超能少年テレキスこうき   作:井坂 環世

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前回の続きです。


第12話

それは守護騎士の衣服も買い終えた日の夜のこと。いつもよりも4人多い人数での食事をはやてが準備していた時のこと。おもむろに光輝にシグナムから疑問が飛んできたのだった。

 

「そういえば、光輝、お前は何者なんだ?」

 

「いや、はやての親友だって答えたよな?」

 

そう、昨夜にもシグナムは同じ質問をしていて、確かに光輝はその質問に「親友だ。」と答えたはずである。まさかもうボケはじめてるのか?と疑問が浮かぶが、そうじゃなかったらしい。

 

「そうではない。我らが現れたあの時、光輝は確かに「潰す。」と言っただろう?だが、この世界に魔法文化が無いことはもう分かっている。では、光輝はどうやって我らを「潰す」気だったのかと思ってな。それに、魔法文化の無い世界の出身だったにしては、あの魔法的出来事に出会った時の対応はおかしかったとも思う。」

 

シグナムは、てっきり光輝はとてつもない実力を持った魔導師なのだと考えていたのだ。しかし、この世界に魔法は無い。けれども、あの時の光輝は確かな自信を持って「潰す。」と言っていたし、魔法にあまり驚いていなかった。そこが「おかしい」と思ったのだろう。

 

「えっ!こう君そんなこと言ってたん?」

 

「げ。」

 

光輝としては、あくまでテレキネシスのことははやてに秘密にしていたのであまりその事には触れて欲しくなかったのだった。しかも、はやてが気絶したからといって冷静さを失いすぎてたあの時は、はっきり言って黒歴史ものだ。

 

う~ん、と逡巡する。言うべきか、言わないべきか、迷ってるのだろう。十数秒ほど葛藤した上で光輝は話すことにした。

 

「はぁ、しゃあない。言うよ、言いますよ。」

 

その眉間には皺が寄っており、どれだけ言いたくない、と考えているのかが見て取れた。そして光輝は渋々自らの力のことを話した。

 

「俺は確かに魔導師じゃない。・・・けど、超能力者なんだよ。」

 

「?? 超能力者ってなんだ?」

 

そう質問するのはヴィータ。なまじ魔法が身近にあるため、そういうフィクションに登場するようなオカルトや超常現象には詳しくないのかもしれない。

 

特に、彼らにとっての「魔法」とは魔力をプログラム式に沿って放出、展開することで、事象や現象を起こすものだ。どちらかと言うと「魔導科学」と言った方がニュアンスとしては正しいだろう。その恩恵を魔法資質のある人たちだけでなく、世間一般の人たちが享受出来てるという点から考えても、「科学」の特徴を含んでいる。進みすぎた科学は魔法と変わらない、という言葉を地でいっていると言える。

 

閑話休題。

 

ともかく、守護騎士達は超能力については詳しくないらしい。が、ここに1人それを知っており、そして興味津々なお方がいた。

 

「えっ!こう君って超能力者やったん?!どんなことが出来るん?!テレパシー!?それとも瞬間移動?!」

 

「いや、落ち着けって。」

 

キッチンから身を乗り出して聞いてくるはやて。その顔は興奮のせいか朱に染まっている。彼女は本好きなため、小説の中でしか見ないような存在が身近にいたという事実に完全にスーパーハイテンションになってしまっていた。

 

そんな状態のはやてに溜息をつきつつ、光輝は自らが出来ることを語る。

 

「俺が使えるのは念動力(テレキネシス)だけだよ。正確に言うと念動能力者(テレキネシスト)ってわけだ。」

 

「その念動力(テレキネシス)ってのはどんなものなんですか?」

 

「簡単に言うと任意の場所に力場を発生させる能力だな。ま、見た方がわかりやすいだろ。」

 

