グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
「はあぁ・・・さ、さすがに
疲れたかな・・・。」
「ミス・マドカノ。少しいいだろうか。」
後ろにスーツの男を連れた
レティシアが話しかける。
「は、はい! えっと・・・・
そちらの方は?」
「私の知人だ。そこで偶然出会ったのだが、
貴嬢のことを見ていたそうでな。
『貴嬢にインスピレーションをうけた。ぜひ
協力してほしい。貴嬢をモデルにしたニンジャ・ヒーローを
わが社で展開しないか。』・・・だそうだ。」
「・・・・・・? ・・・・え?」
あまりの驚きに声が出ない。
「彼はおもちゃ会社の社長だ。一時期アメリカで
ヒーローのプロデュースをしていた。信用に足る男だ。
今後ヒーローとして育成するためのバックアップも
可能だそうだ。」
「あ、あの・・・? これ、ど、ど、どういう・・・
・・・・・ええええええ!?」
真理佳の大きな叫びがこだました。
「すっごいじゃないですか! 真理佳さん!
チャンスですよ!」
聞いていた浅梨が駆け寄ってくる。
「で、でも・・・グリモアを卒業するまでは
ほら・・・」
「ネテスハイムに留学、あるいは編入するならば
可能だ。」
「うっ・・・・。」
「それって・・・・え? 真理佳さん、
転校しちゃうんですか?」
悲しそうな顔で真理佳を見る。
「ま、まだそうするって決まったわけじゃないよ!」
「彼は若いが信頼できる。あとは貴嬢次第だ。」
「・・・ですよね・・・。」
「ミス・マドカノはジェイソン・デラーに憧れているとか。
彼の生まれたこの国で学ぶのも、きっと貴嬢のために
なるだろう。そのときは私が完璧なクイーンズ・
イングリッシュを叩き込んでやろう。」
「わぁ、いいなぁ真理佳さん! 私も
教わりたいです!」
「・・・・・。」
「・・・真理佳さん?」
浅梨は真理佳の顔をのぞきこむ。
「迷う理由はない・・・んだけど・・・・・
でも・・・・」
「真理佳さん・・・わかります。みんなと
離れたくないですよね。」
「・・・・・うん。」
静かに頷いた。
「・・・イギリス・・・ロンドン・・・・
ネテスハイム・・・コズミックシューターの
生まれた国・・・。」
「マリカー! プリーズショウミー!
ウィンディチャージ!」
たくさんの子供たちが真理佳の
服を引っ張る。
「わっ。ご、ごめん。僕、もうそろそろ
帰らなきゃ・・・。」
「ノーーー!」
「そんな顔されたら・・・・うぅ、困ったなぁ・・・。
・・・・・でも・・・・。」
「ふぅ、これで全部終わりか。」
「いやぁ、もう終わんないかと・・・先輩が
手伝ってくれて助かりました。あ、それと
これ。」
梓は茶色の封筒を差し出す。
「ん?」
「先輩、こっそり自分の依頼も混ぜてたでしょう?」
「バレたか。まぁ、いいじゃねえか。
俺も手伝ったんだから。」
「・・・まっ、いいっすよ。」
ロウは封筒を受け取る。
「てか、お前がこんなに依頼受けなきゃ
よかった話だろ。」
「あはは・・・つ、次から安請け合いには
気をつけるッス。・・・ん?」
「どうした。」
「あそこにいるの真理佳っちじゃないですか?」
そう言って、真理佳を指さす。
「ああ、ほんとだ。しかし、ずいぶんと
人気者になったもんだな。」
「・・・ごめんね。僕、やっぱり帰らなきゃ。
日本でいっぱい勉強して、強くなって・・・
きっとまた、本当のヒーローになってイギリスに
来るからね。約束!」
1人1人の子供たちと指きりをしていく。
「・・・大きな転機だったと思うが・・・日本人は
時折理解不能だ。」
「なんかあったんスか?」
