グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
研究室
「ロウ君、突然呼び出して
ごめんなさい。」
「本当なのか? 科研が襲われたって・・・」
「ええ、そうよ。今ちょうど、天が
行ってるの。魔法使いじゃないあの子を
1人にはできない。」
机の引き出しから緑色の
石のようなものを取り出す。
「それは確か・・・。」
「念のため、これも持っていくわ。
スペアのエナジーシェルよ。」
「結局なんなんだ? その石。」
「・・・いいわ、あなたなら。」
少しため息をつき、話し始める。
「如月天は魔導科学の力で、強引に
魔力腺を開いている。」
「確か、そうだったな。だから厳密に
いえば、あいつは魔法使いじゃない。」
「ええ、魔力が活性化していないと、魔法の
反動に体が耐えられない。・・・あの子は
エナジーシェル・・・要するに生命維持装置が
ないと・・・・」
「・・・・・・。」
「2日ももたずに死んでしまう。」
「なに?」
「デウス・エクスの実験で体がボロボロなの。」
「で、そのエナジーシェルは?」
結希の持っているエナジーシェルを指さす。
「このエナジーシェルはスペア。詳細は
省くけれど、裏世界のあの子のものよ。
・・・あと、1つ覚えておいてほしい。」
「なんだ?」
「あの子に会ったときは絶対に背中を
確認して。」
「背中?」
「無事なら、エナジーシェルが入っている。
でもそこに穴だけがあったら・・・・・
最優先で私に連絡しなさい。」
鋭い目でロウを見る。
「魔物の討伐は学園からのクエスト。
私からのクエストが・・・それ。」
「・・・ああ、わかった。
なら、さっさと行こうじゃねえか。
・・・・・科研に。」
<ロウたち、移動中>
魔導科学研究所
「こんなときに! なんて間の悪い・・・!
水島博士! どこにいるのよ、もう!
あの人だけは助けないと・・・!」
「天!」
「結希!? あんたなんで・・・・・・
ああ、クエストか・・・。」
「あなた、エナジーシェルは無事でしょうね?」
背中を確認しようとする。
「はぁ? もちろん無事に決まってるわよ。
一体なに?」
「いえ、無事ならいいの。」
「しかしまあ、派手にやられたな。」
壁などはボロボロになっている。
「・・・魔物に見覚えがあるわね。」
「ポチ・・・だと思うけど、
様子がおかしいわ。旧科研のやつに比べて、
手が加えられてるわね・・・。
!! もしかして・・・・!」
「あなたはずっと中にいたから知らない
でしょうけど、霧の護り手よ。」
「!」
・・・面倒なことにならなきゃいいが・・・
「まさか・・・! 今まであいつら、絶対に
前に出てこなかったのに・・・・・。」
「今回は明らかに構成員が出てきている。
気を付けて。一般人なのに魔法を使うあなた。
・・・捕まったらどうなるか、わからないわ。」
「・・・ふん。どっちにしろ、科研って
だけで殺されるには十分でしょう。」
デウス・エクスを動かす。
「黙ってやられてたまるものですか。
デウス・エクスでやってやるわ。」
「いくらなんでも、あなたがここに
いるのは危険だわ。つべこべ言わずに
ほかの研究者と避難しなさい。」
「私、あんたの部下でもなんでもないでしょう。
家を襲われて放っておけって命令するわけ?」
結希をにらみつける。
「・・・天・・・。」
「腐っても、ここは私の家。生まれ育ったところ。
テロリストなんかに好きにさせるものですか!
ロウ、来なさい!」
「ああ?」
「あんたの魔力があれば、ポチなんか
敵じゃないわ!」
天は先にどんどん進んでいく。
「待ちなさい! あなた、これ以上
デウス・エクスを使ったら・・・!」
「戦闘データが集まってデウス・エクスの
完成が近くなるわ!」
「・・・馬鹿・・・・・死んだら、
そこまでなのよ・・・・。
・・・ロウ君、追いかけて。」
「・・・・ったく、仕方ねえな・・・。」
「私もすぐに追うわ。この施設は
対テロリスト用の要塞でもあるわ。
働いてたからよく知ってる。防衛機構を
すべて作動させて、合流する。」
「ああ、わかった。」
ロウは天を追っていった。
<ロウ、天、移動中>
「・・・・ん?」
魔物との戦闘中、ロウは
数人の男たちの姿を見つける。
「阿川奈からこちら、姿を隠してきたが・・・
その利益は得られそうだ。」
「過去のデータをすべて洗い出せ。
『あちら』より進んでいるはずだ。」
・・・あちら?
「・・・間ヶ岾昭三を殺しておいて
正解だったな。」
「阿川奈・・・・間ヶ岾・・・・・
どういうことだ・・・なぜ今更・・・。」
ロウはさらに会話を聞く。
「特に学園生の情報は必ず得ておけ。
私たちに立ちはだかるのはいつも連中だ。」
「子供は子供らしく、大人の邪魔をしないで
おけばいいものを・・・。」
「・・・・・。」
あの言動は、おそらく幹部か・・・。
「おい、あの坊ちゃんはどこにいる。」
「あんな奴でも、いれば使い道がある。
迎えに行かせろ。そう、神宮寺を。」
「!!」
神宮寺・・・。
ここは気になるが・・・
「いったん離れるか。バレるとまずい。」
ロウは再び、天を追った。
<ロウ、天、移動中>
「・・・ロウ、今回はちょっとやばいわ。」
天は額の汗をぬぐう。
「どういうことだ。」
「一応、言っとくわ。まず1つ。科研には
共生派に共感する人間はいないってこと。」
「まあ、そうだろうな。」
「それにジジイどもは悪魔も裸足で逃げ出す
クズだけど・・・その努力は全ては魔物を
殺すことに向けられている。」
ずいぶん言うな・・・。
「魔物を殺す兵器の開発にね。この研究所が
存在することを許されている理由。愛国無罪って
わけじゃないけど、大抵のことは不問になる。」
「だが、その結果、旧科研のようなことが
起こった・・・ってわけか。」
「そうよ。裏世界では双美心にやられたみたい
だけど、私はその点だけ信頼している。
JGJの一件もあるし、スパイには敏感。」
「だから今回のこの襲撃は力技。
問題なのは、なぜこの時期に、名前を出して、
堂々と攻めてきたか。」
「よくわかってるじゃない。」
にやりと笑う。
「こんなことをすれば一気に悪評が広まって
活動しにくくなるはず・・・けれど、今は
相手の手の中にいるようなもの。こんな時は
何が起きてもおかしくない。」
「確かにそうだが・・・・どうする気だ?」
「今から、データセンターに向かうわ。
相手の狙いはおそらくそこ。」
・・・データセンター・・・
ちょうどいいかもな。
ロウは見えないように笑う。
「注意して。どんな罠があるか
わからないわよ。」
2人はさらに先に進んだ。