艦隊これくしょん〜放縦者たちのカルメン〜   作:プレリュード

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演習スタート!さあ、彼女たちの戦いをご覧あれ!

5/28、誤字訂正しました。


暴れてやろうぜ

6日後。

銚子基地との演習の日は来た。館山のメンバーが銚子に訪れて演習をする予定になっているため、峻たちは朝早くから出かけているのだ。

 

「本日はよろしくお願いします」

 

「いやいや、こちらこそよろしく頼むよ」

 

丸顔ちょび髭の男と峻は握手を交わした。この丸顔が矢田大佐その人である。

 

「少佐との演習、お互いせいぜい有益なものになることを祈るよ」

 

「ええ、それはもう。うちも全力で勝ちに行かせていただきますよ」

 

「おや、これは楽しみだ。どこまでやってくれるのかな」

 

矢田大佐が朗らかに声をあげて笑う。

一見してみると平穏なやり取りだ。しかし本音は、

 

《さっさと負けて潰れろ、若造が》

 

《うるせぇ、そっちこそ吠え面かきやがれ》

 

《調子に乗れるのも今のうちだぞ》

 

という、平穏からはかけ離れた、裏の言い合いが存在していた。

 

(こいつ、俺に地位を蹴落とされるのを恐れて今回の演習組みやがったからな)

 

今回の矢田大佐の演習の目的は自分への牽制だと峻は睨んでいた。

 

(ここでうちに勝って俺の頭を抑えときたいんだろうな)

 

別にそこまで出世欲があるわけではない。なにも出世を蹴ることなどはしないが、わざわざ自分から策を弄して他人を蹴落としてまでしようとまでは考えていない。

 

(めんどうなのに目をつけられたな)

 

内心では嫌々だが、仕方ない。もうやると返答してしまったし、彼女との約束もある。

 

 

「それでは自分は仮設戦闘指揮所に行ってきます。正々堂々とやりましょう」

 

「了解だ。40分後に開始でいいかね?」

 

「わかりました。40分後ですね」

 

それでは後ほど、と敬礼をし、くるりと背を向けて指揮所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、それじゃ、お前ら聞けー」

 

指揮所に入り、ゆるく集合をかけると館山の艦娘たちが一斉に集まった。

 

「今回の演習だが、相手の編成は空母1、軽空1、戦艦3、軽巡1だそうだ」

 

「うわぁ……戦艦3隻って叩き潰す気マンマンじゃない」

 

ドン引き、という表情で瑞鶴が言う。というか実際に半歩ほど退いていた。

 

「結構ガチな編成でくるみたいだな。あちらさんにはうちからは、空母1、戦艦1、雷巡1、軽巡1、駆逐2と伝えてある」

 

「あんたは誰を出すつもり?」

 

「当然お前は出てもらうぞ、叢雲。それから瑞鶴、榛名、北上、天津風、矢矧だ」

 

「あれ、私?加賀じゃなくて?」

 

「そうだ、お前だ瑞鶴。空母2隻を相手にする状況を想定して、その手の経験の豊富な加賀じゃなくてお前を選んだ」

 

「えっとどういうこと?」

 

「経験を積んできなさい、ということよ瑞鶴」

 

クエスチョンマークが頭に浮かぶ瑞鶴に加賀がフォローをいれた。

 

「そういうこと。む、あと20分か。全員、演習用の装備になってるか確認しろ。実弾入ってましたとか洒落になんねぇからな」

 

艤装を各々が点検して、しっかりとペイント弾になっているか確認していく。その中で一足早く終わったらしい叢雲が近づいてきた。

 

「ねぇ、イムヤとか鈴谷とか置いてきてよかったの?」

 

「基地を空にするのは気が引けたし、それにゴーヤの護衛も兼ねて、な」

 

ゴーヤの件は極秘なので声を潜めて話し合う。基地には夕張、鈴谷、イムヤ、明石の4人を置いてきていた。

 

「それよ。なんでよりにもよってあの子の所属基地との演習を認可したのよ」

 

