グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:FAMZ

158 / 337
第151話 親友

「・・・その人が・・・ライの魔法使い・・・。」

 

萌木は拘束されたライの魔法使いに

恐る恐る近づく。

 

「あ! 萌木! あんまり近づくな!」

 

「萌木先輩・・・。」

 

ちひろは心配そうな顔を浮かべる。

 

「・・・・・・・・・・・・・。

 『こんにちは。グリモワール魔法学園の

 モエギ・キリヅカと言います。』」

 

「へ?」

 

英語で話しかける。

 

「『ずっと聞きたかった。なぜ、魔法使いでない

 人々を攻撃するのか。幾多の交渉を拒否し、多くの

 人を犠牲にするのか。』」

 

「・・・・。」

 

「・・・え、英語ですかぁ? なんて言ってるんですかぁ?」

 

ちひろは里菜に聞く。

 

「・・・うーん、よく考えたら、外国人だもんな。

 英語じゃないとだめだよな。」

 

「『あなた方はどうしてミスティックでなく、

 人間を攻撃するのですか。』」

 

「『・・・我々の方が人間よりも優れているからだ。』」

 

強い語気で語り始める。

 

「『優れたものには責任がある。愚かな者たちを

 導かねばならない。』」

 

「『それがどうして、テロを起こすことに

 つながるんですか・・・!』」

 

「『驕るな。』」

 

「!!」

 

ライの魔法使いは萌木を強くにらむ。

 

「『テロと読んでいるのは劣等種族と、それに与する

 魔法使いだけだ。我々がしているのは選別にすぎない。

 世界はいずれ魔法使いが支配する。その自然な流れを

 我々は後押ししているにすぎないのだ。』」

 

「・・・・・・・!!!」

 

それを聞いた萌木の体は

珍しく怒りに震えていた。

 

「驕っているのはどっちですか!! あなたたちの考えは

 ただの選民思想です!!」

 

「・・・霧塚・・・。」

 

「も、萌木・・・?」

 

普段見ない萌木の表情に里菜は怯える。

 

「魔法使いの責任は、力のない人たちを守り、

 魔物と戦うことです! 傲慢にふるまい、気に入らない

 相手を排除し、正当化のために取り繕う・・・

 都合のいいように理論をくみ上げ、検証もせずに、

 妄信するなんて・・・そ、それを・・・それこそ、

 驕りというんです!!」

 

「萌木先輩、もうやめてください~!」

 

「霧塚、落ち着け! そいつに日本語は

 わからない!」

 

「そ、そうだぞ! なにしゃべってたか知らないが、

 こんな奴らに優しくすることなんてないさ!」

 

「そのとーりです。」

 

多少怒った顔をして、風子が近づいてくる。

 

「・・・風紀・・・委員長・・・?」

 

「しかし危ねーですね。もう少ししっかり縛っておいて

 くだせー。」

 

そう言って、魔法で作ったロープで

ライの魔法使いを拘束する。

 

「ぐぁぁ!」

 

「や、やめてください!」

 

「命はとりませんよ。それどころか、傷つけも

 しません。・・・霧塚萌木。アンタさん、どうして

 話しかけたんですか。頭のいーアンタさんなら、

 わかってるでしょうに。」

 

あきれ気味にため息をつく。

 

「信条の異なる相手とは、どれだけ言葉を尽くしても

 わかりあえやしません。できるのは妥協だけです。そして

 ウチらの妥協点は『殺さない』です。それ以上に

 関わり合いを持とうとしてもアンタさんが辛いだけですよ。」

 

「・・・す、すみません・・・わたし、

 勝手なことを・・・。」

 

「いーえ、校則違反じゃありませんし、謝る必要は

 ねーです。この魔法使いはもらっていきますよ。

 国軍に引き渡しちゃいます。」

 

「・・・よろしく、お願いします・・・。」

 

「・・・・・・・。」

 

2人をライの魔法使いは睨んでみていた。

 

「『・・・魔法使いが一般人に奉仕しなければならない

 など・・・誰が決めた。ミスティックと戦う力を

 持たず、守護を強要し、にも関わらず忌み嫌う・・・。

 そのような人間を・・・なぜ、守らねば』」

 

