結ばれていた。
ザッフィーと光輝の男コンビというね。誰得かとね。
でも、名前呼ばせるイベントってなんか燃えるものがある気がするのは私だけでしょうか?