あれは嘘だ(スンマセン
「貴様に、狩りと闘いの違いが分かるか?」
昔、そう問われたことがあった。当時の俺は狩人としては未熟であるがために、分からないのだと思った。だが、狩人としての経験を積めば積むほどその意味は分からなくなっていた。現に、目の前で駆逐されるアラガミを見つめるがこれが狩りなのか、あるいは闘いなのかは分からない。ただ言えることは1つ。
「――どの道、狩らねば死ぬ」
そう言い捨て、神機を振るう。目の前のオウガテイル目掛けて突進する。刹那、その躰は加速し、オウガテイルに風穴をあけた。チャージグライド、という技らしい。チャージスピアに装備している加速装置を起動させることによって、任意のタイミングで凄まじい速度で躰ごと突進する突きを繰り出すことが可能らしい。どういった機構になっているか気になり、指南書もいくつか読んでは見たのだが、どうやら俺の知識では叶わぬ夢らしい。
「これで最後か……」
アラガミとの対峙は訓練である程度慣れているのもあり、スムーズに任務は進んだ。力を持つアラガミとはいえ、どうやら獣よりは厄介ではないらしい。人間が獣化し、ほんの少しでも知性があった場合、姑息な罠を張ることが多い。まあ、完全に獣化した場合、何も考えず人を喰らおうと襲い掛かるのだが。言ってしまえば、アラガミは後者にかなり近いものがある。というより、アラガミの方が本当の獣らしいというべきだろう。戦ってみたところ、自己回復のために逃走し、捕食を行うという光景が何度か見れた。真っ先に自分の命を優先し、逃げ出すのは生物全てに備わっている基礎的な本能だ。ヤーナムの獣たちは、自分の命よりも血を求める。生物たるその大前提が欠如している獣たちは、生き物とは言えない。
「……こいつらの方が、狂った獣どもよりよっぽどマシだろう」
――獣ども……そして、俺も含めて……な
「流石だ、アドル」
「お疲れー」
思考は遮られ、声に意識が向く。
「……ジュリウス、ナナ」
「訓練のときも思ったが、お前は飲み込みが早いな」
飲みこみが早いというより、適応が早いといった方が正しいのかもしれない。目の前の事実を真摯に受け入れ、出来るだけ客観的な答えを出す。あの悪夢の中では、そうしなければ狂ってしまうだろう。人の心を捨て、ただ眼前の獣を狩る。そのために出てしまった犠牲は仕方ない。自分さえ生き残れば、それでいいのだと。故に今回の実地訓練でも一人で行動することが多々あった。今後は味方の動きにも注意せねば。
「いや、正直まだまだだろう。何度か、連携を失敗してしまったからな……」
「むぅ~、それを言ったら私が惨めだよ?ほとんど、私がハンマーに振り回されたときに連携が崩れたんだからさ」
「そうだったのか?てっきり囮になっているのかと思ったんだが」
「それはそれで、ひどい皮肉に聞こえるんですけど隊長!?」
ガーッとジュリウスに抗議するナナ。それに対するジュリウスの反応を見る限り、本当に囮だと思ってたらしい。結構茶目っ気があるというか、端的に言えば天然なのだろう。ちなみに俺がジュリウスに対して敬語を使わなくなったのは「戦闘中に余計なことは極力考えなくていい」という彼の言葉である。まあ、俺の方が確かに年上なのもあり、不自然だったためすぐにそうさせてもらった。ナナも少しの抵抗はあったが、すぐに以前よりフラットな敬語へと口調が変わっていった。
「……ともあれ、二人ともよくやった。実地訓練はこれで――」
終了かと思い、ほっと息を漏らした時だった。
「――周囲にアラガミ反応!近いです!」
耳元から声が聞こえてきた。それは今のところ俺が色々と世話になっているオペレーター、フランのものだった。不思議な技術のひとつで、「無線」というらしい。線などの繋がりも無く、声などを自分の位置よりはるか遠くまで伝えることが可能なものらしい。確かにその通りで、小さな子機を耳の近くに装備し、そこから声が聞こえてくる。その小さな子機が、どうやら声を受信しているらしい。戦闘中も彼女の声を聴きながら、順次それに従って動いていたのだが、おかげでアラガミのいる位置、現在の状況を速やかに理解し、迅速な対処が行えた。連携が崩れても、すぐさま立て直せたのも彼女の指示のおかげだろう。俺からしてみれば、神秘の類なのではないかと思ってしまう技術だがそうではないらしい。
これは余談だが、驚いたことにフライアの設備等のほとんどが「電気」を動力源に動いているのだ。照明などはすべて「電球」とよばれる電気を使用したものだったり、俺が使っているターミナルなども動力源は電気なのだという。ヤーナムにおいては、トニトルスや雷光ヤスリなどの攻撃手段として雷の力を・・・つまり電気を使用することはあったが、何かの原動力として利用するなど俺には想像もつかなかった。
