グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
学園
ロウと卯衣は生徒会への報告を終えた。
「ふぅ、終わったな。」
「ええ。今日は初めてのことが
いっぱいだったわ。」
「そうなのか。」
「自分でクエスト登録をしたことも、
友達が欲しいと口にしたことも、
・・・自分で自分のことを考えたことも、
初めてだった。」
少し、自嘲気味に笑う。
「これまでは部長か副部長、執行部などに
甘えていたの。」
「? なんでだ?」
「彼女たちについていけば、考える
必要はなかったから。」
「だが、変わろうとしてるんだろ?」
「・・・少なくとも、私は
変化したいと考えている。」
「そうか。まあ、せいぜい悩め。」
そう言って、寮に戻ろうとする。
「・・・。」
「?」
卯衣は黙ったまま、ロウの
服の袖をつかむ。
「実は、そのことについて、ロウ君に
話しておきたいことがあるの。」
「俺に?」
「ええ。ほかの学園生に会わない場所に
連れて行ってくれないかしら。
私は天文部のみんなと行ったところしか知らないから。」
「う~ん・・・・。」
腕を組んで悩み始める。
「・・・・はぁ・・・わかったよ。
ならとっとと行くぞ。」
「・・・ありがとう。私のために時間を
割いてくれて。」
「大したことじゃねえだろ。」
「だって、クエスト終了後は寮に戻っても
構わないのでしょう? 授業に出てもいいし、
部屋で休んでもいい自由時間。」
「どう使おうが俺の自由だろ。」
しれっと言う。
「代わりと言っては何だけど、相談する
場所をとるための費用は私が出すわ。」
「こういうのは俺が出すんじゃないのか?」
「いいの。これは私がしたいことだから。
そのことは後で話すわ。」
<ロウ、卯衣、移動中>
喫茶店
「・・・私に、欲求という概念が
生まれたようなの。」
「・・・欲求?」
「それを、教えてほしくて。」
・・・ずいぶんなもんだな・・・。
「ロウ君、表世界のマスターの目標が
なんなのか、知ってる?」
「・・・確か、人間を作ること・・・
だったか?」
「そうよ。私はマスターに作られた『人間』。
でも人間というには足りないものが多すぎる。
感情、味覚、想像力・・・」
「確かにいろいろ足りないな。」
そう言って、置かれたコーヒーを飲む。
「私を人間だと思っている人は、おそらく
いないわ。私が人間になるためには、その
不足分を補う必要がある。」
「そう簡単にはいかねえだろ。」
「ええ。味覚は機能的なものだから得られない
けれど・・・それ以外は私も持てるはず。」
「それが欲求か。」
「うれしいという感情よりも、先に自覚できた。
したい、ということ。私はマスターの
望みをかなえたい。」
手を強く握る。
「それと・・・」
「ん?」
「あなたとまた、クエストに出たい。」
「俺と?」
自分のことを指さす。
「理由はわからないけれど、心からそう
思っているの。」
「・・・・。」
ロウはあっけにとられる。
「マスターとあなた、そして天文部のみんな。
私の大切な人たち。まず、大切な人たちと
一緒に色々なことをしたい。」
「・・・ふふっ、そうか。」
穏やかに笑う。
「したいときは言え。いくらでも
付き合ってやる。」
「・・・じゃあ、いつかまた、一緒に
街へ行ってもらってもいいかしら。」
「ああ、もちろんだ。」
寮 ロウの部屋
「・・・おかしい。」
卯衣とともに学園に戻った
ロウは部屋に戻り、あることを調べていた。
「おっさんの死亡記事が一切
出てない・・・。」
ユウから死んだといわれた
義人の詳細を調べていた。
「どうなってる・・・。」
・・・仕方ねえな・・・。
警視庁のホームページにアクセスする。
「・・・ちょっと侵入するか。」
そう言って、警視庁の
内部のデータを見ようとする。
「・・・思ったより、セキュリティが
硬いな・・・。だったら・・・・・
・・・よし、急いでみるか。」
名簿の閲覧に成功したロウは
及川義人の名前を探す。
「・・・・・・!?」
ロウの目が大きく開く。
「・・・どういうことだ。」
手が震え始める。
「・・・おっさんの名前がない。」
手が震えながらも、急いで
侵入した痕跡を消し、出る。
「おっさん・・・・あんた、いったい
何者だ・・・。」
パソコンの電源を切った。
「・・・・・・・・。」
『したい、ということ。私はマスターの
望みをかなえたい。』
頭の中で卯衣の言葉を思い出す。
「・・・望み・・・ねえ。」
天井を見上げ、大きくため息をついた。
翌日
ピピピピピ! ピピピピピ!
「ん・・・・?」
重い目を開ける。
・・・くそ、このまま寝ちまったか・・・。
その後も義人を調べ続けた
ロウだったが、疲れからそのまま
寝てしまったようだ。
ピピピピピ!
「・・・・。」
デバイスが鳴り続ける。
「ったく・・・。」
画面を見る。
・・・ディオール・・・?
「何の用だ?」
寝起きから若干不機嫌になる。
「・・・・クエスト?
・・・まあ、いいけどよ。なんの
クエストなんだ?」
大きく欠伸をする。
「・・・・・・教司会?」
・・・また、面倒そうなクエストだ・・・。