2の内容終わるまでには何話になっていることやら
一寸先は闇ですね、ホント。
「……? やはりよくわからんな」
相も変わらず、端末の操作には苦労する。フランに教わり、ある程度の操作……と言ってもアイテムの引き出しと神機の整備申請ぐらいしかできないが、それでも最初よりはこなせるようになってきている。
「データベースは――」
今、操作している目的はデーターベースの閲覧のためである。今は自分に不足な知識を取り入れ、この環境に順応していくことが第一だ。そう考え、すでに一ヶ月ほどの時間がたっている。が、まだ足りない。俺が最も知るべき情報を得ていないのだ。
「……やはり、無いか」
溜息を吐き、ターミナルの電源を切る。ここには俺の欲する情報はかなり少なく、正直困り果ていた。
「『狩人』『獣狩り』『ヤーナム』……これら全てのワードに関わるような記述はゼロ……」
別にあの場所に思い入れや帰りたいというような気持ちはない。ただ、何かしらの自分が存在したという証拠が欲しかった。この世界で生きる俺は、一体何者で、どんな立ち位置にいるのか。本当に異世界の人間なのか、それともこの世界の辺境で生きていた人間なのか。
「やはり、俺は異世界の人間と考えたほうがいいのか?」
何とも言えないが、今はそう位置づけるしかない。だが、この世界での俺はあくまで神を喰らう者、ゴッドイーターとしてのアドルファス・ジャノグリー。戦場に私情を持ち込んで誰かを死なすわけにもいかない。ブラッドで行動するときは、アラガミを殺すことだけを考えるようにしよう。人と話すときは、そうだな……出来るだけ詮索されないような振る舞いを心がけるか。
「はぁ……しかし、面倒なもんだなぁ」
考え込むのをやめ、自室のベッドに倒れこむ。人との関わり合いなんて「とりあえず獣化したら、狩ればいい」程度に考えていたものだから、人と話すのは基本的に疲れるのだ。今後とも命を預け合う関係になる以上、ぞんざいに扱う訳にもいかず、どうにか嫌われない程度には関係性を保っていきたい。
「……?」
そこまで考えて俺はある疑問が浮かんだ。いや、疑問というより違和感を抱いた。
何故、俺は他人のことをいたわっている……?
◇ ◇ ◇
フライア・ロビー。
私、香月ナナはロミオ先輩と談話をしていた。実地訓練から数日後、アドルだけじゃなくロミオ先輩とも任務に行くことが増えた。今はその戦闘中でのお互いの動きとか癖とかの確認中。
「だからさー、お前とアドルは突っ込みすぎなんだよー」
ぶっちゃけ話していてロミオ先輩はかな~り臆病だと思う。だって、神機は銃形態の使用率がダントツだし、アイテムは湯水のようにバンバン使うだもん。正直、オウガテイル相手にホールドトラップ使ったときは流石に「ないわ~……」と口に出た。
「そうは言うけど、それは先輩がー……あ、アドル~!」
階段から降りてくる人影に手を振る。そこにはちょっと老け顔の同期が歩いていた。
「誰が老け顔だ、誰が」
「あれ?声に出てた?」
舌を出して誤魔化してみる。それに対して、やれやれとアドルはおっきなため息をついた。やっぱりどこかおっさん臭いよ、アドルは。本人は20代って言ってるけどね。
「で、どうかしたのか?二人で話し込んでいたようだが」
「あ、そうそう。ロミオ先輩がねー、私とアドルは突っ込みすぎなんだってさー」
「だって事実だろ!それにアドルに至っては一人でどっか行っちゃうしさぁ」
それはまあわかる。実地訓練のときもふらふらーってどっか行っちゃってはぐれたオウガテイルとか狩ってた……らしい。というのも、私も初陣だったしハンマーに振り回されてた記憶意外あまり覚えてないんだよねー……。
「いやまあ、悪いとは思ってるんだがな?如何せん集団での戦いは不馴れでな」
「まだ私たち新人だし、戦い自体あまり慣れてないからさー。そこは先輩の度量で許してよー」
「いや、新人だったら、普通もっとこう……警戒しながら戦うだろ?」
そうかなぁ……そもそも私は遠目から獲物を狙うの苦手みたいだし、ロミオ先輩が自主的に後方に回るからガンガン突っ込んでいいと思うんだよねぇ。アドルはアドルで気が付かないところで露払いしてくれてるみたいだし、案外バランスとれてるチームなんじゃないかな。
「それに、アラガミだってバカじゃないんだからさ。集団戦は控えた方がいいって絶対」
「えー、それは先輩がビビりすぎなんじゃないの~?」
流石にチキン過ぎる言動に呆れて、ちょっとした煽りをいれてみる。追撃と言わんばかりにジト目で下から見上げるよう這い寄った。
「うわっ、ちょ、ナナ近いって!」
あれ?なんか先輩顔が赤い?はっはーん、これが世に云う「顔真っ赤」ってやつかね。てか、先輩めっちゃ引いていくんだけど、なんで?
