グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第115話 魔物の言葉

「この手記を読めばわかるかもしれません。」

 

「・・・それしかねえな。」

 

ロウは鞘から刀を抜いた。

 

「ふむ・・・では、私が

 前線に立とう。」

 

銃を取り出す。

 

「円野、小鳥遊、鳴海。貴様らの

 出番だ。私と来い。ロウ、お前は

 サークルを張り、シャルロットの側から指示を出せ。」

 

「ああ、わかった。『ROOM』!」

 

指示通り、青色のサークルを作る。

 

「魔物が近寄らないよう、私たちを使って

 みせろ。いいな。」

 

「それぐらいできるっての。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、その手記、何が書いてあるんだ?」

 

「・・・・。」

 

ゆっくりと手記を開く。

 

『全ては私の神であるあなたを愛するために。

 私の行うことはあなたのために。私たちは

 神を見るでしょう』

 

「これは・・・。」

 

「どういう意味だ?」

 

「聖ヴィアンネの信仰はただならぬものであり、

 神に寄り添い生きました。その生活の中で生まれた

 言葉の意味を正しく解釈するのは難しい。

 まして人に説明するなど。私はまだ若輩の身です。」

 

「・・・まあ、そういうことにしといて

 やるが・・・。だが、手記があり、日本に

 来たということは、日本で死んだのか?」

 

「いえ、それは考えられません。聖ヴィアンネの

 最期は多くの人に囲まれ、遺体は今も

 サン・ジャン・バプティスタ教会で見ることができます。」

 

「そうか・・・。」

 

近づいてきた魔物を切り裂く。

 

「聖ヴィアンネが日本に来た時はかなりの

 高齢だったはず・・・。なぜ日本を訪れる

 必要があったのか・・・先を読みます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ! まだまだ・・・!」

 

真理佳は魔物を殴り飛ばすが、

起き上がってくる。

 

「こいつら、見た目のわりに強くない

 ・・・けど、しつこいね。死ななきゃ安いって

 ことかな? ま・・・残機無限ならそうだろうけど。」

 

「無駄口を叩くな! 命取りになるぞ!」

 

しゃべっていた純をエレンが

叱責する。

 

「どうしてもしゃべりたければ、トドメを

 さしてからだ!」

 

「ひ、ひぃ~スパルタだよ、あの軍人さん!」

 

「ていうか、センパイの指示、結構容赦

 ない・・・。」

 

「まだしゃべるか!!」

 

二度目の叱責が飛ぶ。

 

「す、すみません!」

 

「な、なによこれ・・・やっぱ来るの、

 やめればよかった・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

『もし神が私たちに祈りを命じるなら、

 それは私たちの幸福がそこにしかないからです。

 私たちは子供の心を持って、神の意志に

 自分をゆだね、自分を捨てなければなりません。

 時には慣れ親しんだ地をも。』

 

「・・・やはり、聖ヴィアンネはアルスを

 離れていた時期がある。」

 

話しながらも、手記の文字を追う。

 

「恐らく日本に・・・しかしいったい、

 何のために・・・? なぜどこにも

 記録がないのでしょう。」

 

「さぁな、書く暇がなかったんじゃ

 ねえか?」

 

「・・・・。」

 

「聞いてねえな・・・。」

 

『言葉も通じないところで、私を支えるのは

 無私の心でしょう。神が私にこの地での

 奉仕を命じたのなら・・・この行いこそが

 我が幸せなのです。日本という国で、門を

 封印することこそが。』

 

「・・・門?」

 

その言葉に、ロウとシャルロットは

引っかかる。

 

「日本で、門を封印・・・ゲート・・・

 ・・・まさか・・・。」

 

 

 

 

 

 

「・・・この魔物・・・そんなに強い

 わけじゃないけど・・・。」

 

「すんげー鬱陶しいっす・・・ねちねち

 進んでくるっすね。」

 

少しずつ息が上がってくる。

 

「その分析は悪くない。こういう連中に魔力を

 注ぎ込むのは愚策だな。しかし・・・本当に

 渡り者であればこんな強さではないはずだが・・・。」

 

「・・・攻撃も、そんなに激しくない。

 もしや、僕がせいちょ・・・うわ!」

 

油断から真理佳は転んでしまう。

 

「円野!」

 

「ひっ!」

 

魔物の攻撃が来ると思い、

思わず目を瞑る。

 

「・・・・あれ?」

 

「・・・ゥ・・・ァァァ・・・・。」

 

