グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
学園
「あ、せ、先輩!」
「ん? 瑠璃川か。どうした?」
いつも通り校舎に入ろうとした
ロウを秋穂が呼び止めた。
「えっと・・・お、お願いがあります!」
「お願い?」
「あ、もしお忙しいなら他の日でも・・・・。」
「特に予定はない。で、なんだ?」
「・・・ど、どうかわたしと一緒に、
クエストに行ってほしいんです!」
「クエスト?」
「わ、わたしと先輩・・・2人だけです!」
2人の部分を強調する。
「きっと、お姉ちゃんもどこかで
見てると思うんですが・・・。」
「だろうな。」
何度か回りを見る。
「それと散歩部のみんなには内緒というか・・・。」
「なんだ、断られたのか?」
「あ、違うんです! わたしのわがまま
なんです! ちょっと前から思ってたこと
なんですけど、お姉ちゃんのことで。」
「? あいつに何かあったのか?」」
「わたし、おねえちゃんっ子なんです。いないと
何もできなくて、泣いちゃったりして・・・
でも、それじゃあだめだって気づいたんです!」
「・・・・・。」
「1人でちゃんとお姉ちゃんのお手伝いが
できるように・・・お姉ちゃんの役に
立ちたいんです。だから頑張ろうって。」
「そういうことか・・・だったら
できる限り、協力してやる。」
少しため息をつく。
「んじゃあ、とっとと行くとするか。」
「はい! よろしくお願いします!」
<ロウ、秋穂、移動中>
川
「先輩。」
「んん?」
「さっきの話の続き・・・なんですけど・・・。」
おどおどした様子で聞く。
「先輩、お姉ちゃんのこと、
どう思いま」
「シスコン。」
質問を言い切る前に
即答する。
それしかないからな・・・。
「そ、そうですか・・・え、えっと、
綺麗だって思います?」
「あいつが? ・・・あんまりよく
わからねえが・・・まあ、そうなんじゃねえか?」
「ですよね! お姉ちゃん、綺麗だしかっこいいし。
でもでも、わたしを見てくれてて・・・それは
うれしいんですけど・・・。」
徐々に下に顔がうつむく。
「?」
「・・・今はいいんですけど、将来わたしが
成長してないと、もしかしてずっと・・・
ずっとお姉ちゃんがわたしの面倒を見なきゃ
いけなくなってたら・・・。」
・・・あいつならやりかねんな・・・。
「それって、わたしだけが幸せで、
お姉ちゃんは・・・」
「・・・瑠璃川。」
「え?」
「話はあとだ。何か気配がする。」
刀を構える。
「は、はい!」
「・・・『ROOM』!」
青色のドームを張る。
それと同時に魔物が飛び出す。
「出たか。」
「い、行きます!」
水の魔法で魔物を攻撃する。
しかし、ひらりとかわす。
「『タクト』!」
指を動かして、その水を操作し
魔物に直撃させる。
魔物はうめき声をあげ、
霧散する。
「ふぅ・・・。」
ふと、茂みのほうを見ると・・・
「あ。」
ついてきていた秋穂の姉、
春乃と目が合う。
「・・・・・。」
春乃は静かにフェードアウトする。
「先輩?」
「・・・なんでもねえ・・・。」
ホントにいたな・・・まあ、
当然か。
次の魔物を探すため、ロウと秋穂は
移動することにした。
<ロウ、秋穂、移動中>
「・・・先輩。お姉ちゃん・・・わたしと
いるといつも笑ってくれるんですけど・・・
時々とっても寂しそうな顔してるんです。」
「寂しそうねぇ・・・。」
「先輩、理由知ってますか?」
「さあ、気のせいじゃねえか?」
俺が言うわけにもいかねえしな・・・。
「気のせいじゃないんです。寂しそうなんです。」
「・・・お前は、なんだと思う。」
「・・・わからないんですけど・・・
寂しそうなお姉ちゃん、小さく見えて・・・。」
もう少しごまかせっての、あいつ。
軽くため息をつく。
「もしわたしが一人前になって
お姉ちゃんが自由に生きられるなら・・・
寂しそうな顔もなくなるんじゃないかって
思ったんです。」
「・・・そうか。・・・だったら、
1つ俺からお前らに言っておくことがある。」
「・・・先輩?」
「一度しか言わねえからよく聞けよ。」
「は、はい!」
「・・・・・。」
ロウは少し息を吸い、言葉を絞り出す。
「・・・俺のようにはなるな。」
「・・・え?」
「それだけだ。行くぞ、瑠璃川。」
足早に歩きだす。
「あ、は、はい!」
・・・自分から言っちまうとはな・・・
<ロウ、秋穂、移動中>
「・・・さて。」
何かの気配を感じ取り、
ロウは立ち止まる。
「そろそろ出てくるはずだ。」
デバイスを取り出し、確認する。
「た、確かにそうですね。」
「・・・『ROOM』!」
魔物が急に飛び出してくるが
ロウは落ち着いてドームを張る。
「えい!」
「『
魔物の足を斬り、動きを封じる。
魔物は攻撃をもろにくらい
大きくうめき声をあげる。
「もう少しだ、瑠璃川。」
「はい!」
続けて何度も攻撃する。
そしてついに魔物は霧散した。
「はぁ・・・はぁ・・・か、勝ちました!」
息を切らせながらも勝利を喜ぶ。
「わたし、お姉ちゃんがいなくても
できました!」
「ああ、そうだな。」
「先輩、ありがとうございました!
なんだかわたし、自身がついた気が
します。」
ぺこりと頭を下げる。
「前はお姉ちゃんがいないと泣き出したり
しちゃってたんですけど・・・そういうの、
もう卒業しなきゃ。だから、先輩も」
「ん?」
「先輩も見ててくださいね。わたし、
成長します。」
学園
校門前
「ふぅ、終わった終わった。」
大きく伸びをする。
「お疲れさまでした! わたし、とっても
楽し・・・あ、勉強になりました!」
「楽しかったって言いかけたろ。まあ
いいけど。」
「あ、あのそれでですね、えっと・・・
これから授業免除なので・・・よかったら・・・」
「秋穂~~!! マイエンジェル秋穂ぉ~!!」
・・・この声は・・・。
「やっぱりおま・・・うお!?」
秋穂に駆け寄ってきた春乃に
思い切り突き飛ばされる。
「わっぷ! お、お姉ちゃん・・・。」
「怪我してない? こいつに何かされてない!?
もし秋穂に手を出したりしたら・・・・
冗談じゃすまさない・・・!!」
ロウを強くにらみつける。
「てめえ・・・!」
鞘に手をかける。
「もう、大丈夫だよ! お姉ちゃん、
見てたでしょ?」
「・・・え?」
「わからなかったけど・・・きっとそう。
わたし、まだまだなんだね・・・。」
「・・・・。」
「でも、平気。お姉ちゃんが心配してくれてるって
こと、わかってる。だから、お姉ちゃんが
心配しなくてもいいように、わたしも強くなるの。」
「・・・秋穂・・・。」
「だからそれまで、見守っててね。」
「秋穂・・・秋穂ぉ!!」
力強く抱きしめる。
「きゃあ! も、もう・・・お姉ちゃんったら・・・。
あ、それでね、ちょっとお願いがあって・・・。」
「なに? 何でも聞く。可愛い秋穂が
頑張るためなら何でもきいちゃう!」
「先輩と一緒に街に出かけたいんだけど・・・。」
「・・・・・・。」
春乃の顔がみるみる変わっていく。
露骨すぎるだろ・・・。
「ど、どうしてかな?」