「ミス・ハットリ。ミス・マドカノに忍術を
教えたのは貴嬢であろう。ミス・マドカノは
まだ日本で学びたいとのこと。・・・やはり、貴嬢の
忍術はそこまでの価値があるということか?」
徐々に梓に迫る。
「ほぇ?」
「噂は聞き及んでいる。東洋の神秘、ニンジャの末裔、
ハットリ。ニンジャは・・・その・・・なんだ・・・
カミカゼを起こしたり、大きなカエルを召喚するのだろう!?」
「ええ!? ないない! ないです!」
んなもん漫画だけに決まってんだろ・・・・。
「事情は理解している。秘伝であるがために、真実を
伝えられないのだな。ならば、1つ提案がある。
我らが信用に足る存在であればよいのだろう?」
レティシアは両手で梓の手をとる。
「我がネテスハイム、ひいてはグレートブリテンの
さらなる発展のため・・・ニンジャビレッジと
学術交流協定を結ぼうではないか!」
「ひぇ!? そ、そういうことはちょっと里の
ほうに聞いてみないと・・・!」
「む・・・そうか。一個人の意志では決められないのだな。
ならば特別講師として、ネテスハイムに貴嬢を招く
ことは可能か!?」
・・・ぜんぜん諦めてねぇな・・・。
「ななな、なんでそんなに前のめりなんスか!?
・・・自分、なんかしましたかね?」
「さぁ? まっ、俺はそろそろ戻る。
じゃあな。」
「ちょ、せ、先輩!? せんぱ~い!!」
その後、時間は経ち・・・
公園
「・・・・・・・・コーデリア・・・・
すまなかった・・・。」
レティシアは公園のベンチに腰掛け、
目を閉じている。
「私が至らなかったばかりに、卿を死なせることに
なってしまった。・・・・・・・くくく。
偉そうにしているが、グリモアなしでロンドンを
守りきれたか?」
自嘲気味に笑う。
「ロンドンを守るプランを作ったと息巻いていたが・・・
あれは果たして使い物になるものだったろうか?
・・・・わからんのだ。だが私は父を真似るしかない。
父のような生き方が正解だと信じるしかないのだ。」
力なくうなだれる。
「・・・ふふ。卿が逃げないのをいいことに、
愚痴を言ってしまったな。許せ。
・・・・・! 誰だ! そこにいるのは!」
「・・・ま、待て。俺だ俺!」
ロウが両手を上げながら出てくる。
「・・・貴殿は・・・ミスター・アイダ。盗み聞きとは
大したジェントルマンだな。」
「んなつもりはなかったよ。そろそろ飯の時間
だったから、呼びに来たんだよ。」
「・・・夕食のために探しに来たのか。すまない。
貴殿に気づかず、独り言を言っていた私が悪かったな。」
「まったくだ。」
ロウもベンチに腰掛ける。
「てか、なんで日本語だったんだ? それなら
俺に聞かれずにすんだろ。」
「ふふ、ネテスハイムの生徒に聞かれてもいいようにだ。
まさかグリモアの生徒に聞かれるとは思っていなかった。
・・・もし、貴殿に誠実さがあるなら、先ほどの
ことは忘れてくれ。」
「・・・安心しろ、誰にも言うかよ。」
「・・・すまない。あれはただの弱音でな。
・・・日本にいる間、エミリアをよろしく頼む。」
「ブルームフィールドを?」
「ああ。エミリアが貴殿に信頼を寄せているのは
わかる。イギリスにいた2か月間、よく貴殿が
話題に上がっていたからな。」
「・・・・・・。」
ロウは若干照れくさそうに頭を掻く。
「まだエミリアはこちらに帰国するつもりはないだろう。
だから、よき友人となってくれ。」
「・・・ああ。」
「・・・別れの前夜だ。エミリアを誘って、
外で食べるか。貴殿もどうだ?」
「んじゃあ、お言葉に甘えるとするか。」
ゆっくりと立ち上がる。
「・・・すぐに会うかもしれんがな。」
レティシアは小さい声でつぶやいた。