艦隊これくしょん〜放縦者たちのカルメン〜   作:プレリュード

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集う者たち

 

開発は滞りなく進んだ。

明石と岩崎重工の工場から帰った次の日に、巨大な荷物が岩崎重工から届いた。

そして俺は明石と夕張に作っておいてほしい物をリストアップしたものを渡し、1人で工廠の俺専用の部屋に送られてきた荷物と共に引きこもった。

 

寝て起きて開発、調整。飯食ってまた開発して調整。そして調整して開発して寝る。

 

そんなことが3回続いた。

ぶっちゃけ寝ずにやりたかったがこれ以上やるとまた倒れそうだったし、また倒れたらさすがにあいつらに怒られるとかのレベルですまなさそうだったから止めておいた。

 

そして次の日は明石と夕張のためと俺の健康の為にゆっくりと昼過ぎまで休み続け、夕方になる前に全員を会議室に招集した。

 

 

「いまから大事なこと言うからよく聞いてほしい」

 

ザワザワと騒がしくなる会議室。まあいきなり基地にいる艦娘を全員集めて大事なことがあるって言われればそうなるわな。

 

「明後日にウェーク島を攻撃するから」

 

「「「………はぁーーーーーっ!?!?!」」」

 

見事に声が揃ったなー。まあ急に攻撃するとかいえばそうなるよな。当たり前の反応だ。

 

「て、提督。ウェーク島ってあのウェーク島よね?」

 

「陸奥が想像してるやつで多分あってるぞ。太平洋にある元アメリカ領、現在深海棲艦の泊地がある、あのウェーク島だ」

 

「あの不落の泊地って言われるウェーク島よね?」

 

「その通りだが?」

 

ポカンと口を開けて驚いた顏で陸奥が固まる。確かにウェーク島の守りは非常に堅いからな。

 

「帆波中佐、どれだけの部隊が参加する予定ですか?」

 

榛名が手を挙げて聞いてきた。

 

「いや、どこも参加予定ないけど」

 

「正気ですか?勝てませんよ」

 

「いや、勝てる。絶対に、だ」

 

榛名が黙りこくる。峻の目は告げていた。勝てると言って負けたことがあるか?と。

 

「命の危険がある作戦だということは重々承知している。だから参加は希望制にする。質問は?」

 

「中佐、ウェーク島に敷設されている固定砲台はどうするつもりですか?今までの攻撃部隊はほとんどがそれにやられていますが」

 

「それに関しちゃとっておきの策がある。方法は言えないが確実に固定砲台は無力化できる」

 

榛名の言う通り、過去の攻撃が失敗しているのは固定砲台の存在だ。あれのせいで砲撃に集中できないのだ。しかも射程が恐ろしく長い。過去のデータを見る限り、30km程度は飛ぶようだ。

だがそんなもんくらいはどうとでもなる。どうとでもしてみせる。

 

「敵の数は?どう考えても私たちより多いはずなのだけれど。それに確か姫級も確認されているはずよ?」

 

今度は加賀か。こいつは教えとく必要があるな。

 

「このプリントを見てくれ。ここに全てが書いてある」

 

総勢12名の艦娘たちにプリントを配っていく。それを見た反応は三者三様だ。目を剥く者、口笛を軽く吹く者、表情を一切動かさない者。

このプリントの中に固定砲台の破壊方法以外は全てが記載されている。固定砲台の破壊方法は……言ったらえらいことになるというか確実に止められるから言わない。

 

「さて、他に質問は?」

 

「提督のこの戦闘の勝率は?」

 

加賀らしい、冷静な見方だ。なら敢えて言おう。

 

「勝率は30%だ」

 

「それならこんな無謀すぎる作戦に誰か参加するわけが────」

「そして完全勝利率が70%」

 

続いた俺の言葉に全員が息をのむ。

 

「完全勝利と勝利の違いはなにかしら?」

 

「全員が無傷ってわけにはいかないだろう。だから別の条件が1つ俺の中にある。だが変な見方をさせたくないから言わないどくぜ」

 

「……つまり万が一つにも敗北はありえないと」

 

「ああ。負けるなんてことはありえない。厳しい戦いになるのは認めるがな」

 

はぁ、と加賀がため息をついた。こいつ最近ため息ついてばっかじゃね?まあその原因は俺なんだろうけど。

 

「わかりました。航空母艦加賀、参加よ」

 

「加賀がそう言うなら……瑞鶴、参加します!」

 

「まて、結論を早まるな」

 

早くも参加を決定した加賀と、それについていこうとする瑞鶴を止める。

 

