新東帝都大学...ではない大学に受験して二浪しました 作:蟹ブタ
どうしたらもっといいタイトルができますかねぇ
「…灯りはついていないな。よし、行くぞ秋津。」
「ん…」
『出雲荘』
家賃は月5万円、1日2食のまかない付きの少し年季の入ってそうな木造アパートである。
その玄アパートの玄関前に二人の男女が忍び足で近づいていた。
男性の名前は氷室零司といい、この出雲荘の住居人でもある彼は、おっかなびっくり玄関に向かって歩いていた。
その様子は、どう見ても住居人のそれではなく、泥棒のそれである。
女性の名前は秋津。
先ほど公園で一人ブランコに乗っていた怪しさ満載の女性である。
彼女は零司の後をテクテク着いて歩いている。
公園で秋津に「俺の泊まってる所に来るか?」と言った零司。
彼女は、数分間もの間、零司を見つめたあと、静かに首を縦に振った。
つまり、yesという意味である。
そして彼は深い深い溜息を吐いたあと、秋津と一緒に出雲荘に帰宅し始めた。
十数分間、会話も何もない気まずい雰囲気のなか歩き続けて、無事二人とも出雲荘に到着。
そして現在に至るということである。
なるべく足音がしないよう、慎重に歩く零司達。
ゆっくりと時間をかけて玄関前に到着した零司は、大家である美哉から借りている合鍵で玄関の鍵を開けた後、目の前にある玄関の戸に手をかけ、これまたゆっくりと横へとスライドさせた。
普段はガラガラガラー!と大きな音を立てる扉も、今回は物音を立てることもなく静かに開いていった。
零司は扉を3分の1ほど開けて、顔だけ出して中をぐるりと見渡した。
中は外から見た通り、廊下の灯りも台所の灯りも部屋の灯りも居間の灯りも点いておらず、物音も聞こえてこなかった。
(よし、大家さんが起きてる気配はなし…。ほかの二人も、たぶん就寝中か仕事中だろ。これならなんとかばれずに行けそうだ…。)
零司は顔を外に出すと後ろにいる秋津をチョイチョイと手招きで呼んだ。
秋津は不思議そうに小首をかしげたあと、零司のそばまで近寄った。
「…何かあったのか?」
「いや、現状特に問題はない。問題が起きそうなのはむしろこれからだ。」
そう言って零司は少し体を逸らして秋津に中を見るよう促した。
中を見るよう促された秋津は先ほどの零司と同じように顔だけ中に入れた。
そんな彼女に零司は小さな音量で声をかけた。
「いいか、これから俺の部屋に向かう…。途中絶対に大きな音は立てるなよ。なるべく静かに移動するんだ。もしここの大家さんに見つかったら俺たちの人生はお先真っ暗になるからな。慎重に行動するんだぞ。」
「…私の人生も、真っ暗なのか?」
「……もしかしたら俺だけかもしんないけどな。…とにかく、見つからないよう気をつけて移動してくれ。」
「…わかった、静かに行動する。」
顔を外へ出し、こちらを見てうなずいた秋津。
それを確認した零司は秋津を一度後ろに下がらせた後、扉を静かに開けた。
まずは零司が中に入り、それに続いて秋津も中へ入っていった。
音を立てないように慎重に扉を閉めた後、零司は靴を脱いで靴箱へと入れる。
そのまま廊下へとあがった零司は、秋津にジェスチャーでここで待つよう伝えるとゆっくりな足取りでどこかへ向かっていった。
それから数分後、彼に命じられたとおりにおとなしく待っていた秋津の前に白色のバスタオルを持った零司が歩いてきた。
彼はかがんでタオルを床に広げて置くと、そのままの体勢でタオルを指さして「ここにのれ」と小さな声で言った。
秋津は一瞬キョトンとしたものの、彼に言われたとおりにタオルの上に足を乗せた。
すると零司は床に敷いた秋津の足をタオルで拭き始めた。
実は秋津は服は着ていたものの、靴や靴下などは一切身に着けておらず、裸足でここまで移動していたのである。
もちろん足は砂などで汚れており、このまま廊下にあげたら床まで汚れてしまうと思った零司が風呂場まで忍び寄りとってきたのである。
しかもタオルをお湯で温めておくという気づかいも忘れていない。
秋津は拭かれている足がむずかゆいのか少し体をモジモジさせていた。
一通り汚れを拭き終わった零司は小声で「よし、いいぞ」と言ってタオルを巻き取った。
