タイトルでネタバレしてる感が半端ではないですね。
ですが、これ以外何も思いつかなくてですね……
「――人形。俺はどうしたらいい」
「はい?」
大樹の下で俺は一つの墓を眺めながら問いかけた。質問の意図が分からない、と言いたげな様子で人形は首を傾げる。確かに、今の発言では言葉が足りなかったな。
「いやな。こうして俺はまるで普通の人間のように日々を過ごしている訳だが……本当にそれでいいのだろうかと思ってな」
以前、人形は俺が無意識的に一つの目的を持って行動していると言ったが、今一つそれが実感できるような事件は未だ起こっていない。俺の体に何かしらの変化がなかった訳ではないが、それも俺の目的に繋がるものなのかも分からない。
「そうですね……私には何とも」
「……ま、だろうな」
端から期待していなかったように言い捨て、俺は苦笑した。別に何も答えなかった人形に呆れたわけではない。ただ、人形に答えを求めるほど生きる目的を探すために躍起になっている自分が、酷く滑稽に見えたからだ。本来、生物とは死ぬために生きているに過ぎない。生きるという『過程』を経て死という『結果』に至るのだ。その過程がどんなものであっても死という一つの結果にたどり着くのだ。それを知っていながら何を焦る必要があるだろうか。
「変なことを聞いた、忘れてくれ」
そう言って立ち上がり、その隣の墓に手を置いて『夢』から離れようとした。
「狩人様。私には、分かりません」
人形は目を伏せて話し出す。その表情は悲しいそうなものだった。
「私は……生きてもいなければ、死んでもいません。そんな私から見れば、生物が皆、『生』というものにしがみついている様子が疑問でしかありません。その先には必ず死が待っているというのに……狩人様、今度は私に教えてくださいませんか?」
目を開き、その双眸が俺を捉えた。感情を捨ててしまったような義眼にはもう一人の俺が映りこむ――。
「……何故、人は『死』を恐れるのですか?」
◇ ◇ ◇
「本日付で、極致化技術開発局所属となりました。シエル・アランソンと申します」
透き通ったような声が部屋に響く。だが、その言葉遣いは非常に堅苦しいものであった。
「ジュリウス隊長と同じく、児童養護施設『マグノリア=コンパス』にて、ラケル先生の薫陶を賜りました。基本、戦闘術に特化した教育を受けてまいりましたので今後は戦術、戦略の研究に勤しみたいと思います」
目の前の少女は、一息にそれを言い切った。それを後方で眺めていたジュリウスが穏やかな笑い声を漏らし、しばしの沈黙が流れる。
「……以上、です」
耐え切れなくなったかのように、少女俯いてそう付け加えた。それを見ていた俺の隣にはナナ、ロミオ、ギルのブラッド隊メンバーが全員いたのだが、唖然としたように少女を眺めて続けている。ナナとロミオに至っては2人して口が開いたままだ。
「シエル、そんなに固くならなくていいのよ。ようこそ、ブラッドへ――」
助け舟なのだろうか。この方が考えていることはよく分からないが、とにかく沈黙は途切れた。聞けば、目の前の……シエルと名乗る少女がブラッドの最後のメンバーらしい。
「これからブラッドは、戦術面における連携を重視していく。その命令系統を一本化するために、副隊長を任命する。ブラッドを取りまとめていく役割を担ってもらいたい」
ジュリウスがラケル博士に促され、話題を変えた。副隊長を決定するということだが……いや、まさかな――。
「アドル……お前が適任だと判断した」
そんな馬鹿な。いや、別に嫌なわけではない。ただ、俺はそんなことを仰せつかるほどの実力は無いはずだ。味方との連携なんて、独りで戦ってきた俺にとって素人も同然。それに他の皆が納得する訳――。
「わー、副隊長ー!よろしくねー!」
「ま、順当だろ。ナナはあれだし、ロミオは頼りないしな」
「……おいおい」
何故か思ったよりも歓迎されている。確かに『血の力』には真っ先に目覚めたのは俺だが、それでも足りないものは他に数えられないほどあるだろう?メンバーとのコミュニケーション等に至っては最低限しかない俺に、指揮系統を任せていいはずがない。
「うるさいよ!お前の方がよっぽどあり得ないよ!」
バカにされたことに対してロミオが噛みつく。それに対して、ギルはやれやれと言いたげにそちらに向き直った。
「前にも言ったが、お前は敵と距離開け過ぎだ。そのくせ被弾率が高いってのはどういうことだ」
「イノシシバカに言われたくないね!だいたい、皆の射線の邪魔になってるの気づいてないの?」
「あ?皆って誰だよ」
「……まーた、始まった」
どうして、喧嘩が始まっているんだ。
間に挟まれたナナが呆れて、ため息をついている。まったくこんな所でまで何をやってるんだ……。
そう思いながら、俺は無言で二人の元へと歩いて行く。そして――
……ガッ!
