グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

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第138話 兎ノ助への叫び

「く! 兎ノ助、出てきなさい!!」

 

痺れを切らしたイヴが

魔物に向かっていく。

 

『ギィ! ギィ!』

 

そのイヴの行く手を無数の魔物が阻む。

 

「あなたちが・・・兎ノ助を守っていようと

 いまいと、どうでもいい! 返してもらうわ!

 兎ノ助! どこにいるの!」

 

叫びながら進んでいく。

 

「まったく・・・。」

 

「ふ、冬樹さん! 大声を出しては魔物を

 刺激してしまいます!」

 

七撫も後を追おうとする。

 

「待って。あなたの姉さんはこの集団の中から

 兎ノ助を見つけられる?」

 

「・・・・それは・・・・。」

 

答えに困る。

 

「呼びかけるしかない。冬樹さんの

 やり方は正しい。・・・兎ノ助!

 学園に戻るわよ!」

 

「うさちゃぁん! わたしが、お洋服

 持ってますよぉ~!」

 

「う、兎ノ助さぁん! 私、もう謝りませんからぁ!

 兎ノ助しゃんに言われたこと、ちゃんと

 守りますからぁ!」

 

「・・・兎ノ助・・・あなたが必要とするなら、

 私の組成情報を伝えるわ。あなたは・・・

 私と同じ。」

 

結希、ちひろ、心、卯衣も

叫びながら、進んでいく。

 

「・・・皆さん・・・。」

 

「さて、俺も行くかね・・・。」

 

「あ! ろ、ロウ君!」

 

「心配するな。策はある。」

 

ロウはにやりと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兎ノ助! 隠れているなら、力づくでも

 引きずり出します!」

 

イヴは叫び続けるが、兎ノ助は

姿を現さない。

 

「兎ノ助! ・・・! ロウさん!?」

 

「んなんじゃ、あいつは出てこねえよ。」

 

「だ、だったらどうすれば!」

 

「・・・こうすんだよ。」

 

そう言って、魔物の集団の中に

進んでいく。

 

「・・・・・。」

 

鞘から刀を抜く。

 

「『ROOM』!」

 

青いサークルを出現させる。

 

「・・・まさか!」

 

『ギィ! ギィ!』

 

魔物がロウに襲い掛かる。

 

「いけない! 早く下がりなさい!」

 

「いつまでこんな茶番やってんだよ・・・!」

 

「ロウさん!」

 

「出てこい!! 兎ノ助ぇ!!」

 

「・・・・や、やめろ!!」

 

魔物の攻撃が途中で止まる。

 

「もう、もういい・・・悪かった・・・。」

 

隠れていた兎ノ助が姿を現した。

 

「やっと出てきたか・・・・。」

 

「ロウ・・・自分を餌にするなんて、卑怯じゃねえか・・・

 君は戦えないんだ! 魔物の前にはあまり出るなって

 教えられてるだろうが!!」

 

「何が君、だ。気色わりぃ。」

 

「う、兎ノ助・・・さん・・・ロウさん・・・

 あなた、わざと・・・・・・。・・・兎ノ助さん。

 帰りますよ。」

 

「お、お前らなぁ! 俺は苦しんでるんだぞ!

 ずっと、機械だって思ってたんだ。正義の魔法使いの

 意識を移植された機械だって・・・それなのに・・・

 本当はこんな姿で・・・・・・魔物だったんだぞ!」

 

兎ノ助は下を向き、体を震わせる。

 

「・・・痛みだって感じるはずさ。なにが

 幻肢痛だ。体、あるじゃねえか・・・。」

 

「・・・兎ノ助、悪いがんなこと知ったことじゃ

 じゃねえんだよ。お前が何を言おうと、

 学園に帰る。それが、クエストだからな。」

 

「ちったぁ俺の気持ちも考えろよ! 魔物だぞ!?

 よりによって、魔物なんだぞ・・・ほかの

 なんでもねえ、魔物なんだ・・・!!」

 

「兎ノ助!」

 

結希が合流する。

 

「結希! てめえ、知ってたんだろ!? ずっと

 黙ってたんだろ!?」

 

「・・・・・。」

 

「なんでだよ! それが一番嫌だったんだ! なんで

 言ってくれねえんだ! 俺を何かの実験台にして

 ずっと観察してたんだろ!!」

 

「兎ノ助、話を聞いて!」

 

『ギィ! ギィ!』

 

魔物が攻撃を仕掛けようとする。

 

「!? 来る!?」

 

攻撃にイヴは身構える。

 