「種別は?」
「オウガテイルと思われます」
―――閑話休題。
とりあえず、今は実地訓練に専念しよう。ジュリウスが出現したアラガミをどうするか、改めて指示を待つ。
「よし、迎撃するぞ」
「……了解」
「おー!」
各々が承諾の意を声に表す。反応は数十メートルほど移動した場所からのようで、数にして3つだという。そんなに数が多くなくてよかったと俺は胸を撫でおろした。すぐさま、目標地点へと向かい臨戦態勢へと移行した。
「いたぞ」
フランの指示通り、そこには群れたオウガテイルが3匹ほど固まって動いていた。
「囲んで一気に一網打尽、それとも一体ずつおびき出して分断させるか?」
現実的な案を二つ上げる。奇襲と各個撃破、どちらも基本的な戦術。俺は今まで数による暴力を受けてきた側なので、前者の効果を痛いほど知っている。まあ、現状こちらも3人なので効果が出るかどうかに確証は持てないが。それに比べ、後者は時間はかかるが常時こちらに有利な状況で戦える。が、確実に一匹のみをおびき出せる方法はないため、成功する可能性は五分五分といったところだ。さて、この隊長はどちらを選ぶのか。それとも――。
「いや、いい機会だ。お前たちが目覚めるべき『血の力』をここで見せておこう。ついて来るんだ」
「『血の力』……?」
彼なりの案がある、ということらしい。ジュリウスは言い放つとそのままアラガミの下へと歩みを進めた。それはもう隠れる様子なんてひとつも見せず堂々と。当然アラガミたちも気付かない訳がない。
「ちょ、ちょっと隊長!?」
無防備な体をさらけ出しながら近づくジュリウスに驚くナナ。今のところ、アラガミたちに動きはないが、それでも危険なのには変わりはない。慌てて、ジュリウスに駆け寄ろうと走り出した。
「……はぁっ!」
ジュリウスが動いた。ただ、それは特に何をするという訳でもなく、ただ武器を振るうように構えただけだった。だが、その場に劇的な変化が起きた。
「これは……」
「力が、みなぎる……!」
躰が火照る。熱く、ただひたすらに内側から力がみなぎるのを感じた。どこかでこの感覚を得たのを覚えている。そう、それはまるで
「今から、ブラッドアーツを目標に対して放つ。少し離れていろ」
「ブラッドアーツ?」
「戦況を覆す大いなる力……戦いの中でどこまでも進化する、刻まれた血の為せる業――」
そこまで聞き終えて、ジュリウスが再度構える。これもまた見覚えがあった。
鴉を象徴するような黒衣、まるで一国の騎士のような佇まい、刀身を滴る真紅の血……。
俺にとっては忌まわしき『奴』を彷彿とさせる、抜刀の構え――。
「せぇぁッ!!」
一瞬、ジュリウスが消えた。今までの場所に彼の姿は無く、気付けばアラガミの後方で神機に付いた血を払っていた。
「!?」
それを確認した刹那、アラガミが力なく地に伏せる。
「今のは……?」
見れば、アラガミたちの体には無数の刀傷が残っていた。そして、今の一瞬で彼がアラガミを屠ったことをようやく理解した。
「これが、ブラッドアーツだ」
その事実に上乗せするように、ジュリウスがこちらに向き直りながら言う。確かに、凄まじい業だ。それはもう彼がいれば並大抵のアラガミは殲滅できるのではと思えるほどに。
「俺たちブラッドに宿る『血の力』、そして『ブラッドアーツ』……これをどう伸ばし、どう生かしていくかは全て、お前たちの『意志』次第だ」
「俺たちの意志……『血の意志』」
「ああ、『血の意志』はお前たちの意志にも結び付く。それを憶えておいてくれ、いいな?」
血の成せる御業を披露され、その威力を知った俺とナナは、ただただ頷くことしかできなかった。彼の言うように、『血の意志』がその力を左右する。それが事実なら、俺自身のものではない『異物』が混じった俺の『血の意志』は、果たして『俺の意志』に忠実に従ってくれるのだろうか。
一縷の不安を抱きながら、俺は神機を強く握ることしかできなかった。
まさかの任務中の戦闘を大幅カット。
まあ、訓練中にオウガテイルとナイトホロウとの戦闘描写はあったですし、今回の任務対象で新規なのはドレットパイクのみ。
どの道小型で、一番弱いアラガミでしたので多少は、ね?
というわけでして今後、戦闘描写は中型や大型のアラガミ、イベントシーンとかでは書きますが、小型はカットしていく方針で行きます。
ストーリーの進行もだいぶ遅いのでご了承ください。