「うげッ」
「痛って!?」
火花を散らしていがみ合う二人の顔に後ろから力を入れる。すると見事に互いの額が音を立てて衝突した。
「お前ら、喧嘩なら外でやれ。ついでに言うが、ロミオ。お前は何かとギルに突っかかるのやめろ。そしてギル、お前はいちいちひと言が多い」
「いって~……だって今はこいつがー」
「ッ……事実を言ったまでだ」
自分の額をさすりながら、こちらを睨む二人だがそんなことは関係ない。問答無用で俺は続けた。
「文句は後から全部聞いてやる。だが、今は状況を見ろ。分かったか」
それだけ言って、元いた位置へと戻った。二人はというと、渋々だが黙りこくって前を向き直した。さて、本題の戻ろうか。俺は副隊長になどふさわしくない――。
「――チームも上手くまとめてくれているようだ。やはり、お前が適任だな」
「……は?」
上手くまとめている?今のが?こんな対応はその場しのぎもいいところだ。俺じゃなくても出来るはず……いやもっとあるいは上手く――。
「誰に言われなくてもチームを統率し、正しく導いてくれるのはお前以外にいないだろう。どうか、よろしく頼む」
「う、むぅ……」
……そういうものだろうか。生返事で俺が決めあぐねていると、右から腕を引かれた。
「お願いだよアドルー……二人を止められるのアドルだけなんだからさー」
困ったような顔をしたナナが、小声でそう言ってきた。見れば二人はそっぽを向き合って、顰めた顔を崩さないままだ。ああ……もう勘弁してくれ。
「……了解した」
折れた。だが、仕方ないだろう。あんな顔で懇願されては、断りにくいこと極まりない。それに対してジュリウスは「ああ、信頼しているぞ」と労うような言葉をかけてくる。面倒ごとを一気に押し付けられて気もするが……後の祭りだ、嘆いていても始まらない。
「今後はシエルとブラッドのコンセンサスを重ねるように、お前らもそれくらいにしておけ」
ジュリウスが2人をそう一喝すると、顰めた面がばつが悪そうな顔に変わった。やはり、隊長の威厳というものは凄まじいな。
「副隊長、改めてよろしくお願いいたします」
俺が感心していると横から声を掛けられた。見れば先の少女、シエルがすぐ隣にいた。
「ああ、こちらこそよろしく頼む。アドルファスだ。アドルでいい」
「分かりました。では後程お願いいたします、アドル
そう言い残して、彼女はジュリウスと共に研究室を去って行った。隙の無いその後ろ姿は、まるで主人を守る番犬の様だった。ナナを含め、あんな年端もいかない少女が戦場に出る時代とは……そういった面ではあのヤーナムよりは厳しい世界なのだろうな。
「副隊長、か」
俺は小さくそう呟いた後、残ったブラッドメンバーに解散を告げ、シエル達の後を追うのだった。
ふと、思い立ったのですが、主人公の容姿などは決めたほうがいいのでしょうか。
ゲームと同様、キャラクリをするのはプレイヤーであって、読者の方々が自由に各々の狩人像を浮かべて頂ければそれでいいと思っていたのですが……。