さあさあ新章突入ですよ!どこの桜高校軽音部だよ!という感じですがロンドンにはたぶん行かないです。
とにかく参りましょう!それでは新章、抜錨!
次なる舞台はヨーロッパ⁉︎
カタカタとキーボードを叩く音と工具が金属に当たる音が工廠に反響する。
「明石、艤装の修理状況はどうだ?」
「そうですねー。夕張のと榛名さんと陸奥さんのは本格的にやらないと厳しそうです。それ以外はだいたいオッケーかと。あ、でも北上さんの艤装も結構ひどいかもしれませんねー」
瑞鶴さんの艤装は飛行甲板の取り換え程度で済んだから軽かったけどやっぱり主砲一門以外は全部なくなってる榛名さんのとかはちょっとここにある機材だけでは直しきれないから取り寄せるか工場に持ってくしかないかな。
「損害が軽いやつを優先的に直してやってくれ。いざという時に動けるのは多いほうがいい」
「了解です!さあ、バッチリ直しちゃいますよー!」
空母の艤装は2つとも修復は終わってるから制空に関しては問題ないですし、提督らしい判断だなあ。
たぶん前の叢雲ちゃんの轟沈未遂が響いてるんだろうけどまあ別に関係ないか。私は言われた通りに直すだけだし。
「提督ー。そっちはどうですー?」
「モルガナは整備完了だ。とはいえバッテリー変えるだけだけどな。天津風のパラレルシステムの方は自律駆動砲を直してシステムの確認してる。脳にダイレクトに関係するモンだからちゃんと見とかねぇといけないからな」
提督はホロウィンドウをスクロールしながら目を走らせて確認している。同時にあと4つも端末をコントロールしてるのは毎度の話で慣れてしまったが、よく考えるとすごいことだよな、と思う。
確かに被装着者の体に影響が出る可能性があるから慎重になるのもわかるけど、脳にダイレクトにってそもそも艤装の制御自体が脳からの電気信号で操ってるからパラレルシステムだけに限らず全てそうなのに。
まあ正式に発表されてる技術じゃなくて提督のオリジナルだからちゃんと確認しときたいって気持ちはわかるけどね、技術屋として。
カチャカチャと工具を使って壊れた部位を直していると提督の首のデバイスが鳴った。
「はいはいー。俺だよ、俺ー。実はちょっと事故って金が必要でさー。この講座に振り込んでくんない?」
『……なんでかけられた側がオレオレ詐欺やってんだよ』
「おふざけ。だいたい横須賀からの通信なんてマサキ以外にいるわけないだろ」
『そうだけどよ。てか金なら入ったろ、ウェーク島の褒賞金で』
「あぁ、あれ?うちのやつらで山分けしたから俺の手元には元の10%くらいしか残ってない」
『艦娘に配ったってことか?お前らしいや』
ちなみに私ももらいましたよ。元の金額が大きかったのでみんなで分けてもそれなりの額にはなりました。次の非番の日を狙って夕張でも誘ってジャンクパーツ屋でも漁ってみようかな。
「あんだけ無茶させたからボーナスぐらい弾んでもバチは当たらねえだろ。そもそも俺のポケットマネーだから上に文句言われる筋合いは無いしな」
『別に難癖つけるつもりはねえよ。それだってお前のやり方だし、しっかり館山基地が回ってれば俺としては構わねえんだ』
「んで?何の用だよ。また面倒ごと押し付けにきたんじゃねえだろうな?」
『どっちかっていうと押し付けるのはお前だろ……。まあ今回に限って言えば当たってるんだか』
「そうか。断る。じゃあな」
『おいバカ待て切るな!今回の件は断られると国際問題に発展するんだよ!』
ほほう。国際問題とは随分と大きな話が出てきましたなあ。盗み聞きみたいでちょっと悪いなとは思うけど聞こえるんだからしょうがないよねっ!
「国際問題だと?何事だよいったい」
『それはな…………』
「「はぁっ⁉︎」」
いけない!声が出ちゃった!
