グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
子供春乃の場合
「あたし? あたしはお友達に誘われたんだよ。
でも熱出しちゃって、あたしだけ来てるの。」
「・・・その記憶はあるか?」
ロウは春乃に確認する。
「ある。あたしはガールスカウトに
参加してるわ。」
「妹さんを置いて・・・考えにくいですが・・・。」
「小さいころの話だもの。ずっと、ずうっと昔。」
「・・・失礼しました。詮索するつもりは
なかったのです。」
まあ、そうなるだろうな・・・・。
「お姉ちゃんも妹さん、いるの?」
「ええ・・・あなた、弟と妹は好き?」
「うん、大好き! あたしはお姉ちゃんだから
がんばるんだ!」
「・・・そう・・・ね・・・。」
子供薫子の場合
「・・・あれが先生、ですか?」
1人の男を指さす。
「うん。小学校の先生。とっても優しいんだけど
ちょっと怖いかな。」
「・・・覚えがありませんね。」
「あたしは知ってる。あの教師はあたしの
小学校の教師だ。今思えば、共生思想的な
発言が多かった。」
「薫子さん。あなたの学校の先生ではないのですか?」
「うん。学校に来てね、ガールスカウトでお山に
行く人、おいでって。」
「・・・・・。」
子供虎千代の場合
「虎千代が来たのは、父さんに言われたからだ。
山の中で修行して来いって。」
「なるほど、だから離れて1人で
修行してたのか。・・・覚えてるか?」
虎千代は首を横に振る。
「全然覚えてないな・・・だが参加したことは
事実だ。となると、ディオールと薫子。
2人にかかわる人間が表と異なるというわけだ。」
「シャルロットさん、本当にあなたは不況のために
来日したのですか?ほかに何か言われてませんか?」
「同じことをなんどもきかないでください。
シャルロットのお役目は、主のみことばを
お伝えすることです。」
「・・・まさか、こちらの教司会に連絡を
とるわけにもいきませんし・・・。」
いろいろと面倒だな・・・。
「うーん・・・仕方ない。一度宍戸に連絡を
してみるか。」
「・・・こっちの世界でヴィアンネ教司会が
共生派ってことはない?」
「ん、どういう意味だ、瑠璃川。」
「聞いてみただけよ。どうなの?」
「それはないでしょう。彼女・・・わたくしの
言動から考えるに・・・ヴィアンネは相変わらず
魔物と敵対。それがより強いと思われます。
それに第8次侵攻で使徒が全滅したと聞いてますし。」
「・・・・・なら、すぐに子供たちを
帰したほうがいい。あの教師のところに。」
何か気づいたな・・・?
春乃は子供たちを呼ぶ。
「アンタたち、もう日が暮れる。さすがに
これ以上連れまわせないわ。先生に怒られる前に
みんなのところに帰りなさい。」
「えー! まだちょうさ終わってないじゃないか!
どかーんって、魔法見せてよ!」
「かおるこも見たいー!」
「どうせあと何年もしたら使えるように
なるわ。」
「お、おい、瑠璃川!」
虎千代は春乃の肩をつかむ。
「いいの。どうせ意味は分からない。それより
これ以上できることはない。だから、
話を聞いて。」
「言ってみろ。」
「まず、前庭を整理するわ。まずあの教師は
共生派。副会長はあの教師の宣伝でこれに
参加した。そして、ヴィアンネはディオールを
送り込んだ。」
「・・・・・。」
「ロウ、アンタ、第8次侵攻直前の学園に
行ったことがあるんだって?」
「ああ、そうだが。」
「なら、そのとき副会長がいたかは
わかる?」
・・・そういや・・・。
「ロウに聞くまでもない。薫子は学園にいた。
かわらず副会長だ。水無月が会長で
その補佐をしている。」
「・・・それなら、簡単よ。」
「・・・なるほど。」
ロウはにやりと笑う。
「ここで副会長が共生派に洗脳されるのを
ディオールが止めるんだな?」
「そういうこと。」
「・・・わたくしが? どういうことでしょう?」
「共生派が絡んでいるなら、十中八九
このキャンプは洗脳の舞台・・・ヴィアンネが
そのことを知ってるなら阻止しに来ても
おかしくない。」
「だが、大人が来れば怪しまれる。絶対に
洗脳されず、信仰心の強い子供を選んだ。」
「し、しかしお前たちの言ってることには
証拠がないぞ。」
「その後の歴史がその証拠だ。ここで共生思想を
植えつけられなかったおかげで、副会長も
ディオールも第8次侵攻では学園生として
戦ってるしな。」
「・・・・筋は、通ってる・・・・気がする。」
虎千代はなんとか納得する。
「しかし、表と違う原因がまだわかってません。
あの教師は霧の護り手ですか?」
「そこまではわからないわ。表でどうなってるか
・・・生きているのか・・・。デバイスで
聞いてみるしかない。」
「・・・よし、いいだろう。だがどちらにしろ
時間がない。子供たちに言い含めて
後は任せるしかないな。」
「・・・というわけであまり怖い先生には
近づないよう。どうしても、というときは
誰かと一緒に会うようにしてください。」
「お姉ちゃんたちといっしょが
いいなぁ・・・。」
子供薫子は薫子の服の袖を引っ張る。
「わがままを言わないように・・・強く、
賢くなければいけませんよ。あなたは
力を尽くす相手と出会っているのですから
幸運です。」
「・・・? うん!」
わからない様子だったが
大きな声で返事をする。
「・・・はあ・・・・。」
「・・・いいわね、その日は絶対に
家族を誘って出かけるの。行けるまで駄々を
こねて。わがままが通じるように普段いい子にしてて。」
子供春乃の肩を力強くつかみ
訴えかける。
「もう何度も聞いたよ。大事なことなんでしょ?
ちゃんとおぼえてるから、大丈夫。それより
お姉ちゃんも約束。ちゃんとできたら褒めてね?」
にこりと笑う。
「・・・・うん・・・それじゃあ、
バイバイ。」
そして、ロウたちは表の世界へと
戻っていった。
魔法使いの村
「宍戸! 宍戸!」
戻ってきた春乃は結希に
勢いよく駆け寄る。
「どうしたの? さっきの教師の
件なら・・・」
「パンドラが見たい。あたしと秋穂は
どうなってる?」
「・・・もしかしてあなた、未来を変えるような
ことを言った? ・・・ちょっと待って。」
指示通り確認する。
「・・・・・。」
「・・・特に変わっていないわ。私と同じ。」
「・・・同じ?」
「ええ。私も未来を変えることを言った。
でも、変わってなかった。」
「そう・・・。もともと期待するような
ことじゃなかったのに・・・変えられない・・・か。」
「・・・・。」
ロウはその様子をじっと見る。
「妹さんのところに行ってあげなさい。」
「!? なにかあったの!?」
「おなかをすかせてると思うわ。もう夜だから。
教師については調べておく。今、できることをして。」
「・・・わかった・・・宍戸。
礼を言っておくわ。」
そう言って、春乃は戻っていった。
「・・・まだわかると決まったわけでは
ないのに。お礼は結果が出てからのほうがいいわ。
それより会長たちの話を聞かないと。」
「・・・そうだな。」
「あなたたちも無事だったし、ようやく
眠れそうね。」
結希は小さくあくびをした。