グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
『・・・俺とお前で、奴を引きずりおろす。』
『・・・!!?』
動きを止め、義人の顔を見る。
『・・・引きずり・・・おろすだと?
・・・また俺を嵌めようってのか?』
『その質問に答えるならば・・・違う。
今度こそ、な。』
ロウを放し、服の汚れを払う。
『・・・・・。』
疑いの目で義人を見る。
『まあ、そう疑うな。これ、飲むか?』
ポケットから缶コーヒーを
取り出し、ロウに向かって投げる。
『・・・ああ。』
座り、缶コーヒーを開ける。
『・・・さっきの話、俺が信じたとして
1つ、あんたに聞きたいことがある。』
『なんだ?』
『やはり、あの時の話は俺を・・・・・
裏切り者をあぶりだす罠か?』
『正確に言えば、あれは最後の試験の
ようなものだ。』
『・・・試験だと?』
『ああ。天羽は数年、スパイとして使った後
そいつが裏切っていないかどうかを試す。
それが、あれだ。』
そう言いながら、タバコを取り出し
火をつける。
『・・・そうか・・・やっぱり・・・!』
『だが、お前にとって幸か不幸か
天羽は、1年ほど前に死んだ。』
『なんだと・・・!?』
『本当だ。葬儀は上層部の連中で済ませたがな。
・・・だから、死んだかどうかはそいつらしか
知らない。』
『・・・まさか、実はまだ天羽は生きてると
考えてんのか?』
『・・・ああ。死んでることにすれば
勝手がきくからな。』
ロウはコーヒーを飲み干す。
『・・・調べる価値はある・・・か。』
『てことは、話に乗るってことでいいのか?』
『・・・ああ。』
缶を握りつぶした。
《こうして、俺とおっさんは天羽、
及びその周辺について調べ始めた。
そして、調べ始めて1年が経った頃だった・・・。》
『この辺りは確か・・・。』
『風飛市だ。知ってるだろ?』
歩きながら、煙草に火をつける。
『ああ、確か日本唯一の
魔法学園があるんだったな・・・。』
『そう、天羽の側近をこの付近で
目撃したって情報がある。』
『そうか・・・・・ん?』
『? どうした。』
『・・・あれか。』
ロウが指さした先には
青い制服にオレンジのリボンを
頭にした女性がいた。
『ああ、あれが魔法学園の生徒だな。』
『・・・・・・。』
その生徒の様子をしばらく見る。
『なんだ、なんかあんのか?』
『・・・いや、もういい。
行くぞ、おっさん。』
『へいへい・・・ってか、おっさんって
呼び方やめろ。』
『知るか。』
数時間後
『結局、収穫はなしか・・・。』
『まあ、そう簡単に見つかるとは
思ってねえだろ? ロウ。』
『ああ。』
周辺を探索した2人は
風飛市を離れ、廃ビルに身を隠していた。
『あのテロ組織にも情報はねえし・・・。
さぁて、どうするかね・・・。』
『・・・・・。』
『・・・おい、ロウ。』
『・・・・。』
返事をしない。
『ロウ!』
『! どうした?』
『さっきから変だぞ、お前。』
『なんでもねえよ。・・・・・
ちょっと、外出てくる。』
『・・・ああ、わかった。』
ロウは立ち上がり、外に出て行った。
『・・・・・・。』
空を見上げる。
『・・・こんな風だったっけ・・・・。』
ぼつりとつぶやく。
『・・・・・・。』
数分の間、黙って空を見続ける。
その時だった。
『・・・・・!!』
ロウは自分に起こった異変に気付いた。
突然、自分の体が光り始めたのである。
『んだ、これ・・・・。おい、
おっさん!』
『ああ? ・・・・! ロウ、
お前これ・・・!!』
『何が起こってる!!』
『・・・覚醒だ。』
『・・・覚醒? どういうことだ。』
その間もロウの体は光っている。
『魔法使いへの、覚醒ってやつだ。』
『・・・魔法使いだと? 俺が?』
ロウには信じられなかった。
『ああ、そうだ。そのうち、魔法学園の
連中がやってくるだろう。』
『・・・そうなればどうなる?』
『さっきの魔法学園で6年間は入学する
ことになる。』
『6年だと!? 俺にそんな時間は・・・!!』
『だが、この事実は消えねえぞ・・・!