全員が揃わなければこの作戦は確実に失敗する。逆に言えば、全員が揃ってさえいれば確実に勝てる。

加賀の言葉を借りるなら……”みんな優秀な子たちですから”って感じだな。

 

「今から10分、俺は目を伏せる。その間に参加したくない奴は会議室を出てくれ。それに関して恨んだりしないし、その程度で扱いが変わるような人間性の奴らじゃないことはわかってるはずだ。自分の判断で決めてくれ」

 

 

ばっと目線を下げて待つ。

まあ普通の頭なら参加しないだろう。なんたって俺は先日大ポカをやらかしてる。そんなのが確実に勝てるって言ったって普通は信じない。

だがそれでも一縷の望みに賭けるしかない。別にこの前の復讐とかそう言うのではないんだ。ただ急がなければ手遅れになる。それだけはなんとか回避したい。

 

 

だいたい10分経ったな。覚悟を決めてゆっくりと目線をあげて。

 

「お前らがこんなに無謀な奴らだとは知らなかったよ」

 

苦笑した。

加賀が、瑞鶴が、榛名が、陸奥が、鈴谷が、北上が、矢矧が、夕張が、天津風が、イムヤが、ゴーヤが明石が。

総勢12名、全員が俺を見つめていた。

 

「そうね。前までの私なら絶対に参加しなかったと思う」

 

陸奥が口を開き話し始める。その目は真剣味が宿っている。

 

「でも今は違う。提督なら信じられる。提督ならやれる。だから参加よ」

 

「私はあなたに救われたのよ?」

 

天津風がそばに歩み寄り俺を見上げる。

 

「あなたが力を貸してくれと言うなら天津風のこの力、喜んで差し出すわ」

 

「鈴谷はさぁ、バカだけどさ。でも提督がどのくらい真剣か、くらいはわかるよ?」

 

そして鈴谷が。

 

「アタシも提督に救われたクチじゃん。なのに提督が助けてって言ってて協力しないのはちょっとなーって」

 

そして北上が。

そして夕張が。

そしてイムヤが。

そして矢矧が。

そしてゴーヤが。

そして明石が。

そして加賀が。

そして瑞鶴が。

 

「らしくないですよ、中佐。姫級がなんだ!黙って俺についてこい!みたいな態度でいいんですよ。ここにいる者はその行動が正しいと思えばみんな後ろについて行きますから」

 

そして榛名がふわりと笑いながら俺と目線を合わせた。

気づくと周りに全員が集まり俺を見つめている。

 

「ありがとな」

 

「で、中佐。どういう予定で動きますか?」

 

「明日の早朝、硫黄島に向かう。そして次の日に殴り込みだ」

 

「硫黄島へはどうやって?」

 

「あるツテを使ってな。手段はちゃんとあるぜ。そろそろついた頃だろ。外にでてみな」

 

会議室の外に全員で出て、廊下をゾロゾロと歩き外に出る。

 

「何これ!」

 

「これは……船?」

 

海に巨大な鉄の塊が浮かんでいた。かの戦艦大和にもつけられていたバルバス・バウが特徴的な全長100m近くは余裕である巡洋艦が夕陽を照り返している。

 

「艦娘輸送巡洋艦”さらしな”。俺の知り合いが艦長でな。少し頼んで来てもらった。これで硫黄島まで行く。ウェーク島に侵攻するときもコイツに乗って行くぞ」

 

見た目は少し昔風だが中身は最新鋭だ。

火器は全て艦橋(ブリッジ)で管理してあるため、それぞれに砲手を配置する必要がなく、操舵、機関管理などの機能も全てブリッジから可能な仕様になっているので、やろうと思えば10人足らずで全てを動かすことが可能だ。

 

 

カラカラとタラップが降りてくる。まるで早く乗れ、と言わんばかりだ。

 

「艤装の積み込みが完了次第、出航だ。それまでに総員準備を整えるように」

 

ポカンとしたままの奴らを置いて先にタラップを登り、ブリッジを目指す。

シュイン、という音を出して滑らかにブリッジの自動ドアが開き、中に俺は足を踏み入れた。

 

「ようこそ、”さらしな”のブリッジへ。帆波さん」

 

「よぉ、久しぶりだな、沖山」

 

知り合いのツテとは昔の仲間、沖山(おきやま)幸二郎(こうじろう)。いまは”さらしな”の艦長を務めている。階級は少佐。

 

「はっはー。おひさっす、中佐ぁ」

 

「野川、お前までいるのかよ」

 

