最近忙しくて執筆不足が否めないですね
出来るだけ早く書けるよう善処します
――キィン
生活感の無い部屋に鋭利な音が響いた。今までやって来たことだけあって淀みは無い。というより本来ならこんなことしなくてもいいはずだが。
「さて、仕上げだ」
今まで握っていたそれに力を込める。するとどうだろうか、ほんの一瞬だけ光が包んだ気がした。全く便利なもんだな。試しに振るってみれば、懐かしき感覚が体を震わせる。
「ノコギリ鉈……握るのは最初の狩り以来だが、問題ないみたいだな」
無数の武器が散乱としている部屋にその呟きは響いた。現在俺は武器の調整を行っている。神機使いになって以来使っていないため壊れるようなことは決して無いだろう。
「今から使うとなれば話は別だ」
獣狩りを始める訳ではない。ただ、一人の少女の願い聞くだけのこと。以前にも少女の願いを聞いたこともあった。約束とは程遠い結末を迎えたが――。
「……ハッ、罪滅ぼしのつもりか?」
ふと口に出た自問に嘲笑で返し、再び武器を拾い上げる。休日だというのに物騒な格好で出歩くのは少々遺憾だが、見咎められぬよう注意を払って演習場まで行くしかあるまい。そう考えながら俺は久方ぶりに狩人のコートを羽織った。
「さて、上手く指導できるものか」
◇ ◇ ◇
――私は、ただ戦略を練っていました。
演習場にただ一人佇み、様々な動きを思案しましたが……やはりこれと言って彼に対抗できる方法は浮かんでは来ませんね。
私、シエル・アランソンは現在、人を待っているところです。人、というのは私が所属するブラッドの副隊長、アドルファス・ジャノグリーこと、アドル副隊長。彼は戦闘に長け、入隊してから短期間で血の力に目覚めたという話でしたが、彼がどんな人物であるのか未だ分かりません。あの優秀なジュリウス隊長の人選ですから、文句はないのですが……どうも要領を得ません。なので今回は彼を知るために、一つ手合わせをお願いしました。対人戦の経験が彼にあるかは知りませんが、その時の状況の判断や手法から見えない性格を探ることは可能なはずです。とはいえ――。
「迷惑……だったでしょうか」
私は余り人付き合いに経験が多くありません。もしかしたら、彼から見ればかなり迷惑だったのではないでしょうか。今後ブラッドで仕事をしていくうえで人間関係というものは重要だとは思いますが……やはり、唐突に部屋に訪れるようなことは控えたほうがよかったのでは――。
「待たせたな」
ふと、声が聞こえた方向を確認。見れば、彼が立っていました。
「いえ、時間通りです。問題ありません」
私はそう返すと、彼は「そうか」とだけ言って腕を組んだ。彼の格好は何というか、その、かなり特徴的でした。現代では物珍しいデザインをしたコートを羽織り、口元をマスクの様なもので覆い、表情を伺えるのは目元のみ。やはり、読めない人です。
「もう始めるか?」
「そうですね、早い方がいいでしょう」
やはり、急いでるのかもしれません。こちらの都合で付き合わせてしまっているのもありますから、手早く済ませたいですね。
「一つ聞きたいんだが……ルールは特にないんだな?」
「ええ、基本的に降参するか、どう見ても一方が敗北と判断されるような状況になるまで続行、ということにしましょう」
ルール確認ですか。前々から思っていましたが、律儀な方――。
「分かった、では行かせてもらうぞ」
「え――」
刹那、視界が暗転した。それを何かが目の前を覆っていることを意識半ば本能半ばで理解し、咄嗟に地面を蹴る。だが、どうしてそうなったのかを理解するまでには及ばない。
「……ッ!」
思わず顔をしかめてしまう、思考の回復も終わり改めて状況を理解する。
「中々、良い動きをする」
満更でもない顔で彼はそう言った。いきなり殴りかかってきてあの態度ですか。普段の会話の様子からしておとなしい人かと思っていましたが、そうでもないみたいですね。
「おいおいそんな顔するなよ……始めるって言ってそっちも了承したじゃあないか、ええ?」
手を広げ、肩をすくめて見せた。まるで自分に非がないと主張するように。その行動ひとつひとつがどこか癇に障る。
「ええ……そう、ですね。別に異論はありません」
とは言ったものの、不意打ち紛いの強襲をかけてきた相手に良い印象を持てるはずもありません。やはり、数週間で副隊長の座に立った人間。多少なりには狡猾さも必要ということですか。
「そうか、それじゃ――」
「ッ……!?」
動きを見せる彼に対して身構える。が、その行動も無意味なものとなる。
「……それは、どういうつもりですか?」
意味不明です。そう続けたかったが、形式上相手は上司。踏み止まって口を接ぐみました。ですが、本当に訳が分かりません。
「何がだ?」
「……言葉通りの意味です。どうして座っているのかと聞いています」
語気が強くなってしまっていることに気付かずにそう言った。彼は見ての通り……ただ、座りました。そこから何をすることもなく、ただ座しているのみ。
「おいおい、今は戦闘中だぜ?自分の行動の真意を話す馬鹿がいるか。それとも何か、本当はお喋りがしたかったのか?」
「なっ――」
少し、勘違いをしていたみたいです。ブラッドのメンバーからは人望が厚く、ジュリウス隊長曰く「あいつがいると痒い所に手が届く」と評価されているようですが……今確信しました。この人はそんな人間じゃない。理由は分かりませんが……少なくとも、私を馬鹿にしているのは間違いありません。
「そうですか。あなたがそういうスタンスならこちらも遠慮はしません!」
反撃開始。接近するために地面を蹴る。先手は打たれましたが、劣勢になった訳ではありません。寧ろあんな体勢をとり、彼は自ら劣勢になりました。手早く終わらせてしまうのが――
「迂闊だな」
「ッッ!?」
一直線に突進していた体躯を無理やり押し止め、殺しきれない勢いをそのまま横っ飛びに利用する。体が左にそれたと思った刹那、ヒュンと甲高いような音が耳元を過ぎて行った。
「ッ貴方は――!!」
蔑むとか、馬鹿にするとかもはやそんな次元じゃない。彼は……
「どうした?武器の使用禁止とは一言も聞いていない。先に指定しなかったお前の落ち度だ」
私を殺しに来ている。座った彼を見つめたまま、そう心中で悟った。いくらなんでもおかし過ぎる。私は演習場の高台の影まで走り、身を隠した。
「故に銃を使おうが、どうしようと俺の勝手だ」
そう続ける彼は嗤っていた。まるで獲物を見つけた狩人の如く、猟奇的にも目を爛々とさせながら。
「どうして……」
今まで命のやり取りはしてきましたが、こんなにも死を身近に感じたのは初めてのことでした。思考は恐怖と緊張感に圧迫されほぼ停止状態。動悸は治まらず、呼吸も荒い。けれど、五感は普段の数倍は鋭さを増している。彼の吐く息が10m以上離れているこの位置からでも聞こえ、それは明確に私の元へと近づいてくる――。
「
ガシャリ、とまるで金属を擦り合わせた様な音が響いた。嫌な予感が胸を駆け巡る最中、私は恐る恐る影から顔を覗かせる――。
「
「