グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
北海道
「・・・・・ついに、ここまで来ました。
お父さん、お母さん、深雪・・・今まで何も
しなかったことを許してください。なんとしても、
ここを・・・北海道を取り戻してみせます。」
ましろは目を閉じ、祈るように
両手を握りしめていた。
「・・・。」
花梨は心配そうにそれを見つめた。
「・・・いよいよだな。・・・よし、
陣形を言う。相馬、雀。お前ら先頭だ。
気配に気を付けろ。」
「まもの、ころす! レナ、まもの、
ころす!」
「ボクに任せておけば安心なのだ! 花梨!」
「ご飯ならたーんと持ってきてるすけ。
心配すんな。」
「・・・俺と里中は真ん中だ。李、お前は
雪白とだ。」
「任せるネ。無茶はさせないヨ。」
笑顔で答える。
「けどロウ、急に頼んで悪かったなぁ。」
「気にするな。」
「この北海道・・・聞いてるかもしんねえけど
ましろの故郷だすけ。」
「ああ、わかってる。あいつ、いつも通りに
見えるが、内心穏やかじゃねえだろ。」
ましろに目をやると
先ほどと変わらない状態だった。
「何があるかわからねえすけ。おらが見逃さない
ようにする。だけど、ロウ・・・。」
「ん?」
心配そうな目で見る。
「あんたも、お願いね。ここで死ぬなんて・・・
そったらこと、あってはなんねえ。」
「ふっ、安心しろ。まだまだ死ぬ気はねえし
宍戸や西原から耳にたこができるほど聞いたよ。」
まったく、どいつもこいつも・・・・・。
「とっとと進むぞ。」
「・・・ああ。」
<ロウ、料理部、移動中>
「・・・懐かしい、ですね・・・。街には
何度も家族で来ました。駅の近くのレストランで
いつもパスタを食べていたものです。」
思い出すようにましろは言う。
「マシロの好きなスパゲティってやっぱり冷たいアル?」
「フフフ、あの時はまだ普通の女の子でしたからね・・・。
ミートソースで口を汚していましたよ。」
にこりと笑う。
「へへへ、ボクと同じアル。」
「みーとそす? にく? みとそす、にく?」
「・・・まったく、あいつら・・・。」
ロウは頭をポリポリと掻きながら、
ため息をつく。
「まあ、ましろも落ち着いてるすけ。それより、
案内人の言うことじゃ、そろそろ危ない
地域だすけ。」
「そうか、気を引き締めていくとするか。」
ピピピピピ!
「・・・ん?」
小蓮のデバイスが鳴る。
「あっ! ば、万姫からネ・・・。
作戦中なの知らないのカ?」
万姫・・・始祖十家だったか・・・。
「何の用ネ! 今、魔物が出てきてたら
話してるヒマ・・・・・
それ、ホントの話カ? ・・・わ、わかったネ。」
電話を切った。
「終わったか? んじゃあ早k・・・!!」
何かの気配に気づく。
「いよいよカ・・・!」
そう言った瞬間、全身が
氷の魔物が何体も現れる。
「『ROOM』! 『
青色のドームを張り、
魔物を切り裂く。
しかし、霧散せず、こちらに向かってくる。
「ちっ・・・。」
「はあ!!」
ましろが手をかざし、氷によって
魔物を迎撃するが、あまり効いていない。
「・・・やはり、わたくしの氷魔法は
ここの魔物には効きづらいですね。」
「わぅー!」
レナが魔物にとびかかる。
「マシロ、後ろに下がってるアル?