「ここの火器管制全般やってるんすよ。ちなみに階級は大尉っす」

 

このチャラい喋り方の男、野川(のかわ)悠介(ゆうすけ)も沖山の奴と同じ、昔の仲間だ。

ってかこの2人がいるってことは……

 

「だんちょー!」

 

後ろの自動ドアが開き、パタパタと慌ただしく誰か入ってくる。

よく響く少し甘い声。こいつは……

 

「よう、さんげんざか」

 

「さんげんざかじゃありません!三間坂(みまさか)、ですっ!」

 

片方だけのシニヨン、はきはきとした喋り方、頬を膨らまして怒るあざとさ。間違いない、三間坂(みまさか)涼音(すずね)だ。こちらも沖山や野川と同じ関係性だ。

肩章からわかったがいまは中尉らしい。

 

「知ってるよ、三間坂。てかもう団長じゃねえっての」

 

「あっ、そういえばそうでしたね〜」

 

間延びした声を出しながらニコリと笑う。

ちなみにこのあざとさは無自覚らしい。以前、注意してみたが首を傾げられた。

 

「ほんとに久しぶりだな」

 

「そうですよ!だん……ち、中佐全然連絡くれないんですもん!」

 

うん、呼び慣れないのはわかるけど頑張ろうか。せめて団長はやめよう。

 

「ま、積もる話はあるがそれは航行中にするとして、艤装の積み込みが完了次第船を出してもらいたい」

 

「自分のボスは帆波さんです。そしてあなたがそう言うなら自分は従いますよ」

 

「そういうこってすよ、中佐。あんたは堂々と俺たち下っ端に命令してくれりゃいいんすよ」

 

「任せてくださいっ!」

 

はっ、こいつらも変わんねぇな。頼もしいったらありゃしねぇ。

 

「明石!積み込みの進捗状況は?」

 

『ざっと65%です。あと30分程度で完了する見込みですよ!』

 

通信越しに明石が報告する。あと30分か。少し多めに時間を見ておくか。

 

「沖山、1時間後に出航だ。缶に火は入れてあるか?」

 

「いつでも大丈夫です」

 

「よし、オーケーだ。目的地は硫黄島。1時間後に館山を出るぞ!」

 

「「「了解!!」」」

 

3人が脇を締めた海軍式の敬礼を決めた後にそれぞれの持ち場についていく。

沖山は艦長席へ、野川は火器管制席へ、三間坂はCICに。

俺は司令官用の指揮専用席へ。

 

あいつらも既に乗り込んだようだ。

明石は順調に頼んでおいた兵装を”さらしな”へ搬入してくれている。

 

 

作戦開始時刻まであと35時間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督のツテって一体どこまで広いのよ……」

 

夕張は部屋で呟いた。

だって横須賀のトップの中将とは同級生で悪友で?艦娘輸送巡洋艦の艦長とも親しい仲じゃなきゃこんな風に気軽に呼ぶことなんてできないだろうし。

それにしてもあの提督がここまでの規模で作戦を展開するなんて何事?

一体何を企んでるの?

 

ごろんと”さらしな”の自分に割り当てられた部屋のベットで寝返りをうつ。服にシワが寄っているが気にしない。

ふと、ウェーク島の戦力を確認しておこうと思い、ポケットに入っている支給品の軍用端末を開いた。

 

 

固定砲台の数、推定12基。深海棲艦の数、確認されているだけで40、推定で60はいると思われる。

またエリート級も複数認められており、過去に一度だけ姫級も出てきた。

以来、その姫級は”泊地棲姫”と呼称されている。

 

 

……予想はしてたとはいえ相当だなぁ。

敵の勢力はこちらの約5倍。地の利も向こうにある。

これだけ聞けば逆立ちしたって勝てやしない。でもあの提督が勝てると言い切ったならきっと……

 

夕張は端末を閉じて、机の上に放った。

私が考え付くことはきっともう提督が対策をとってるに決まってます。なら大丈夫です!

 

 

その時夕張は想像していなかった。明日の日が暮れた後に起きる事件を。

いや、それを言うなら誰も想像だにしていなかっただろう。

 

そんなことはつゆ知らず、船は硫黄島を目指して進み続けた。





一気に新キャラが3人も出てきました!
これから話も動かしていくつもりなので期待していただければと思います!

あとこの場を借りて謝罪を。

活動報告にもあげますが、更新速度がリアルの関係でかなり不定期になると思います。
1日空いたとかでは済まないで一週間などと空く場合もあると思いますが、ご容赦を。
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