この演習、参加するメリットがあまりないように叢雲は思えた。勝っても大したものは来ず、負けたらこちらは今後海軍基地としての発言は弱くなる。唯一のメリットは経験くらいのものだろうか。

 

「負けることなんてありえないけど、勝ってもああいうタイプは粘着してきて厄介よ」

 

「知ってる。だから今回の演習を通した」

 

「あの子のやり返しとかではないのね?」

 

「ゼロじゃないが、それはあんまし関係ないな」

 

「ならいいわ。私たちに恥をかかせないで頂戴ね」

 

「はっ、言うねえ。お前こそ、出てって最初の一発でやられましたとか言うなよ」

 

お互いに軽い嫌味をふざけて言い、叢雲は演習海域に、峻は指揮所で椅子に座り、デバイスを戦術コンピュータに接続した。

 

「さあ、やるぞお前ら!暴れてやろうぜ!」

 

「「「「「「了解!」」」」」」

 

 

演習開始まであと10分。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて貴様ら、なにがあろうと奴らを叩き潰せ」

 

一方そのころ矢田も艦娘を出撃させようとしていた。

 

「あの若造め、調子に乗りおって。今にみておれ………」

 

「あの……提督、指示を」

 

おずおずと軽空母の瑞鳳が指示を仰ごうとする。

 

「うるさい!さっさと突っ込んで倒してこればいい!そんなこともわからんのか!」

 

矢田が一喝すると5人の艦娘がびくっと怯えたように身を縮ませた。

 

「私たちが勝つためには指揮する人間が必要なのよ。だからなにか策をいただけるかしら」

 

「ふん!あの若造の艦隊に負けることなぞありえん!」

 

唯一さっき身を縮ませなかった戦艦の陸奥が丁寧に頼むが、矢田はそれを怒鳴り散らして抑えつけた。

 

「こちらには戦艦が3隻もいるのだぞ。向こうはたったの1隻ぽっちだ。負けるわけがなかろう!」

 

「でも────」

「くどい。陸奥、さっさと行け!」

 

「…はい」

 

6人が演習海域に向かう。開始時刻まであと5分だ。

 

「いいか、最初はこうしろ」

 

戦闘指揮所から矢田が艦隊に指揮を飛ばす。

 

『───了解よ』

 

幾ばくかの間が空いたあとに陸奥が返事を返した。

通信を切り、ちらりと時計を確認する。

 

開始時刻まであと3分。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「陸奥さん、どういった指示がきましたか?」

 

恐る恐るといった感じで空母天城が聞いた。

 

「普通に艦載機飛ばして索敵しろってことよ」

 

実際はその合間にいくらか悪態が入っていたが陸奥は意図的に伏せた。

 

「扶桑姉妹は射程に入り次第、私と砲撃、瑞鳳と天城は敵艦隊を発見次第、艦載機による攻撃を開始すること、ですって」

 

「わかりました。山城、準備はいい?」

 

「ええ、姉さま。大丈夫ですよ」

 

「あの、阿賀野は?」

 

「っ!阿賀野は……」

 

陸奥が急に尻切れとんぼな言い方に変わる。

 

「阿賀野はどうすればいいの?」

 

「阿賀野は…………」

 

結局、陸奥は阿賀野に言われた指示を伝えた。だが一部は伏せたが。

 

 

 

 

「軽巡なぞ、さっさと前に出して囮にでもすればいい。実戦でも軽巡ごときはは敵の位置を探るための犠牲のようなものだろう」

 

 

 

 

言えるわけがなかった。言いたくなかった。

 

(それでもきっと阿賀野はどういう意図か気づいているでしょうね)

 

そしてそれはきっと他の艦娘もそうなのだ。わかっているが司令官には逆らえない。

 

(館山は随分と和気藹々としてたわね)

 

そんな事実は彼女たちにとっては夢幻(ゆめまぼろし)以外何でもないものだった。

 




あれ……演習が始まらないよ?
本格的にやるのは次になりそうです。

感想などはお気軽にどうぞ。ではでは。
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