グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「う・・・うぅ・・・。」
おびえているミナは
うずくまって震えていた。
「まったく・・・・。」
「ミナちゃん、大丈夫?」
「・・・どうしよう。どうしよう。怖く・・・
怖くなんか・・・。」
ぶつぶつと言う。
「大丈夫。落ち着くまでアタシと兄さんが
一緒にいるから。」
「・・・ところで、わっちはおらんのか?」
恋は裏の自分の姿を探す。
「ええ、ごめんなさい、約束を守れなくて。
数日前から東で大規模な戦闘が起きてる。
恋はその戦いに参加してるわ。」
「そうか・・・わかった。では自分に会うのは
またの機会としよう。ミナを呼んでくる。」
そう言って、ミナの元へ向かう。
「・・・あやつは強いのう。」
「ええ。恋はどっちも変わらないわね。
・・・あなたはどうして彼女らと一緒に?」
「・・・話せば、長くなる。もっと先。
ずっと未来の話を、伝えるわ。」
数分後
「・・・・・・。」
「初めまして、風槍ミナさん。」
「わ、我はミナ・フランシス・シルヴィアンド・
ウィンドスピア! 最強の魔法使いだ!」
2人のミナが対面した。
「・・・ふふ、やっぱり私とあなたはまったく
違う歴史を歩んでいるのね。」
「マインドシーカーもアートフィシェ・・・
フォーリンエンジェルのことも・・・
知らないのか? 天文部じゃなかったのか?」
不安そうな顔で聞く。
「ええ、あなたと私では大きな違いがある。
私は天文部の活動はほとんどしてないもの。
実質、なかったも同然。」
「ど、どうして・・・!」
「・・・必要なかったから。」
「で、でもお前は目のことでいじめられたり
しなかったのか!? 恋が、恋がいなかったら
我は今頃・・・」
「・・・私と恋は学園入学前に知り合った。
覚醒したときはすぐそばにいたのよ。誰に
いじめられても、恋と一緒なら耐えられた。
あなたは1人の時間が長い。だからいろいろなものが
必要だったのよ。」
「・・・・・・。」
あまりの違いに黙り込む。
「それに、あなたが言ってるほかの部員は、
そもそも学園にいないし・・・服部梓は
生徒会だったしね。ほとんど話さなかったわ。」
「・・・ぜ、全然違うんだ・・・。」
「でも、よかった。私たちは同じ。それが
わかったわ。」
「・・・え?」
「目、よ。やっぱりあなたも、目のことで苦しんでいる。
でも大丈夫。その目はいずれコントロールできる
ようになる。今の私がそうだから。」
「・・・・うん・・・。」
小さく頷く。
「それに私があなたが羨ましいわ。友達が
たくさんいて。学園にいたとき、私には
恋しかいなかったから。」
「・・・そ、そうだ! 我らは、お前たちを
勧誘に来たんだ! こっちに来ないか?
友達、紹介するから! 円卓の騎士だ!」
「・・・・そうね、紹介してもらえたら、
うれしいわ。でも・・・」
ドォォン!
そのとき、衝撃音が響く。
「!?」
「来栖! 何が起きた!!」
「わけわかんねえ! ちくしょう!
ありゃなんなんだよ!」
「・・・なんだ、あの鳴き声のデカさは・・・!」
「ひぃー・・・一難去ってまた一難・・・。」
梓は肩を落とす。
「くくく・・・まだツキがあるようだ。
ヤツの相手は任せろ。」
つかさは手をポキポキと鳴らす。
「バカヤロウ! 逃げるんだよ! あんなデカい
魔物・・・クソ! ムサシだ!!
今のアタイらで勝てるわけねえ!!」
「・・・あれは・・・あれは先輩たちを
殺した・・・!」
外に出てきた裏のミナは
ムサシの姿に目を大きく開いた。
「パルチザンメンバーはすぐに退去!