魔物は真理佳を無視し、ロウと

シャルロットのもとに行こうとする。

 

「センパイたちの方に・・・・

 行かせるか!」

 

魔物を止めるため、攻撃を始める。

 

「・・・今のは・・・試してみる、か。」

 

エレンは魔物の前に立ちふさがる。

 

「ゥ・・・・ゥォォ・・・」

 

「私は無抵抗だぞ・・・。」

 

「ォ・・・・ヲヲ・・・・ゥゥ・・・」

 

さっきと同様、エレンを無視する。

 

「なんだ、この魔物は? だが、

 いずれにしろ素通りできると思うな!」

 

銃を取り出し、魔物を攻撃する。

 

「・・・魔物の動きがおかしいですね。」

 

読みながら、魔物を観察していた

シャルロットの目が鋭くなる。

 

「ああ、襲うとかじゃなく、立ちふさがるから

 攻撃している。」

 

「・・・まさか。仮に知能があるとしても

 魔物の目的は人間を殺すことのみ。私たちが

 何らかの理由で標的になっているだけです。」

 

「・・・・。」

 

ロウはシャルロットの持っている

手記を見る。

 

・・・もしかすると、最初の

予想が当たってるかもな・・・。

 

「皆さんが頑張ってくれています。

 魔物が到達する可能性が低い。今、

 すべて読んでしまいましょう。」

 

再び、手記を読み始める。

 

『この地で私は、悪魔と出会いました。

 その悪魔は神を求めていました。』

 

「・・・悪魔・・・魔物が、神を?」

 

『父は彼らを許すでしょう。』

 

「・・・・・・魔物を、許す?」

 

シャルロットの声が震える。

 

『彼らに安息の地はなく、私はそれを

 用意しなければなりません。外から隔て、

 時を止めましょう。この聖堂が彼らのただ1つの

 寝場所。全ては思し召しのままに。』

 

「・・・時を止めただと?」

 

「時間停止・・・? 聖ヴィアンネが時間停止の

 魔法を使い、この地下室を隔離した・・・。

 ・・・時間停止の魔法・・・門を閉じる・・・。」

 

今まで出てきた単語をつぶやいていく。

 

「・・・!! ロウ様! エレンさん!」

 

「どうした、何かわかったのか。」

 

エレンがロウたちのもとへ行く。

 

「この手記は教司会が探していたものでは

 ありません。いえ、おそらくはこれなのでしょう。

 ですが聖ヴィアンネの手記はもう1冊・・・

 学園にあります。」

 

「学園だと?」

 

「あ、しま・・・」

 

壁を殴りそうだったところを

ギリギリで止める。

 

「危な・・・もう少しで教会壊しちゃう

 ところだった・・・。」

 

「地上階ならいくら壊しても構いませんよ。」

 

「シャルロットセンパイ!」

 

「急ぐ用事ができました・・・お任せして

 申し訳ありませんでした。」

 

シャルロットは魔物と対峙する。

 

「あとは私にお任せください。

 『神の恩恵が悪しき者を消し去りましょう!

 キリエ・エレイソン! 汝ら悔い改めよ!

 天国は近づきたり!!』」

 

詠唱を唱えると、魔物すべてに

光が降り注がれる。

 

「出た! シャルロットセンパイの

 必殺技です!」

 

「ありゃ大魔法っすよ大魔法。詠唱が

 様になってるっすねぇ。」

 

「3ゲージ技っしょ? 7割くらい、

 削り1割ってとこかな。」

 

「まったく・・・。」

 

「ふむ、あれが使徒の使う聖光か。

 珍しいものを見た。」

 

まぶしさを手で隠す。

やがて、光が消えていく。

 

「エレンさん、見える魔物は滅しました。」

 

「そのようだ。あとは隠れているものを

 掃討して終わりとしよう。円野、小鳥遊、

 鳴海! 3人で行動し、掃除をしてこい!」

 

「・・・では、私たちも行きましょう。」

 

「ああ。・・・・ん。」

 

近くで這いつくばっている

魔物を姿を見つける。

 

「・・・・ロウ様。お気づきになりました

 でしょうか。」

 

「ああ、俺たちを・・・いや、その手記を

 欲しがってるんだろ?」

 

「ええ、魔物が人間以外のものに興味を

 持つ・・・こんなことはありませんでした。」

 

「・・・ォ・・・ォヲヲ・・・ゥヲ・・・」

 

シャルロットは銃口を魔物に向ける。

念のため、ロウも銃を取り出す。

 

