狩人様は神喰いに。   作:zakuzaku

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前編後編だけで終わると思っていたんですが、なんと中編に。

あ、今回はみんな大好きあの人が出てきますよ。というか私が出したかっただけです、はい。


餓爬鰐狩り~中編~

僕は、エミール・フォン・シュトラスブルク。栄えある極東支部第一部隊所属のゴッドイーターだ。だが、どうしてだろう。常に戦場に赴き、騎士として闇の眷属たちを屠るのが僕の務めのはずなのに。

 

 

「エミール」

 

 

僕を呼ぶ声……おぉ!?き、君は――。

 

 

「久しぶりだね、エミール……ん?どうしたんだい、まさかこの華麗な僕を忘れてしまったのかい?」

 

 

忘れるはずがない……ッ!我が盟友にして、好敵手。極東で最も華麗に戦ったと言われる神機使い。

 

 

「そう、エリック・デア=フォーゲルヴァイデだよ」

 

 

おぉ、久方ぶりだな我が盟友ッ!2年、いや3年ぶりといったところだろうか!?

ん?でも待てよ?君は確か、戦場で名誉の死を飾り、殉職したはずでは?

 

 

「そうみたいだね。けど、こうして会えたんだ。今はそのことを喜び合おうじゃないか」

 

 

……うむ、そうだな。今は再会を祝うとしよう。だが、もうひとつ聞きたいのだが、ここは一体どこだ?僕はさっきまでアラガミと戦っていたのだが……。

 

 

「アラガミ?そうか、君も神機使いになったんだね……ははっ、もしかして僕のためかい?」

 

 

うーむまあ、半分正解と言うべきだろう。君がゴッドイーターになると言ったそのときから僕も密かにゴッドイーターになろうと思っていたんだ。そして、君の殉職を聞いて、君の妹エリナまで神機使いになると言い出した。僕は君の「妹を頼む」という約束を果たすこと、そしてライバルである君を超えるために僕は決意を固め、神機使いになったんだ!

 

 

「そうか、エリナが……でも、きっと華麗に戦っているのだろう?なんたってこの華麗な僕の妹だからね」

 

 

ああ、君に近づこうと日々精進している。僕はそんな彼女を見守りながらも、必ずや君を超えるゴッドイーターになるために騎士道を磨いている。

むむっ、そうだ。その騎士道を磨くためにも少しの間特殊部隊と行動を共にすることになったんだ。先ほどまでその任務中でアラガミと対峙していたのだが……そういえばここはどこなんだ?僕は鉄塔の森にいたはず……。

 

 

「そうだね、君には戻らなくてはならない場所がある。君のことを待っている仲間がいるんだろう?なら、こんなところにいる場合じゃないね」

 

 

ん?どうしたのだ、エリック。何か言った……ッ!?どわぁぁぁッッッ!!!?足元が突然抜けてッ!?落ちるッ落ちていくーーーーーーッッ!!!!

 

 

「さらばだ、我が盟友。会えてうれしかったよ・・・君は必ず、あの世界で生き延びてくれ――」

 

 

脳内に友の最期の言葉が響いた。そして、僕は深い深い闇の中へと落下していった――。

 

 

 

 

 

――ガッ!

 

 

「へぶッ!?」

 

 

顔面に突如、痛みが伴った。いったい何が起きたというのだ。そう思いながら、頭を横に振る。そして状況判断のために目を開けた。

 

 

「……へ?」

 

 

視界に広がるのは赤く染まった何か。ところどころに鋭い何かが生え、いまにも自分に触れそうだ。それが何かの口であることを認識したときには、すでにそれは閉じてしまう直前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

バクッ

 

 

喰われた。僕は喰われたのか。アラガミに、戦うべき敵と対峙し、負けたのか……。くッ、盟友との約束も守れず、騎士として十分な戦いもできずに、不甲斐ないばかりだ。あれ、でも待てよ?なぜ、僕には意識があるのだ?

 

恐る恐る目を開ける。すると衝撃の光景が目の前に広がっていた――。

 

 

「き、君は……ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛みに慣れたことはない。だが、耐えることにはある程度慣れた。だからこうして、今も無理できる。

 

 

「無事か?」

 

 

どうにか喋れる程度の痛みだ。一方問いかけた相手は唖然としている。それが普通の反応なのだろうが、今はそれすらも許す時間が無いに等しい。左手が喰い千切られる(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)のも時間の問題なのだ。

 

 

「早く退け。長くはもたない」

 

「だが、アドル殿……それでは君が」

 

「問題ない。アンタが退きさえすれば、何とかできる」

 

 

