グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
第148話 人影
「ふわあぁ~あ・・・・。」
授業のほとんどを寝ていたロウは
大きな欠伸をする。
「ロウ! ここにいたか!」
「会計か。どうした? そんなに慌てて。」
「突然で悪いが、クエストの要請が出た!
私とともに、霧を払いに行くぞ!」
「お前がそこまで慌ててるってことは、
それが重要だってことだな?」
鋭い目で聖奈を見る。
「ああ、生徒会の案件だ。場所は科研。霧の護り手の
攻撃で破壊されつくしたが・・・そこにライの
魔法使いがいたという情報が入った。」
「! ライが?」
「ライ自体はもういないが、操作されていた魔物が
いる。探し出し、討伐する。極めて重要な
クエストなのは間違いない。」
「・・・そう言われちゃあ、仕方ねえな。」
軽く伸びをする。
「では早速出るぞ。私のポリシーは
『金を数えるが如く』だ。」
眼鏡をクイッとする。
「さっさと済ませるぞ。」
<ロウ、聖奈、移動中>
魔導科学研究所
「今回のクエストだが・・・生徒会の案件ということは
通常の魔物より強いということだ。気を抜くな。」
「まあ、だろうな。」
そう言って、持っている刀を
腰に掛ける。
「前にも言ったが、会計の仕事も討伐も本質は同じだ。
金を数えるが如く、迅速に、正確に、慎重に。
それさえ守れば、よほどの強敵でない限り負けない。」
前を見てキリッと睨む。
「んなことはわかってるっての。だがな・・・」
「お前が多くのクエストを経験していることは
わかっている。実力も過小評価はしない。だが、
過大評価するなよ。」
「・・・・・・。」
「そうすれば、お前はもっと重要な
人間に・・・・・ロウ?」
「・・・・・・。」
ロウは目を閉じ、何かを考えていた。
「ロウ!」
「! な、なんだ?」
はっ、となり目を開ける。
「私の話を聞いていたか?」
「あ・・・わりぃ、聞いてなかった。」
「まったく・・・。」
あきれ、ため息をつく。
「それで、何を考えていたんだ?」
「いや、思い出してたんだよ。昔のこと。」
「昔・・・?」
「・・・なんでもねぇ。んじゃあ、
とっとと行こうぜ。」
スタスタと歩いていく。
「・・・・・。」
<ロウ、聖奈、移動中>
「さて・・・魔物はどこにいるだろうか。」
デバイスを取り出す。
「見えている位置は・・・あまりあてに
ならんな。」
「まるで迷路だな。まぁ、霧があるから
当然か。」
ロウもデバイスで確認する。
「雑魚との戦闘が多くなりそうだ。戦いは
私に任せておけ。少し大盤振る舞いするから、
適宜、魔力の補充を頼む。」
「ああ、了解した。」
「ほとんどは羽を使うまでもない相手だが、
念のためだ。全力で行くぞ。」
そう言ったそばで2人の前に
多数のコイン型の魔物が行く手をふさぐ。
「まずはそこからか・・・。『ROOM』!」
青色のドームを出現させる。
「さぁ、戦闘だ。あまりお前とは連携の
訓練をしたことはないが・・・うまくやれよ。」
「ああ。『ラジオナイフ』!」
魔物を一気に切り裂く。
「はぁ!」
聖奈が指をパチンと鳴らすと
魔物が光の輪によって捕獲され、霧散する。
「『タクト』!」
地面をトゲ状に隆起させ、魔物を攻撃する。
「・・・! 『シャンブルズ』!」
魔物の攻撃が迫っていたので
ロウと聖奈が入れ替わる。
「くらえ!」
光で槍を作り、攻撃する。
「・・・よし、これで片付いたな。
先へ進むぞ、ロウ。」
「了解。」
にやりと笑った。
<ロウ、聖奈、移動中>
「そういえばロウ・・・こんな仮説、というか
噂話を知っているか?」
「噂? なんだ、それ。」
「前線の兵士たちによるフォークロアだ。よくある
ことだな。・・・最近、魔物に知能がついてきている
そうだ。」
「魔物に知能・・・?」
首をかしげる。
「ああ。まるでこちらの動きを読んだように
回り込む。人間よりも兵器を優先して攻撃する。
コミュニケーションをとっているかのような
うなり声を上げる。」
まさかそこまでとはな・・・・。
「今に始まったことじゃない。昔からずっと、
この手の噂は絶えない。霧の魔物は得体のしれない
化け物だ。ただの獣ではないからな。」
「そうなってくると、知能があってもおかしくは
ないってことか。」
「ああ・・・・・これまでは話半分だった。
だが・・・・今は、私もそうではないかと
思っている。・・・む?」
聖奈はデバイスの画面をにらむ。
「? どうした。」
「デバイスに表示されている、魔物の動きを見てみろ。」
「・・・・! これは・・・。」
魔物の表示が2人を挟むように移動しているのが
表示されていた。
「どうやら、こちらの動きがわかっているようだ。
そして、こちらの強さも。ここが重要だ。」
「確かに、ふつうなら人間を感知したら
襲い掛かってくるはずだからな。」
「値踏みしているのか、罠にはめようとしているのか・・・
どちらかはわからないが、とにかく何かを
狙っている。人型でもないのにこんなことをするなど、
ただごとではない。」
そう言って、デバイスをしまう。
「出発前に気を抜くなと言ったが、訂正する。
注意しろ。」
「ったく、面倒になってきたな・・・。」
「そう言うな。ひとつ間違えたら大けがでは
すまないかもしれん。」
「・・・・そろそろ来るな。」
そう言うと、2人の背後から
魔物が襲い掛かる。
「『ROOM』! 『シャンブルズ』!」
青いドームが張られ、2人の位置を入れ替える。
「はぁ!!」
「『
互いの正面に魔物がいる形になったため、
簡単に対処した。
「ふぅ・・・よくやった。魔物の霧散を確認した。
クエスト終了だ。」
「どうにかなったな。」
首をコキコキと鳴らす。
「今回の魔物は報告しなければならない。
戻ったら口頭で報告しよう。お前は休んでおけ。」
「いや、大丈夫だ。」
「休むのも仕事の内だ。私は仕事をしない者を
許さない。」
ロウに顔を近づける。
「!」
「いいな、授業は免除されるから、しっかりと
休め。」
「それは、命令か?」
「そうではない。・・・命令してでも
従わせたいが。ただの助言だ。」
そう言って、顔を離す。
「だったら、飯食うくらいはいいだろ?」
「食事? ・・・いいだろう。なら、私も
報告が終わったら食堂に行く。」
「!」
「せっかくだ。お前の話を聞いてみたい。
なかなか機会がないからな。」
「そうか、なら、とっとと帰ろうぜ。」
「ああ。準備するぞ。」
「わかった・・・・・・ん?」
数メートル先に走り去る人影を見る。
「・・・・・。」
今のは・・・・?
「? どうした、ロウ。」
「・・・・いや、なんでもねぇ。」
・・・まさかな。
ロウには1つの可能性が浮かんでいたが、
自分の中でそれを否定した。