狩人様は神喰いに。   作:zakuzaku

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前回遅かった分、今回は早めの投稿、且つ割と長めです。

概要通り、人間模様はガンガン書いていきますよー。


不器用な仲裁

人間、聞かれたくないことの1つや2つあるものだ。そこには必ず後ろめたい「何か」が存在している。斯く言う俺も人には話しづらい過去があるが、それはさておきだ。一つだけ愚痴を言わせてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで俺が喧嘩の仲裁人をしなくてはならんのだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を遡ること数十分前。ブラッドに新たなメンバーが加入した。それも熟練のジュリウスに次ぐ熟練の使い手らしい。これだけ聞けば、めでたいことかもしれない。問題はここからだ。どうやら、ロミオとその新メンバーが揉めたというのだ。しかもロミオは殴られたとのこと。揉め事の内容を聞くに、どうやらロミオがかなり質問攻めした……らしい。俺はただ殴られた一部始終しか見ていないので、本当の原因はよくわかっていない。だが、ロミオが殴られたのは事実であり、このままだと任務に支障をきたす可能性を考えたジュリウスがフォローするよう俺に頼み込んだのだ。喧嘩の仲裁の経験なんてない俺は断ろうとした。まあ、いきなり断るのも悪いから一応人選の理由を聞いてみたところ―――。

 

 

「あまりこういったことは不慣れでな。フランやブラッド隊の皆とすぐに打ち解けたお前なら適任だと判断した」

 

 

間違っていない。間違ってはないが少し待ってくれ。そもそも、会った人間ほとんどから襲われる人生を送ってきた俺の方がどう考えても不慣れなんだが……。

 

……一応、断ってナナに頼んでほしいと言った。が、しかし彼はこう続けたのだ。

 

 

「これは男同士の問題だからな……ナナには少々荷が重いだろう」

 

 

……そういうものだろうか?如何せん人間関係に疎い俺はその場で納得してしまった。冷静に今考えてみれば、本当にそうなのかという疑問しか湧いてこない。とにかく、そのまま押し切られて承諾してしまった俺は、その新メンバーを探している。探すと言っても、どこに行ったかは見当はついているのだがな。

 

 

 

 

 

 

―――ピンポーン

 

 

 

 

エレベーターが止まり、俺はそのまま庭園へと降りた。するとやはり新メンバーである『彼』はそこにいた。

 

 

「ん?アンタは……」

 

 

あっちも気づいたようだ。さて、どう声を掛けたものか。とりあえず自己紹介しておこう。

 

 

「初めまして。ブラッド隊所属、アドルファス・ジャノグリーだ」

 

「ブラッドのメンバー……なるほど、俺の処分を伝えに来たか」

 

 

処分?ああ、そういえばロミオを殴った後、ジュリウスに「除隊でも懲罰房行きでも勝手にしてくれ」と言っていたな。言葉が自棄になっている気がしたが、あれは本当に本心なのだろうか。

 

 

「そうだな、非情に残念だが……」

 

「……」

 

 

黙ってこちらを見る彼の眼は、なんというか迷いが見受けられた。何を考えているかよくわからないが、俺はここに付くまでに考えた最善策を実行するまでだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ガッ!!

 

 

「ぐぁ!?」

 

 

庭園に鈍い音が響き、遅れてドサッという何かが地に落ちるような音がこだます。その理由は至ってシンプル。

 

 

「……ッてめぇ!何しやがる!!」

 

 

ものすごい形相でこちらを睨み付ける彼。まあ、当然だろう。訳も分からずぶん殴られたら(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)、そりゃ誰だって怒る。

 

そんな怒る彼を見て、俺はこう続けた。

 

 

「そうだな、そう思うだろう。どうして殴られたと思う?」

 

「はぁ!?なに訳の分からない事言って―――」

 

「そう、それだ」

 

 

俺は吹き飛んだ彼に近づきながら、更に続ける。

 

 

「悪気もなく、ただ少し質問しただけ。そうしただけなのに殴られた。それがあの時ロミオが抱いた感情だ」

 

「なっ……」

 

「これでロミオの気持ちが分かっただろう……とはいえ関係ない俺があなたを殴るのも筋違いというものだ」

 

 

そう言って俺は後ろで手を組み、脚を肩幅まで開いて目を閉じた。

 

 

「……何してんだお前?」

 

「今のお詫びに、一発殴ってもらって構わない」

 

「は?」

 

「心配するな、やり返すつもりはない。思う存分殴ってくれ」

 

 

これが俺の最善策だ。俺の知っていることはロミオの気持ちだけで、殴った側の彼については何も知らない。なら、ロミオの気持ちを知ってもらい、なおかつ彼のヘイトを俺へと向ける。そして、彼の苛立ちを俺で発散させれば彼の気も静まって一件落着だろう。

さて、そろそろ殴られるために歯を食いしばろう。相手は普通の人間とはいえゴッドイーターだ。ほとんど人間じゃない俺の体でも、本気で殴られたら少々響くだろう。そうだ、腹を殴られるのも考慮して腹筋にも力を入れて……さあ、どこからでもかかってくるがいい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ん?

