では 超能少年テレキスこうき 始まります
話をしよう。聡明なる読者諸兄はもう宮崎光輝が「転生した人間のドキュメント番組」を作るために転生させられた世界が魔法少女リリカルなのはの世界であることは気付いてるだろう。ていうか原作欄におもっくそ書いてるし。
宮崎光輝自身は前世で見たことがないためそのことには気付いてはいないが、ここは確かに「魔法少女リリカルなのは」の世界なのだ。
あるいはその作品をもとに創られた世界なのか、あるいはこの世界の情報が何らかの形で流出してそれを受信した人物が作品を創ったのかはわからないが、「魔法少女リリカルなのは」の世界であることに変わりはない。
しかし、ここは確かに現実でもあるのだ。原作、という世界の外から見た歴史、正史とでも言うべきだろうか、は存在するが、その通りに進む保障などありはしない。
現実など、ほんの些細な偶然で変わってしまうものなのだから。
今も交通事故で「偶然」死んでしまってる人もいる。「偶然」宝くじに当たった人もいるかもしれない。「偶然」本来なら見つけられるはずのない魔法の資質が開花したものだっている。「偶然」転生の資格を得たものだっているのだから。
正史であれば、その「ジュエルシード」を発動させたのは海鳴臨海公園に植えられていた木だった。その木は正しく人面樹と言った様相の暴走体になり、雑魚敵であるにも関わらず障壁を発生させ攻撃を防いだが、高町なのはとフェイト・テスタロッサの共闘によって封印されるはずであった。
しかし、もしも「偶然」にもその「ジュエルシード」を別の生物が発動させたら?「偶然」その海鳴臨海公園で鍛錬をしている少年が「偶然」その「ジュエルシード」の傍に行き、「偶然」その「ジュエルシード」がその少年が心の奥底で願っている渇望を読み取ったら?
今回は、そんな「偶然」が織り成した物語。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
あの大樹の事件から10日ほどが経過し、連休明けの日。光輝は週2の鍛錬をしていた。走りながら目指すのは鍛錬にちょうどいい海鳴臨海公園である。八極拳の鍛錬だけなら山でもいいのだが、テレキネシスの鍛錬もあるため海の近くにある臨海公園が都合がいいのだ。
(あれから大規模な暴走は見受けられないな・・・。やはりあの時のが異常だったのか。)
走りながらの思考を巡らすのは「ジュエルシード」について。彼は部外者であるので、現状いくつまで回収できて、後いくつ残っているのかは把握出来ないのだ。
(あれ以来俺も探してみてはいるのだが・・・。やはりそう簡単には見つからない。)
彼には魔法の資質はないので暴走した瞬間を感じ取れない。よって地道に探すしかないのだが、この地方都市海鳴で青い宝石を探すというのはやはり厳しいものがある。
(みつかったとしても封印出来ないから高町に届けるくらいしか出来ないしな。)
彼はあくまで目立つつもりはないのだ。危険蔓延る魔法の世界ではなく平穏なところで生きていたいのだ。
そんなことを考えながら走っていると、いつの間にか海鳴臨海公園に着いていた。無意識のうちにでもたどり着いているとは・・・。習慣とは凄いものである。
そうしていつものように人気の無いところで八極拳の型を始める光輝。自らのテレキネシスを使うときのように意識を研ぎ澄まし、体を動かすことによる力の流れを意識して技を繰り出していく。
そうして「小八極」と「大八極」、そして「六大開拳」と「八大招式」と行い、教本の体の動かし方に自らの動きが近づいてきたことがわかり、表に出さないようにしながら裏では満足げに笑っていた。
八極拳が終わったので次はテレキネシスか、とかばんからタオルとスポドリを取り出し、小休憩を取っているとそれが目に入った。
それは青い石のような物だった。それは六角柱のような形をしていた。それは中心にローマ数字が書かれていた。・・・それは「ジュエルシード」と呼ばれているものだった。
「ブホッ!」
思わず噴いてしまった光輝だが、それも仕方ないと言えるだろう。なにせ今まで回収出来なかった危険物がこんな身近なところにあったのだから。
「ゲホッゲホッ!き、気管。スポドリが気管に入った・・・。」
しばらくむせていたが、落ち着いたところで周囲を見渡し、人気が無いことを確認すると「能力」を使ってそれを取る。生物にとり憑くことがわかっているので直接触るような愚は冒さない。
(にしても、こんなものがこの前みたいな大惨事を起こすんだから、魔法ってのは危険なもんだ。)
彼の能力もかなり危険なのだが、自らのことは棚に上げてるらしい。
と、そこで光輝にとって予想外のことが起きた。なんと目の前の「ジュエルシード」が光り輝き始めてるのだ。
(な、なんだと!直接は触ってないぞ!)
しかし、暴走し始めてることには違いない。咄嗟のことで行動が遅れてしまったのは致命的だった。
「うぉぉっ!!」
そうして光輝は光に包まれていった。
「はぁっ!はぁっ!」
高町なのはは急いでいた。なぜなら海鳴臨海公園にて「ジュエルシード」が発動したのを感じ取ったからだ。
(なのは、あそこ!あの公園だ!)
頭に響いてくる声。初めらへんの頃は聞こえてくるたび驚いていたものだが、今ではすっかり慣れた念話だ。聞こえてくる声は彼女の肩に乗ってるフェレット、ユーノ・スクライアのものだ。
(う、うんそうだけど・・・。なんか人が多いね?)