「『それ以上口を開くな。』」

 

ロウは刀の切っ先をライの魔法使いに

向け、言葉を遮らせる。

 

「『ぐぅ・・・!』」

 

「・・・日本語、理解できたんですか。

 霧塚、聞かなかったことにしてくだせー。今の

 言葉にとらわれていたら・・・アンタさん、

 壊れちゃいますよ。」

 

「萌木。あとは任せるさ。」

 

「・・・リナちゃん・・・。」

 

萌木はゆっくりとした足取りで

その場を去った。

 

「・・・どーして止めなかったんです?」

 

メアリーが物陰から出てくる。

 

「そこまで世話する義理はねえ。それにあのビブリオガールは

 馬鹿じゃねーだろ。馬鹿じゃねーやつが納得する

 ためには体験するしかねーのさ。人間だから話が

 通じると思ったら大間違いだってな。」

 

「さいですか。ですがあれでは、戦闘を

 続けるのは難しーですね。」

 

「・・・しかし、予想以上にあまかったか。学園の

 教育を受けてこれだと・・・共生派に傾いても

 おかしくねーな・・・まだ様子を見とくか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ロウさん。」

 

しばらく歩いていた萌木は

ふと立ち止まる。

 

「なんだ、霧塚。」

 

「・・・私が本を好きなのは、その中に素敵な

 世界が広がっていたからなんです。」

 

「・・・・・。」

 

「でも、そうでない本もあると知りました。霧の魔物を

 倒すという、疑いもしなかったことに反対する人々が

 いること。人間同士仲良くするという、疑いもしなかった

 ことに異を唱える人がいること。・・・もっと、

 世界は素敵なものだと思ってたんです。」

 

「・・・霧塚・・・・・。・・・・!!」

 

ロウは誰かからの視線を察知した。

 

「どこだ・・・・!?」

 

何度も周りを見る。

 

「・・・・!!」

 

1人の男がロウたちを見ているのに

気が付いた。

 

「? ロウ、どうかしたのか?」

 

「・・・悪いが、少しここを離れる。」

 

「え?」

 

「なに、すぐに戻る。霧塚を頼むぞ。」

 

そう言って、走り去る。

 

「あ、お、おい!」

 

ロウが走り出すと男も走り出した。

 

「く・・・・!」

 

 

 

 

 

<ロウ、移動中>

 

 

 

 

 

 

しばらく走っていた2人だったが、

やがて、男は立ち止まった。

 

「・・・・・・。」

 

「お前、いったい何者だ。」

 

「何者・・・か。久しぶりの再会に

 なるのに、つれねえヤツだな。」

 

「なに・・・?」

 

かぶっていたフードを取る。

 

「・・・お前は・・・。」

 

「何年ぶりだろうな。ロウ。」

 

「・・・久しぶりに会えたな・・・

 ・・・俊。」

 

「おっ、覚えていてくれたか。

 嬉しいぜ、親友。」

 

「・・・・親友だ?」

 

俊をにらみつける。

 

「生憎だが、俺は今までのことは捨てることに

 決めたんだよ。・・・だからもう、

 お前は俺の親友でもなんでもねぇ。」

 

「・・・ったく・・・。ロウ、お前やっぱり

 先生を裏切るつもりか?」

 

「あいつに従ってた気は最初からねぇよ。

 てか、何が久しぶりの再会だ。お前一度見たぞ。

 ・・・科研で。」

 

「なんだ、やっぱわかってたか。」

 

けらけらと笑う。

 

「それより、俊。お前ここで何やってるんだ?」

 

「お前も俺たち側だったならわかるだろ?」

 

「・・・お前、まさか・・・。」

 

「ああ、今俺はライにいるんだよ。

 さらには・・・・。」

 

俊は力を入れると、

手のひらに雷が走る。

 

「!!」

 

「俺、覚醒したんだよ。魔法使いに。」

 

「な・・・・。だが、覚醒したら

 魔法学園に入ることになるはずだ!」

 

「んなもん、もみ消したに決まってんだろ。

 先生の力があれば、簡単なことだ。」

 

「ちっ・・・!」

 

「さぁて・・・んじゃあ、始めるか・・・。

 裏切者への制裁を!!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。