先ほどと違ってきれいになった足をまじまじと見た後、秋津は視線を零司へとむけた。
その顔は少し困惑しているような表情を浮かべていた。
「その…ありがとう。」
「ん、どういたしまして。…っていうか一応自分のためでもあるんだけどな。もし廊下を汚したりでもしたら大家さんから何されるかわかんないからさ…。」
そう言って乾いたような笑いをしながら先を歩き始める零司。
そのまま玄関口のすぐ目の前にあった階段を上り始めた。
その後をついていく秋津は、目の前を歩く零司の背中を見つめながら声をかけた。
「…大家は、そんなに怖いのか?」
「怖いなんてもんじゃねぇよ…。鬼に睨まれたっってあそこまで怖くないさ…。」
「?…鬼は見たことがないから、わからない。」
「…さいですか。」
秋津の答えに思わず苦笑してしまう零司。
その時、彼の後ろからギィィィイ、という軋む音が聞こえてきた。
驚いて零司が振り向くと、秋津が今一番最初の階段に足をかけていたところだった。
秋津は音がした足元と零司に困ったように視線を交互に向けていた。
そんな彼女の方を向いて零司は人差し指を立て、口元にあてた。
いわゆる「静かにして!」の合図である。
「すまない…気を付ける。」
「秋津…頼むぞ、本当に。」
いつもの無表情な顔を心なしかシュンとさせて謝る秋津に、不安そう、というより若干泣きが入っているような表情をする零司。
その後は何も物音を立てることもなく階段を上りきった二人。
そして階段のすぐ近くの202号室の前に立つ。
すぐにはドアを開けずにキョロキョロと周囲を見渡す零司。
誰もいないことを入念に確認をすると、音を立てないようにゆっくりドアノブを回して扉を開けた。
そして忍び足で部屋の中に入って、電気をつけた。
そして今度は秋津を手招きで部屋へと誘った。
秋津は少しだけ逡巡したあと、おっかなびっくりな様子で部屋に入ってきた。
零司は再びドアまで歩き、きちんと辺りに人がいないか確認してからドアを閉めた。
そして、そのまま大きく息を吐いた。
「何とかバレずにここまで来れたな…。はぁ~、緊張したぁー。確実に寿命が縮んだわ…。」
「…大丈夫、か?」
零司の言葉を聞いて、心配そうに彼へと視線を向ける秋津。
そんな彼女を見て零司は苦笑して、返事をした。
「大丈夫大丈夫。何も問題はないからさ。」
「でも、今寿命が縮んだと…そう言った。」
「いや、軽いジョークなんだけど…。…ま、いいかどっちでも。」
そう言って軽く頬を指で搔いた零司は、ゆっくりと立ち上がり部屋の押し入れを開けた。
そこから零司は自分がいつも使っている布団を取り出した。
慣れているのか、零司はテキパキと布団を敷き始めた。
しわもきっちりと伸ばして布団を敷いた後、掛布団だけもって枕を置いた場所とは反対側(足を向ける側)に立った。
そして、視線を秋津に向けたまま足でトントンと布団を軽く踏んだ。
「んじゃ、とりあえず今日はここで寝といてくれ。俺がいつも使ってるのでわるいけど…。」
「…ここで、寝ていいのか?」
「いや、ほかの部屋で寝させるわけないだろ。かといって床に寝させるというわけにもいかないしさ。」
「…でも、怖い大家と話さなくて…いいのか?」
そう秋津に言われると零司は「あ~…」と呟いた後、ばつが悪そうに視線をそらした。
「いや、実は…このアパートさ、不純異性交遊は禁止されてるんだよ。それに加えて大家さんがさ、よく勘違いをする人っていうか…。ちょいと先走りしやすいタイプの人なんだよ。もし夜中に事情もよくわからない家なし女を部屋に入れたなんて知られたら、俺は真っ二つにされかれないのよ。…バレないようにここまで来たのもそれが理由なんだ。」
「…不純異性交遊、するのか?」
「禁止だって言ったろうが。」
「禁止されてなかったら、するのか?」
「…するわけないだろ?お互いの事もよく知らないってのに。もてない男の臆病さなめるなよ?」
そう言って零司は呆れたように溜息を吐いた後「なんでこういうことは知ってるんだよ…」と呟いた。
その顔はどことなく赤く染まってるように見えた。
そんな彼には視線を向けず、秋津は顔をうつむかせていた。
「…いいのか?」
「ん?」
「ここにいて、いいのか?」
そう言って顔をあげて零司を見つめる秋津。