(どうやらそこまで危険な発動はしなかったみたいだ。野次馬が集まってるみたいだね。)
ユーノ・スクライアはそう推測した。危険であるのなら人々は逃げ出すだろうからこの推測は間違ってないだろう。
とそこで公園で何が起こってるか高町なのは達にもわかってきた。それは・・・。
~~♪~♪~~~♪
(これ、歌?誰か歌ってるのかな?)
(そうみたいだ。もしかしたら歌ってるのが暴走体かもしれない。)
そう現状を分析する2人。そして公園の入り口についた高町なのはの視界に飛び込んできたのはたくさんの人々だった。
(うわ!本当に凄い人たち。)
(これじゃぁ迂闊に魔法を使えない。結界を使って隔離したとしても目の前からいきなり暴走体がいなくなったら騒ぎになるよ!)
(ど、どうしようか・・・。)
(とりあえず様子を見よう。)
とりあえず様子見に決めたようだ。しかし、そのままでは暴走体の姿も見えないので、野次馬を掻き分けて最前列に出ることに。
「す、すみませ~ん!」
そうして苦労しながらも前に出て行く。ようやく高町なのはの目に飛び込んできたのは。ギターを弾きながら歌っている10人中10人がイケメンと言いそうな男だった。
「~~♪~」
その歌声は美しく、高町なのははその男の容姿もあいまってしばらく動けなくなってしまった。
(なのは!)
「うわっ!」
ユーノ・スクライアの声で現実に戻ってきた。相当驚いたようで声を出してしまっている。
(なのは、大丈夫?)
(う、うん。でもどうしよっか?)
おそう念話で相談している高町なのはだったが、その時、歌っている男が高町なのはに向かってウィンクしてきた。その姿があまりにも様になっているため、思わず胸がドキドキしてしまう。
(はぅぅ。あ、あれってどういう意味なのかな?!)
(さ、さぁ?)
特に対策も出来ず、その場で立ち尽くすことしか出来ない。と、その時有り得ないことが起きた。
(ちょっと待ってな。歌い終わったらきちんと渡す。)
(え!)
(なんだって!!)
そう、それは念話。魔法の資質を持ってるものなら誰でも使えるほど簡単な魔法だ。つまり、その意味するところとは。
(・・・あなたは?いったい?)
警戒を顕わに尋ねるユーノ・スクライア。それに特に気にした風もなく男は応えた。
(この青い宝石のおかげでいろいろ使えるようになったみたいだ。あんたらはこの青い宝石を集めてるんだろ?俺には必要ないからやるよ。ただ歌を歌いきらせるくらいはさせてくれ。)
(・・・わかりました。)
どうやらその言葉に嘘は無いと判断したようだ。この場はおとなしく待つことにしたユーノ。
こうして、この日「ジュエルシード」によって催されたゲリラライブは盛り上がりながらも問題なく執り行われていった。
ゲリラライブが終わった臨海公園。人気の無い場所で2つの影が夕日のなか向かい合っていた。
「ほれ、ここなら人も来ない。遠慮無くやればいい。」
そう声を発するのは先ほどゲリラライブを行っていた青年。近くでみるとその整っている顔がよく見える。
「わ、わかりました。」
そう声を発するのは高町なのは。声が上擦っており、緊張している様子なのが伺える。
「レイジングハート!」
「Stand by ready. set up.」
そうしてセットアップする高町なのは。桃色の光に包まれたあとには、魔法少女になっていた。
「リリカル!マジカル!ジュエルシードシリアル 封印!」
「Seeling」
そうして光になる青年だが、そのとき言葉を零していた。
「願いが叶う、ね。どうせなら、あいつに会いたかったな。例え幻でも構わないから・・・。」
「え?」
高町なのはにも聞こえたその言葉。その真意を聞く前に青年から青い宝石が出てきて、そして元の姿となって地面に横たわっていた。
「うそっ!」
その姿を見て驚愕してしまう。そこにいたのは高町なのはのクラスメイトでもある宮崎光輝だったのだ。この特徴的な前髪は間違いない。
「う、うぅん。」
その目が開いていく。上半身を起こし、しばらく焦点の合わない目であたりを見ていたが、目の前の人物に次第に焦点を合せていった。
「あれ?高町か?てか夕方?俺鍛錬してたはずなんだけど・・・。」
「え、ええっと。・・・そ、そう!こんなところで寝てたら風邪ひいちゃうの!」
しばらくわたわたしていた高町なのはだが、どうやら記憶が無いと判断してごまかしにいくようだ。
「ん、そうだな。じゃぁな高町。俺は帰るからお前も気をつけて帰れよ。」
その言葉に高町なのはは安堵している。どうやらごまかせれたらしい。
「じゃぁね宮崎くん!こんなところで寝てたら駄目だよ?」
「あぁ。じゃあな。」
そうやって別れる2人。高町なのはは手を振ってるが、光輝はそれに手を挙げるだけで応える。
そうやってしばらく歩いたところで後ろを振り返ってみる。特徴的なツインテールはもう見えなくなっていた。
「あれくらいで騙されるって、あいつの将来が心配になってくるな。」
そう、光輝はジュエルシードにとり憑かれている間のことは覚えていたのだ。ただそのことがバレると色々面倒くさそうだから忘れたふりをしただけだ。
(願いが叶うね。ついつい「前」のことを思い出しちゃったな。)
そう思う光輝の顔は酷いものになっていた。後悔と未練と渇望とがグチャグチャに混ざった顔。「前」、それはもう取り戻せないものだとわかってる。けれど・・・求めずにはいられない。
「葵・・・。」
その呟きは、海からの潮風にかき消されていった。
ちょっとだけ明らかになってきました光輝の過去。
・・・丸分かりですかね?(苦笑)