狩人様は神喰いに。   作:zakuzaku

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やはり日曜ぐらいしかゆっくり書ける日がない。

なんとか一週間以内投稿は続けていきたいですね。



餓爬鰐狩り~前編~

「あんた……生きているのが不思議なくらいだねぇ」

 

 

俺は数えられない程の死の経験をしてきた。それはもう多種多様に残虐な死に様を。だが、それでも自我を失うことなく狩りを続けてきた。特段打たれ強くも、精神が強かったわけでもないのになぜ――。

 

 

「しっかりするんだよ、もう誰も人間じゃない。信じれるのは――」

 

 

……そうか、彼女の言うとおりだ。あの世界の住人にもう、人など存在しなかったのだ。たとえ、自我があったとしてもだ。結局皆、血を求めていたのだ。血に酔い、血に狂い、血に生きる……。俺を含めた全てが血を求めさ迷う――

 

 

「自分だけさね……」

 

 

獣……だったというわけか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!しっかりしろ!!」

 

「……ぁ?」

 

 

自分ですら聞き取れるかわからない程の小さな声が喉に響いた。どうやら倒れているようで、鉛の空が視界を覆っていた。俺は体を起こすために腕に力を入れる。

 

 

「目を覚ましたか……」

 

「……ギルか?状況が……一体どういう――」

 

 

起き上がって、目を閉じる。少しだが、まだ意識が混濁しているらしい。多少の頭痛と眩暈がする。

 

 

「今は輸送ヘリの中だ。お前、唐突にぶっ倒れたんだぞ、思い出したか?」

 

「あぁ、そうか――」

 

 

言われてみれば、そうだった気がする。そうだ、最初から思い出すとしよう。俺はエミールとギルで任務に出て、新たな中型アラガミと――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せぇあッ!!」

 

 

中型アラガミ「ウコンバサラ」の引き起こす落雷を潜り抜け、肉薄する。更に二度三度チャージスピアで突きを繰り返し、宙返りで距離をとった。

 

 

「おらぁッ!!」

 

 

刹那、その真下を何かが通り抜けていく。それはウコンバサラに接触した瞬間その動きを止めた。見れば神機がウコンバサラの脇腹に突き刺さっている。それを引き抜き銃形態へと変形、さらに追い打ちをかけるようにバックしながらバレットを傷口に撃ち込んだ。

 

 

「流石だな」

 

「そっちこそ、新人って聞く割りにはなかなかやるじゃねーか」

 

 

互いに不敵な笑みを浮かべながら、拳を打ち合わせる。俺ともう一人の神機使い、ギルは初の中型アラガミと対峙し、善戦していた。とはいってもギルは初めてではないだろうし、とりあえず俺は彼が戦いやすい状況を作り出すことを優先していた。その判断は間違いではないようで現にギルは大技であるチャージグライドを何度もウコンバサラに直撃させていた。

 

 

「流石に奴さんも満身創痍って感じだな……っと、やっぱりな」

 

 

彼がそう言った直後、ウコンバサラは後ずさりをするように、俺たちから距離をとっていた。流石にこれ以上は危険と判断したのか、今の奴に攻めっ気は感じられない。

 

 

「恐らく、このまま逃走……あわよくば捕食をしようという魂胆か」

 

「だろうな。目を離すなよ?このまま一気に仕留める!」

 

 

意気込むギルに俺は頷く。目を離さず、じっくりと相手の動きを見ながら攻寄る。徐々にウコンバサラに退路はなくなり、いよいよ壁際にまで追い詰めた。だが、気を緩めることは許されない。袋の鼠ほど何を仕出かすか――。

 

 

「ガァァァァッ!!!」

 

「来るぞ!」

 

 

痺れを切らしたかのように動いたのはウコンバサラ。大口を開け、滑るように突進を強行してくる。当然避けないわけがない……が、それでは追い詰めた奴を逃がしてしまうことになる。

 

 

「そう来るのであれば――」

 

 

一気に加速するように、地面を蹴った。そして、突進してくる奴に向かって真正面に自身も突っ込む。一瞬で奴と俺の距離は縮まり、奴の大顎が鼻先に触れそうなほど肉薄した。刹那、俺は再度地面を蹴った。

 

 

「――ここだ」

 

 

空中に前転するよう飛び出し、持っていた神機を思い切りウコンバサラに突き立てる。刃は元々破壊されていたタービンと呼ばれる部分に深々と突き刺さり、俺は縦になったポールを握りしめ、足を奴の背中に付けた。そして背中の痛みに悶えながら突進するウコンバサラを無視しながら、神機を突き刺したまま銃形態へと移行する。

 

 

 

 

 

ズガガガガガガガッッッ!!!!!

 

 

 

無慈悲に散弾銃を連射する。弾丸は全て傷口へと吸い込まれ、血しぶきを上げた。その血を全身に被り、俺は再度認識する。あぁ、やはり血はどんな美酒にも勝るのだと。血を全身に浴びた愉悦に浸り、口元の血を拭うように舐め取る。致命傷を負った奴は当然の如く、スピードを殺しきれずそのまま反対方向の壁へと激突した。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 

 

 

「全く、戦闘技術に関しては器用なもんだ」

 

 

俺、ギルバートは呆れるように呟いた。先ほど自分が行った攻撃が一瞬で真似られたのだ。流石に驚きを隠せない。グラスゴー支部である程度他の神機使いとの交流もあったが、あいつみたいに優秀な新人は見たことが無い。俺だって多少のキャリアはあるんだ。あいつが俺に合わせて立ち回っていることぐらい気づいているさ。

 

 

「とはいえ、眺めてばっかりにもいかないな」

 

 

再度神機を振るい、アドルの元へと駆け寄ろうとする。奴は既に虫の息、もう一度二人で畳みかければケリが着く。勝負は決したも同然だ。

 

 

「……なっ」

 

 

だが、俺は気づいてしまった。いや、気づいて幸いだったというべきか。アドルのした行動、アラガミを倒すという観点からすれば何も間違っていない。だが、この任務において、もう一つ果たさなければならないことがある。

 

 

「奴が激突した高台の上には――」

 

 

戦闘不能になったメンバーの護衛……。奴を仕留めようと逸る気持ちで薄れていたもうひとつの目標。

 

 

「エミールの奴がッ……!!」

 

 

ウコンバサラが激突した衝撃で、高台から落ちるエミールの姿を眺めながら、俺は自分たちの失態に毒づく。見れば体勢を立て直し、よろめきながらも立ち上がるウコンバサラの姿があった。そして、運悪く奴の目の前にエミールが落ちる。奴にとっては餌が目の前に振ってきたことも同然、捕食しない訳がない。この距離だと走っても間に合わないのは目に見えている。一体どうすれば……。

 

走りながら思考を凝らすも、時は残酷に過ぎるだけ。俺をあざ笑うかのように、ウコンバサラは大口を開けた。そして今、仲間のすべてがアラガミに奪われる――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バクッ

 

 

 

 

都合よく奇跡が起きるはずもなく、ただ乾いた音が鉄塔の森に木霊すのだった。




前編終了。

後編をお楽しみに!
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