グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
そのころ
「ええ!? な、なんでですかぁ?」
「・・・JGJ、つまり霧の護り手には
1人の厄介な魔法使いがいる。双美心。
科研をつぶし、多くの組織を手に掛けた
ウィザード。」
「・・・双美が・・・。」
そういや、こっちの宍戸も・・・。
「あの遊佐さんでさえ、ネット上では
丸裸も同然だった。」
「そんな・・・。」
「私たちがデバイスを使わなくなったのも
それが理由。すべて盗聴され、割り込まれ、
ねつ造され、破壊された。それでも遊佐さんは
誰かと連絡を取ることに成功していたみたいだけど・・・。」
「・・・・・。」
「そしてあなたと一緒に来た結城さんが教えてくれた。
東雲さんの情報・・・近く、パルチザンは壊滅する。
人類の敗北が決定的になる。そして、そちらの遊佐さんが
もたらした情報・・・双美心は電子だけでなく生体の
情報も得られる。」
「!! 生体だと!?」
「ええ。私たちのことはすべて死んだ仲間から
抜き取られていた。いえ・・・おそらく、捕らえられて
情報を抜き出され殺された。」
「なるほど・・・だからここが見つかったわけか。」
ったく、面倒なのが敵になったな・・・。
ロウは心の中で舌打ちする。
「・・・そ、それなら、わたしたちのところに
来ましょう! レジスタンスのみんなで、学園に
来てくださいぃ! そうしないと、みんな・・・
みんな・・・。」
さらの目に涙が浮かぶ。
「・・・それも、いいかもね。」
「ですよぉ! ほら、シローもお願いって言ってますぅ!」
『わん! わんわん!』
「シロー・・・あなたとも、また会えてよかった。
龍季さんも。さらちゃん、あなたとも会えてよかった。」
穏やかな笑みをする。
「・・・・え?」
「・・・ロウ君と言ったわね。」
「ん?」
「すぐにさらちゃんを連れて、学園に戻って。
もし双美心に見つかったら、今度はそっちの世界が
危なくなる。」
「・・・・・。」
「絶対にすぐ戻って。私たちはここで魔物を
食い止めるから。」
「そ・・・そんな・・・だめですぅ! 魔物さんも
たくさんなのに・・・! わたしたちは迎えに
きたんですぅ! お別れしに来たんじゃないんですぅ!」
さらは裏の自分にしがみついて止めようとする。
「泣かないで。あなたは強いでしょう・・・。」
さらの頭をやさしくなでる。
「それに・・・先がある。私たちはその先を守るために戦う。
東雲さんが教えてくれたおかげで私たちは全滅を免れる。
双美心の魔法を知れたから、対処もできるようになった。
私たちは、まだ戦える・・・絶対にこの世界を、取り戻す!
だから・・・そっちの世界は任せたわ。」
「・・・・・・。」
「・・・ちっ! なんて量だ・・・全員どけ!
俺がまとめてしびれさせてやる!」
「ちょうどいい。僕も雷が得意でね・・・
手伝おう。」
龍季と鳴子は魔物の前に立つ。
「ロウ君がいなくても、2人でやれば
それなりに協力だろうからね。」
「ゴタクを聞いてるヒマはねぇ! テキトーに
合わせやがれ! ぶっ飛ばすぞ!」
「OK。」
「ログイン。やはりこちらの侵入は予測して
いなかったみたいね。・・・さっきはどうして
心ちゃんが出てきたのかしら・・・・。」
しゃべりながらも、心はパソコンを操作し続ける。
「・・・いえ、それより・・・後でロウさんにきつく
言っておかなければ・・・。・・・!? 来た!
服部さん! 今から集中します!」
「あい! らじゃ!」
梓は周りを警戒し始める。
「なんてスピード・・・! 隔壁がどんどん破壊
されていく。させるものか・・・!」
???
「・・・これは・・・この魔法はまさか・・・・。
・・・・そうか。間ヶ岾の言ったことが当たったのね。
だとすると相手は・・・レジスタスという餌にかかった
本当の目標。いいわ、遊佐鳴子が死んでから退屈していたの。
少しは持ちこたえてね。」
「ぐ・・・! あぐ!」
心の動きが徐々に鈍くなる。
「ふ、ふたみん!?」
「そんな・・・これが、10年の差・・・?