彼女の眼は微かに震えており、無表情のはずの彼女から、わかりやすいほどの不安が伝わってきた。
そんな不安そうな彼女としばらく見つめあっていた零司は、ゆっくりと片手で頭を搔いた。
「…ま、とりあえず今日は寝ときな。説明は、また明日やればいいさ。」
「……」
「ほれ、さっさと布団に入んなって。」
零司に急かされた秋津は、少しだけ彼を見つめた後、ゆっくりと頷き布団の方へと行き、敷布団の上であおむけになった。
そして零司は「どーーん」という気の抜けている掛け声と共に布団を秋津の上へとかけた。
いきなり布団を掛けられたせいか秋津はしばらく布団の中でもぞもぞ動いた後、ひょっこりと顔を布団の外にだした。
それを見た零司は満足そうにうなずいた後、部屋の電気を消してドアまで歩いて行った。
その後を追うように秋津も視線を動かしていく。
そして零司はドアの前に立った後、くるりと首だけ動かし、顔を秋津の方へ向けた。
「おやすみ、秋津。」
「……おやすみ?」
「…疑問系は入らないんだけどな。」
「…おやすみ、レイジ。」
「そうそう、それでいいんだよ。んじゃ、いい夢見なよ。」
そう言って笑った後、零司はゆっくりとドアを開けて部屋を出た。
パタン、とドアの閉まる音がした後、秋津は顔を真正面に向けて天井を見つめ続けた。
そのまましばらく天井を見つめた後、秋津は掛布団を顔半分のところまで引っ張った。
「……暖かい。」
彼女の小さなつぶやきは、誰にも届くことなく暗い部屋の空気をわずかに震わせた。
そのままゆっくりと目をつむる秋津。
初めて感じる温かさを感じながら、彼女は静かに寝息を立て始めた。
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零司は部屋を出た後、ドアへと寄りかかり大きくため息を吐いた。
無事彼女を部屋まで案内?できた達成感と安心により、疲れがどっと押し寄せてきた零司は、そのまま部屋の前でズリズリと座り込んだ。
(とりあえずは、なんとかなったか…。あ~、まじで誰にも見られなくてよかったー。…なんか空き巣とか泥棒がどれだけ凄いのかがわかった気がするなぁ。)
そんな何ともおかしなことを考えながら正面の窓から見える月をボケーッと眺める零司。
そのまま月を眺め続けていた零司だったが何を思ったのか、ふと今日自分がしたことを考え始めた。
「え~っと、まず今日は昼間の一発目から二浪が決定して~、そのあと樹に合格報告されて、そのまま出雲荘まで帰ってきて爆睡、んで起きた後には樹とふたりで合格祝いで酒を飲んだり飲まされたり…。そして最後に帰宅途中に公園で怪しさ満載の女見つけて、行く当てがなさそうなその子を自分の部屋に連れていく…と。…なんだか目まぐるしいというか、大きなイベントが何回も起きた日だなぁ、今日は…。」
「へぇー、女の子を連れ込んだんだ。やるねぇ、零司。もてない男の称号はもうなくなったのかい?」
「どぅっせぃ!?」
いきなり聞こえてきた声に驚いて、思わず変な叫び声をあげてしまった零司は、慌てて声の聞こえた隣に顔ごと視線を向けた。
するとそこには銀色の髪をしたイケメンな男性が笑顔で座っている零司を見下ろしていた。
そんな彼を見て零司は、ホッとした様子で胸をなでおろした。
「なんだ、篝さんじゃないですか~。びっくりさせんでくださいよ。心臓が飛び出るかと思いましたよ、マジで。」
「あはは、ゴメンゴメン。美哉じゃなくてホッとしたかい?」
「いや、そんなことは…まぁ、ありますけどね?」
そう言った零司に、再び小さく笑った篝は「よっこいせ」と呟きながら零司の横に座り込んだ。
「随分遅くまで起きてますね?今日は仕事夜からだったんですか?」
「いや、今日は仕事は休んだよ。昼間に少し用事ができてね。」
「へぇー、女好きホストの篝さんにしては珍しいですね。女より仕事を優先させるなんて。」
「随分ひどいこと言うね…僕が何かしたのかい?」
「いいえ別に何も。もてない男とか言われて腹が立ったとか、そんなことは一切ありませんよ?」
「軽いジョークなんだけどなぁ。」
「イケメンの篝さんに言われたらジョークでも腹は立ちますよ。」
「はは、理不尽だなぁ。」