・・・・待てよ。』
義人は顎に手を当てる。
『そういえば、あの爺さん確か・・・・。』
『! 何か手があるのか!?』
『ああ。だが、賭けみたいになるが・・・。』
『なんでもいい! 頼む!』
『・・・いいか?』
翌日
魔法使いへの覚醒をしたロウは
検査を終え、応接室のようなところで
ある人物を待っていた。
『・・・・・。』
『失礼。』
そう言って、ドアが開かれる。
『! ・・・・あんたが。』
『私立グリモワール魔法学園、学園長の・・・
犬川荘介です。』
入ってきたのは若い男で
彼の手にはタブレットがあり、そこに
犬川荘介が映っていた。
『あんたに1つ頼みがあって、今
ここにいる。だが、肝心のあんたが
こないとはどういう了見だ?』
『学園長はお忙しい。そのため、こうさせてもらった。』
『・・・まあ、いい。』
『君の頼みを聞く前に、まずはこれを見てほしい。』
男が懐から1枚の紙を取り出す。
『? これは?』
紙にはわずかに黒い何かの跡があった。
『キルリアン撮影という、魔力濃度を
計測する方法だよ。』
『確か、白ければ白いほど魔力が多いって
話は聞いたことがあるが・・・。
だがこれは・・・。』
『そうだ、これによると君の魔力量は
とんでもなく多い。そういうことになる。』
『・・・それがどうし』
『君には魔法学園にいてほしいのだよ。』
ロウの言葉を遮る。
『・・・俺が?』
『君の頼みはわかっている。学園に入りたくは
ないのだろう?』
『!』
『だが、この魔力量・・・科研が
放っておかないだろう。』
『科研? 魔導科学研究所か。』
『ああ、このままでは科研に連れていかれる。』
『・・・それも面倒だな。』
どうすればいいかわからず、
天井を見上げる。
『学園に入れば、向こうも手出しができなくなる。
・・・だから、お願いだ。学園に・・・
入学してほしい。』
画面の向こうで、荘介は頭を下げる。
『・・・ふっ、あんたのような男が・・・・
天羽の計画を見ていたような男が俺に
頭を下げるとはな。』
『!! ・・・ロウ君・・・君は・・・
まさか・・・!!』
『あんたもあの船の前にいただろう。』
『・・・まさか、ここで会うとは・・・。』
『まあ、とはいえ、科研の方がめんどくさそうだ。
・・・いいだろう、学園に入る。ただし・・・』
『・・・なんだね?』
『俺のとる行動には目を瞑ってもらう。』
『・・・つまり、君の行動を監視する
行動があった場合、それを止めろ・・・と?』
『そういうことだ。』
立ち上がり、軽く首を鳴らす。
『・・・じゃあな、犬川学園長。』
ロウはその部屋を出た。
数日後
廃ビル
『・・・・・風飛に行くことになった。』
『まあ、そうなるだろうな。だが、これでいいのか?』
『・・・ああ。決めたんだ。』
ロウの手には大きな荷物があった。
純雄の寺
「・・・これが俺の過去だ。」
「・・・・・・・。」
智花はあっけにとられ、
言葉が出なかった。
「・・・そんな・・・ことが・・・。」
「信じられないだろうが、すべて
事実だ。」
そう言って、ロウは立ち上がる。
「・・・話したついでに、1つ聞いてもいいか?」
「な、なんでしょうか・・・?」
「・・・・涙が・・・出ない・・・。」
「・・・え?」
「あの日、ユウがどんどん冷たくなって
いったのに・・・一切涙が出なかった・・・。」
ロウの体が少し震えている。
「ロウさん・・・・。」
智花も立ち上がり、ロウに
少し近づく。
「///・・・・・。」
少し戸惑いながらも、智花は
ロウを優しく抱きしめた。
「・・・? 南、何を・・・。」
「///わ、わかりませんが・・・・
こ、これくらいしか・・・できることが・・・。」
「・・・・・そうか・・・・・。
・・・そうか・・・・。」
手を震わせながらも、ロウは
智花を抱きしめる。
「///!!」
「・・・く・・・。」
ロウの目から静かに涙が流れた。
「・・・ロウさん・・・。」
「・・・悪い・・・少し・・・・
ここままにしてくれ・・・・。」
「・・・・・はい。」
ロウはこの数分の間、しばらく涙を
流し続けた。10年以上溜めていた
涙を、ずっと流し続けた。
「今日は悪かったな。長い話
聞かせて。」
「き、気になさらないでください。
・・・そういえば」
「? なんだ?」
「なんで、私に話そうとしたんですか?」
「・・・・あの時だ。」
「え?」
「最初に声をかけたやつに話そうと
思ってな。」
「・・・あ、そ、そういうこと
だったんですか・・・?」
「ああ。」
何とも言えない理由だからか、
智花はとぼとぼと帰った。
「・・・・・・・。」
それをロウは静かに見送った。