グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
第103話 痛み
北海道
「く、見失ったか・・・。」
怜たちは狙撃手を見つけられず、
ロウのもとへ引き返していた。
「・・・・。」
だんだん冷たくなっていく
ユウを抱えながら、ロウは建物から
出てきた。
「・・・・・。」
地面にユウを置いた。
「・・・・俺は・・・・
いったい・・・・。」
「ロウさん!」
智花たちが走りながら
ロウのもとへ来る。
「・・・ロウ、その人・・・・。」
夏海はユウを指さす。
「・・・ああ。・・・もう、死んだよ。」
「!!」
智花は口に手を当てた。
「・・・・・!?」
ロウの視界が徐々に歪みだす。
・・・やべぇ・・・・。
「・・・ロウさん?」
「・・・・・・・。」
・・・く・・・そ・・・・・。
ロウはゆっくりと地面に倒れた。
「ロウ!!」
怜はロウを揺さぶろうとした。
「!?」
ロウの下の地面が
どんどん赤くなっていった。
「うそ・・・ロウ、血が・・・!!」
「ロウ、しっかりしろ!!」
怜が呼びかけるがロウは
応答しない。
「どどど、どうすれば!?」
智花はおろおろし始める。
「は、早く止血しないと・・・
し、死んじゃう! 死んじゃうよ!!」
「・・・・せぇ・・・。」
「!! ロウ!?」
僅かにロウの口が動いた。
「うる・・・・ぇ・・・ぞ。
・・・しだ・・・・・おち、つ・・・け・・・。」
「落ち着いてられないよ!!
このまま・・・このままあんたが
死んじゃったらいやだよ!!」
徐々に涙目になる。
「そう・・・・んたん・・・に・・・
しぬわけ、ねえ・・・よ・・・。」
穏やかに笑う。
「な・・・何笑ってんのよぉ・・・!!」
「・・・・・・。」
・・・ああ・・・ほんとに
やべえな・・・・・。
ロウの意識が途切れた。
「・・・ロウ?」
「ろ、ロウさん・・・。
起きてください! ロウさん!!」
揺らすがロウは目覚めない。
「いやだ・・・お願い・・・
死なないでぇ・・・!!」
涙を流して、ロウに呼びかける。
しかし、ロウは返事をしない。
その時
「遅くなった!!」
虎千代たちが合流した。
「!! 少年!!」
アイラがロウに駆け寄った。
「何があったんじゃ!!」
「・・・・・。」
3人とも、下を向き
黙り込んでしまう。
「だが、このままではまずい。
すぐに治療する! ロウを運べ!!」
担架にロウが乗せられ、運ばれていった。
「・・・ロウさん・・・!」
智花は祈るように
両手を握った。
学園
「・・・え?」
香ノ葉は持っていた
カバンを落とした。
「・・・ああ、本当だ。」
兎ノ助が珍しく苦い表情を
浮かべていた。
「そ、そんな・・・う、うそやろ?
ダーリンが・・・。」
「相当な重傷だって話だ。」
「・・・・!!」
振り返って走り出す。
「あ、お、おい!!」
保健室
「ダーリン!!」
香ノ葉は勢いよく
ドアを開ける。
「! 白藤さん・・・。」
座っていたゆかりは
心配そうな表情を浮かべ、
香ノ葉を見る。
「あ・・・ああ・・・。」
ベッドの上で体中に包帯を
巻いたロウを見て、香ノ葉は
その場に座り込んでしまう。
「・・・・ダーリン・・・。」
「・・・しばらくは目を覚まさないって
軍のお医者さんが言ってたわ・・・。」
「そ、そんな・・・・。」
香ノ葉は眠っているロウの
もとに近づき、ロウの手を握る。
「・・・?」
ロウの腕から伸びている
赤色の液体が流れたチューブに気づいた。
「こ、これって・・・?」
「あっ、実は、ロウ君。一時
輸血が必要な状態になっちゃったらしくて・・・。」
「そ、そうやのん!?」
「でも、ロウ君の血液型誰も
知らなかったんだけど・・・・
南さんがね」
「・・・智ちゃん?」
智花の名前が出たことに
首を傾げた。
「前にロウ君が間宮さんと血液型占いの
話してたのを聞いてたんだって。
『ロウさんの血液型はO型です!!』って、
上ずった声で・・・。」
「そうやったん・・・よかったわぁ・・・
智ちゃんが知ってて・・・。」
安堵の表情を浮かべる。
「・・・そうかぁ・・・。」
香ノ葉は静かに
ロウの頬をなでた。
3日後
深夜
この日もロウは眠り続けていた。
