グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「もう1度、人形を探してみよう。」
そんな提案をしたのは
鳴子だった。
「え、ええ!?」
聞いていたゆかりは驚いた。
「そうしたら、きっと見つかると思うよ。」
・・・あいつもわかったってところか。
「じゃ、じゃあ、事件じゃないの?」
「それも、人形が出てくれば分かる。」
風紀委員のところへ行っていた
聖奈が戻ってくる。
「そういうことならば、私はもう1度
他の部室をまわって、何か見ていないか
聞いてみよう。」
「・・・ああ、わかった。」
「じゃあ、生天目君と椎名君は両隣の
部屋を探してくれ。白藤君は向かいの
部屋を。ロウ君。」
「ん?」
「君は僕と一緒に報道部に来てくれないか?
いろいろ調べて疲れたろう。少し考えを
まとめたい。」
「・・・・・。」
怪しむ目で鳴子を見た。
<ロウ、鳴子、移動中>
報道部部室
「・・・さて、濃密な捜査だったけど
もうすぐ終わるよ。」
「だろうな。」
「おっ、君にも人形消失について
わかっていたみたいだね。」
コーヒーが入ったカップを置く。
「ああ、大体な。」
「・・・じゃあ、聞かせてみてくれないか?」
「・・・いいぜ、話してやる。・・・まず、
今回の事件でわからなかったのがこんなことを
起こした理由だ。そこでどうしても人形を
持ち出したかった奴を絞り込んでいく。」
「うん・・・。」
鳴子はコーヒーを一口飲む。
「まず最初に除外するのが岸田。もしあいつが
記事のために人形を持ち出したなら、写真は
人形のない状態で撮って、騒ぎにする。
だが、俺が見たあいつの記事の写真には人形があった。
つまり、これであいつはシロ。」
「その通りだ。」
「そして、生天目も除外される。あいつが
持っていたなら、遊佐の指示に従って
捜査しない。そうすれば、自分で自分を
追い込むことになる。」
ロウはコーヒーを飲もうとするが、
カップを取らず、そのまま進める。
「残りの冬樹と南は会を成功させなければならない。
さらに白藤、椎名も同様。俺は能力を使えば
できるかもしれねえが、動けなくなるリスクを
覚悟して人形盗むほど、俺も馬鹿じゃない。」
「・・・・・。」
「そして、まず疑うのは・・・冬樹だ。
俺も後で話を聞いたが、あいつは最初に部屋に戻り、
机を取り換えた。そしてその時、あいつは
机を壊してしまった。」
「なぜそう思うんだい?」
「あいつがいくら力があるとはいえ、
抱えるのも大変になる。なにより、南たちと
合流すればいい。だがそうできなかった。
壊れた衝撃で、飾りが崩れ、埃が舞ったから。」
「ふむ・・・・。」
「そして、机が壊れた音で1人部屋に入ってきた。
・・・会計がな。」
「!」
「あのまじめな会計が机が壊れたことを
言わないとは思えない。2人は片づけを終えた時、
ある事実を聞いた。今日来るはずだった、浦白の
話しを。そこで冬樹と会計は人形が1人足りない
ことに気づいた。浦白の分の人形が。」
コーヒーのカップをちらちら見る。
「あいつらは浦白の人形を付け足すため、人形を
持ち出した。だが、1つ大きな誤算があった。
浦白の入学が保留になった。さっきの
会計に来た風紀委員の連絡がそれだ。」
「・・・・・。」
「大方、今頃人形が戻ってるだろう。あいつらは
その事実を知ったから。南はすでに知っている、
白藤は冬樹イヴから聞き、椎名はどのみち
保健室から出られない。つまり、浦白の
情報が入らなかった冬樹が怪しくなる。」
「へぇ・・・。」
にやりと笑う。
「お楽しみ会を成功させなければならない。だから
冬樹は行動を起こした。楠木に浦白の人形を
依頼した。」
「だが、南君や夏海は人形を見ているよ?」
「サプライズのための人形を人目に着く
ところに持っていけない。それに楠木に
断られることもある。ならうかつに持っていけない。」
「・・・・。」
「だから楠木が会場近くにいた。寮から
連れてきて。だから人形がなくなるまでに
タイムラグが発生した。だから南と岸田は
人形を見ていた。・・・ってところだが、
どうだ、どこか間違ってるか?」
「・・・ふふ。」
鳴子は少し笑う。
「正解だよ。やはり、君は素晴らしい。
・・・ところで」
「ん?」
「コーヒー、飲まないのかい?」
ロウの前のカップを指さす。
「ああ、コーヒーの中に何か仕込んでないとも
限らねえしな。」
「なら、淹れなおそうか?」
「・・・いや、自分でやる。」
入っていたコーヒーを別のカップに移し、
新しいコーヒーを淹れる。
「相変わらず油断しないね。」
「それで、そっちも話してもらおうか。」
「何をだい?」
「とぼけんなよ。だからわざわざ
ここに呼んだんだろ?」
「・・・さすがだ。そうだよ、話・・・
というよりお願いがあるんだ。」
「お願い?」
ゆっくりとコーヒーを飲む。
「君の前で犯人を、指摘するのを
避けたいんだ。」
「避けたいって・・・すでに俺は
犯人が分かってるんだが?」
「それでも、だよ。せっかく学園生の
間が繋がってきたんだ。ここで信頼が
損なわれたら、意味がなくなってしまうからね。」
「・・・よくわからねえな。」
コーヒーを飲み干す。
「・・・ああ、ちなみにさっきの
コーヒーの淹れなおしだけど・・・」
「ん? ・・・・!?」
ロウは急に激しい眠りに
襲われる。
「実は、睡眠薬が入っていてね。
正確には、カップの縁に塗ってたんだ。」
「・・・じゃ・・・カップを・・・・
入れ替え・・・・・・」
「僕の方にも塗ってあるよ。つけてないほうに
口をつけたけど。」
「・・・・く・・・・そ・・・・・。」
ロウは椅子から落ち、眠ってしまう。
「しばらくお休み。すぐに起こしてあげるよ。」
数時間後
「・・・・・・・。」
機嫌が悪い様子のロウが
廊下を歩いていた。
「あ! ロウ・・・さん・・・・?」
ロウの機嫌が悪いのが分かったのか
智花は2、3歩後ずさる。
「南か・・・ちょうどいいところで
会った。ちょっと、いいか?」
「な、なんですか・・・?」
「遊佐を見なかったか?」
「あ・・・でしたら、向こうに・・・・。」
「・・・そうか。」
そう言ったロウは鞘から
刀を抜く。
「ちょっと行ってくる。」
「え、ろ、ロウさん!?」
あの野郎・・・!
ロウは智花が指した
方向に向かって勢いよく走り去っていった。