あの魔物から逃げて!」
ほかのメンバーに大声で伝える。
「・・・せ、先輩を殺した・・・? なあ!」
ミナは裏のミナの服を引っ張る。
「あんな魔物がいるんなら、こっちに
いたらだめだよ! ミナたちと一緒に表に
行こう!? そしたら、みんな・・・」
「・・・・ダメよ。あなたたちの言う『表』は
私たちの世界じゃないもの。『ここ』を守る。
私は、この世界で育った。だから、そっちには行けない。」
目を閉じ、ミナから顔をそむける。
「でもでも、こっちにいたら死んじゃうじゃないか!」
「あなたにとって、あなたのいる世界は紛れもなく
『表』。私にとってはこちらが『表』。それだけよ。」
「風槍さん! いったん、ゲネシスタワーに
戻る・・・いえ、ここは学園に帰った方が安心ね。
・・・風槍ミナ。勧誘に対しての返事は?」
「私はパルチザン。レジスタンスは魔法使いに
とって最後の希望。私たちがいなくなったら、
この世界は本当に終わり。どれだけ惨めに
破壊されていても、見捨てたくないわ。」
決意した目で答える。
「・・・・そう・・・わかったわ。」
「でも、あなたたちが遊びに来るのは
歓迎する・・・。これを・・・。」
そう言って、裏のミナはあるものを手渡す。
「なんだ、それ?」
「遊佐鳴子先輩が、あなたたちが来たら
渡すようにと置いていったものよ。
『パンドラのキー』が入ってるって言ってたわ。」
「! パンドラ・・・!」
あいつがやりそうなことだ・・・!
「さあ、ムサシが来る。・・・私たちの学園を
破壊しつくした、あの魔物が・・・。悔しいけど、
私たちに戦う力はない。このアジトは引き上げね。」
「・・・また、来るわ。なんとしても。」」
「その時まで、生き残ってられたらいいけどね。
里中先輩も亡くなったわ。」
「・・・・。」
『いや、そっちには行けねえべ。こっちにも
守らねばなんねえもんがあるすけな。』
ロウは第8次侵攻時の裏世界に行ったときの
花梨の言葉を思い出した。
「・・・・そうか・・・。」
「あの人がいなくなったことで、パルチザンは
少しガタが来ている。さら1人では、長いこと
耐えられないかもしれない。」
「すぐに来る。そして、あなたたちを連れていく。
だから、絶対に生き残ってて。」
「・・・さっき言った通り、遊びに来るのは
歓迎するわ。これ以上近づかれると逃げられなくなる。
急いで。」
ロウたちは急いで学園に戻ろうとする。
「あ! ・・・えっと、か、風槍、さん・・・。」
「・・・なに?」
「・・・また、来るから! だから、目の使い方・・・
教えて・・・。」
徐々に声が小さくなる。
「・・・もちろん、教えてあげるわ。」
ほほえみながら答える。
「恋やさらや、ありす・・・聖奈さんやももさんにも
会わせてあげる。ほかのレジスタンスのメンバーにも。」
「・・・うん!」
嬉しさを浮かべた顔で大きく頷いた。
「・・・いいのか?」
「うん。いい。たくさん話したから。
それに・・・また来るから。」
「・・・よし、次はわっちに会いに来よう。
わっちはそんなに変わらんらしいからな。」
「そのときは円卓の騎士を連れてくるぞ。
紹介してやるんだ。我にはこんなにたくさんの
仲間がいるってな。」
「うむ。では・・・まずは、生きて帰るか。」
ゲートをくぐり、表の学園に帰っていった。
「・・・アイラの話・・・私たちの、全滅の
話・・・避けられようもない運命・・・か。」
裏のミナは諦めたような顔を浮かべる。
「・・・いえ、もう運命は終わっているはず。なぜなら
私たちはそのことを知った。レジスタンスは
全滅させない。たとえ・・・たとえ・・・・
世界を敵に回そうとも、私たちは
戦い続ける・・・・・・!!」