「・・・・・・・・。」
『・・・久しぶりだね。ロウ兄。』
『・・・ふぅ~ん・・・心外。』
『最後の最後でロウ兄も油断しちゃったね♪』
『・・・・・どうしよっかな・・・
全然わかんないや・・・。』
『・・・今の・・・ロウ兄と・・・・
もっと早く、会いたかったな・・・。』
「・・・・・・!!!」
ユウの言った言葉を思い出しながら
ロウは飛び起きた。
「・・・・いっつ・・・!」
撃たれた脇腹を押さえる。
「・・・・ここは・・・・
学園、か・・・・。」
周りをきょろきょろと見て
確認する。
「・・・・・とりあえず、
寝てるか・・・。」
ロウはゆっくりと目を閉じた。
翌日
「もう! ほんとに心配したんだから!」
ゆかりが腰に手を当てて怒る。
「悪かったよ。まさかあそこまで
追い込まれるとはなぁ・・・・。」
そう言って、脇腹をさする。
「・・・ところで、あいつはどうなった?」
「あいつ?」
「・・・・俺の近くで倒れてた
女だ。どうなった?」
鋭い目をして聞く。
「・・・・到着した時はすでに
・・・死んでいたって・・・・。」
「・・・・・やっぱりそうか・・・。」
声が徐々に小さくなる。
「・・・その人って、ロウ君の
・・・妹さん、なんだよね?」
「! ・・・誰から聞いた?」
「岸田さんよ。」
「ちっ、あいつ・・・
・・・ところで・・・。」
「?」
「この周りの箱やらなんやらは
なんだ?」
ロウの周りにはプレゼント包装された
箱や、飲み物がたくさん置かれていた。
「気づかなかったの?」
「起きた時は暗くてな。で、
これなんなんだ?」
「お見舞いよ。みんなかわるがわる
来てたんだから。」
「そうだったか・・・ずいぶん心配
かけちまったな・・・。」
「そうよ。わかったら早く治してね。」
「いや、簡単には治せねえって・・・。」
頭の包帯を触った。
2日後
「・・・治ったな。」
こんなに早いとは・・・・。
「ロウ君は魔力量が多いから
傷の治りも早いのよ。」
「そうだったっけか・・・。」
肩をぐるぐると回す。
「それより、早く行ってあげたほうが
いいんじゃない?」
「ん、ああ、そうだな。」
この日、ロウの復帰祝いが
行われる予定だ。
「んじゃあ、行ってくる。
・・・椎名も後で来いよ。」
「うん、わかった。」
「じゃあな。」
そう言って、ロウは保健室から出た。
「・・・・よかったぁ・・・。」
ゆかりはその場でへたり込んだ。
体育館
「・・・わざわざここの
必要あったか・・・?」
会場には多くの生徒が集まっていた。
「ダーリーン!!」
走ってきた香ノ葉がロウに
思い切り抱き付いた。
「相変わらずだな、白藤。」
ゆっくりと香ノ葉を離す。
「にしても、ずいぶん集まってるな。」
「それは当然や。だって、
ダーリンやもん♪」
にこやかに笑う。
「・・・俺だから・・・ねえ・・・。」
小さくつぶやいた。
数時間後
「ふぅ・・・食いすぎたな・・・。」
あの後、ロウは花梨の作った
料理の食べ過ぎで外で休んでいた。
「・・・・・・。」
傷跡の残った左手を
じっと見る。
「・・・・俺は・・・・。」
左手をぎゅっと握りしめる。
「・・・・・。」
「ロウさん。」
「! ・・・南か。」
ロウに声をかけたのは智花だった。
「・・・隣、いいですか?」
「好きにしろ。」
ロウの隣に立つ。
「・・・やっぱり、あの・・・
妹さんのことが・・・。」
「・・・まあな。まさか再会から
すぐに死ぬとはな・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・言葉が出ねえか。」
ロウの声が少し震えていた。
「・・・・はい・・・。」
かろうじて言葉を絞り出す。
「・・・だろうな。」
智花を見て、少し微笑む。
「・・・・なあ、南。」
「はい?」
「明日暇か?」
「は、はい・・・そうですけど・・・。」
「なら、ちょっと付き合え。」
「・・・・え?」
ロウからはあまり聞かない言葉に
思わず聞き直す。
「明日放課後、校門前だ。じゃあな。」
そう言って、ロウは会場である
体育館に戻っていった。
「・・・・・。」
しばらく、智花は呆然とした。
「・・・・ええーー!?」
そして、智花の大きな叫びがこだました。