「やめろ! 俺の生徒に手を出すんじゃねえ!」

 

『ギィ・・・ギィギィ・・・』

 

兎ノ助の言うことを聞き、

後ろに下がっていく。

 

「わりぃ・・・匿ってくれたのはうれしいけどさ。

 お前たちが、なんて言ってるかわからねぇんだ。

 ・・・俺は・・・魔物にも・・・なれねぇんだな・・・。」

 

兎ノ助の声は徐々に弱くなっていく。

 

「・・・兎ノ助。黙ってたことは謝る。けれど・・・

 いえ、言い訳はやめるわ。」

 

小さく息を吸う。

 

「私たちはあなたを観察していた。それはあなたが

 『UNO』だったから。たった一例の、きわめて

 希有な例だったから。」

 

「ふぅん・・・あっそ。」

 

力なく返事する。

 

「あなたは、まちがいなく人間だった。

 ()()()()()()()()()()。あなたの

 本当の名前は、倉橋清太郎。第3次侵攻で死んだ

 魔法使い。」

 

「・・・倉橋、せいたろう・・・ど、どういうことだよ!」

 

「私も聞きたい。無念のうちに死んだ人間が魔物に

 なるという人類根源説。それが、正しかったという

 ことですか?」

 

「いいえ。それは正確じゃない。詳しくは学園に

 帰ってから話す。とにかく・・・あなたは

 人間。少なくとも、人間の心を持っている。

 モンスターの中でも特別なUNO。そして、

 学園の進路指導官よ。」

 

にこりと笑う。

 

「・・・・・・・・・・・。

 結希、お前・・・・。」

 

「うさちゃぁ~ん!」

 

「兎ノ助しゃ~ん!」

 

ちひろと心も駆けつける。

 

「よかったですぅ・・・無事でよかったですぅ・・・。」

 

「ごめんなさいぃ~! 私が、私が

 だめだから・・・。」

 

「お、おいお前ら・・・俺、こんなだぞ・・・。」

 

自分の姿を指さす。

 

「てか、双美。お前もう謝らないって言って

 なかったか?」

 

「はっ! す、すみませんすみません! もう

 2度と謝りませんから! だからいなくならないで

 くださいぃ!」

 

「・・・だから、俺、こんなんだぞ・・・。」

 

「私たちはずっと、あなたの指導を受けてきた。

 あなたがどんな兎・・・人か、良く知っているつもりです。

 その私たちが問題ないと考えるなら、それで

 いいではありませんか。」

 

「・・・イ、イヴ、、お前・・・・。」

 

「つまらないことを言いました。私は

 戻ります。あなたが来なければクエスト失敗です。

 そうなったら、許しませんから。」

 

すたすたと歩いていく。

 

「兎ノ助。七喜さんがあなたの外装を所持している。

 気になるなら着て。このまま私が学園まで

 連れて帰るから。」

 

「・・・・卯衣・・・お前まで・・・。」

 

「約束する。こうなった以上、もうあなたに隠し事

 なんてできないから。学園で私の帰りを待ってて。

 いいわね?」

 

「・・・・わ、わかったよ・・・学園に、帰る。」

 

震えた声で答える。

 

「とりあえず・・・聞くよ。話はそれからだ。

 あと・・・できたら、ここの魔物、これ以上は

 そっとしておいてくれねーかな。話はわからねーけど

 ・・・助けてくれたんだ。」

 

「・・・・・・。」

 

「あ、いや、やっぱだめだな。うん・・・・

 グリモアの指導官なのにな。」

 

「いいえ。今はそっとしておくわ。この魔物たちが

 成長して人々に危害を加えると判断したら、

 そのときは討伐する。」

 

「・・・ああ、サンキュ。恩に着るよ。

 ・・・・ロウ。」

 

「なんだ?」

 

「・・・もう、あんなことやめろよ?」

 

「あんなこと?」

 

「さっきのだよ。俺、ああいうの見ちゃ

 いられねえんだ。」

 

「・・・だからやったんだよ。」

 

小さい声でつぶやく。

 

「え?」

 

「ほら、とっとと帰るぞ。冬樹の言う通り、

 帰ってこなきゃただじゃおかねえぞ。」

 

「お、おう・・・。」

 

・・・その前に、あれ回収するか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜

 

「・・・さてと・・・。」

 

ロウはパソコンを起動させ、

クエスト開始時に仕込んだあるものを

差し込む。

 

「・・・よし、会話は録れてるな。」

 

ロウが仕込んでいたのは盗聴器だった。

 

「・・・・・・・。」

 

ロウは静かににやりと笑った。

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