グリモアーたとえ面倒でも世界は動く- 作:FAMZ
特級危険区域
「・・・・ょ・・・ょろ・・く・・・
ぉねが・・・ます・・・。」
今回のクエストは大垣峰のゲートを
閉じるという学園全体で行うものだった。
『ふー・・・どうしても行くって
言ってきかねーんだ。特級危険区域なんて
危ないところなんだぜ?』
「・・・ぁ・・・ぁたし・・かんぁぎさ・・・」
「? 神凪?」
『夢の話さ。神凪がいなくなる夢をよく見るんだと。』
「そうだったか・・・。」
裏世界の記憶ってやつか・・・?
『ありすは魔法使いに覚醒してから、神凪に
頼りっぱなしだったからなぁ・・・。』
「ロウ、楠木。準備はできたか?」
怜が2人に確認する。
「ああ、問題ねぇよ。」
「ぁ・・・か、かんぁぎ・・・さん・・・。」
「楠木。ロウを任せるぞ。」
笑顔でありすの頭をなでる。
「・・・ぁい・・・!」
「ロウ。お前の役割は理解しているな?」
「ゲート閉じるために時間停止の魔法を
使うから、その分の魔力を温存しとくんだろ?」
「ああ。直接戦闘には参加せず、楠木と大回りをしろ。
途中で智花、夏海、松島が合流する。ゲートまでの
道はみんなが切り開く。それに・・・。」
周りを何度も見る。
「タイコンデロガがうようよいる。捕まらないように
逃げ回れ。」
「まっ、それしかねぇだろうな・・・。」
「・・・ろ、ロウ・・・さん・・・。」
ありすはロウの服をつかむ。
「ぁたし・・・ロウ・・・さ・・・ぁもり・・・
ぁす・・・。がん・・・ばり・・・ぁす・・・!」
「・・・ああ。頼むぞ、楠木。」
「・・・朱鷺坂、東雲。ありがたい。」
「くくく、言葉で済むと思うなよ、虎千代よ。
妾の貴重な時間を使ったんじゃ。それなりの
礼を要求する。」
アイラはにやりと笑う。
「貴重な時間って、私たち不死身じゃない。」
「不死身じゃから時間が貴重でないというのか?」
「・・・まぁ、頑張ったことだし、お休みでも
もらいたいわね。」
チトセは自分で肩を揉む。
「ここが攻略できれば、人類にとって新しい
道が開かれるんだ。全世界からの称賛が得られる。
アタシの礼なんてちっぽけなものだ。」
「けー! 名誉なんかいらんわい! 3か月くらい
ダラダラするぞ!」
「その程度でいいならお安い御用だ。好きなだけ
休め。」
「あ、ちょま、やっぱもっといいものを」
「だが、すべてはここを攻略できてからの話だ。」
言葉を遮る。
「ねえ。それなんだけど・・・ゲートの周りに
いる魔物はどうするの? タイコンデロガが
うようよいるわよ。」
「ムサシの姿が見えんのが救いじゃの・・・・
といってもそう変わらんか。ロウの魔力は我らが
使う予定じゃ。無駄遣いはできんぞ。」
「そのために助っ人を頼んだ。いくつか、
ツテを使ってな。」
「つて・・・?」
「グリモアの友人たち、久しいな。」
「! おお・・・お主は・・・。」
助っ人に呼ばれていたのは
レティシアだった。
「本来は違う形で時間をとるはずだったのだが
ゲートをどうにかできるかもしれんと聞いてな。
予定を変更した。この戦いはネテスハイムの
レティシア・ハミルトンが力を貸す。」
「なるほど、心強い味方ね。」
「イギリスでの借りは返そう。それと・・・
私だけではない。」
「話では、もう始めているはずだ。」
「始めてる・・・って、誰が?」
その時、遠くで大きなうめき声が響き渡った。
「!? な、今のは・・・タイコンデロガの悲鳴・・・!?」
「一発の魔法で・・・・まさか・・・。」
そのころ
「・・・・ん・・・・。」
怜は右目を軽くこする。
「おや、神凪先輩。目、痛いんですか?」
「服部か・・・。いや、収まったよ。
こんなときに・・・くそ、無意識か。
戦闘中に目をこすっていたらまずいな。」
「無意識ッスか・・・。」
「裏世界の私は眼帯をしていたそうだ。
もしかしたら・・・何か影響が出ているのかも
しれない。」
そう言いながらも、目をこする。
「あんまり気にしない方がいいッスよ。自分も裏の
ことは聞いてますけど・・・第8次侵攻で生き残って
以来、いつの間にか行方不明だそうで。でも
やっぱり、自分も夢見てどうなったか知ってるんですよね。」
「なに?」
「言いたくないくらいひどいものでして、でも
気にしなきゃ忘れちゃいます。今のところ、
自分にはそれ以外の影響出てませんし。」
「・・・私も気にしないようにしよう。
ところで、どこかに行くのか? この辺は
まだだが、先ではすでに精鋭部隊と魔物の戦闘が
始まってるぞ。」
言ったとたん、爆発音が鳴り響く。
「承知済みッス。変な報告があったんで、確認しに
行ってきます。なんでも、魔物が大量生産されているとか。」
「大量生産? どういうことだ?」
「読んで字のごとくッスよ。こっちが倒すと
魔物が生まれてくるッス。」
「それは・・・妙だな。ここでそんな動きは
初めてのはず・・・。」
「例はあるんですよね。何度か似たようなことは
ありました。汐ファンと・・・裏世界ッス。」
「理由はわかっているのか?」
「さあ、さっぱり。」
首をやれやれと横に振る。
「だから今回のが、同じようなケースかどうかも
わかりません。」
「・・・大丈夫か? やはり誰かが一緒に
行ったほうが・・・」
「大丈夫ッス。ヤヨっち先輩と落ち合いますから。」
「そうか・・・私も後から追う。危険だったら
呼んでくれ。」
「お気遣いどもッス。ま、自分も忍者の意地が
ありますんで。さくっとやってきますわ。」
「・・・これが特級危険区域・・・。」
「だ、大丈夫だよね・・・。」
「今更何びびってんのよ。ここまで来たら
やるしかないじゃない。」
心配そうな顔を浮かべる智花をよそに
夏海はカメラで写真を撮る。
「それにあたしたちだけじゃなくて、生徒会も全員
来てるし・・・部長も精鋭部隊も、つかさも、
アイラもいるのよ? 出る幕なんかないんじゃない?」
「そ、それはだめだよ! 私たち、選ばれてきたんだから
・・・ロウさんとありすちゃんを護衛して、中心部まで
行かなくちゃ!」
「わかってるって。あたしだって、中心部まで
行くつもりよ? なんたって特級危険区域の解放
っていう、世界的なスクープだもんね。これをカメラに
収めないなんて、ジャーナリスト失格じゃない!」
「ったく、岸田は相変わらずだな。まあ、南の
言うことにも一理ある。それにこういうとき・・・
不測の事態ってのはつきものだからな。」
「わかってるわかってる!」
・・・どうだか・・・。
「クックック。思わぬところでピューリッツァー賞の
チャンスだわ! 絶対にモノにしてみせるんだから!
今なら部長も出し抜いてみせるわよ!」
「・・・このクエストって公表されないから
賞は無理じゃないかな・・・。」
夏海はどんどん進んでいく。
「あ! 待って待って!」
「智ちゃん、お待たせ・・・あれ、夏海ちゃんは?」
少し遅れてみちるもやってくる。
「先進んじゃって・・・。」
「しょうがない奴だ。俺は後を追う。」
そう言って、ロウも進んでいった。