そう言って力を使う。テーブルの上に置いてあるクッキーが一人でに浮かび、光輝の口元に運ばれていった。それを手で掴むでもなく、そのまま食べていく。その光景を見た守護騎士一同は驚き、はやては目を輝かせていた。百聞は一見にしかず。どんな力かは理解出来たようだ。

 

「こう君すっごいな~。ほんまに超能力者やん。」

 

そう感想を漏らすはやて。だが、シグナムは何やら考え込んでしまっている。他の守護騎士は魔法以外にも超常の力があったことに驚きを隠せないでいた。

 

そこで、シグナムが顔をあげると、ある意味で核心に至る質問をした。

 

「光輝、それはどれぐらいの強さの力を発生させられるんだ?」

 

その言葉に光輝は流石は将だな、という感想を抱いた。確かにテレキネシスという力を語る上ではそのファクターは欠かせないだろう。初めて見た能力であるにも関わらず、その力の重要なところを見抜いた眼力は脱帽ものだ。

 

「詳しい計測はしてないからわかんないけど、大体万tくらいだな。」

 

「「「「「んなっ!!!???」」」」」

 

驚愕の声を上げる5人だが、まぁそれも仕方ないだろう。万tの出力があったら比喩的な意味じゃなく物理的な意味で「潰す」ことも可能だろうから。その光景を浮かべて、あの時争うようなことをしなくてよかった~、と心底思う守護騎士達だった。

 

だがここでん?と疑問を感じたものがいた。それは守護騎士の中で治癒・補助・作戦立案などの後方支援の役割をもつ湖の騎士である。

 

「あれ?でも、光輝君の魔力はせいぜいDランクなのになんでそんな出力があるんですか?」

 

「え?俺にも魔力ってあるのか?」

 

「あ、はい。平均より少ない量くらいですが。」

 

その言葉に光輝は驚いた。なぜなら光輝は「ジュエルシード」事件の時の出来事から自分に魔力資質は無いと推測していたからだ。これは根拠や証拠はない仮説だったが、状況から考えて限りなく事実に近い推論だろうと思っていた。

 

(考えられるとしたら、あの時俺に憑いた「ジュエルシード」か?その時後天的にリンカーコアが体に発生したとか・・・。ま、推論の域を出ないし、事実としてあるんだから別にいいか。あって困るもんでもないだろうし。)

 

光輝は考え込んでしまったが、別にいっかと思うことにした。真実どういう原因かはしらないが、自らにそれがあるなら有効活用するだけだ。元々、自分に資質がないというのも仮説でしかなかったわけだし。

 

「光輝君?」

 

と、シャマルが訝しげに声を掛けた。それで自分が考え込んでしまっていたことを自覚し、先のシャマルの質問に対する答えを返す。

 

「ん~。俺の超能力は魔力を消費しないんだ。」

 

「はぁ!?そんなん反則じゃねぇか!」

 

ヴィータが声を荒げる。もっともそう思い込んでしまうのも詮無き事だろう。魔力も必要とせず、万tの力を発生させることが出来る力・・・。はっきり言って守護騎士の価値観からすれば勝ち目など無かった。

 

ヴィータのその勘違いに気付いた光輝は、誤解を解いておくことにした。

 

「あぁ。いやもちろん使用限界はあるぞ?あんまり使いすぎたら頭痛くなるからな。本気で使えば3分ぐらいで頭が痛くなり始める。」

 

もちろん、頭が痛くなっても使うことはできるが・・・。余りにも使いすぎたら脳がパーンッ的なことになる。

 

「なるほど。やはりどんな力であろうと何らかの消耗はするということか。」

 

「まぁな。ま、あくまで本気で使えばだから、本気で使わなかったらいいんだけど。」

 

「それでも反則っぽいんですけど・・・。」

 

「いや、tって出力でる時点で反則やけどな?」

 

「それにしても超能力か、長年生きてきたがまだまだ知らないことも多いな。」

 

「んなもんがあるって、この世界ってなんなんだ?」

 

そんな、光輝の超能力の話は結構な盛り上がりを見せることとなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

