グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
風飛市
街中
「・・・西原?」
「はい。おや、ロウさん。」
ロウの視線の先には
机に水晶玉を置き、椅子に
ちょこんとゆえ子座っていた。
「ようこそ、ゆえの道端占いです。」
「道端占いねぇ・・・。」
「むにゃむにゃ・・・」
ゆえ子は目を閉じる。
「死相が出ていますね・・・。」
「まだ出てたのかよ・・・。」
「これは・・・アメジストだけでは間に合いません。
これを。」
机の下からあるものを取り出す。
「? これは?」
「ドリームキャッチャーです。悪夢を取り払い、
夢をキャッチします。悪いものは大抵寝てる間に
忍び寄りますからね。」
「そうか・・・。で、いくらだ?」
「あ、お題は結構です。」
「?」
「ゆえにとって占いは商売ではありませんから。
義務ですね。どちらかというと。」
「予知ができるからか。」
ドリームキャッチャーを懐にしまう。
「ええ。預言者の義務です。未来が見えているの
ならば・・・それを避ける方法も用意しておくべきでしょう?」
「まあ、確かにな。」
「ただいたずらに混乱させるだけでは、ただのデマゴギスト
ですし。ゆえはそんなエセ・・・預言者にはなりたく
ないですから。」
「デマゴギストねぇ・・・ところで、1つ
聞きたかったんだが・・・」
「なんでしょう?」
「なんで予知ができるんだ?」
「う~む・・・・。」
ゆっくりと首をかしげる。
「前に調べてもらったんですけど・・・ゆえは
魔力が少ないのです。なにか変なことに使われてる
らしいんです。常に一定量が。」
「使ってる意識はあるのか?」
「ゆえは特に意識して何か魔法を使ってるという
ことはないんですが・・・もしかしたら、
それが予知なのかもしれません。」
「ま、そうなるだろうな。」
「・・・・・。」
「?」
ゆえ子はじっとロウの顔を見ている。
「どうした?」
「・・・ロウさん。せっかくですし、ちょっと
ご一緒しませんか。特に用事がないのであれば。」
「ん? 別に特に用はないが・・・。」
「立ち話もなんでしょうし、そこのカフェにでも。」
近くのカフェを指さす。
「・・・ああ。んじゃあ、行くか。」
急になんなんだ・・・?
カフェ
「・・・さて、ロウさん。急にここに
行こうと言ったのにはわけがありまして・・・。」
「なんだ?」
「ゆえは、お伝えしなければなりません。
あなたの・・・未来について。」
「俺の・・・未来だと?」
コーヒーを一口飲む。
「近いうちに、とても想像できないほどの
苦難があなたを襲うでしょう。」
「!!」
「死相・・・とは冗談ではありません。あなたに
死が近づいています。・・・ゆえはあまり上等な
予言者ではありませんが・・・なぜか、これは
断言できます。」
「あまり断言してほしくはねぇけどな・・・。」
「あなたの苦難と世界の苦難は等しい。あなたが
苦しむとき、世界もまた苦しむ。心当たりはありませんか?」
「・・・・・。」
黙ってコーヒーを飲む。
「・・・ロウさん?」
「ん? ・・・・ああ、ありすぎるくらい・・・だな。」
「え?」
「・・・いや、なんでもねぇ。続けてくれ。」
「あ、はい・・・。」
何で口を滑らしかけたんだか・・・
「ロウさんが何を思い出したかわかりませんが、とにかく
ゆえにはこれ以上はっきり見えないのです。
アメジストもドリームキャッチャーも間に合わない。
では・・・・」
ゆえは動きを止める。
「?」
「・・・いえ、無駄ですね。どれだけ小細工を
弄しても、覆るものではなさそうです。」
「・・・だったら、どうするってんだ?」
「ならば、ゆえがあなたを見守っておきましょう。」
「・・・西原・・・。」
「なにかあればすぐに駆けつけて、協力します。
苦難を乗り越えるために。」
にこりと笑う。
