グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
逃げた兎ノ助を追いかけたロウたち
だったが、その先を魔物が立ちふさがった。
「く・・・!! つぶしてもつぶしても
湧いて出てくる! この魔物はなんなんです!
弱いくせに、私たちの前に立ちはだかる!」
「まったくだ・・・くそ・・・!」
ロウとイヴは何度も攻撃するが
周りの魔物が次々と出てくる。
「それに・・・なぜこの魔物は同じ姿を
してるんです!」
「元の兎ノ助と同じか・・・うっかり
本物を倒しちまいそうだな・・・。」
「冬樹先輩~、いらいらしないでくださいぃ~。」
「イラついてなど・・・いません!」
イヴはちひろをキッとにらむ。
「せ、先輩~。冬樹先輩が怖いですぅ~・・・。」
まあ七喜の言う通りだな・・・。
ピピピピピ!
「ん?」
ロウのデバイスが鳴る。
「俺だ。・・・宍戸か、どうした?」
『ロウ君、一度2人を連れて戻って。』
「一応聞くが、なんでだ?」
『あなたも理由はわかるでしょう。
ここにいる魔物は兎ノ助と同じ。外見での
判別は困難よ。』
「俺も同じことを考えていた。ようは
ここはいったん退いて、作戦を練るんだな?」
『ええ。』
「・・・了解。」
通話を切る。
「冬樹、七喜。いったん戻るぞ。宍戸から
連絡が来た。」
「く・・・!!」
聞こえていないのか、そのまま
攻撃している。
「せ、先輩・・・。」
「ったく・・・『ROOM』!
『シャンブルズ』!!」
イヴを魔物から引き離す。
「! ロウさん!」
「冬樹、いったん戻るぞ。お前も
わかってるだろ。こいつら・・・」
「ふ、冬樹せんぱぁい・・・うさちゃんの服、
持ってきましたぁ~・・・。」
びくびくしながら、兎ノ助の服を
持ってくる。
「兎ノ助さんの服を?」
「魔物はどうだった?」
「それがですねぇ・・・こっちを見てるだけでぇ
それだけでしたぁ・・・。」
「・・・あの魔物たち・・・襲わない・・・。
・・・まさか。」
「ああ、あいつら、兎ノ助を守ってるの
かもな。」
<ロウ、イヴ、ちひろ、移動中>
兎ノ助を見つけられなかったロウたちは
一度、宍戸たちと合流した。
「時間がない。手短に話すわ。双美さん、地図を。」
「は、はいぃぃ・・・。これです。ええと、
実は魔物が私たちをですね・・・完全に
取り囲んでまして。それなのに全然攻撃してきません。」
「・・・先ほど、馬鹿げた答えが頭に
浮かびました。それとは、別の答えを聞ければ
いいのですが。」
続けて卯衣が説明する。
「私たちがある方向に進む意思を見せた場合、
攻撃してくると考えられる。ここに立っている状態を
継続、もしくは出口の方向に移動する場合は無反応・・・。」
「そ、そのある方向ってぇ・・・。」
「兎ノ助がいる、と思われる方向よ。すでに
位置はわからないけど。」
「・・・魔物に、協心戮力の性質があるとは
聞いたことがありませんが。」
「きょうしん・・・・りょく?」
聞きなれない言葉にちひろは
首をかしげる。
「
合わせて協力するってことだ。」
「へぇ~。」
ロウが軽く説明する。
「復元された私のデータにはいくつかの例外が
あります。1つ。ガーディアンのように何らかの
命令が与えられている場合。2つ。モンスターである場合。
そして3つ。それ以外のなにかしらが原因の場合。」
「・・・その3つ目はいいんじゃねえか?」
「原因がはっきりしないのよ。だけど、私たちは
すでに3つ目の例を知っている。七枷教会にいた
天使たち。あれは今回の件とよく似ている。」
「・・・あれか。」
こうも早くそんな事案とはな・・・。
そのころ
「・・・どう? メノコ姉さん。何か聞こえるかな。
いつもみたいに・・・どの道を行けばたどり着けるか
わかる?」
七撫はメノコに兎ノ助の居場所を
探らせていた。
「・・・自然じゃないとやっぱりだめかな?
・・・!」
急にメノコが反応した。
「もしかして、わかるの!? さすが私の
姉さん! 早く、みんなに知らせなきゃ!」
ロウたちはいまだ動けずにいた。
「七枷教会の魔物たちは、聖ヴィアンネの
手記を守っていた。人間には目もくれず、手記を
奪い取ろうと行動していた・・・と報告されている。」
「・・・まさか、魔物がそんなことを・・・
魔物が意思を持つとでもいうのですか。」
イヴは結希に詰め寄る。
「兎ノ助は魔物だけど、意思を持っているわ。」
「みなさん!」
七撫が呼びかける。
「兎ノ助さんの居場所が分かりました。」
「本当か。」
「メノコ姉さんが感知できました。方向と距離。
さすがに群れの中から発見することは難しいですが・・・。
どの群れにいるかはわかります。」
「・・・そ、そのサボテンは魔法なんですか?」
心がおそるおそる聞く。
「いえ、姉さんはモンスターです。」
「そ、そうだったんですね! 的外れなことを
お尋ねしてしまいました・・・!」
「魔物はある程度、互いを知覚できる。それは
研究で分かっているわ。でも、特定個体を
離れたところから識別することができるの?」
「はい。ソナーのように各個体の差異を検出できる。
それが姉さんの得意魔法、でした。そのときに
比べて、精度は落ちますが・・・。」
「・・・・。」
ロウは怪しむ目で七撫のそばにいる
メノコを見る。
「とにかく、姉さんが彼の居場所を知っています。
ついてきてください。」
<ロウたち、移動中>
「なんだか、あのサボテンさん・・・ほんとの
お姉さんみたいですねぇ~。えっと、
この先にうさちゃんがいるんですよねぇ?」
「魔物はずっと、私たちを取り囲んでいる。
私の知覚では、兎ノ助だけを見分けることはできない。」
「じゃあ、浦白さんだけがたよりなんですねぇ~・・・。」
「ロウ君。」
「ん?」
「間違って兎ノ助を攻撃しないように注意いないといけない。
魔力の過剰補給で威力が上がりすぎないように、
調整したほうがいいわ。」
「わかってるよ。」
ったく、面倒なことしてくれやがって・・・。
「そうですねぇ。わたし、まだ魔法は
ヘタヘタさんですし・・・。」
「私と冬樹さんが戦うから、後方からの
支援を要請するわ。兎ノ助を探すことに集中して。」
「は、はいぃ! わたし、がんばりますぅ!」
「・・・これはクエストだから・・・クエストだから
絶対に達成する・・・。」
イヴは小声で自分に言い聞かせる。
「なに、ぶつぶつ言ってんだよ。」
「! ・・・あなたには関係ないでしょう。」
ぷいっと顔をそむける。
「別にお前の気合い入れにどうこう言う気は
ねえけど、ストレスたまるだろ。」
「一体、何が言いたいんですか?」
「・・・これは、瑠璃川のほうにも言っておいたことだ。
一度しか言わねえから、よく聞け。」
「・・・・・?」
「・・・俺のようにはなるな。」
「・・・・はい?」
「さて、とっととあの迷惑ウサギ探すぞ。」
ロウはスタスタと歩いて行った。