提督にジロリと軽く睨まれて手刀を切って謝まる。
あれはたぶん聞いたことを怒ってるんじゃなくて声を出したことを怒ってるんだろうな。
「さっきのマジか?」
『マジもマジ。大マジだ。先方からのご指名だぜ。お前も名前が売れたからな』
「クソッ。何人だ?」
『4人だと。それはそっちで適当に選んでいいがある程度制限は付くからな』
「俺は急病で倒れたことにしちゃダメか?」
『俺の一存で決められるわけねえだろ。話はもっと上だ』
「だよなー」
提督 から ”めんどくさいオーラ” が漂い始めた。
そんな表示が出そうなくらいどんよりとしている。あれ本気で嫌がってるやつだ。苦し紛れで急病とか言ってるあたり結構ガチで。
『とにかく伝えたぞ。急病で休みたけりゃカルテのコピーでも貰え。ま、いたって健康って書いてあるのがオチだと思うがな。じゃあな』
「医師免許でもとるか」
『取れるもんならとってみやがれ。じゃあな』
「わかりましたよーっと。じゃあな」
ピッと通信を切り一コマのタメ。そして。
「はあぁぁぁぁぁぁーーーー」
このため息である。どれだけ気がないのかよーくわかる。
「あー明石、悪いけどあと頼んでもいいか?」
「問題ないですよっ!この明石にドンと任せて提督は行ってきてください!」
「なら頼むわ。あとよろしくな」
ガシガシと頭を掻きながら工廠から出て行く。このあとに放送で何人か呼び出すのだろう。
ご愁傷様です、と明石は心の中で合掌した。
なんで本当にはやらないかって?両手は工具で塞がってるから実際にはできないのよ。仕方ないよね。
和弓の弦をキリキリと引きながら心を落ち着けて60mほど先にある的を見据える。
吸って、吐いて、吸って、吐いて。
呼吸を合わせていき、ピッと弦を離すと射られた矢がひゅうと翔び的に突き刺さる。
まあまあ、かな。まだ加賀には追いつかない。でもいつか必ず抜いてみせる。
演習場の隅に置いておいた手ぬぐいで額につたう汗を拭い、ペットボトルのキャップを開けると甘酸っぱいスポーツドリンクを喉をゴクゴクと鳴らして飲む。
喉の渇きを潤していると演習場についているスピーカーがガツッと鳴り、放送が流れることを予感した。
『あーあー、テステス。秘書艦叢雲から連絡。瑞鶴、鈴谷、ゴーヤ、以上3名は執務室まで来るように。繰り返す。瑞鶴、鈴谷、ゴーヤ、以上3名は執務室まで来るように』
いきなり放送で呼び出すって何事だろ?特にメンバーに関連性があるようには思えなかったけど。
まぁ、呼ばれたんだから行かなくちゃ。
「あっ……。さすがにこの格好で行くのはね…………」
今の姿はいつもの道着姿だ。
だけどさっきから運動していた所為で道着はグッショリと汗で濡れて肌に貼り付いている。
うら若き乙女が汗くさい格好で異性の前に姿を晒すのはちょっと、ね。
うん、シャワーだけでも浴びとこ。
手ぬぐいとペットボトルを手に取ると演習場の中に併設されているシャワールームに向かう。
手早く道着を脱いで熱いシャワーを浴びる。ボディソープの泡を手で落としながら瑞鶴はある一点に視線を落とした。
うぅ、加賀とか陸奥とかはあんなにあるのになんで私にはないのよ……榛名もサラシで隠してるけど結構あるし……矢矧もあるし実はゴーヤも……
哀しい考えを振り払うかのように頭をブンブンと左右に振ると、シャワールームから出て、体の水気をバスタオルで拭き取り着替えを着て、髪をドライヤーで乾かす。
ちなみにこのシャワールームの水道代やらガス代やら石鹸その他小物などは全部を提督さんが軍の経費でおとしているらしい。仕事してないように見えて意外としたたかな手を提督さんは知ってると思う。
完全に乾かす時間はなさそうだからざざっと乾かすと演習場を後にして執務室まで小走りで向かう。
もうみんな着いてるかな?たぶん着いてるよね。
執務室の前に着くと息を整えてノック。
「瑞鶴よ」
「ほいほい、はいれー」
間延びした提督さんの声に押されてドアを開ける。
やっぱりもう集まってるや。
「ごめん!遅れちゃった!」
「別に鈴谷は構わないよー。のんびり雑談してただけだしー」
「全員集まってから話したかったんだ。これで叢雲と瑞鶴、鈴谷、ゴーヤと揃ったな?んじゃ、本題に入ろう」
「提督ー。話逸らさないでよー。で、好きな女の子とか彼女とかいないの?」
「やかましい!俺は黙秘権を行使する!」
「むぅ、つれないなぁ」
雑談っていうより提督さんが一方的に聞かれてただけだね、これは。
「あー、とにかく本題に入るぞ?ここにいる4人は俺と一緒にヨーロッパに行ってもらう」
…………は?