そう言われ、あたふたと立ち上がりエミールが後退する。よし、これでこいつが暴れても何ら問題ない。

 

 

「――その汚ねぇ口を離しやがれッ!!」

 

 

後方から怒気を含んだ声が響く。刹那、首元に深々とチャージスピアが突き刺さった。どうやらギルがチャージグライドで一気に加速してきたようだ。

 

 

「ぅらあッッ!!」

 

 

そしてそのまま、ウコンバサラを蹴り飛ばす。流石に蓄積されたダメージで強靭が無くなっているのか、前足をくの字に曲げそのまま体勢を崩した。その衝撃で噛みつきが緩くなったこと見逃さず、俺は自分の手を引き抜き、後退した。

 

 

「割と持っていかれたか」

 

 

自分の左手は元の状態からとはかけ離れ、言うなればぐちゃぐちゃの状態だった。皮膚は乖離し、骨が若干露出する形になっている。流石にこの状態のままでいたら失血してしまう。

 

 

「……試してみるか」

 

 

左腕の上腕二頭筋辺りを布で縛り、軽い止血を施す。そしてそのままウコンバサラの元へと走った。

 

 

「ふんッ!」

 

 

やることは至ってシンプル。神機を捕食形態へと移行させ、ただ喰らった。問題はここからだ。そのまま意識を左手へと集中させた。するとどうだろう―――

 

 

「おー案外やれるもんだな」

 

 

徐々に、とは言うが目に見える速さで右手が修復していく。俺が試したこと、それは神機解放時の身体能力向上を左手の自己治癒に当ててみたのだ。そんなことが可能なのかと聞かれれば、実際ただ出来てしまったとしか言えない。だが、俺の体はほとんど人間の要素がない。むしろ、上位者の力の方が濃いのだ。それならば、自己治癒程度ならできるだろうと確証はなかったが試してみたまでである。現に左手はみるみる修復され、既に骨の露出はなくなっていた。

 

 

「おい!」

 

 

そこにギルが駆け寄ってくる。その表情は険しく、怒っているようにも見えた。当たり前か、ヘマをやらかしたんだからな。

 

 

「大丈夫か!?」

 

「え?」

 

「っておいおい、結構やばいな。骨とかは……」

 

 

何故俺を心配してくれるのだ?もとはと言えば俺が追撃をしなければエミールも危険に晒されず、被害が出ることも無かったというのに。

 

 

「まったく……お前さんは他人の事を考えると自分の事は頭から無くなっちまう、だから今回の事も全部俺が悪いんだとか考えてるんだろう?」

 

「む、実際そうだろう?」

 

「バカ、あんときは俺だって完全にエミールの事を忘れてたし、結局はお前が追撃するか俺がするかのどっちかだった。結果的にお前が攻撃して被害を被ったってだけのことだろ」

 

 

うむ、そういうものだろうか。やはり分からない。いや、正確には忘れてしまったのだろう。昔は俺にも人間らしい思考があったはずだ。だが狩りを続ける中で俺の人間性は薄れて行ったのだろう。そうか、心はまだ人間の心を保てていると思っただが……やはり俺は心身ともに化け物らしい。

 

 

「とにかくだ。さっさと瀕死のアイツからコアを抜くととしよう」

 

「……相分かった」

 

 

そうだ、人の心などもう俺には関係のないことだ。俺は人間としてでもなく、狩人としてでもなく、一人の神喰いとして生きていく。あいつらを殺せればそれでいい。

 

 

「ん?なんだ――」

 

 

違和感、というべきか。ウコンバサラを見ると先ほどまでとは何かが違う。外見や動きなどは全く持って同じ……だが、説明のつかない違和感がそこにはあった。

 

 

「おいどうした、とっとと止めを……なッ!?」

 

 

一瞬だった。先ほどまで数十メートル先にいたはずのウコンバサラが消えたのだ。そしてそれは、今や俺たちの真上にいる。

 

 

「チィッ!」

 

 

ほとんど反射神経での反応。ギルの腕を掴み、思い切り後方へと跳躍した。着地と共にすぐさま視線をウコンバサラへと向ける。訝し気にこちらを睨み付け、先ほどのまでの衰弱は見る影もない。

 

 

「一体どうなってやがる……」

 

「!」

 

 

そのとき、俺は気づいた。奴の目が赤く、変色していることに。

 

 

「まさか」

 

 

俺は自身の左手を凝視した。信じたくはないがさらに厄介なことになったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の血で……『獣化』したのか?」

 

 

 

心の内で浮かび上がった1つの仮説を、俺は知らず知らずのうちに声に出していた。

 




時は回帰し、再度獣狩りの刻が迫る――。

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