―――ドンッ!
「きゃっ」
◇ ◇ ◇
何かの衝突音とともに、小さな悲鳴がロビーに響いた。ナナが煽って、近付きすぎたのが原因でロミオが仰け反り、後ろにいる誰かにぶつかったようだ。
「あっ、すみません、ってうわっ!?」
ぶつかった張本人であるロミオが被害者であろう人物に謝罪をする。が、どうしたのかまた驚いて仰け反っていた。何をやっているんだと声をかけようとしたとき、近場から怒声が飛んできた。
「まったく貴様らは……!」
見れば少し……いや、かなり太った男が立っていた。その顔には見覚えがあり、記憶を辿ったところどうやらデータベースを閲覧したときに人事の欄で見かけた気がする。
「ユノさん、本当にすみませんねぇ」
「あ、いえ……私は気にしてません」
ふむ、清々しいほどの対応差だ。なるほど、こいつ……いや、この方がフライアの責任者を担っているグレム局長か。で、もう一人の少女の方は……。
「ふふ、あまりロビーでは、はしゃがない様にね。他のお客様にご迷惑でしょ」
と、思っていたのだが、また初めて見る方が来たものだな。白く、丈の長いコートのようなものを羽織った女性だ。髪は赤く、化粧は今まで見てきた女性の中では濃いほうだ。アリアンナ辺りもこんな感じだった気もする。
「はーい、すみませーん」
そんなことを考えている内にナナが謝罪を済ませていた。流石になにもしない訳にもいかず、俺も頭を下げた。それを見ると局長は少女のご機嫌を取りながら歩いていってしまった。赤髪の女性もそれに続いたようだ。
「あ~あ、怒られちゃったねー」
「俺は巻き添え食らったんだが……」
「あ、あははー、ごめんごめん……ってあれ?どうしたのロミオ先輩?」
ナナが首をかしげて問いかけた。見れば確かに呆けたような顔をしているロミオの姿があった。
「バッカお前……あれ、ユノ!」
変な片言になっているが、先程の少女のことを言っていることは分かる。だが、彼女がどうしたというのだろうか。
「ユノ?知ってるー?」
「いや、知らないな」
「嘘だろお前ら……ユノ、ユノ葦原!超歌うまいんだぜ!?有名人!」
歌が上手い。すると、彼女は
「彼女が有名人なのは分かったが……一体ここに何の用がある?彼女もフライアやフェンリルの関係者だったいするのか?」
「いや、公開プロフィールにはそんなことは書いてなかったけど……ハッ、まままさか、フライアで慰問コンサートしに来てくれたのか!?」
「えー……ロミオ先輩そんなとこもチェックしてるの?」
若干引き気味にナナがそう問いかけると「ばっ、ちげーよ!たまたま知ってただけだ!」と反論する。論点のズレに呆れてため息をついた。今日だけで何回ため息をつけばいいというのだ。そう思いながら口論する二人を尻目に、エレベーター前に行った3人に目をやった。
すると、3人の内一人と目があった。
「あ……」
「だーかーらー!俺は純粋に彼女の歌が好きなだけで、不純な気持ちなんてものは一切―――」
「あーもー、わかりましたからー。ベツニキニシテナイデスー」
「片言じゃねーか!目を反らすなぁー!!」
……後ろの口論がヒートアップしているらしい。流石にうるさくなってきた。
「おいおい、お前らさっき注意されたばっかりだろう?ちょっとは静かに―――」
振り向いて注意する。それでも収まる気配はないので、ロミオをなだめつつ他の場所に移動させることにした。困った先輩殿もいたものだ。
また、その様子を眺めていた少女が笑みを漏らしたことは誰も知らない。
ここまで、ジュリウス、フラン、ナナ視点を書いてきましたが、ダントツでナナ視点が書きやすかったです。
流石現代っ子。