「・・・神よ、お許しください。わたくしは

 世にも恐ろしい試みを・・・」

 

「シャルロット・ディオール! なぜ

 魔物を殺さない!」

 

エレンがシャルロットに詰め寄る。

 

「ゥェ・・・ョ・・・ォヲヲ・・・!」

 

「な、なんだ、この魔物は?」

 

「魔物の行動のすべては人間を襲うものの

 はず・・・さぁおぞましき魔物よ。

 この手記をごらんなさい。」

 

手記を広げ、魔物に中を見せる。

 

「愚かにもあなたたちが求めるのは、

 わたくしたちの命ではなく・・・聖ヴィアンネの

 言葉、ですか?」

 

「・・・・ァァ・・・ィ・・・ォ・・・

 ィヲ・・・」

 

「ちょっと、なんしてんのさ、

 こっちは・・・」

 

「静かにしてろ。」

 

「え?」

 

純の言葉を途中で止める。

 

「・・・・・・・。」

 

シャルロットは魔物の様子を

じっと見る。

 

「・・・チ・・・チチ・・・ョ・・・

 ワァ・・・ガ・・・・チチ・・・ョ・・・」

 

バァン!! バァン!!

 

シャルロットは魔物に銃弾を撃ち込んだ。

 

「な・・・!?」

 

「!?」

 

「ひ!?」

 

「・・・ありえません。」

 

「ま、待ってよ! 今そいつ・・・。」

 

動揺が隠せない。

 

「どういうことだ! なぜ撃った!

 今の魔物は・・・今のは!」

 

エレンはシャルロットの肩をつかむ。

 

「そう聞こえただけです。魔物のうめきが

 言葉に聞こえただけ。」

 

「ディオール。それにしては明らかに魔物は

 『我が父』と言った。どう説明する気だ?」

 

「魔物が言葉を発するわけがありません。

 ましてや祈りの言葉を。だから信者を避けるようにと

 あったのです。」

 

「なんだと!?」

 

「先ほどのうめきを『我が父』ととらえたのは

 まさに信者だからです。信仰心がなければ、

 それを信じることができないのです。」

 

「・・・貴様!」

 

「ロウ様。小鳥遊さんと円野さんはどちらに?」

 

「・・・もうすぐ来るだろ。」

 

銃をしまう。

 

「クエストは終わりました。霧を払い、

 手記を手に入れました。戻って報告しましょう。」

 

「・・・・・。」

 

魔物のなぞが解けないまま、クエストが終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・皆さんはもう出ましたか?」

 

「ああ、ロウも行かせた。」

 

「・・・・あ・・・あぁ・・・」

 

シャルロットはその場に

へたりこんでしまう。

 

「まさか・・・魔物が・・・・

 なぜ・・・なぜ祈りを・・・・。」

 

「貴様、やはり・・・。」

 

「皆さんの前でわたくしがうろたえるわけには

 ・・・・いきませんでしたから・・・。」

 

声が震える。

 

「すまなかった。」

 

「いえ、よいのです。わたくしも、信じられない。

 聖ヴィアンネの手記が日本にあるのも、それを

 魔物が求めたのも・・・魔物が・・・・

 言葉を発したのも・・・神を呼んだことも・・・・」

 

徐々に言葉が途切れていく。

 

「わたくしたちが戦っていた魔物とは・・・

 いったいなんだったのでしょうか・・・・。」

 

「いずれにせよ、これはゆゆしき事態だ。

 ・・・天地がひっくり返るぞ。」

 

「・・・神よ、どうかわたくしを

 お導きください。」

 

両手を祈るように握る。

 

「聖ヴィアンネはここに時間停止の魔法を

 かけたのですね。そのために外から干渉されず

 聖堂も綺麗なまま残ったのですね。」

 

ゆっくりと目を瞑る。

 

「そしてなにかしらの理由で時間停止の魔法は

 解け、その魔物が活動を始めた。その魔物を

 消滅させるのが今回のクエストだったのですね。

 そして聖ヴィアンネ。あなたの本当の手記は・・・・」

 

ゆっくりと目を開く。

 

「学園の地下のあの魔導書・・・TESTAMENT

 だったのですね。・・・なぜ、あなたは時間停止の

 魔法が使えたのですか。なぜ、TESTAMENTを

 遺したのですか。なぜ魔物を救ったのですか。

 あなたは・・・なぜ・・・・。」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・。」

 

シャルロットのその様子を帰らないでいた

ロウは静かに見守った。

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