そう言って苦笑いを浮かべる篝と、意地の悪そうな笑みを浮かべる零司。
そんな彼を見て、篝は仕返しだとばかりに話を打ち出した。
「それで?零司は一体どんな女の子を連れ込んだんだい?僕としては、美哉をも恐れぬその行動に称賛を送りたいところなんだけど…今の話を聞くとどうにも君が犯罪者に見えてきてしまうんだけど。」
「いやいやいや、勘弁してくださいよ篝さん。俺がなんの理由もなしに女の子を部屋に入れる訳がないでしょうに…。俺だって命は惜しいんですから。」
「あはは、それもそうか。よく考えれば、零司に女の子を連れ込む度胸なんてないしね。」
「…一言余計ですよ。ってか、篝さんいつ気が付いたんですか?俺的には誰にもバレずに行けたと思ったんですけど。」
そう言って不思議そうに隣にいる篝をみる零司。
そんな彼を見て、篝は小さく笑みを浮かべた後人差し指で真下を指さした。
「実はね、ちょうど僕がトイレから出た時に誰かの白い白衣の端が階段に消えていくのを見てね。泥棒かと思って慎重に後を追いかけたんだ。そして、そのまま二階に上がったら君が座り込んでいて、ぶつぶつと独り言を言っていたから盗み聞きさせてもらったってわけさ。」
「堂々と盗み聞き発言しないでくれませんかね?そういうのあんまりいいことじゃないんですけど…。」
「女の子を連れ込んでる零司に言われたくはないなぁ。」
「だからそれは理由があるんですって!」
面白そうに笑いながら話す篝に慌てて反論をする零司。
そして、これまでの経緯を一通り篝に話し始めた零司。
最初は『面白そうだ』と笑みを浮かべていた篝も、零司の話を聞いていくうちにだんだんと表情を険しいものに変化させていった。
「…なるほどね。身内も帰る場所もない女性か…それは確かに怪しいね。」
「ですよねぇ。交番に行こうかとも思ったんですけど『ケイサツは嫌だ』って言って動こうとしなかったし…。あのまま置いてってトラブルにあったりするのもまずいかなぁ、と思って一応ここまで連れてきたんですよ。」
「まぁ、そのまま放っておくよりはましだったとは思うけど…もしかしたら逆にひどい目にあってしまうかもしれないよ?」
「え、そりゃまた何でですか?」
「だってこの部屋には、氷室零司っていう女に飢えたオオカミが住んで…」
「人の話聞いてんのかあんた!?そういう目的で連れ込んだわけじゃないってさっき説明しただろ!?」
思わず声を荒げてしまう零司を見て、楽しそうに笑う篝。
恨めしそうな視線を零司が送っていると、篝は笑うのをやめて顎に手をやった。
「…とにかく一度美哉に相談したらどうかな?君だってその子を今後どうしていくか決めてはいないんだろ?」
「いや、まぁ確かにそうなんですけど。いざ大家さんに言うとなる、緊張するというか怖いというか…。」
「大丈夫だよ、別に悪いことをしてるわけじゃないんだ。きちんと事情を説明すれば美哉も納得してくれるよ。」
そう言って零司の肩に励ますように手を置く篝。
しかし、零司はまだ不安がぬぐいきれないのか、腕を組んで目をつむり唸り始めた。
「う~ん、そうだといいんですけど…。ってか、これって本当に説明していいんですかね?なんかその、うまく説明しないと大変なことになりそうなんですけど…」
「何を、誰に説明するんですか?」
「いや、ですからね。夜の公園にいた女の子を自分の部屋に連れ込んだ、ってそのまま説明するわけにも行かないじゃないですか。だからここはうまく説明の順序を変えてですね…」
そこまで言ってしゃべるのをやめた零司はゆっくりと目を開けて、まるでロボットのような動きで顔を真横へとむけていく。
彼の目の前にいたのは、『お気の毒様』と言いたそうな顔をして同情の視線を向けている篝がいた。
そして、恐る恐る視線を上にあげていくと
後ろに般若の顔を出している出雲荘の大家、浅間美哉がきれいな笑みを浮かべていた。
そしてその数秒後、甲高い男の悲鳴が出雲荘に響き渡った。
キャラの口調があってんだかあってないんだかいまいちよくわかんないですね…。
何か違和感があったらいつでも感想で行ってくださいね。
あ、内容に関する感想も募集中です。
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