夕食も食べ終わり、もういい時間となっていた。明日は学校があるため今日は帰宅する光輝。それを見送るために玄関まで来ていたはやてである。今までであれば、はやてはこれから家で1人であった。だが、これからは違う。明りの点いた家からは新たな家族(守護騎士)の声が聞こえる。

 

「これから賑やかになるな。」

 

「うん。でも皆ええ子やから。心配いらへんよ。」

 

その言葉に苦笑してしまう。まだ1日しかともに過ごしていないのに、はやては莫大な信頼を守護騎士においていた。もうちょっと警戒というものを覚えて欲しいと思うと同時に、あの4人なら大丈夫か、とも思う。

 

「そうだな。俺もそう思うよ。」

 

「やろ?」

 

「じゃぁ、また明日。」

 

「うん。また明日。」

 

そういって手を振りながら後ろを向いた光輝だったが、途中であることを思い出してはやての方に向き直った。そして自らのかばんをゴソゴソと漁る。

 

はやてが首を傾げていると、光輝が何かを取り出した。それは包装紙に包まれた細長い箱。それをはやてへと渡しながら告げた。

 

「ハッピーバースデー、はやて。」

 

その言葉に呆けるはやて。今日は色んなことがあったから、自分の誕生日だということを忘れていたらしい。

 

「ま、もうすでに最高の新たな家族(誕生日プレゼント)を貰ってるから、有り難味はないかもしれないけど。」

 

「いや!そんなことないよ。・・・何か見てみてもいい?」

 

「ああ。」

 

包み紙を剥がして中をあけてみると、それはネックレスだった。シンプルな十字架の意匠のネックレス。闇の書の装飾に使われてる剣十字とは違うが、ちょっとかぶっちゃったかな、と光輝は苦笑した。

 

それを見つめていたはやては、その十字のネックレスを胸へと掻き抱いた。その頬は真っ赤に染まり、口は意識してないにも関わらず笑みを形作る。どうやらお気に召したようだ。

 

「ありがとう。こう君。・・・めっちゃ嬉しい。」

 

「そうかい。それはよかった。」

 

しばらくそのネックレスを握り締めていたはやてだが、はたと、何かに思い至ったたようで

 

「こう君、このネックレス着けさせてぇや。」

 

「ん、わかったよ。」

 

はやてからネックレスを受け取り、後ろへとまわる。はやてが髪を持ち上げ、ネックレスをつけ易いようにした。その白いうなじが顕わになる。

 

はやてを抱くかのように腕を出し、そしてネックレスをつけていく。その光景はまるでどこかの宗教画のように幻想的で美しく、壊してはいけないと思わせるものが漂っていた。

 

ネックレスをつけ終わったので前にまわる。はやての胸で十字架が輝いている。光輝はそれを見て素直な感想を述べた。

 

「ん、似合ってる。」

 

「えへへ。ありがとうな。」

 

そういう2人の間にはイイ空気が流れる。所謂甘い空間である。だが、そんなピンク色の空気をぶち壊す闖入者が現れる。

 

ガタッ、ドタドタドタッ!という音が聞こえ、そちらに目を向けると守護騎士女性陣が倒れて山になっていた。どうやら覗いていたらしい。その後ろではザフィーラが溜息を吐いている。

 

「ちょ、重いって!」

 

「だから押すなと言っただろう。」

 

「あ、あはは。」

 

「何をやってるんだ。」

 

その光景を見てから、見つめ合う光輝とはやて。その後で思わず笑いあう。新しい家族、ちょっと普通ではないけれど。でも、これからは平凡でも楽しい、笑顔が溢れる日々を送ることが出来るだろうという確かな予感をこの場にいる誰もが持っていた。




やっと守護騎士誕生の日が終わりました^^;

まぁ、はっきり言ってA'S編が本番なので、じっくり書いていきたいと思います。


一応A'S編後の構想もあるんですけどね^^
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