小蓮が火の魔法、得意なのだ。」
「・・・そうですね。ですが・・・。」
「雪白、お前の出番はまだ先だ。お前が
相手するのは、もっと強い魔物。そうだろ?」
「そこまでボクたちが連れてってあげるのだ。」
「・・・明鈴さん・・・。」
「あちち、ちべたい! あちち!」
魔物を倒したレナが手を押さえながら戻ってくる。
「あー! レナ、あんまり素手で魔物
触っちゃダメなのだ! とうしょうってのに
なるって花梨が言ってたアルよ!」
「レナさん、手をこちらに。」
「・・・?」
言われるがままに手を差し出す。
「炎は苦手ですが、手を温める
くらいならできます。」
そう言って、ましろは
レナの手を握り締める。
「・・・申し訳ありません。戦いでお役に
立てず・・・。せめて、このようなことで
お許しください。」
「おゆるし? うん、レナ、おゆるし。」
意味が分からなかったようだが
にこりと笑う。
「フフフ・・・ありがとうございます。」
「・・・いらない心配だったべか?」
「だが、まだ始まったばっかだ。
ここからしっかりしねえとな。」
「ましろ、疲れてねえか?」
「ええ・・・少し魔力を使いましたが、
大丈夫です。しかし、私の魔法は
あまり効果がないようですね。」
自嘲気味に笑う。
「やっぱり相性は大きいな。・・・だけど、
それで諦めたりしねえべ?」
「ええ、わたくしの氷が効きにくいのはまだまだ
生ぬるい証拠。札幌を覆う冷気ごと、
魔物を凍りつかせてみせます。」
「・・・そうか。とにかく、まずは
見つけねえとな・・・。」
「ええ、中心にいるはずの、もっとも強力な
魔物。知恵を手に入れた魔物。わたくしが
倒すべき相手です。」
ましろの目が一気に鋭くなった。
<ロウ、料理部、移動中>
「・・・・・?」
何者かの気配を感じ、ロウは
後ろを向く。
「どうしました?」
「・・・いや、なんでもねえ。」
誰かついてきてんな・・・・・。
服部ってこともあるが・・・。
「アイヤー・・・マシロ。ちょっと
言っておくネ。」
「なんでしょうか。」
「ワタシは嫌だが、万姫が力を貸しても
いいと言ってるヨ。」
「万姫・・・? 始祖十家の?」
やはりその名前か・・・。
「そうネ。ワタシたちの姉弟子ヨ。」
「ホント!? 万姫が来てくれたら
百人力アル! ・・・あれ。でも万姫、
学園を守ってるんじゃなかったっけ?」
「確か、清・ロマノフ魔法学園は中国と
ロシアの境にあるって聞いたが・・・・・。」
「・・・それって来れるの?」
「無理に決まってるネ! ピンチになって
呼んでも着いたときは死んでるヨ!」
「まあ、そこまで言うんなら何か
考えがあんだろ。」
いったいどうやるのか・・・。
「いちおう、伝えておくヨ。」
「ありがとうございます。」
「ワタシたちでどうにかすれば、万姫の力
なんていらないネ。レナもいるし、残念だけど
万姫の出番はないヨ!」
「まーだ言ってるのだ。まったく、もう。」
明鈴は若干あきれる。
「・・・それにしても、魔物の数、
やけに少なくないか?」
周りを何度も見る。
「確かに聞いてた話とだいぶ違うのだ。」
・・・まさか、あえて戦闘を避けてる・・・?
「・・・!! ここは・・・
まさか・・・・まさか・・・!!」
何かに気づいたましろは
急に走り出した。
「マシロー! 急に走り出すなんて
危ないのだ!」
ロウたちはましろのあとを追う。
「! これは・・・。」
ロウの目は大きく見開いた。
「なんという・・・ことでしょう・・・。
札幌の人々が・・・。」
「え? こ、これ、何人いるアル?
みんな氷漬けになってるアル!」
ロウたちの目の前には
人の氷漬けが何体もあった。
「とかしたら、元通りになるの?」
「いや、こんな状態になったときには
もう死んでるだろうな。」
「しかしこれは・・・他の場所に死体が
なかったのでおかしいと思ってましたが・・・。」
氷漬けの人に手を触れる。
「まさか・・・魔物が集めたのカ?」
「・・・助けに来る人間を・・・。」
「嫌な予感がするすけ、本部さ連絡しといたべ。
すぐに増援が来るすけ。いったんここで・・・ !?」
大きく地面が揺れる。
「かりん! レナ、みつけるした!
おっきまもの、おっきまもの!」
奥のビルが崩れていく。
「・・・ビルが・・・ロウ、レナ!
おらの魔法で土のドーム作るすけ!」
「だったら・・・『ROOM』!!」
今までよりはるかに広い
ドームを張る。
ロウの後ろで花梨が土のドームを作る。
「『タクト』!!」
近くの無数のがれきを土のドームにつける。
くそ、やばくなってきたな・・・!
全員、土のドームに隠れた。