「てーとく!どういうこと?」
「説明すると長いんだが、とりあえずお前ら今のヨーロッパってどうなってるかわかるか?」
「えーっと、深海棲艦が出現してからしばらくは荒れたけど艦娘が登場してからはヨーロッパの国々が集まって連邦国家が形成されたんだっけ?」
「瑞鶴、正解。それで3、4ヶ月ぐらい前に北海油田防衛戦が起きたわけだが、防衛に成功したのはいいものの、主力がかなりやられたらしくて向こうの艦隊は数は戻ったものの現在練度不足なんだと。で、
数は戻ったってことは撃沈が結構いたってことよね……。それだけ激しい戦いだったんだ。でも欧州連邦としても北海油田は貴重な油槽だからなんとしても守らざるを得ないよね。でも艦娘が沈んだのはちょっと悲しいかな……。
「俺が不在の間、館山はマサキの手の者が見ててくれるらしい。信用できる奴だって言ってたから問題ないだろ」
「でもなんで
「ウェーク島のことが世界中に知れ渡ってるからだろうな。それでわざわざ名指しで俺を指名してきたってとこか。それに日本は石油を欧州連邦からも輸入してる。無視はできねぇだろ」
「うーん、それはわかったけど私じゃなくてもいいじゃない。それこそ加賀とか赤城さんとか二航戦のふたりとか正規空母は他にもいるよ?」
まだ私は一航戦には及ばない。教官役として派遣するだけなら別にうちの部隊以外からも呼べるはずだしもっと腕のたつ人もいるはず。
「一航戦は基本的には国内から動かせないって決まってるし、二航戦は現在ウェーク島の防衛に2人ともついてる。翔鶴は横須賀鎮守府の秘書艦で動かせるわけがない。大鳳は北方海域で、雲龍型は各所でドンパチやってる。手が空いてて同時に動かせるのはお前しかいないんだよ、瑞鶴。ま、向こうの艦載機運用が生で見られるんだ。いい機会だし勉強にもなると思って受けてくれや」
「む………そういうことなら仕方ないね。わかった!ヨーロッパついてくよ。よろしくね、提督さん!」
「おう。頼むぜ、瑞鶴」
「ねっ、鈴谷は?」
「榛名と陸奥の艤装は現在進行形で修復中だから連れてけないだろ?だけど鈴谷の艤装は完全に直ってるし砲撃の腕もあるから指導は出来るだろ?それに巡洋艦全般に通用する技術を重巡も航巡も経験してるお前なら持ってる。適任だろう?」
「うん、よくわかんないや。とにかくついてくねっ!」
「お前なんで聞いたんだよ……」
「まったくよ……」
提督さんと叢雲がまったく同じ動きでこめかみに手を当てて呆れ返る。
私もそうしようか一瞬悩んだのは秘密だ。
「てーとく、ゴーヤはなんででち?」
「ん?ゴーヤは潜水艦の指導役だぞ。ウェークの戦果とか演習記録とか見てみたが魚雷の命中率が高い。これは潜水艦としての動き方に成熟してるって証拠だろ。だからだよ」
「わかったでち!教官役は任せて!」
………提督さんは言わなかったけどゴーヤを他の人に任せるのはまだ早いと思ったから連れてくんだろうな。
「ま、そういうわけだ。出発は3日後らしいから準備だけしといてくれ。せっかくのチャンスだ。ヨーロッパ観光でもしようぜ?」
「ちょっと!遊びに行くわけじゃないのよ!」
「わかってるって。ただ自由時間とかもあるみたいだからその間に遊ぶくらいいいだろ」
やたっ!この前ボーナスをもらったばっかりだからパーっと使っちゃおっかな?
何買おう?新しい洋服とか買っちゃおっかなー?化粧品とかバックとかも欲しい。
使うところあんまりないけど、でも普通の女性としておしゃれしたいじゃない。
「んじゃ、解散。3日後に向けて着替えとか洗面具とかカバンに用意しとけよ。手持ち金もそれなりにな。あと……」
執務机の引き出しをガラリと開けると机の上に峻はゴトリと拳銃を置いた。
9mm拳銃。日本海軍が正式に採用し、配備している拳銃だ。ひと昔前に存在した銃刀法違反は改正され、民間人ですら申請さえすれば拳銃なら持てるご時世で軍人が持っていないわけがない。
峻の愛用のCz75は軍に申請してあるので使用許可が下りているから使用しているが、基本的には軍人には9mm拳銃が渡される。
「これ、持ちたい奴は言え。今回は海外だ。なにがあるかわからんから俺の判断で渡してもいいと言われてる。護身用として持っていても損にはならないだろうな」
「それは………」
「別に断ってもいい。ただ、必要なら言え。お前らは書類上では兵器扱いだがそんなもんは俺から言わせりゃクソ食らえだ。お前らは人間だ。だからこそ
「「「…………」」」
でも
けれど提督さんは
どっちが正しいんだろう。
瑞鶴は頭を悩ませた。
けれど自分に聞けば答えは
瑞鶴の貧乳ネタをついにやってしまった……
遠くから艦載機の音が聞こえるよ、うふふふふ。
そういうわけで手早くいきます。
いきなりオレオレ詐欺をやったりとネタ回のように見えながら、ちゃっかり世界観の設定を入れたり後半の拳銃携帯についての重い話を入れたりとシリアスさんも顔を出す回でした。
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それでは私は爆装した艦載機から逃げるのでここで。