グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「ミス・マドカノ。ロンドンは楽しめて
いるか。」
「ははは、はい! レティシアセンパイの
おかげでそれはもう!」
深々と頭を下げる。
「センパイ?」
「はい! センパイです! 大大大センパイです!」
「言葉の意図を理解しかねる。ダイダイダイセンパイとは?」
「ものすごくすごいセンパイっていう
意味です!」
「ふむ・・・とりあえず、覚えておこう。」
「わ~! みんな、いいところにいたッス!」
2人が話していたところに梓が
駆け寄ってくる。
「服部か。どうした?」
「匿ってください! お願いします!」
「何事だ! 魔物か!?」
「しー! しー! 違うッス!」
梓がロウの後ろに隠れると
大勢の人が騒ぎながら、ロウたちと
すれ違う。
「なんだ・・・?」
「・・・・・。」
「服部センパイ・・・?」
「行ったッスか? よしよし。」
何度も周りを見ながら、ロウの背中から出る。
「ふ~、こんなに人気出ちゃうとは思わなかったッスよ。」
「どうしたんだ? あれだけの数に追い回されるとは。」
「いやあ、街中で忍術を披露してたら、ウワサに
なっちゃって。いっぺん気づかれると、
囲まれちゃうんス。まいったまいった。」
「えぇ? すごいじゃないですか! ヒーローみたいで
羨ましいです!」
「羨ましいって、真理佳っちはもー・・・ん?
そうだ、人気者になりたいなら・・・」
にやりと笑う。
「ニンジャヒーローとして、自分の代わりに
目立っちゃってくださいよ!」
「ニンジャヒーロー!? 僕が!?」
「・・・ニ、ニンジャ、ヒーロー・・・!?」
隣で聞いていたレティシアは
わなわなと震えていた。
「簡単な忍術教えますんで、これ道端で
やれば大ウケッス。名前を売るチャンスですよ、
真理佳っち!」
真理佳の背中を強くたたく。
「ホントですか!? やります! 教えてください!」
「よっしゃ! じゃあ早速、あっちのほうで
教えますよ!」
「ま、待て! わ、私にもご教授願いたい!」
「・・・なんだこれ。」
<梓、真理佳に伝授中>
「よしよし・・・あ、先輩。」
「ん?」
梓は手招きしてロウを呼ぶ。
「ちょっと背中貸してください。いや~、
先輩の背中、広いッス~。男らしいッス~。」
「・・・?」
何がしたいかわからず、首をかしげる。
「・・・今通った人、どっちの道行きました?」
「は? それなら、左に行ったぞ。」
「どもッス。一瞬失礼!」
そう言って、すぐに姿を消し、
そしてすぐにロウのもとに戻る。
「ただいま~ッス! いや~すみませんねぇ、
ホント。あ、先輩! あっちにケバブありました
ケバブ!」
「・・・おい、服部。何隠してんだ?」
「な、なんスか~。別に怪しいことしてませんって。
あ! ケバブ食べませんか!? い、今です、今!」
「んじゃあ、買ってきてもらおうか。」
「そ、それでは行ってくるッス!」
再び梓はロウの前から消える。
「ただいま~ッス! ちょっと時間かかっちゃって。
・・・えーと、なんだっけ・・・。」
「・・・ケバブは。」
「あ! ・・・へ・・・へへ・・・。」
「一体何やってるんだ? 服部ぃ・・・。」
手をパキパキと鳴らす。
「い、いやあなんにもしてないッス! ほんと!」
「・・・・・。」
「あ、危ないことには首突っ込んでないんで!
信じてくださいよ~!」
「そうやって取り繕ってる段階で怪しいだろ。
さぁて、ゆっくり話聞かせてもらおうじゃねえか。」
「・・・うう。先輩なら見逃してくれるかなって
思ってたのに。」
ひるんだ梓は静かに正座する。
「で、一体何をしてたんだ?」
「えーと・・・まあ、あれです。」
「ふざけてんのか。」
「ち、ちち、違うッス!」
慌てて手を振って否定する。
「い、一応、自分本職が忍者じゃないですか。忍者ってのは、
ほら。先輩もご存知の通り、スパイとか伝達でしょ。」
「それがどうした。」
「ど、どうせイギリス来るんなら、ねぇ?」
ちらちらとロウを見る。
「何個か現地の調査任務とか届け物とか、
請けといたほうが得じゃないすか。」
「・・・なるほど。大体話が読めたぞ。
要するに仕事の数が多すぎて捌ききれなくなったんだな?」
「そ、そうとも言うッス・・・。」
「まったく・・・。」
「・・・あ~・・・言っちゃった・・・。
・・・手伝って、くれます?」
「仕方ねぇやつだ。けど、その前に・・・
おい、我妻。」
懐からピンク色の財布を取り出す。
「はーい、先輩。・・・あっ、それって。」
「お前の財布だ。さっき通った男に
スられてたぞ。」
財布を手渡す。
「あ、ありがとうございます!」
「ロウさん。」
「ん、月宮。」
「服部さんのお手伝いをさせるのですか?」
「ああ、めんどうだけどな。」
大きく欠伸をする。
「あまり危険なことは、お控えくださると
安心なのですが。」
「まあ、あいつならその心配は・・・・・
ほぼ、ないだろ。」
「ええ、承知しています。ですが、それ以前に
イギリスはライ魔法師団の本拠地。ロンドンも
魔物の襲撃があったばかりで、まだ落ち着かない状態です。」
「その辺は問題ない。これ見てみろ。」
何枚かの紙を見せる。
「・・・浮気調査に・・・迷子の猫探し・・・・
調査事務所の下請け・・・。」
「ほとんど便利屋みたいな仕事だ。」
「なるほど、服部さんの周辺も、なかなかに
大変そうですね。私にお手伝いできることがあれば、
お申し付けください。」
「悪いな。」
「いいえ。初音様に比べれば、大人しいものですわ。」
「くく・・・確かにそうだな。」
ロウは静かに笑った。
「よぉーし、いくぞ! ウィンディー、パワー、
チャージ!」
真理佳はそう叫ぶと見に来ていた周りの
1人の子供の脇をくすぐる。
「こちょこちょこちょ!」
「キャー! キャハハ!」
「随分と人気者になったもんだな。」
ロウはその光景を少し離れたところから見ていた。
「アイダ。ミス・マドカノの歳はいくつだ?」
「なんだ急に。たしか、俺の1個下だから
16だな。」
「!? 私とそう変わらんではないか。
それにしてはずいぶんと・・・。」
レティシアは真理佳をじっと見る。
「?」
「エミリアも道端の子供によく話しかけてはいた。
しかし、あれはまるっきり少年同士の掛け合いでは
ないか・・・。」
「・・・ほめてんのかどうかわかんねぇな・・・。」
「おっ、やるかー!? このウィンディーガールが
相手だー!」
「キャハハハ! ニンジャガール! イッツファニー!」
「・・・子供たちに気に入られているようだな。」
穏やかな笑みを浮かべる。
「しかし、年頃の淑女があのようにバタバタと
走っては・・・・うん?」
レティシアは何かを見て、目を細める。
「どうかしたか?」
「すまない、知人があちらにいるようだ。
少しの間、失礼する。」
静かに頭を下げる。
「あ、ああ・・・。」
ったく、妙に律儀だな・・・。