 

 

いつまでたっても殴ってこないので目を開けた。すると困惑した表情で彼が立ち尽くしていた。

 

 

「どうした?殴らないのか?」

 

「いや、その……1つ、聞いてもいいか?」

 

「……?」

 

 

殴られた頬をさすりながら、彼は聞いてきた。

 

 

「俺の処分は、結局何だったんだ?」

 

 

……ああ、そう言えば言ってなかったな。最善策のイメージをずっと崩さないよう、話していたからすっかり忘れてしまっていた。

 

 

「無論、あなたとロミオの復縁だが?」

 

 

そう言うと、彼は深いため息を吐いた。それだけでなく、彼は唐突に声を押し殺すように笑い出した。

 

 

「……お前さん、とんでもなく不器用な人間だな」

 

「?」

 

 

どういうことだろうか。いや、というか何故殴らない?これでは場が収まらないだろう。

 

混乱する俺を見ながら、彼は苦笑を続ける。数秒後、彼は再度口を開いた。

 

 

「別に、ロミオとの件は気にしていない……というより、寧ろ申し訳ないと思っていたんだ。だから、除隊になるなら一度ブラッド隊には謝罪しようと思って処分を聞いたんだが……」

 

 

そこまで言って、彼は俺をちらりと見る。

 

 

「そしたら、突然ぶん殴られて、それがロミオの気持ちだと言われた。確かにこりゃ相手からしたら意味不明だな。身を持って分かったよ」

 

 

……ん?……つまり、つまりだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は反省している人間を思いっきりぶん殴ったということか?

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ない!」

 

 

俺はすぐさま跪き、首を垂れた。彼が既に反省している可能性を全く持って考慮していなかった。これでは本当に殴られなければ場が収まらん。いや、一発殴られる程度では足りないだろう。

 

 

「本当に申し訳ない、何発でも殴られよう」

 

「おいおい、頭を上げてくれよ」

 

「うむ、分かった。不届き者の顔を思う存分やってくれ」

 

「いや、違う違う。別に殴るつもりなんてないさ」

 

「しかし、それでは……」

 

 

むしろ俺の気が済まない、そう訴えるように彼の顔を見る。一歩も引かない俺を見て、彼は再度ため息を吐いた。

 

 

「分かった、そこまで言うならやってやろう。目を瞑って、歯ぁ食いしばりな」

 

「! 相分かった」

 

 

うむ、これで汚名は返上できる。俺はゆっくりと目を瞑り、彼の拳を待った。

 

 

「行くぞ―――」

 

 

俺は誠意の証として歯は食いしばらず、極力脱力した。さあ、何度でも殴るがいい……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ピンッ、ビシッ

 

 

「ぃだッ!……って、え?」

 

 

頭、鼻、頬、顎、腹、鎖骨……あらゆる激痛を伴う場所を殴られること想像した。だが、俺の痛覚が痛みを感じ取った場所は……額だった。どれだけ力を抜いても関係なく、硬い骨と皮のみが存在する部分。しかも、そこで感じた痛みの面積はごく僅かで、さらに言えば、ものすごく微小な力だった。察するに、親指と人差し指で円を作り、人差し指を弾いて額に当てた……つまり―――

 

 

「で、デコピン……?」

 

 

今後、これほど拍子抜けした声はなかなか出ないだろう。恐らく、マヌケな面をさらしているであろう俺に、彼は帽子を深くかぶりながら口を開いた。

 

 

「誰も『殴る』なんて言ってないからな。ついでに言えばお前はそれを承諾した。これでお互いスッキリしただろう」

 

「なっ……」

 

「そもそも、ここでアンタをボコボコにしたら、それこそ間違いなく懲罰房行きだろう?非がないのに罰を受けるのは流石にごめんだぜ」

 

 

……確かに、ここで問題を起こせば逆に彼の印象を落とすことになる。それに、殴られることに関しては「俺の自己満足」でしかない。うむ、彼がそれでいいというのなら、俺もそれに従おう。

 

 

「分かった。だが、本当にすまなかった。これだけはもう一度言わせて欲しい」

 

「元々アンタも善意でやったことなんだろ?事の発端は結局俺なんだから、気にしないでくれよ」

 

 

何と心の広い人なのだろうか……そう感動しながら、俺は目を瞑る。それを見て彼は「大袈裟な奴だな」と笑うが、実際ここまで寛容な人はそうはいない。あちらの世界では、人形ぐらいしか相当する者はいないだろう。だが、彼女の寛容さは、全てを受け入れろという呪いにも近い命令に逆らえなかったためであり、ただの人間がここまでの非礼を許すなど、俺の中では信じがたい事実だった。

 

 

「とにかくだ、アンタも俺も同じチームとして活動していくんだ。変に気を使い合って、戦闘中危険な目にあっても困るだけだし、これからは普通に『仲間』としてやっていこうぜ。おっと、そう言えばちゃんとした自己紹介がまだだったな―――」

 

 

彼は帽子を上げて俺と目を合わせた。

 

 

「俺はギルバート・マクレイン。ギルでいい。グラスゴー支部からの転属だ。これからよろしく頼む」

 

「ああ、俺もアドルでいい。こちらこそ、よろしく頼む」

 

 

俺と彼……ギルは握手を交わす。その後、ロミオとの件はきっちりと方を付けることを約束し、庭園を後にするのだった。

 




ギルさんがめっちゃ良い人になってしまった。いや、原作も良い人なんですけどね。
まあ、一応ブラッド隊では最年長だし、大人っていうことでご理解ください。
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