・・・それでも・・・!」
「私たちは、いったん身を隠す。何年かかるか
わからないけれど・・・ばらばらに、互いの居場所を
知らないまま、双美心を倒す方法を探す。」
「そ、それならやっぱりわたしたちの学園に
来た方が安全ですよぉ! どうして・・・死んじゃうかも
しれないんですよぉ・・・。」
目に涙を浮かべる。
「これは、ただの意地みたいなものよ。でも、
この世界に希望は私たちだけ。もう、魔物に槍を
向けるのは私たちだけ。私たちがいなければ・・・今度こそ、
この世界は魔物に屈する。それだけ・・・だめだから。」
「・・・・そんなぁ・・・そんな・・・・。」
「・・・・・・。」
・・・何を言っても・・・か。
「城の入り口まで送っていくわ。ロウ君も。
こっちにはいなかったけど、ずいぶん頼りにされてる
みたいね。『わたし』を頼んだわよ。」
「・・・ふー。まだ来るのか?」
龍季は流れた汗を拭う。
「来ましたよ、さらさんが。」
入口からさら、裏のさら、ロウが出てくる。
「なに!? さら・・・それじゃお前・・・!」
「すぐにあなたたちの世界に戻って。私たちが
食い止めるわ。」
「な・・・! こっちに来るんじゃねぇのかよ!」
「我らにはあなた方の協力が必要だ! 考え直しては
くれないか!」
「・・・じゃあこういうわね。しばらく考えさせて。
返事はまた今度。」
「な・・・!」
「・・・のヤロ!」
龍季は裏のさらにつかみかかろうとする。
「やめてくださいぃ! ケンカはだめですぅ!」
「しねぇよ! ・・・・・くそ!!」
「相手の探査手段が分かったから、しばらく私たちは
接触を断つ。あなたたちが来ても、姿を見せないわ。
もしこの件が片付いたら・・・その時、また
お話ししましょう。いいわね?」
「・・・ちくしょう!」
「・・・や、やむを得ん! これ以上は城が崩れる!
退避するぞ! 天文部はどこだ!」
「あいさ、いますよ。」
梓が心を担いで出てくる。
「ちょっち疲れた・・・。」
「服部、何かあったのか?」
「いえ、ちょいと気絶しているだけです。命に別状はありません。
それに向こうの目をつぶしてくれました。ゲートの位置は
ばれませんよ。それより、ぶちょーたちもこちらに
むかってます。これで全員ッス。」
「よし! ロウ、まだやれるか!?」
「ああ、問題ねぇよ。」
「朝比奈たちはここで戦い続けて満身創痍だ!
私と立華、そしてお前でしんがりを務めるぞ!」
「はぁ・・・はぁ・・・ボクだってまだまだ
行けるのだ!」
疲れた様子を見せながらも明鈴は張り切る。
「・・・では、雀も含める。まずは七枷まで
撤退するぞ! 仲月!」
「は、はいぃ!」
「お前の説得は無駄ではなかった・・・そのことを
次に来た時に証明して見せろ。いいな。絶対に、
もう一度くるんだ! 次こそ連れて帰るために!」
「・・・も、もちろんですぅ!」
「では、撤退だ! パルチザンと協力し、
阿川奈城砦から脱出する!」
こうして、ロウたちは阿川奈から
撤退し、元の世界に戻った。
「まずは、あの子たちが逃げるまでの時間を
稼がなきゃね。」
「・・・それまで、ここで耐えられるとは
思わないけど。」
「その時はその時よ。あの子たちが来なければ、ここで
全滅してたんだから。だからあの子たちを守るために
死んだとしても、変わらないわ。」
「本当はあちらに行きたくてたまらないんでしょう?」
「ミナだってそうでしょう。この話は終わり・・・
恋は合流できそう? ももは?」
「ももさんはきっと、あの場所で待ってる。
でも、すぐにはいけないわね。それどころか
こうやって話すことも・・・。」
「大丈夫・・・生きていれば、皆の敵を
討つチャンスはある。」
裏のさらは目を閉じる。
「花梨ちゃん、龍季さん、秋穂ちゃん、
春乃さん・・・みんなの想いを、私たちは
背負っているから。絶対に死なない。
生き延びさえすれば・・・・・!!」
???
「生き延びさせは、しない。さようなら、
パルチザン。あなたたちはずっと邪魔だった。
最後のダンスを、楽しんでね。」