「・・・ふっ、ずいぶんと言ってくれるな・・・。」
ロウは静かに笑った。
学園
校門前
「・・・よう、ロウ。」
「ん、なんだ、朝比奈か。」
「なんだじゃねぇよ! ・・・・な、なぁ、
ちょっと面ァ貸せ。」
少し目線を外す。
「はあ? なんで俺が。」
「い、いいから来いよ。」
「やだ。」
「拒否権なんてねーよ。来いったら来いっつーの。
因縁つけてるわけじゃねーし、バス代も俺が
出すから来いってんだよ。」
「バス・・・? 街にでも行くのか。」
「ああ、そうだ。さらには内緒でだ。」
いらだちを隠せず、龍季は貧乏ゆすりをする。
「なるほど・・・だとしたらなおのこと
面倒だな。」
「ああ!?」
「俺はさっきまで街にいたんだ。なんで好き好んで
もう1回行かなきゃ・・・・。」
「り、理由は別にいいじゃねーか。黙って
ついてこいよ。」
「だからやだっつってんだろ。」
「て、てめー・・・下手に出てりゃつけあがり
やがって・・・。」
「あっそ、んじゃ俺は帰る。」
早足で寮に帰ろうとする。
「わ、わかった! わかったよ! 言う。
てか、最初から言うつもりだったんだよ。」
「だったら早く言え。次はねぇぞ。」
「くそ・・・だが学園じゃだめだ。聞かれてる
かもしれねーからな。街についてからで我慢しろ。
言うから。絶対にだ。」
「・・・ったく、めんどくせぇな・・・。
さっさと行くぞ。」
<ロウ、龍季、移動中>
街
「・・・っし。腕が鳴るぜ。」
手をポキポキと鳴らす。
「んで、結局なにしに行くんだ?」
「簡単な話だ。前からほっといた腐れ縁と
切るんだよ。街の不良の中に相手にしなくなってからも
ずっと手を出してくるやつがいる。俺が暴れてたころの
ライバルだ。女だけどな。」
「魔法使いとケンカねぇ・・・。」
「向こうもわかっててケンカふっかけてきた。
だから・・・まあ、その、なんだ。筋力があるから
いつも負かしてたんだが・・・・・」
徐々に歯切れが悪くなる。
「? なんだ。」
「その、それがどういうわけかアイツの趣味に
あってたらしくてな。」
「・・・・・・ああ・・・そういうことか。
要するにそういうのが好きなんだな、そいつは。」
「・・・そうだよ、皆まで言わせんな。
だから、テメーを連れてきたんだ。頼むぜ。」
・・・やっぱり帰るんだったな・・・。
「・・・てか、何を頼まれたんだ、俺は。」
「はぁ!? てめー、少しは察せよ! だから、
俺がそいつにちょっかいかけてくるから、
てめーを俺の男ってことにしといてだなぁ!」
少しずつ顔が赤くなっていく。
「し、しといて、だな・・・諦めさせるんだよ。
俺にそのケはねーしな。」
「じゃなきゃ、俺はとっくに帰ってた。」
「うぐ・・・と、とにかく、てめーには
生贄になってもらう。」
「めんどくせぇ・・・・。」
「つーわけでだ! 隣にいるこいつが
お、お・・・。」
龍季は目の前の相手に言い訳しようとする。
「ぉ・・・俺の、男だ! ・・・ふぅ・・・
だからこれ以上俺につきまとったりすんな。てか、
きょーみねーんだよ! てめー、俺のこと女だと
思ってねーだろ!」
「随分言ったな・・・さて・・・・・ん?」
相手がロウを指さしている。
「はぁ? こいつがヒョロイ? まじで
言ってんのか? ・・・・・。」
龍季はロウをじっと見る。
「? なんだ?」
「・・・確かに、オメー着痩せすんな。おい、
上着脱げ。」
「はあ?」
「軍人に鍛えられてるだろーが。いいから
脱げよ。筋肉見せてやれ。」
「・・・ったく・・・・。」
言う通りに上着を脱ぐ。
「と、とにかく! 俺はおとこらしーヤツが好みなんだ!
これで・・・・・・キス?」
「?」
「・・・・・わ・・・」
「どうした?」
「わあああぁぁん!! できるわけねーだろ、
ばっきゃろー!!」
顔を隠して走り去った。
「は!? お、おい待てよ!!」
ったく、なんだってんだ・・・?