グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第100話 絶対の命令

「・・・・久しぶりだね。ロウ兄。」

 

「・・・・・。」

 

「ロウ・・・兄!?」

 

あまりの状況に夏海は

おろおろし始める。

 

「・・・・久しぶりだな、ユウ。」

 

「ろ、ロウ・・・じゃあ・・・

 この人は・・・。」

 

「・・・・ああ、俺の・・・妹だ。」

 

声を震わせながら答える。

 

「・・・それでユウ。ここへ

 何しに来た。」

 

「ロウ兄ならわかってるでしょう?

 今の私が来る理由なんて1つしかないじゃない。」

 

そう言いながら、ユウは

懐に手を入れる。

 

「・・・やっぱりそうか。」

 

「・・・?」

 

ポケットに手を突っ込む。

 

「「!!」」

 

ユウは拳銃を取り出した。

 

「え・・・。」

 

ロウが取り出したのは

缶コーヒーだった。

 

「念のため持ってきたが・・・

 飲んでいいか?」

 

「・・・・ふふ、いいよ。」

 

「悪いな。」

 

ロウは地面に胡坐で座り、

缶コーヒーを開ける。

 

「・・・ふぅ・・・・。」

 

コーヒーを一口飲む。

 

「しっかし、まさか生きてるとはな・・・。」

 

「え? 意外だった?」

 

「ああ、とっくに死んでるものだと

 思ってた。俺が最後に見たのは6歳の時の

 お前だったからな。」

 

「ふふ・・・そっか、そうだったね・・・。

 けど、それでまだ顔を覚えてたんだ。」

 

「・・・まあな。」

 

まさかの再会に2人の会話は弾んでいた。

 

「・・・っで、あいつの命令で、

 俺を殺しに来たか。」

 

「「「!?」」」

 

「うん。先生の命令は逆らえないからね。」

 

「・・・先生・・・ずいぶんな言い方だな。

 お前はあいつにとって邪魔な人間を消してるだけだ。」

 

「・・・いくらロウ兄でもそれはいただけないなぁ。

 あっ、あと、ロウ兄に言っておきたいことがあるんだ。」

 

「・・・なんだ。」

 

コーヒーを飲む。

 

「・・・私が殺したよ。及川義人さん。」

 

「!?」

 

ロウは驚いた表情でユウを見た。

 

「そんな・・・。」

 

「・・・そうか・・・。どうりで、

 連絡がつかねえわけだ・・・・。」

 

「それと、ロウ兄が逃がしてあげた

 佐藤一さんも・・・私が殺した。」

 

「あいつもお前が・・・!」

 

「うん。ロウ兄が殺したように見せるために

 まったく同じ場所、同じ数の銃弾を浴びせて

 殺したんだけど・・・思ってたよりロウ兄は

 信用されててだんだね。」

 

うれしそうな顔で笑う。

 

「さあ、それはどうだかな・・・。」

 

「ていうか、及川さんの時、そんなに

 悲しまなかったね。」

 

「・・・おっさんも、覚悟はしてただろうしな。

 ・・・俺も、覚悟している。」

 

残りのコーヒーを飲みほした。

 

「今までに数多く殺してきた私に

 勝てると思ってるの?」

 

「そりゃお前・・・兄が妹より

 弱いって・・・笑えねえだろ。」

 

「・・・ふぅ~ん・・・心外。」

 

ロウは缶を握りつぶし、その場に捨てる。

 

「なんとでも言え。だが、お前に俺は

 殺せない。」

 

「それが心外だって言ってるんだけど。」

 

「・・・・・。」

 

ゆっくりとサングラスを外す。

 

「これ持ってろ。」

 

外したサングラスを3人のもとへ

投げ飛ばす。

 

「うわ! ・・・とと。」

 

夏海がなんとかキャッチする。

 

ロウは立ち上がると、

じっとユウとにらみ合う。

 

「・・・・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

その瞬間だった。

 

「!!」

 

2人の出した拳が

互いの拳をとらえた。

 

「ちっ・・・!」

 

ロウは続けて回し蹴りで攻撃するが

ユウも全く同じタイミングで繰り出した。

 

「へぇ・・・。」

 

2人とも後ろに飛び、距離をとる。

 

「さすがロウ兄・・・・一緒に訓練

 うけてただけはあるよね。」

 

「今もドイツ軍人に散々しごかれてるからな。」

 

「知ってる・・・よ!」

 

銃を取り出し、発射する。

 

「!」

 

それを何とかかわし、

再び殴り掛かる。

ユウは銃をしまい、かわしながら

ロウに殴り掛かる。

 

しばらく、応酬が続き、

耐えかねたロウが足払いをするが

ユウは飛んでかわす。

 

「くっ!」

 

「!!」

 

ユウは飛びながら、ロウの

こめかみを蹴り飛ばした。

 

「がぁ!!」

 

雪の上を転がるロウ。

 

そこへユウは何度もロウの

体を蹴り続ける。

 

「ぐ・・・! ぐあ・・・!!」

 

うめき声をあげながらそれを耐える。

10回ほど蹴ったユウは蹴りをやめ、

銃を取り出す。

 

「・・・!!」

 

その一瞬をロウは見逃さず

足で銃を払い飛ばす。

 

「あっ・・・!」

 

ユウが慌てたところに

ロウはとびかかり、上にかぶさり、

3発ほど顔を殴る。

 

「ぐ・・・ああ・・・・!!」

 

ロウの服をつかみ、

後ろへ投げ飛ばす。

 

「ぐぅ!?」

 

ロウは背中を建物に強打する。

 

「ぐ・・・!!」

 

痛みに耐えながら起き上がる。

 

「ロウさん・・・!」

 

「はぁ・・・はぁ・・・あんまり

 手こずらせないでよ。」

 

「く・・・。」

 

「でもロウ兄。正直もう限界が

 来てるんでしょ?」

 

「・・・・・何の・・・話だ・・・。」

 

「今のその状態を知らないで言ってると思う?」

 

「・・・ちっ・・・!」

 

くそ・・・視界が・・・霞む・・・。

 

「幾度もの魔物との戦闘、その度の魔力補給、

 そして、あの大きい魔物との戦闘。とどめに

 私の仕掛けた爆弾で古傷のある背中は

 悲鳴を上げてる・・・でしょ? ロウ兄。」

 

「・・・・・。」

 

何も言えず、顔を伏せる。

 

「・・・! まさか、あの時・・・?」

 

智花は自分をかばってくれた時の

状況を思い出す。

 

「・・・で?」

 

「・・・んん?」

 

「そこまで追い込んでまだ殺せてねえのか?」

 

「・・・ロウ兄、この状況でまだ

 そんなことが言えるの?」

 

「聞きたくねえなら、俺を殺すぐらいで来い。」

 

「だから来てるんだってつの!!」

 

ロウを殴ろうとするが、

その拳はロウによって止められる。

 

「ふん・・!!」

 

そのままユウを地面にたたきつけた。

 

「が・・・!?」

 

「言ったろ、ドイツ軍人に散々

 しごかれたんだよ。」

 

「・・・・。」

 

ユウは黙って立ち上がる。

 

「どうした、俺を殺すんだろ?」

 

「・・・当然でしょ。先生の命令は

 絶対なんだから。」

 

鋭い目でにらみつける。

 

「そう・・・か!!」

 

ユウの服をつかみ、

投げ飛ばした。

 

「く・・・!」

 

なんとか受け身をとる。

 

・・・そろそろ決着つけねえとな・・・。

 

ロウは自分の背中を押さえ、

そう悟った。

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